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第60話 討伐

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見張り台から母上は落ちたが、
決死の覚悟でユーリが救うと、
代わりに海に落ちてしまった。


「ユーリ!!」


悲鳴にも近い母上の声が海原に響いた。
俺も落ち着いてはいられない……
好きだと告白した相手が海に落ちたのだ。

即座に俺も飛び込もうとするが、
心の中で【何者か分からない誰か】に止められた。
メデューサの時と同じ呼びかけを再度体験する。


「そんなにあの子が心配?」


突然、魔族のサリーが話しかけてきた。
サリーは、俺や母上が動揺するのに対して、
終始冷静に口を開く。


「あの子には魔族の血が入ってる。
 何故心配するの?」



「それは、ユーリが大切だからだ!」



「……」



迷いなく言葉を発しても、
サリーは、納得できない顔をしている。



「裏切るかもしれない……」 



「そんなことは絶対にない!」



「何故?
 何故そう言い切れるの?」



「……確かにユーリは、
 お調子者で、食いしん坊で……
 いつも笑顔で冗談ばかり言う。
 でも……」



「そんなユーリが好きなんだ……
 だから……信じたいんだ!」



真剣な眼差しで伝えると、
サリーは一瞬溜め息を吐き、言葉を発する。



「わ、分かったわよ……
 でも、完全に信用したわけじゃない……
 今はとりあえず信じてあげる」



「え?」



「召喚よ……」



その言葉を聞いて、必死に思考を張り巡らせる。
そしてすぐにその答えに辿り着いた。
召喚と名の付く魔法を使った人物は、一人しかいない。


「早くしてあげな……」


サリーのおかげで、使うべきスキルが分かり、
ユーリの存在を意識する。
そして力強くそのスキルを叫んだ。


「使い魔召喚!」


すると瞬く間に黒い渦が生まれ、
その渦の中から、びしょ濡れのユーリが現れた。


「「ユーリ!」」


あまりの嬉しさに母上と共に叫ぶ。
地上に戻れたと同時にユーリは激しく咳き込み、
体内の水を吐き出した。


「ユーリ、良かった!
 何とか無事だな……」


母上は、ユーリが生きていると知り、
一目散に駆け寄り抱き付いた。


そしてクラーケンの方向に目を向けると、
意外にも覇王の一撃の影響で動きを止めている。
衝撃により身体が傷付いていた。

その瞬間、隙を見逃さず賢者が走り出していた。
クラーケンに近付き、魔法の筒を投げる。
すると先端に針のようなパーツが付いており、
突き刺さると同時に魔力を吸収し始めた。



「そろそろ動き出すぞ!」



賢者の声を聞き、即座にクラーケンの方へ走る。
そしてこの瞬間、【何者か分からない誰か】から交信があった。



「何故か分からない……
 絶対に従った方が良い気がする」



その命令を忠実に再現するために、
俺は船を蹴飛ばし、クラーケンに飛び移る。


そして直接手で触れて自分の魔力を送った。
更に剣で突き刺し傷口にスキルを使用する。


「最大火力を喰らえ!」


直接、螺旋の炎を体内に送り込んだ。
流石のクラーケンも身体の内側から焼かれれば、
無事では済まないだろう。


「クリス!戻れ!」


賢者の言葉を聞き、船に飛び移る。
俺が着地したと同時に、賢者は母上に合図を送り、
大量の光の剣を放った。


衝突した瞬間に海原に光が溢れる。
賢者との特訓で俺達の連携も深まり、
クラーケンに付け入る隙を与えなかった。


ゆっくりと輝きが収まると、
そこには瀕死のクラーケンが見える。


「クレア!!」


賢者が指示すると即座に光の剣を足場に移動して、
母上はクラーケンに近付いた。
そして打ち合わせ通りに魔法の筒を回収する。


「良くやった!目的は達成だ!」


最後は俺がトドメを刺す計画になっていた。
しかし、螺旋の炎で魔力を使い果たしてしまい、
子供の身体に戻っている。


魔力が枯渇してしまうと通常であれば手段はない。
しかし俺だけに許された力があった。


俺は休憩スキルを使用する。
更に姿を変えて覇王の一撃を放った。
すると、その光はクラーケンに直撃して、
大きな胴体を貫通する。
ついに海の支配者の討伐に成功した瞬間だった。



俺達は無事に目的である魔法の筒の魔力補充と、
クラーケン討伐に成功した。
いよいよ準備は整い、未来を変える物語に繋がる。

休憩スキルを使用した時に、
融合魔法LV.5のスキルを獲得していた。
賢者に話してみると、大声を出して驚く。
それくらいに貴重なスキルなのだと言っていた。

そしてその融合魔法が、未来のルミナスに大きく影響するとは思いもしないのであった……
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