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第87話 封印
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シンの魔剣によって一瞬の隙を突かれ、
バルガスを城へ送られてしまった。
そしてクレアは賢者の手当で戦いに参加できない。
ユーリとアリスは引き続きシンを狙う。
身体強化を施したアリスが、高速で攻撃して、
更にユーリも氷魔法で追撃する。
戦況は圧倒的に有利なように見えた。
しかし一瞬だけ氷魔法の発動が遅れた隙に、
シンは、転移魔法を発動する。
「今日のところは僕の負けだが、
きっとバルガスが王女を喰うよ」
その言葉を言い終えた途端、
シンは旧魔法学園から忽然と姿を消した。
ユーリはこの時点で、シンを倒せなかったことを激しく後悔する。
「く、クレア……」
「し、師匠……」
クレアは、賢者の手を握り締めて涙が溢れる。
深い傷に対して、必死に応急処置を行うが、
一刻も早く傷口を塞がなければならない。
「あの……」
その時、アリスが口を開いたのだ。
そしてこの場にいた全員がアリスの言葉に耳を傾ける……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルミナス城、訓練場で戦闘は継続する。
剣聖セシルを倒したと思いきや、
休む暇もなく四天王バルガスが現れた。
「覇王か、これは運が良い……」
覇王は、魔王軍にとって脅威的なスキルだと認知されている。
だからこそバルガスは何としても覇王を獲得して、
四天王の勢力争いに勝利したかった。
「クリス、何か様子がおかしい……」
シャルロットが指摘したのは、奇妙な痙攣だった。
この症状の答えをひたすら考えた結果、
いつも顔を合わせる人物を思い出した。
「アリスの雷魔法か!」
バルガスの痙攣から思い当たるスキルを考えると、
雷魔法の麻痺が解けていないと推測した。
少なくとも動きが鈍っているのであれば、
今すぐに攻撃を仕掛けるのが最善だと判断した。
クリスは即座に身体強化を施して走り始める。
その様子を見たバルガスは、スキルを出せず苛立ちを見せた。
「クソ!こんな時に限って……」
硬質化を使い攻撃を何とか凌いでいる。
戦況としては、クリスが押していると言えた。
「時間がない、早くしなければ……
何かが起きる予感がする……」
そしてこの瞬間、【何者か分からない誰か】から明確な呼びかけがあった。
「ここで魔力を送らないと、必ず後悔する?」
そう呼びかけられたクリスは過去、素直に従って、
命を救われた経験があったのを思い出す。
そして今回もその言葉を信じてみることにした。
クリスは神速でバルガスの背後に回り魔力を送る。
「な、何だと?」
予想外の行動にバルガスは判断が遅れて、
追撃をしようにも出来なかった。
クリスは麻痺が解けた後の危機を察知して、
全力で攻撃するが、その最中で信じられない光景を見る。
「う、嘘だろ……」
するとセシルが倒れていたはずが、
ゆっくりと立ち上がったのだ。
「起きたか、セシルよ」
セシルが瀕死の重体から回復する。
まさにルミナスの最強と謳われただけに、
そう簡単には死なない。
笑みを浮かべながら、セシルはクリスを見つめる。
再度セシルも戦闘に参加するのかと思ったが、
バルガスが予想外の言葉を口にした。
「セシルよ、退け!
麻痺が解けたら、あのスキルを使う……」
セシルはその言葉に驚き目を見開くが、
すぐに寂しげな表情に変わる。
「クリス、貴方との戦い素敵だったわ……
残念だけど、ここでお別れよ。
まだ正体を明かせないの……」
セシルはそのように口にすると、
吹き抜けの訓練施設の壁や建物を足場に脱出した。
「さて、ついに麻痺が解けたぞ……」
バルガスが怪しく笑みを浮かべる。
そして背中に固定する、クローを腕に装備した。
鋭く長い爪は一度突き刺さると、
致命傷になりそうな予感がしてしまう。
「無力な自分を悔やんで死ね」
「封印魔法でな」
バルガスが魔法の名を言葉にすると、
その場にいる全員は、効果を確認する。
「な、何だ?」
シャルロットは何が起きたのか分からなかったが、
クリスを見ると、スキルの正体を認識した。
「く、クリス……
お前……」
封印魔法を使うと、魔法やスキルが使えなくなる。
術者も対象となり、バルガスも使えない。
そして封印された影響でクリスは、
子供の姿に戻り、聖剣も輝きを失ってしまった。
「な、なんだと……」
クリスはここに来て全ての力を封印されるとは思わなかった。
何しろスキルを封印されてしまうと、
普通の12歳の少年に他ならない。
「ふはははは!
覇王の正体が、まさかガキとはな」
バルガスは勝利を確信して、
憎たらしい笑い声をあげる。
ついにクリスの力を奪えると踏んだバルガスは、
全速力で走り始めた。
「さぁ、覇王の力は頂いた!」
身体強化を使っていないため、
決してバルガスの移動速度は速くない。
しかし子供の身体能力もたかが知れている。
「く、クリス、逃げて!」
シャルロットが大声で張り叫ぶ。
スキルが使えない状態でバルガスに捕まれば、
即座に殺されてしまう。
そして今まさに人生最大の危機とも言える状況で、
この場に新たな人物が現れる。
「お、お前は……」
クリスはその人物を知っている。
十年間クリスを想い続けたユーリのように、
人間界でも同じ歳月をかけて、
バルガスを憎しみ続けた人物。
「サリー」
バルガスが城に現れると踏んでいたサリー。
愛する家族をバルガスに喰われ、
守れなかった日を悔やみ続けきた。
そして亡くなった家族のために、
復讐を果たすと心に誓っていた。
その研ぎ澄まされた牙が、バルガスを襲う。
バルガスを城へ送られてしまった。
そしてクレアは賢者の手当で戦いに参加できない。
ユーリとアリスは引き続きシンを狙う。
身体強化を施したアリスが、高速で攻撃して、
更にユーリも氷魔法で追撃する。
戦況は圧倒的に有利なように見えた。
しかし一瞬だけ氷魔法の発動が遅れた隙に、
シンは、転移魔法を発動する。
「今日のところは僕の負けだが、
きっとバルガスが王女を喰うよ」
その言葉を言い終えた途端、
シンは旧魔法学園から忽然と姿を消した。
ユーリはこの時点で、シンを倒せなかったことを激しく後悔する。
「く、クレア……」
「し、師匠……」
クレアは、賢者の手を握り締めて涙が溢れる。
深い傷に対して、必死に応急処置を行うが、
一刻も早く傷口を塞がなければならない。
「あの……」
その時、アリスが口を開いたのだ。
そしてこの場にいた全員がアリスの言葉に耳を傾ける……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルミナス城、訓練場で戦闘は継続する。
剣聖セシルを倒したと思いきや、
休む暇もなく四天王バルガスが現れた。
「覇王か、これは運が良い……」
覇王は、魔王軍にとって脅威的なスキルだと認知されている。
だからこそバルガスは何としても覇王を獲得して、
四天王の勢力争いに勝利したかった。
「クリス、何か様子がおかしい……」
シャルロットが指摘したのは、奇妙な痙攣だった。
この症状の答えをひたすら考えた結果、
いつも顔を合わせる人物を思い出した。
「アリスの雷魔法か!」
バルガスの痙攣から思い当たるスキルを考えると、
雷魔法の麻痺が解けていないと推測した。
少なくとも動きが鈍っているのであれば、
今すぐに攻撃を仕掛けるのが最善だと判断した。
クリスは即座に身体強化を施して走り始める。
その様子を見たバルガスは、スキルを出せず苛立ちを見せた。
「クソ!こんな時に限って……」
硬質化を使い攻撃を何とか凌いでいる。
戦況としては、クリスが押していると言えた。
「時間がない、早くしなければ……
何かが起きる予感がする……」
そしてこの瞬間、【何者か分からない誰か】から明確な呼びかけがあった。
「ここで魔力を送らないと、必ず後悔する?」
そう呼びかけられたクリスは過去、素直に従って、
命を救われた経験があったのを思い出す。
そして今回もその言葉を信じてみることにした。
クリスは神速でバルガスの背後に回り魔力を送る。
「な、何だと?」
予想外の行動にバルガスは判断が遅れて、
追撃をしようにも出来なかった。
クリスは麻痺が解けた後の危機を察知して、
全力で攻撃するが、その最中で信じられない光景を見る。
「う、嘘だろ……」
するとセシルが倒れていたはずが、
ゆっくりと立ち上がったのだ。
「起きたか、セシルよ」
セシルが瀕死の重体から回復する。
まさにルミナスの最強と謳われただけに、
そう簡単には死なない。
笑みを浮かべながら、セシルはクリスを見つめる。
再度セシルも戦闘に参加するのかと思ったが、
バルガスが予想外の言葉を口にした。
「セシルよ、退け!
麻痺が解けたら、あのスキルを使う……」
セシルはその言葉に驚き目を見開くが、
すぐに寂しげな表情に変わる。
「クリス、貴方との戦い素敵だったわ……
残念だけど、ここでお別れよ。
まだ正体を明かせないの……」
セシルはそのように口にすると、
吹き抜けの訓練施設の壁や建物を足場に脱出した。
「さて、ついに麻痺が解けたぞ……」
バルガスが怪しく笑みを浮かべる。
そして背中に固定する、クローを腕に装備した。
鋭く長い爪は一度突き刺さると、
致命傷になりそうな予感がしてしまう。
「無力な自分を悔やんで死ね」
「封印魔法でな」
バルガスが魔法の名を言葉にすると、
その場にいる全員は、効果を確認する。
「な、何だ?」
シャルロットは何が起きたのか分からなかったが、
クリスを見ると、スキルの正体を認識した。
「く、クリス……
お前……」
封印魔法を使うと、魔法やスキルが使えなくなる。
術者も対象となり、バルガスも使えない。
そして封印された影響でクリスは、
子供の姿に戻り、聖剣も輝きを失ってしまった。
「な、なんだと……」
クリスはここに来て全ての力を封印されるとは思わなかった。
何しろスキルを封印されてしまうと、
普通の12歳の少年に他ならない。
「ふはははは!
覇王の正体が、まさかガキとはな」
バルガスは勝利を確信して、
憎たらしい笑い声をあげる。
ついにクリスの力を奪えると踏んだバルガスは、
全速力で走り始めた。
「さぁ、覇王の力は頂いた!」
身体強化を使っていないため、
決してバルガスの移動速度は速くない。
しかし子供の身体能力もたかが知れている。
「く、クリス、逃げて!」
シャルロットが大声で張り叫ぶ。
スキルが使えない状態でバルガスに捕まれば、
即座に殺されてしまう。
そして今まさに人生最大の危機とも言える状況で、
この場に新たな人物が現れる。
「お、お前は……」
クリスはその人物を知っている。
十年間クリスを想い続けたユーリのように、
人間界でも同じ歳月をかけて、
バルガスを憎しみ続けた人物。
「サリー」
バルガスが城に現れると踏んでいたサリー。
愛する家族をバルガスに喰われ、
守れなかった日を悔やみ続けきた。
そして亡くなった家族のために、
復讐を果たすと心に誓っていた。
その研ぎ澄まされた牙が、バルガスを襲う。
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