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第14話 白狼族ベル

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白狼族の特徴としては銀色の耳に白い髪だ。
顔は人族に近い印象だが人族よりも美しく育つ傾向がある。
そのため容姿に長けた種族を奴隷にしようと狙う者がいる。
特にエルフ、白狼族は狙われやすい種族だ。
法律上は認められないが無理矢理に拘束して奴隷にする違法奴隷がルミナスにも蔓延っている。


ウエイトレスが紅茶を俺達の前に置いた。
喫茶店スカーレットは小さい頃から家族と一緒に利用している馴染みの店だ。


「まずは自己紹介からしよう…
 俺はクリス・レガード、
 隣にいるのは使用人のリーナだ」


「先程はありがとうございました…
 私は白狼族のベルと申します。
 あの、こんな見た目ですが、
 年齢は今年で12歳になりました」
 

ベルは元々華奢で容姿も幼く見える。
背丈からも8歳くらいに感じていた。
茶色の目は大きくクリクリとしている。
まつ毛と眉毛、犬の耳は銀色。
そして髪は白く、艶々している。
まさに白狼族の美少女といったところだ。


「俺と同い年か…
 すると儀式でスキルを得たのか?」


「はい、私もスキルを得ました
 それが少し変わったスキルだったのです」


「聞いても大丈夫かな?」


「はい…
 私のスキルは、獣王剣です」


俺もリーナもその名前に驚愕している。
剣技スキルについて剣聖の家系であるため、詳しいが王が名前の中に入るスキルは初めて聞いた。


「じゅ、獣王って、凄いスキルだな…」


「そうなのです…
 でも、何故かスキルが発動しないのです…
 里の皆んなからお前が未熟だからだって」


「そうか、それで王立図書館で、
 発動の手がかりを探していたのか…」


王立図書館には魔法資料、学園資料、
スキル資料と貴重資料の宝庫だ。
しかしまだ獣人差別が蔓延る中、
王立図書館はリスクがあった。


「私も、わかってはいました
 でも、近日内に私の里が襲われるって…
 お前は半端者だからスキルが使えるまで、
 帰ってくるなって」


「それで追い出されて、
 仕方なく図書館にってわけね」


俺はベルの話を聞き放っておけなくなり、
出来ることなら力になりたいと思った。


「あの、どうか資料を一緒に
 探して頂けないでしょうか?」


するとベルは深々と頭を下げる。



「いいよ、探しに行くよ
 その代わりここで待っててよ」


「わ、分かりました…
 ここで静かに待ってます」



獣人差別による人間の欲望は凄まじい。
そのため今も静かに暮らす白狼族やエルフ族を狙う輩が多い。
そんな事は王国騎士団に勤める父上からも聞いていた。
父上は、その犯罪組織を壊滅すべく日夜勤務している。
将来は自分も騎士団にと考えていた時期もあった。



「乗りかかった船だ…
 資料を見つけるまでは手伝うよ」


「ほ、本当にありがとうございます!
 この御恩は一生忘れません」



そして俺達はベルと一時的に別れ、
王立図書館に戻ったのである。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「魔法の本どころでは、
 なくなってしまいましたね」


「まあ、あんなに切羽詰まった顔をされると
 放っておけなくなるからな」


俺の言葉を聞き、リーナは微笑む。


「クリス様はお優しいですから」


「さてっと、
 今度こそ受付の女性に聞こう!」



そして受付に資料の場所を教えて貰い、
かなりの時間を使って探した結果、
獣王剣の資料を見つけ出した。
しかし既に日も暮れようとしていた。


そして俺たちは喫茶店スカーレットへ戻るが、周りを見渡してもベルの姿がない。


「親父さん、ここに居た白狼族の女の子、
 知りませんか?」


「あ~あのちっこい子かい?」


「そうそう、多分その子!」


「他の客がね、白狼族の里が襲われたという
 噂を言っててな…
 血相変えて出てったぞ」


さっき襲撃があっただと……
くそ、一足遅かったのか。


「親父さん、
 出ていったのはどれくらい前?」


「そ、そんなに時間は経ってないぞ…」


「ありがとう!
 リーナ、今すぐに父上に連絡しに行って!
 俺はベルの里に向かう」


急に俺が里に行くと言うと、
リーナは当然反対する。


「クリス様、一人では危険です!」


「いや、攻撃手段を持つ俺が行くべきだろう
 リーナ、頼む!」


ここは、譲るわけにはいかない。
リーナも俺が頑固な時は、
止められないのを知っている。


「わ、分かりました。
 すぐにでも増援に向かいますので、
 絶対に危険な真似はしないでください…」


「必ず帰ってくる!
 じゃあ、後でね」


そう言い残し俺は喫茶店を後にした。



白狼族の里は、王都を出て東にあると聞く。
出会って間もない女の子を死なせる訳にはいかない。
俺は必ず救ってみせると心に誓い、
全速力で走り出した……
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