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第101話 陰謀

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俺達を教皇の元へ送り届けた人物がいたが、
その職員の女性こそ魔族だった。

ジルと呼ばれた悪魔族を前に、
俺は姿を変えて聖剣を握りしめる。
そして、他の人質がどうなったのか問い詰めた。


「研究所の人達は、どうした?
 この施設で働く人は、まだいるはずだ!」


俺の言葉を聞くと、女性は真実の姿へ変わり、
女悪魔は、嘲笑うように言葉を発する。


「みんな私達の糧となったわ……
 光となって消えたけどね」


不敵に笑みを浮かべながら、
捕まっていた人達の末路を話した。


「平気で人を殺すお前達を、俺は許さない……」


聖剣に魔力を集めて、敵に向けて構える。
すると圧倒的な魔力が室内に広がるが、
女悪魔は、微動だにせず笑みを崩さない。


「人質達がどうなっても良いの?」


その言葉を発すると同時に、
研究者達が、俺の前に立ちはだかる。


「お前、この人達に何をした!」


「ふふふ、隷属の首輪よ……
 何もかも私の言いなりになるの」


研究者を操り、施設の機械で命を奪った。
その人達の悲しみを思うと胸が締め付けられる。


「許さない……
 その人達にも大切な人が……
 愛する人が居たはずなのに……」


俺は怒りに震えていると、
聖剣技からマリアの感情が流れてきた。

魔族に命を狙われて苦しんできた分、
操られた人の悲しみに胸を痛めているのだろう。


「マリア……
 俺に力を貸してくれ!!」


聖剣技からマリアの魔力が流れてきて、
俺は、その力を身体強化として施した。



「き、貴様、その魔力は……
 ありえない……」



聖剣技の圧倒的な魔力を体感して、
女悪魔は、驚きに目を見開いている。


俺は全速力で駆け抜けると、
相手は、その姿を目で追うことが出来ず、
あっという間に距離を縮めた。


「これで終わりだ……」


聖剣を振り下ろすと、その光に飲み込まれて、
女悪魔は光の粒子となり消えていく。


「ば、馬鹿な……
 力を得たはずなのに、一瞬で……」



その言葉を残して、
女悪魔は、この世から消えた。


そして研究者の拘束具を外していると、
この場所に賢者とマリアが到着する。


「隷属の首輪か……」


賢者は隷属の首輪を見て、
見覚えがあったのか口を開いた。


「本来なら使用者が死ぬと、対象者も死ぬ……
 だが……」


しかし、なぜか研究者は生きている。
それを賢者は疑問に思ったのか、調べ始めた。


「不完全な魔導具……
 それと魔力を送る機械……」


賢者は、手に入れた隷属の首輪を見て、
なぜ不完全な代物があるのか理由を考える。


「でも、作戦は成功しましたね」


「あぁ、シャルロットが派手に爆破してくれて、
 侵入しやすかったぞ……」


俺達のいる地点から距離の離れた場所で、
シャルロットは火魔法を唱え続けた。
その混乱に乗じて賢者達は侵入したのだ。


「ラグナの言っていた魔導具も回収した。
 後は施設を回り、敵を殲滅しよう!」


そして賢者の指示に従って、
俺達は魔導具研究所に潜む魔族達を一掃した。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




無事に魔族から研究者達を救い、
女神教の本部に戻っている。
四天王を相手にしてきた俺達にとって、
この程度の敵は、相手にならなかった。

しかし、賢者は研究所で見た光景について、
教皇に詰め寄っている。


「ラグナ!
 まさか隷属の首輪の存在を知っていたのか?」


「……知るわけないだろう。
 もし、そうだとしても秘密にする理由もない」


教皇は、否定こそしたが何かを隠している。
それは間違いないように感じていた。
しかし、その理由が全く分からないため、
賢者もこれ以上追求出来ない。


「魔導具研究所の件は、大変な苦労をかけたが、
 ルミナスの戦士達には最大限感謝したい……
 だが其方達を呼んだのは、もう一つ理由がある」


平然としつつ、教皇は俺達の功績を讃える。
しかし、まだ納得できない点は多いが、
それよりも重要な問題があると教皇は口を開いた。





「勇者がテティスに侵入した……
 先程、報告を受けたのだ……」





教皇が衝撃的な事実を告げる。
世界の敵である勇者の侵入。
そして、それは聖剣の契約者の二人を脅かす存在だ。


「な、何だと……」


賢者もその事実に戸惑いを隠せず、
教皇に詳しい情報を話すよう訴える。


「奴の狙いは、やはり聖剣だな?」


その賢者の問いに教皇は無言で頷くと、
聖剣の儀式について言及した。


「聖剣の儀式の日程は変えられない……
 スキルを得られる日が決まっているからだ」 


「そうなると三日後か……」


間違いなく勇者は、三日後の儀式を襲うと予測し、
賢者がこの状況を打破する作戦を考えた。


「おい、ラグナ……
 今すぐに水の神殿の儀式の間を貸せ!」


「は?」



賢者の予想外の閃きに全員が驚く。
一体何を行うのか全く分からないでいた。


「まあ、ちょっとした訓練みたいなものさ!
 残りの期間で聖剣技のレベルを上げる」


聖剣技を強化するために、
あらかじめ水の神殿に入ってしまう。
賢者の奇抜な作戦に、全員が度肝を抜かれていた。


「そんなことをして危険じゃないの?」


襲撃が想定される場所で訓練するのは危険だと、
シャルロットは意見を述べるが、
賢者の考えでは、それも想定済みのようだ。



「勇者の力であれば、どこに隠れても同じだ……
 それなら儀式までの期間で、
 徹底的に聖剣技を強化した方が良い!」



そして賢者の作戦に対して、教皇も許可を出した。
残り三日間、儀式の間を借りて、
勇者襲撃に備えて聖剣技を強化する。
しかし俺達は、隠された陰謀に気付いていない。
その陰謀は、想像を遥かに超える恐ろしいものだったのだ……
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