56 / 182
第56話 幸せ
しおりを挟む
生気を取り戻したユーリ。
クリスと口づけを交わしたことで従属化スキルが発動し、クリスの使い魔として上書きされた。
「クリス…」
ユーリは目を潤ませて、クリスに抱きつく。
もうダメかと思ったが最後は助けに来た。
ユーリにとってクリスは特別な存在だった。
そんなクリスに対する想いが抑えられない。
「クリス!
良くやったよ!」
賢者がクリスへ賞賛の言葉を贈る。
クリスは一度限りのチャンスをものにした。
賢者も満ち足りた表情をしている…
「ユーリ…
まだ戦いは終わっていないようだ…」
クリスが見つめる先には、
瓦礫の山から抜け出すエレノアが見える。
こちらを凄い形相で見ている…
エレノアは、まさか従属化を上書きされるとは思ってもいなかった。
上書きする場合は更に魔力を要する。
つまりクリスは、自分と同等もしくはそれ以上の魔力量という事になる。
エレノアは、その事実を受け入れられない。
「人間の魔力が魔族を超えている?」
エレノアはまだ戦いを諦めたわけではない。
結界の中のデスワームへ指示を送っている。
そして結界を破壊するのも時間の問題だ。
破壊したと同時にデスワームによる突進で攻撃しようと画策している。
「許されないわ…
私よりも人間が優れているなんて…
絶対に認めない…」
次元の結界に亀裂が走る。
それを感じ取った賢者が危険を知らせた。
「クリス!
結界からデスワームが出てくるぞ」
クリスの魔力量も残り僅かだ。
想像以上にユーリを使い魔にするのに魔力を消費した。
覇王の一撃は一度しか使えない…
そしてデスワームが結界を破壊しクリスの方へ向かってきた。
クリスは残っている魔力を込めて最後の一撃を放つ。
しかし、デスワームにダメージは与えたが硬い外郭によって、死に至るほどのダメージにはならなかった。
魔力を使い果たしたクリスは、
元の姿へ戻ってしまう…
クリスは、ここに来て限界を迎えてしまう事に落胆を隠せない。
そして、絶対絶命な状況だが、
諦めていない人物がもう一人いた。
それはユーリだ。
以前にクレアを助けたのと同じように、
クリスの手を握り魔力を送る。
「ユーリ…」
「私も、クリスの力になる…
だって、わたし…
クリスの使い魔だもん…」
恥ずかしながら言うユーリに、
一瞬見惚れてしまう。
そしてユーリから温かな魔力が送られて、
クリスの魔力は回復した。
そして姿を変えて覇王を発動する。
大樹を前に再度覇王の光が溢れていく。
「な、なに!また覇王を発動しただと…」
そしてクリスとユーリは手を繋ぎ、
お互いの心を一つにしていく。
「ユーリ、いくよ!」
「うん…」
二人の重なり合う魔力が、今までよりも更に強い覇王の輝きを生み出す。
その輝き溢れる覇王の一撃が炸裂し、
爆発の煙が里を覆っていく。
煙が消えるとデスワームの亡骸が見えた。
その胴体は真っ二つになっている。
「デ、デスワームを一撃で仕留めただと…」
魔界の戦争で常に最高戦力として投入してきたデスワームが一撃で仕留められた。
エレノアは、唖然と立ち尽くしている。
気づいたら全ての使い魔を倒され、
奴隷のサリーも気絶している。
このままでは魔界に戻っても、
勢力争いで殺されてしまう。
それであれば人間達を殺して自分も死ぬ。
エレノアは、最後の悪あがきとして自爆を考えた。
「もう仕方がない…
お前ら全員道連れだ…」
エレノアは血を吐きながら爆発魔法を唱えると、足元に大きな魔法陣が生まれる。
「まずい…
このままでは全滅だ…」
賢者は即座にエレノアの魔法を把握した。
これを防ぐにはエレノアを上空まで飛ばすしかない…
「賢者、ユーリ!
俺に魔力を貸してくれ」
クリスに考えがあった…
思いついた作戦は無茶なものだが、
これしか手がない。
「時間がない、頼む…」
そして賢者とユーリは、ありったけの魔力をクリスへ送り、クリスの魔力は最大まで回復した。
「何をする気だ…
クリス…」
「ちょっと、空の旅だよ…」
そしてクリスは駆け抜ける。
自爆魔法発動直前のエレノアに触れる。
「クリス、待て!
そんなことをしたら、お前が…」
「クリス!!」
賢者とユーリは、突然のことで驚いている。
二人ともクリスを止めたいのだが、
その前にクリスは、行動に移してしまう。
「必ず、帰ってくる…」
クリスは最大まで身体強化を自分にかける。
そしてエレノアを抱えて木を足場に大樹へと移動した。
「クリス!」
泣き声にも近いユーリの声が聞こえてくる。
クリスが死んでしまうかもしれない。
そう思うと胸が苦しいほどに締め付けられる。
「き、貴様…
何をする気だ…」
エレノアを無視して覇王を全力で使用する。
そして、ユグドラシルの枝を足場に大樹を登る。
しかし、制限時間は刻々と迫ってくる。
「馬鹿め…
後、五分もしないうちに爆発する。
この距離なら間違いなく全員死ぬ」
時限爆弾のタイムリミットが迫る。
このまま爆発してしまうかと思われた。
何か無いのか…
もっと速く、1秒でも速く…
誰よりも速く駆け上がる。
そんな方法は無いのか…
そしてその時…
クリスの頭の中でクレアを思い出す。
「母上…」
誰よりも速く、誰よりも強い、
宮廷魔術師クレア・レガード。
その固有スキルがある…
「やっぱり母上は、最強だよ…」
そしてクリスは、神速スキルを使用して、
先ほどより更に速いスピードで大樹を駆け上がる。
残り十秒…
ついに大樹の天辺まで辿り着く。
強化格闘術で大樹を蹴り、身体の向きを空の方向へ変える。
そしてエレノアと共に空へ飛び立った。
「くそ…
だが、貴様だけでも道連れだ…」
エレノアのその一言に、
クリスは笑みを浮かべている…
制限時間を迎え、エレノアは大爆発を起こす。
そして上空には黒色の煙が溢れていき、
クリスの姿も見えなくなる。
「クリス!」
ユーリは膝から崩れ落ちた…
愛する人を目の前で失ってしまった。
「馬鹿野郎……」
賢者もクリスへ文句を言う。
絶対に生きていて欲しかった。
気づけば賢者の中でも可愛い弟子になっていた。
二人とも唖然と立ち尽くす…
希望の光を失ってしまった。
そして、上空の煙が少しずつ消えていく…
螺旋の炎がクリスを囲む。
イフリートの炎はいかなる炎も無効化する。
爆発も例外では無い…
エレノアの大爆発は、炎魔法をベースにしたものだった。
「ざまぁみろ、エレノア」
クリスは、エレノアの自爆から全ての者を救ってみせた。
しかし、最後に詰めが甘かった。
魔力を使い切ったクリスは、元の身体へと戻っていく。
「やべ、着地のこと考えてなかった…」
ここは上空800メートルくらいだ。
このまま落下したら確実に死亡してしまう。
「空の旅は良かったけど、
落下事故とか洒落にならない…」
急降下していくクリス…
このままでは確実に死んでしまう…
クリスは何か方法がないか考えるが、
何も思いつかない…
しかしその時クリスに近づく人物が現れる…
「は、母上!」
「馬鹿者!
なんでこの高さから落ちているんだ!」
クレアは、咄嗟にクリスを抱き抱える。
足場の剣を何重にも重ねて衝撃を吸収した。
「た、助かりました…」
「心配したんだぞ!!」
本気で怒られた…
それだけ心配されていると言うことか…
何とか無事に降りられそうだ。
エレノアと空の心中にならなくて良かった。
「あ、あの…
母上、そろそろ…
お姫様抱っこはやめて欲しいのですが…」
「何を言ってるんだ、クリス…
罰として下まで、ずっとこのままだ!」
う、嘘でしょ…
思いきり格好つけて飛び出して行ったのに、
母親にお姫様抱っこをされながら帰るとか、
死ぬほど恥ずかしいんですけど…
クレアの瞳は優しさに満ち溢れている。
最愛のユーリを救い、更に憎きエレノアまで倒してみせた。
更に死ぬはずだった自分までも救ったのだ。
心からクリスに感謝しても仕切れない。
「クリス……
本当に、ありがとう…」
「え?」
クレアは、十年後の未来から来た息子に、
こんなに心を揺さぶられるとは思いもしない
ゲイルに話したら、どれだけ驚くだろう。
いっそのこと連れて帰ってしまおうか。
そんな風に思いながらクリスを愛おしく見つめている。
「ほら、みんながお前を見ているぞ…」
「え!母上、すぐに降ろしてください…」
「駄目だ!」
クレアは喜びに満ちた笑顔を浮かべる。
この後の展開に心躍らせているだけではない
最愛の息子とユーリを連れて帰れるのだから。
「おーい!クリス~
あねご~~」
ユーリが元気よく手を振っている。
その瞳は涙で溢れている。
そして手を振りながらこちらへ走ってきた。
「ふふふ、ユーリのやつ、
はしゃぎ過ぎて転びそうだな」
「母上、俺…
この時代に来れて良かった…
母上やみんなと出逢えて…
なんだか、夢みたいです…」
「クリス…」
俺は今までの事を思い出していた。
まさか死んだはずの母親と冒険するなんて…
しかも大切と思える女の子も出来た。
そして、尊敬するカートさんも一緒だ。
こんなにも楽しい日々が訪れるなんて夢のようだった…
「クリス…
不思議なこともあるものだな…
だが、これは夢ではないぞ…」
「え?」
「だって、私自身がお前に出逢えて、
こんなにも幸せなんだ…
夢であってたまるものか…」
クレアのその言葉がクリスの胸に響く。
自分が生まれた事を認められたと思ってしまう。
気づけば瞳には大粒の涙で溢れている。
「母上…ずるいですよ…」
泣きじゃくるクリスに、
クレアは一言告げる…
「当たり前だろう…
私は、最強の宮廷魔術師、
クレア・レガードなんだからな…」
「あはは…
母上には、やっぱり敵わないや…」
みんなを救うことができて明日も明後日も、
何十年先もみんなと笑顔で笑い合うことが出来る…
きっと過去に戻ってきたのは、この幸せな日々を守るためだったのかもしれない。
これから先の未来が待ち遠しくて仕方ない。
なぜなら、愛する者たちに囲まれているのだから…
クリスと口づけを交わしたことで従属化スキルが発動し、クリスの使い魔として上書きされた。
「クリス…」
ユーリは目を潤ませて、クリスに抱きつく。
もうダメかと思ったが最後は助けに来た。
ユーリにとってクリスは特別な存在だった。
そんなクリスに対する想いが抑えられない。
「クリス!
良くやったよ!」
賢者がクリスへ賞賛の言葉を贈る。
クリスは一度限りのチャンスをものにした。
賢者も満ち足りた表情をしている…
「ユーリ…
まだ戦いは終わっていないようだ…」
クリスが見つめる先には、
瓦礫の山から抜け出すエレノアが見える。
こちらを凄い形相で見ている…
エレノアは、まさか従属化を上書きされるとは思ってもいなかった。
上書きする場合は更に魔力を要する。
つまりクリスは、自分と同等もしくはそれ以上の魔力量という事になる。
エレノアは、その事実を受け入れられない。
「人間の魔力が魔族を超えている?」
エレノアはまだ戦いを諦めたわけではない。
結界の中のデスワームへ指示を送っている。
そして結界を破壊するのも時間の問題だ。
破壊したと同時にデスワームによる突進で攻撃しようと画策している。
「許されないわ…
私よりも人間が優れているなんて…
絶対に認めない…」
次元の結界に亀裂が走る。
それを感じ取った賢者が危険を知らせた。
「クリス!
結界からデスワームが出てくるぞ」
クリスの魔力量も残り僅かだ。
想像以上にユーリを使い魔にするのに魔力を消費した。
覇王の一撃は一度しか使えない…
そしてデスワームが結界を破壊しクリスの方へ向かってきた。
クリスは残っている魔力を込めて最後の一撃を放つ。
しかし、デスワームにダメージは与えたが硬い外郭によって、死に至るほどのダメージにはならなかった。
魔力を使い果たしたクリスは、
元の姿へ戻ってしまう…
クリスは、ここに来て限界を迎えてしまう事に落胆を隠せない。
そして、絶対絶命な状況だが、
諦めていない人物がもう一人いた。
それはユーリだ。
以前にクレアを助けたのと同じように、
クリスの手を握り魔力を送る。
「ユーリ…」
「私も、クリスの力になる…
だって、わたし…
クリスの使い魔だもん…」
恥ずかしながら言うユーリに、
一瞬見惚れてしまう。
そしてユーリから温かな魔力が送られて、
クリスの魔力は回復した。
そして姿を変えて覇王を発動する。
大樹を前に再度覇王の光が溢れていく。
「な、なに!また覇王を発動しただと…」
そしてクリスとユーリは手を繋ぎ、
お互いの心を一つにしていく。
「ユーリ、いくよ!」
「うん…」
二人の重なり合う魔力が、今までよりも更に強い覇王の輝きを生み出す。
その輝き溢れる覇王の一撃が炸裂し、
爆発の煙が里を覆っていく。
煙が消えるとデスワームの亡骸が見えた。
その胴体は真っ二つになっている。
「デ、デスワームを一撃で仕留めただと…」
魔界の戦争で常に最高戦力として投入してきたデスワームが一撃で仕留められた。
エレノアは、唖然と立ち尽くしている。
気づいたら全ての使い魔を倒され、
奴隷のサリーも気絶している。
このままでは魔界に戻っても、
勢力争いで殺されてしまう。
それであれば人間達を殺して自分も死ぬ。
エレノアは、最後の悪あがきとして自爆を考えた。
「もう仕方がない…
お前ら全員道連れだ…」
エレノアは血を吐きながら爆発魔法を唱えると、足元に大きな魔法陣が生まれる。
「まずい…
このままでは全滅だ…」
賢者は即座にエレノアの魔法を把握した。
これを防ぐにはエレノアを上空まで飛ばすしかない…
「賢者、ユーリ!
俺に魔力を貸してくれ」
クリスに考えがあった…
思いついた作戦は無茶なものだが、
これしか手がない。
「時間がない、頼む…」
そして賢者とユーリは、ありったけの魔力をクリスへ送り、クリスの魔力は最大まで回復した。
「何をする気だ…
クリス…」
「ちょっと、空の旅だよ…」
そしてクリスは駆け抜ける。
自爆魔法発動直前のエレノアに触れる。
「クリス、待て!
そんなことをしたら、お前が…」
「クリス!!」
賢者とユーリは、突然のことで驚いている。
二人ともクリスを止めたいのだが、
その前にクリスは、行動に移してしまう。
「必ず、帰ってくる…」
クリスは最大まで身体強化を自分にかける。
そしてエレノアを抱えて木を足場に大樹へと移動した。
「クリス!」
泣き声にも近いユーリの声が聞こえてくる。
クリスが死んでしまうかもしれない。
そう思うと胸が苦しいほどに締め付けられる。
「き、貴様…
何をする気だ…」
エレノアを無視して覇王を全力で使用する。
そして、ユグドラシルの枝を足場に大樹を登る。
しかし、制限時間は刻々と迫ってくる。
「馬鹿め…
後、五分もしないうちに爆発する。
この距離なら間違いなく全員死ぬ」
時限爆弾のタイムリミットが迫る。
このまま爆発してしまうかと思われた。
何か無いのか…
もっと速く、1秒でも速く…
誰よりも速く駆け上がる。
そんな方法は無いのか…
そしてその時…
クリスの頭の中でクレアを思い出す。
「母上…」
誰よりも速く、誰よりも強い、
宮廷魔術師クレア・レガード。
その固有スキルがある…
「やっぱり母上は、最強だよ…」
そしてクリスは、神速スキルを使用して、
先ほどより更に速いスピードで大樹を駆け上がる。
残り十秒…
ついに大樹の天辺まで辿り着く。
強化格闘術で大樹を蹴り、身体の向きを空の方向へ変える。
そしてエレノアと共に空へ飛び立った。
「くそ…
だが、貴様だけでも道連れだ…」
エレノアのその一言に、
クリスは笑みを浮かべている…
制限時間を迎え、エレノアは大爆発を起こす。
そして上空には黒色の煙が溢れていき、
クリスの姿も見えなくなる。
「クリス!」
ユーリは膝から崩れ落ちた…
愛する人を目の前で失ってしまった。
「馬鹿野郎……」
賢者もクリスへ文句を言う。
絶対に生きていて欲しかった。
気づけば賢者の中でも可愛い弟子になっていた。
二人とも唖然と立ち尽くす…
希望の光を失ってしまった。
そして、上空の煙が少しずつ消えていく…
螺旋の炎がクリスを囲む。
イフリートの炎はいかなる炎も無効化する。
爆発も例外では無い…
エレノアの大爆発は、炎魔法をベースにしたものだった。
「ざまぁみろ、エレノア」
クリスは、エレノアの自爆から全ての者を救ってみせた。
しかし、最後に詰めが甘かった。
魔力を使い切ったクリスは、元の身体へと戻っていく。
「やべ、着地のこと考えてなかった…」
ここは上空800メートルくらいだ。
このまま落下したら確実に死亡してしまう。
「空の旅は良かったけど、
落下事故とか洒落にならない…」
急降下していくクリス…
このままでは確実に死んでしまう…
クリスは何か方法がないか考えるが、
何も思いつかない…
しかしその時クリスに近づく人物が現れる…
「は、母上!」
「馬鹿者!
なんでこの高さから落ちているんだ!」
クレアは、咄嗟にクリスを抱き抱える。
足場の剣を何重にも重ねて衝撃を吸収した。
「た、助かりました…」
「心配したんだぞ!!」
本気で怒られた…
それだけ心配されていると言うことか…
何とか無事に降りられそうだ。
エレノアと空の心中にならなくて良かった。
「あ、あの…
母上、そろそろ…
お姫様抱っこはやめて欲しいのですが…」
「何を言ってるんだ、クリス…
罰として下まで、ずっとこのままだ!」
う、嘘でしょ…
思いきり格好つけて飛び出して行ったのに、
母親にお姫様抱っこをされながら帰るとか、
死ぬほど恥ずかしいんですけど…
クレアの瞳は優しさに満ち溢れている。
最愛のユーリを救い、更に憎きエレノアまで倒してみせた。
更に死ぬはずだった自分までも救ったのだ。
心からクリスに感謝しても仕切れない。
「クリス……
本当に、ありがとう…」
「え?」
クレアは、十年後の未来から来た息子に、
こんなに心を揺さぶられるとは思いもしない
ゲイルに話したら、どれだけ驚くだろう。
いっそのこと連れて帰ってしまおうか。
そんな風に思いながらクリスを愛おしく見つめている。
「ほら、みんながお前を見ているぞ…」
「え!母上、すぐに降ろしてください…」
「駄目だ!」
クレアは喜びに満ちた笑顔を浮かべる。
この後の展開に心躍らせているだけではない
最愛の息子とユーリを連れて帰れるのだから。
「おーい!クリス~
あねご~~」
ユーリが元気よく手を振っている。
その瞳は涙で溢れている。
そして手を振りながらこちらへ走ってきた。
「ふふふ、ユーリのやつ、
はしゃぎ過ぎて転びそうだな」
「母上、俺…
この時代に来れて良かった…
母上やみんなと出逢えて…
なんだか、夢みたいです…」
「クリス…」
俺は今までの事を思い出していた。
まさか死んだはずの母親と冒険するなんて…
しかも大切と思える女の子も出来た。
そして、尊敬するカートさんも一緒だ。
こんなにも楽しい日々が訪れるなんて夢のようだった…
「クリス…
不思議なこともあるものだな…
だが、これは夢ではないぞ…」
「え?」
「だって、私自身がお前に出逢えて、
こんなにも幸せなんだ…
夢であってたまるものか…」
クレアのその言葉がクリスの胸に響く。
自分が生まれた事を認められたと思ってしまう。
気づけば瞳には大粒の涙で溢れている。
「母上…ずるいですよ…」
泣きじゃくるクリスに、
クレアは一言告げる…
「当たり前だろう…
私は、最強の宮廷魔術師、
クレア・レガードなんだからな…」
「あはは…
母上には、やっぱり敵わないや…」
みんなを救うことができて明日も明後日も、
何十年先もみんなと笑顔で笑い合うことが出来る…
きっと過去に戻ってきたのは、この幸せな日々を守るためだったのかもしれない。
これから先の未来が待ち遠しくて仕方ない。
なぜなら、愛する者たちに囲まれているのだから…
0
お気に入りに追加
1,266
あなたにおすすめの小説
最強九尾は異世界を満喫する。
ラキレスト
ファンタジー
光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。
その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。
だけど、スカウトされたその理由は……。
「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」
……そんな相性とか占いかよ!!
結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。
※別名義でカクヨム様にも投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる