上 下
63 / 125

第63話 黒騎士

しおりを挟む
クリスが、覇王の力を解放して、
誰しもがその力に驚愕している。


「面白い、この波動……
 どれ程のものか試させてもらう!」


黒騎士も暗黒魔法を身体に纏わせて、
魔界最強の剣技を繰り出した。
クリスは、その剣に真っ向から立ち向かう。


「何年振りだろう……
 これ程の強者と巡り会えたのは」


長年巡り会えなかった強者に高揚して、
黒騎士の笑みが溢れる。
そして黒騎士はスキルを発動して、
暗黒魔法を剣に纏わせた。


「一撃で死んでくれるなよ……」


黒騎士のみに許された固有スキル、魔剣技。
己の魔法を剣に付与できる。
魔王から魔剣を託されて、
魔界では手に負えない存在になっていた。
しかし今の黒騎士も圧倒的な強者である事に変わらない。


禍々しい魔力を魔剣に纏わせて放つ。
まさにその見た目から黒騎士の魔剣技は、
暗黒剣とも呼ばれていた。


衝突の瞬間、クリスは神速を使い回避する。
暗黒剣の衝撃が里に広がり、
背後を振り向くと、その破壊力に驚愕した。


そしてクリスの右手に覇王の光が溢れる。


「今度はこちらもいくぞ……」


覇王の一撃を放つが、
黒騎士はワイバーンの亡骸を光へ投げる。
残念ながら有効打にならなかった。


「素晴らしい……
 これ程の力、待ち侘びていたぞ!」


黒騎士は、更に暗黒魔法により身体強化を施す。
そのスピードと筋力は先程よりも跳ね上がった。


「いくぞ……」

 
急加速した黒騎士は目前まで迫るが、
クリスは神速を使い死角に回り込んだ。


「これなら避けられない……」


死角から覇王の一撃を放つと、
吸い込まれるように黒騎士に向かう。
激しい爆発の煙が里に広がるが、
煙の中から声が聞こえてきた。


「ふふふ、はははは……
 俺を恐怖させるとはな!」


黒騎士の姿が見えると、
決定打にならなかったと唇を噛み締める。


「圧倒的な速度と覇王か……
 これは本気を出さなくてはならないな」


声を発すると黒騎士は、暗黒魔法を発動した。
暗黒魔法レベル7、闇の鎧。
その身に暗黒魔法を纏わせて鎧を作り出す。


フィリアは目の前の光景が信じられない。
クリスとは思えない規格外の戦いを繰り広げていた。


「賢者様、これは一体……」


「ふふふ、過去に送ったんだよ……
 私とお前でね……」


「え?」


時空魔法によって過去に送るのは聞いていた。
しかし、まさか本当に過去で力を付けて、
自分達を救う為に戻ってくるとは思わない。
フィリアはその事実に驚愕していた。


しかし戦いは膠着状態に陥っている。
覇王を撃っても闇の鎧により、
ダメージを半減されてしまうからだ。


「まずい……
 持久戦になるとクリスが不利だ!」


クリスは焦っていた……
早くしなければ魔力が尽きてしまう。
恐らく黒騎士相手だと、
休憩スキルを使う隙を与えてくれない。
魔力が枯渇した瞬間、それは死を意味する。



「五百年振りだ……
 ここまで心躍る戦いはな……」



「この戦闘狂め……」



クリスは、膠着状態を打開する術を考えていた。
黒騎士の攻撃を神速スキルで回避して、
最大火力の技で闇の鎧を打ち砕く。
その瞬間に全てを懸けることにした。



「ここだ……」



黒騎士の魔剣技を神速で回避すると、
僅かな隙が生まれる。


「最大火力を喰らえ!」


螺旋の炎がクリスの周りに発生して、
イフリートの炎が闇の鎧に衝突する。
その瞬間、炎の衝撃と共に鎧は消えた。



「これで、終わりだ!」



覇王の光が、黒騎士を弾き飛ばす。
賢者やフィリアも勝利を確信して笑みがこぼれた。



「はぁ……はぁ」



肩で息をしながら必死に呼吸を整える。
魔力を使い果たしたクリスは、
子供の身体に戻ってしまった。



「クリス!
 よくやっ………」



賢者が言い終わる直前で、
瓦礫の下から黒騎士が起き上がる。



「なん、だと……」



ゼロ距離射程からの渾身の一撃だった。
全力を尽くしても勝てない。
それが悔しくて堪らない……



「ふふふ、はははは」


黒騎士の魔力が摩擦するように弾けて、
先程よりも更に強力な身体強化となる。


「運が悪かったな……
 このタイミングで上がったんだよ!
 俺の暗黒魔法のレベルがな!」


新たに手にした力を誇示すると、
その力を暗黒剣として制御する。
そして黒騎士は、剣を構えると同時に走り出す。



「クリス、逃げろ!」



賢者が大声で張り叫ぶが、
黒騎士の移動速度は今までの比ではない。






速すぎる……
休憩スキルが間に合わない……






目の前に黒騎士が迫り、暗黒剣を放つ。






そして、
もうダメかと思った瞬間……






目の前に氷の壁が現れる。







「何だと!」






俺はこの光景が信じられない……






「ま、まさか……
 これは……」








「クリス……
 約束通り、会いにきたよ……」







「ユーリ……なのか……」





目の前には、十年の月日を経て、
更に女性らしく成長したユーリが現れた。
驚く程に美しくなり魅力に溢れている。
だが、その表情からユーリらしさも感じた。





「クリス……
 ユーリだけではないぞ……」





更に頭上に数えきれない程の光の剣が現れる。




この魔法の使い手は、世界で一人しかいない
ルミナス最強の宮廷魔術師クレア・レガードだ。



目の前に現れたクレアとユーリ。
そして頭上に呼び出した無数の光の剣。
クリスを絶対に守ると誓った二人が現れた。
そして黒騎士との戦いの中で、
クリスは更に覇王の力を解放する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いざ離婚!と思ったらそもそも結婚していなかったですって!

ゆるぽ
恋愛
3年間夫婦としての実態が無ければ離婚できる国でようやく離婚できることになったフランシア。離婚手続きのために教会を訪れたところ、婚姻届けが提出されていなかったことを知る。そもそも結婚していなかったことで最低だった夫に復讐できることがわかって…/短めでさくっと読めるざまぁ物を目指してみました。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました

福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。 現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。 「君、どうしたの?」 親切な女性、カルディナに助けてもらう。 カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。 正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。 カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。 『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。 ※のんびり進行です

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう
ファンタジー
 町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。  結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。  そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!  これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

何でも欲しがる妹を持つ姉が3人寄れば文殊の知恵~姉を辞めます。侯爵令嬢3大美女が国を捨て聖女になり、幸せを掴む

青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿39話、40話、71話スピンオフ  王宮でのパーティがあった時のこと、今宵もあちらこちらで婚約破棄宣言が行われているが、同じ日に同じような状況で、何でも欲しがる妹が原因で婚約破棄にあった令嬢が3人いたのである。その3人は国内三大美女と呼ばわれる令嬢だったことから、物語は始まる。

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

最後に、お願いがあります

狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。 彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。

処理中です...