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第67話 転生者

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青く輝く光がエルフの里に広がっていく。
そして覇王の一撃は、黒騎士を弾き飛ばしていった。
尋常でない破壊力から無事では済まない。


「す、すごい…」


ユーリは力を合わせた覇王の威力に驚きを隠せない。
そして十年間の鍛錬が報われた気がして感極まる。


「クリス、まだ油断するな!」


賢者はクリスに注意を促す。
魔界での黒騎士を知っているからこそ最後まで油断できない。


「流石はロゼ…」


瓦礫から立ち上がる黒騎士。
しかしクリスが与えた攻撃は深傷だった。
おぼつかない足取りをしている。


「嘘だろ、あれで死んでないのかよ」


カートは何度も起き上がる黒騎士に呆れている。


「流石に傷が深いか…」


黒騎士の鎧にヒビが入っていく。
ここまで傷つけられたのは思い出しただけでも相当昔の話だ…


「五百年ぶりくらいか…
 ここまで追い込まれたのは…」


黒騎士は因縁の相手を思い出していた。
そして黒騎士の背後に転移魔法の波動を感知する。


「な、何だと!」


賢者の時空魔法と同様に、女神が転生者に与える固有スキル、転移魔法。
その魔法が発動して賢者は驚愕している…


そして転移魔法のゲートが生まれ中から人が現れた。
その容姿は黒髪で短髪の男の子。
顔はクリスにとって馴染みのある顔をしている。



まさか……日本人だと?
転生者なのか?


「セトさん…
 勝手に飛び出して困りますよ…」


少年は黒騎士に対してそう呟く。
そして黒騎士は少年の名前を呼びながら返事をする。


「シン殿、すまないな…
 予想外の強者がいたのでな…」


シンと呼ばれた少年は不敵な笑みを浮かべて呟く。


「お兄さんは転生者かな?
 もしそうなら、負けないよ…」


「お前も…転生者なのか?」


聞かれた質問に俺は質問で返す。
するとシンは不気味に笑う。


「そうだよ…
 お兄さんと同じね…」


そう言うと転移魔法のゲートに黒騎士を連れて入る。
そしてゲートが閉じる寸前で一言呟く。


「残念だけど、ルミナスは…
 僕が滅ぼすよ…」


一言残して二人は去っていった。
後味は悪いものだったが確かに黒騎士を撃退した。
その事実を少しずつ実感していく。
そして居合わせた仲間と喜び合っていく。


「やったんだよな…
 俺たちは…」


俺はこの世界で黒騎士を撃退した事に感動している…
気づけば周りの人達も抱き合って喜んだ。



「それにしてもユーリには驚いたよ…
 すっかり変わっていたからさ」



「へへへへ!
 私の魅力にやられたな~」


怪しく笑いながら俺を揶揄ってくる。
綺麗になっても中身は変わっていないようだ。


「クリス!
 良くやったな…」


「母上、本当に…
 助かりました…」


母上がいなければ黒騎士に勝てなかった。
それだけに接戦だった。
一人で俺たち相手に互角以上の戦いをした黒騎士はやはり規格外だ。
出来ればもう二度と戦いたくない…


「カート!
 お前はよくぞ師匠を守った!」


「カートさん、
 本当に格好良かったですよ!」


褒めちぎられるカートは頭をぽりぽり掻きながら照れている…


「私からもお礼を言うよ、カート!
 アンタのおかげで命拾いしたよ」


賢者は真正面からカートに礼を言う。
それだけ間一髪の状況だった。


「師匠…」


クレアは、自分のせいで師を亡くしてしまうところだった。
それだけに心から安堵していた。


「ク、クレア様!!」


フィリアが大声で叫ぶ!
いきなり大声をあげて皆んなが驚いてしまう


「フィリアじゃないか!
 お前も良かったな…」


「良かったな、じゃないですよ!
 四年間も出張で国を出てて!
 私がどれほど寂しかったことか…」


フィリアは大声をあげてクレアに詰め寄っている。


「まあまあ…
 王からの命令だから仕方ないだろ…」


クレアとユーリは四年間の間、他国を周りながら魔女とエルフを救出する任務にあたっていた。
エレノアの被害者を救出するためだ。


「そうですが…
 そうなのですが…」


フィリアはクレアに依存していたのだろう。
急に居なくなって寂しかったのだ。


俺はフィリアの寂しいという言葉を聞き、
以前のフィリアとの日々を思い出した…
この世界のフィリアからは告白されていない事になっている。
しかし過去に遡れたのはフィリアのおかげだ。
あの時の想いは、確かなものだった…
母上やユーリを助けられたのも、
そして今俺が生きているのもフィリアと賢者が命を懸けてくれたからだ…


俺はそれを忘れてはならない…
そんな気がしていた…


「お!ようやく騎士団の到着だな!」


カートさんがそのように言うと、
父上達、王国騎士団が援軍に到着した。
母上は相変わらず遅れてしまった父上に小言を言っている。


「山道で怪我人が出たのだ…
 仕方ないだろう…」


なんか何処かで聞いたやり取りだなと感じたが、この世界でも二人の痴話喧嘩が聞けるのは幸せなのだろう…


父上の報告だとエルフの里を目指していたオーク500体が急に消え去ったのだと言う。
まるで神隠しにでもあったかのようだった。
もしかするとシンが転移魔法で撤退させたのかもしれない。



ついにルミナスへ帰ることができる…
長い旅は終わりを迎えるのだ。
今度は大切な家族と共に帰れる…
それが心から嬉しくて堪らない。
しかしこの先、とんでもない陰謀に巻き込まれていくことになるとは思いもしなかった…
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