上 下
83 / 125

第83話 虚像

しおりを挟む
クレアの娘であるアリスが突如参入した。
クレアは、アリスに魔力制御の才能があると踏んで訓練を徹底的に繰り返した。
そしてやはりアリスは天才だった。
その修行で魔法剣を独自に編み出したのだ。


「な、何だと」


バルガスは急に身体が重くなり、
更にスキルが使えない症状を体感していた。
重度の麻痺は、速度低下だけでなく、
スキルの使用を制限する。
バルガスにとっての天敵はアリスだった。


「き、貴様!」


バルガスは怒り狂いアリスに向かう。
しかしこの瞬間、アリスは笑みを浮かべた。
訓練の最大の成果は魔法剣ではなく、
クレアによって仕込まれた雷魔法の身体強化だ。
それも足のみ部分的に強化して高速移動を可能にする。


「き、消えただと!」


アリスは、なんと雷魔法の身体強化によりクレアの神速を再現した。
そしてスピードに特化した攻撃を繰り出す。


「雷神剣」


雷の魔法剣を当てて、更に麻痺を上書きすると、
自慢のスキルを封印され、バルガスは苛立った。
そして実際に麻痺の効果を受けて、
バルガスは、雷魔法の価値に気付く。



「なるほど、その力が一番魅力がある、
 そう言うことだな」



シンもバルガスの意図に気付き、
アリスの上空に転移魔法のゲートを呼び出し、
オークを落とし続ける。
数量を限定することで、
クレアとユーリの動きを制限した。


「シンよ、流石だな……
 良い作戦だ」


それを見たバルガスは身体強化を施して、
アリスに向けて突進した。


ユーリは上空のオークを凍らせるのに精一杯だ。
クレアもバルガスとオークのニ方向へ、
光の剣を飛ばしているため狙いが定まらない。



「ふははは、当たらないぞ」



バルガスは硬質化を施して、攻撃を回避しながら、
アリスの目前まで到達してしまった。


「その力、俺のものだ!」



バルガスの魔の手がアリスに迫る……
しかしその瞬間、クレアのよく知る人物が現れた。





「次元結界」





アリスの周りを時空魔法の結界が覆う。
時空魔法もまた使える人物は、唯一人しかいない。



「みんな、待たせたね
 それと……よく時間を稼いでくれたよ」



突如として賢者が現れて、アリスを救う。
そして賢者が到達するまで時間を稼ぐ計画で、
クレア達は、見事に作戦を成功した。



「許さんぞ、ロゼ」



バルガスは、賢者に計画を台無しにされた為、
憤りを感じている。
そしてその時、シンも自らの異常に気付いた。


「な、なんだ……
 転移魔法が使え……ない」


「ふふふ、やっと気づいたね……
 結界を張り巡らせたんだよ」


賢者の結界魔法で転移魔法を封じ込めた。
この場に賢者がいる限り、転移魔法を使えない。


「ありえない……
 俺達は城に侵入する前に結界を破壊した筈だ!」


「ふふふ、幻だったんじゃないかい?」


賢者は、耳に装着する通信機に手を当てて、
作戦の成功を告げる。



「クリス、大成功だ……
 解除して良いぞ……」



突如のことだった……
賢者がその言葉を発した瞬間に、
辺り一面の景色が変わる。



「な、何だ……
 何が起きている……」


まやかしの世界が真実に変わると、
周りの景色は気づけば城ではなく、
旧魔法学園の中央校舎、大広間に変わった。


「こ、これは……」


シンは、幻惑魔法で虚像を見せられていたと、
ようやく気付く。


「分かったようだね……
 お前達が攻めた場所も殺した者も、
 全てはまやかしさ」


融合魔法によってクリスの幻惑魔法と、
賢者の結界魔法を融合した。
融合魔法の結界をルミナス中に張り巡らせたのだ。


「幻惑結界さ……
 元々ルミナスにいる人物には効かないが、
 侵入した者は騙される」


用意していた魔法の筒で大魔法を発動して、
全ての魔族を旧魔法学園に誘導した。



そして賢者は耳に付いた通信機に手を当てて話す。



「気をつけろ!
 そろそろ奴が来る筈だ!
 奴だけには幻惑結界は効いていない」



ここまでの計画は全て成功したが、
間違いなく城でも死闘を迎える。
賢者は愛してやまない弟子の無事を心から祈った。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





城内を走りながら逃げていく。
まだ敵はそれほどに侵入していない。


「はぁ……はぁ」



「マリア様、後少しです……」



キャロルに手を引かれて、マリアは逃げる。
城門で襲撃があった場合、
訓練所を通過して城から避難しなければならない。



そして訓練所に到達すると、
ある人物が目の前に現れる……







「剣聖セシル」






キャロルは信じられないでいた。
何故、目の前にセシルがいるのか。
襲撃があった場合、
セシルへの指示は城の警護ではない。



「見つけたわ、マリア様……」



セシルは笑みを浮かべて、
マリアに声をかける。



「……………」



「マリア様、私と一緒に行きましょう
 ここよりも楽しい世界に……」



キャロルはセシルの様子がおかしい事に気づく。
こんなセシルは見た事が無いと警戒した。



「何を言ってるんだ……
 セシル……」



「そう、ここよりも楽しい……
 死の世界にね……」



そしてゆっくりとルミナスの剣聖は、
マリアへ近づく……






そして、その瞬間……












「インフェルノ」











セシルの足元に大きな魔法陣が生まれ、
強烈な火柱がセシルを包み込む。
間違いなくルミナスの中では最強格の火魔法、
レベル4インフェルノ。






「やっぱりあんただったのね……セシル……」






インフェルノの炎が消えていく中、
暗黒のオーラを身に纏うセシルが呟く。







「あなたは……シャルロット殿下」






マリアの姉であるシャルロット・ルミナス……
ここから間違いなく激しい死闘が繰り広げられる。
しかし、その様子を見ていたマリアは、
笑みを浮かべているのであった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~

霜月雹花
ファンタジー
 17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。 なろうでも掲載しています。

器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜

白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。 光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。 目を開いてみればそこは異世界だった! 魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。 あれ?武器作りって楽しいんじゃない? 武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。 なろうでも掲載中です。

処理中です...