休憩スキルで異世界無双！チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

第30話 師弟

早朝のルミナス、俺達は秘密裏に出発する。
目的を察知され尾行されてはいけないからだ
アリスやベル、リーナには父上から適当に事情を伝えてもらうことになっている…


「おはようございます！
　フィリアさん」


「クリス君、よろしくね！
　まさか婚約して直ぐに任務、
　大変だね～」


「まあ、そうですね…」


フィリアが気を遣うのも無理はない。
婚約発表がされた食事会にもフィリアは参加していた。
その場に居合わせたため二人の幸せな光景を思い浮かべてしまう。


「あの、これから馬車で向かうんですよね？
　もちろん俺たちだけですか？」


「そうね、極秘任務だからね…
　基本は道中は二人になるわ」


俺はリーナ以外の年上の女性の接したこともないため、ちゃんと接する事ができるか不安がある。



家族やマリア様以外では初めてなんだよな。
母上の弟子だし、失礼のないようにしないと……


二人で歩いていると門番の兵士と横付けされた馬車が見えてくる。
馬もしっかりと調教されていそうだ。


「見張り、ご苦労様！」


「フィリア様、クリス様、
　お気をつけください」


見張りの騎士団の兵士が声をかけてくる。
きっと俺たちが旅立つことだけは伝えられていたのだろう。
そして俺たちは門番以外には接触せずに、
ルミナスを出る。


馬車に乗りフィリアが操縦し始める。
道は舗装されているが森の中を通過する。
ルミナスの門を出ているためモンスターは少なからずも出てしまう。
だが道中にモンスターが現れても道を塞いで通れない限りは無視して先を急ぐ。
3ヶ月と言う期間は言われているが、
想像以上に二人では過酷な旅なのだ。


「食糧とかはどうするんですか？
　現地調達ですか？」


「所々でね
　次の街では買い込むつもり」


「お金出てるんですよね？」


フィリアは馬車を操縦しながら一瞬躊躇う。


「そ、それは安心して！　
　ちゃんと貰ってるわよ」


なんか返事をするまでスムーズじゃなかったけど大丈夫か？
お金のことで悩むなんて嫌だぞ。


「あの、ところでフィリアさんのスキルは、
　何ですか？」


「へ？スキル？」


フィリアは宮廷魔術師だ。
ルミナスの中でも上位の存在である。
所有しているスキルは凄く気になる。


「まあこれから一緒に旅するわけだし、
　説明しても良いか…
　私の二つのスキル」


「ダブルスキルなんですね！」


スキル二つ持ちはダブルと呼ばれ貴重な存在であることに変わりはない。
アリスやシャルロットがその例だ。


「一つ目は水魔法Lv.4」


出会ったことはなかったけど、
水魔法の才能がある人もいるのか。
レベルが上がると、どんな魔法になるのだろう。


「後もう一つは、強化格闘術Lv.5」


「え？」


クリスは一瞬聞き間違えたかと思った。
強化格闘術？
宮廷魔術師が格闘？


「魔法使いが近接戦？って思うわよね」


「正直、思います」


イメージが全く湧かない。
どうやって戦うんだ？


走る馬車の前方にオーク2体が見える。
先程は止まらず無視していた敵だが、
フィリアは馬車を止めてオークへと向かう。


拳と足に水の魔法を張り巡らせる。
そしてその可憐な身体からは想像もつかないほどのスピードでオークへ接近する。
そして繰り出された拳で一撃でオークを粉砕し、更に次の蹴りで二匹目を撃破した。


「こんなもんね…」


「………」


俺は言葉を失った。
とても魔術師による体術ではない。
正にベテランの格闘家の技術だ。
そして威力が異常なほどに高いのは何故だ。



「異常な威力の正体は、
　水魔法を使った身体強化…
　全ての属性は身体強化出来るのよ
　ちなみにセシルも使っていたはずよ」


「セシルもですか！」


魔法を使った身体強化があると聞き衝撃を受ける。
たしかにセシルの異常な強さの一つと言われると納得する。


「身体の周りに属性魔法集めて留めるのよ。
　制御が難しいけど、慣れると直ぐできる。
　レベルが上がれば身体強化の力も上がる」


早速やってみるが上手く制御出来ずに消えてしまう…
俺には制御の才能がないのか？
全く出来る気がしない。


「そういえばクレア様が私に、
　教えてくれたのも実践だったかな？
　その方が掴みやすいかも」


独り言を呟くとフィリアは眼鏡を外す。
その瞬間、フィリアの空気が変わる…
目つきがまるで別人になり鋭くなっている。



「手加減はしてあげるわ！
　殺すつもりでかかってきなさい」



「え？いきなり何を」


高速移動から蹴りが俺に向かってくる。
予想を遥かに上回るスピードに対処できずに、そのまま喰らってしまう。


「っく…」


「ほら、クリス君の持つ覇王を使わないと、
　死ぬわよ」



ルミナスの中でもセシルは別格だった。
しかし、過去最強と謳われたクレア・レガードの弟子が目の前にいるフィリアなのだ。
ルミナスの中でもその実力は5本の指に入る。


「ほらほら、次もいくわよ！」


連続での蹴りと手刀での攻撃。
コンビネーションに対して、
俺は獣王剣で姿を変えて対処する。


「ふふふ、ようやく面白くなってきたわね」


やばい、本気でやらないと殺される。
母上の弟子……

フィリアの周りのオーラが濃くなり、
水魔法を身体強化へと変化していく。


「クリス君も同じように真似て、
　火魔法を身体に張り巡らせるのよ…」


「さっきからやってますけど…」
　

フィリアの連続攻撃を回避しつつ、
距離を開けて様子を見ようと離れる。


「魔術師に対して距離を開けるのは、
　愚策よ…」


フィリアの周囲に水の波動が溢れていく。
水魔法レベル2、バブルショット。
クリスへ水の弾丸が向かっていくが、
その硬度はかなり強化されている。
宮廷魔術師だけはある洗練された腕だ。
当たったら致命傷になりそうな威力。


俺は咄嗟に避けるが、
避けた方向の木を見ると抉り取られている。


「う、嘘でしょ…」


「一応宮廷魔術師だからね…」


レベル2でこの威力の魔法を中距離から連打できる事に恐怖する。
近づけば強化格闘術だ。


「フィリアさん、めちゃくちゃ強いですね」


焦りながらも身体強化に集中する。
だが、一長一短にできる筈もなく上手く制御出来ない。


「クリス君、良かった…
　まだまだ先生として君に教えられることは
　ありそうね…」


二人での修行は過熱していくが、
その二人の訓練に水を差すかのように、
3体のオークが現れる…


「っち…」


フィリアが舌打ちをしながら、
バブルショットで瞬殺していく。
3体のオークは無惨にも息絶える。


「オークをゴブリンのように、
　瞬殺するなんて……」


流石はクレアの弟子と言ったところだ。
だが、オークはこの地域で殆ど生息しない。
それはこの森の中でも異常な状況なのだ。


「せっかく面白くなってきたのに…
　ここで、このオークの量はヤバいかも」


「え？」


クリスは外の事情をあまりよく知らない。
なにせ生まれて初めてルミナスを出たのだ。



「ルミナスを出たとはいえ、
　まだ距離も離れているわけでもない。
　この量のオークが近づく事は殆どないの」


「と言う事は、近くで何かが起きている？」


「そう考えるのが筋ね…
　わたしたちが向かう筈だった街、
　ダカールに行きましょう」


ルミナス近郊の森に増え始めたオーク達。
近隣の街であるダカールに向かう。
ルミナスの外で一体何が起きているのか。
クリスはダカールに住む人の安否を祈り、
フィリアと共に向かうのだった……