59 / 125
第59話 海の支配者
しおりを挟む
一夜明けて魔宝祭は終わった。
昨日の活気が嘘のように里は静寂に包まれている。
百年に一度のイベントは、ようやく終わりを迎えたのだ。
クリス達はクラーケン退治のために、
里の近くの港に集まっている。
「みんな揃ったな……」
賢者は、全員が到着したのを確認して、
船に乗るよう指示した。
しかし、ここに予想外の二人が現れる。
「おじちゃーーん、頑張ってね~」
一人目はイリーナの妹だ。
昨日カートが店の手伝いをして妹に懐かれたのだ。
クラーケン退治の見送りに来ている。
「カートさん、気をつけてくださいね」
二人目はイリーナである。
何と昨日の魔宝祭で最高売上を達成してしまった。
当然ほとんどカートの功績だろう。
しかし男を見せたカートは、全てをイリーナ姉妹に捧げたのだ。
「い、イリーナさーーん!」
元気よくイリーナに手を振り、仲良く会話する。
意外に上手くやっているとクレアは驚いていた。
「カート、お前やっぱり残るか?」
カートに無理矢理同行させたのを申し訳なく思い、
貴重な時間を奪っているのではないかと、
クレアは心苦しくなっていた。
「いや、クラーケンを退治すれば、
王都に一緒に行ける……」
昨日までのカートとは一味違う。
今回のクラーケン退治に一番燃えているのは、
意外にもカートなのだ。
「カートさん、頑張ってください」
クリスはカートの恋を心から応援していた。
そして船に乗り込むのを確認して、賢者が一声かける。
「海の支配者と言われるクラーケンだ。
気合い入れてくよ!」
賢者が言うには魔物でも魔法を操る特異種がいる。
報告では王国騎士団の船は、水魔法によって沈められたとあった。
討伐対象は特異種の可能性が高い。
更に今回の目的は特異種を退治するだけでなく、
その魔力を筒に収めることだ。
「クラーケンって食べれる?」
ユーリが真剣な眼差しで言う。
クラーケンを食べるという発想が無かったので、
クリスは一瞬固まる。
「イカやタコみたいなものなのか?
食べてみたい?」
「食べてみたい!」
ユーリは目をキラキラ輝かせながら、
どんな味がするか楽しみで仕方ない様子だ。
俺と母上は、その様子がユーリらしいと微笑み合う。
「筒の回収はクレアの役目、
そしてクラーケンを倒すのはクリスだ」
クレアは、光の剣を足場に空を移動できるため、
魔法の筒を回収するのに適任だ。
しかし回収時は、攻撃出来ない。
そうなるとクリスしかトドメをさせないのだ。
「あとは、他の全員で船を守る」
ここまでが大まかな作戦だ。
そして定刻になり、船は出発する。
クラーケンの出現場所まで距離は遠く、
目的の場所まで自由行動となった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
いよいよクラーケンの出現地点まで迫る。
既に全員臨戦体制だ。
クレアは船で1番高い場所、見張り台に立つ。
空を移動しながら牽制して、
賢者の合図があれば筒の回収を行うのだ。
そしてついに海の支配者と遭遇するが、
想像以上の大きさに全員が驚愕した。
そして予想通り、特異種であり魔力を纏っている。
「クレア、光の剣で牽制できるか?」
賢者が指示するとクレアは光の剣を呼び出し、
クラーケンめがけて放つ。
しかしクラーケンもバブルバレットを放ち、
光の剣に当てて相殺した。
「な、光の剣が……」
特異種だけありクラーケンの魔力は強力だ。
そしてクラーケンに濃密な魔力が溢れる。
この波動に賢者は見覚えがあった。
「まずい!この波動は、水と風の融合魔法だ!」
以前にエレノアが融合魔法を使っていたが、
魔界でも使用者は限られると言っていた。
それだけに融合魔法は、高位な魔法である。
「クリス!
今すぐに覇王を撃て!」
賢者は融合魔法に警笛を鳴らした。
クリスは賢者の指示に従い、
姿を変えて覇王を発動する。
海原にクラーケンのハリケーンが生まれると、
即座にクリスは覇王を放ち相殺した。
しかし、激しい衝撃が船を襲う。
「みんな、無事か?」
賢者が全員の安否を確認するが、
見張り台を見たゲイルが大声で叫ぶ。
クレアは、あまりの衝撃に海に落ちてしまう。
しかし海に落ちる寸前でユーリがクレアを庇い、
代わりに落ちてしまった……
「ユーリ!!」
ユーリの決死の覚悟によりクレアを救ったが、
海に落ちたユーリを見失ってしまう。
悲鳴にも近いクレアの声が海原に響いた。
クラーケンの攻撃により、
ユーリは海に落ちてしまった。
海に潜り救う手段を誰も持っていない。
このままでは救ったユーリを死なせてしまう……
絶対絶命の状況の中、一人の少女が口を開いた。
そして、その言葉が危機的状況を切り開く。
昨日の活気が嘘のように里は静寂に包まれている。
百年に一度のイベントは、ようやく終わりを迎えたのだ。
クリス達はクラーケン退治のために、
里の近くの港に集まっている。
「みんな揃ったな……」
賢者は、全員が到着したのを確認して、
船に乗るよう指示した。
しかし、ここに予想外の二人が現れる。
「おじちゃーーん、頑張ってね~」
一人目はイリーナの妹だ。
昨日カートが店の手伝いをして妹に懐かれたのだ。
クラーケン退治の見送りに来ている。
「カートさん、気をつけてくださいね」
二人目はイリーナである。
何と昨日の魔宝祭で最高売上を達成してしまった。
当然ほとんどカートの功績だろう。
しかし男を見せたカートは、全てをイリーナ姉妹に捧げたのだ。
「い、イリーナさーーん!」
元気よくイリーナに手を振り、仲良く会話する。
意外に上手くやっているとクレアは驚いていた。
「カート、お前やっぱり残るか?」
カートに無理矢理同行させたのを申し訳なく思い、
貴重な時間を奪っているのではないかと、
クレアは心苦しくなっていた。
「いや、クラーケンを退治すれば、
王都に一緒に行ける……」
昨日までのカートとは一味違う。
今回のクラーケン退治に一番燃えているのは、
意外にもカートなのだ。
「カートさん、頑張ってください」
クリスはカートの恋を心から応援していた。
そして船に乗り込むのを確認して、賢者が一声かける。
「海の支配者と言われるクラーケンだ。
気合い入れてくよ!」
賢者が言うには魔物でも魔法を操る特異種がいる。
報告では王国騎士団の船は、水魔法によって沈められたとあった。
討伐対象は特異種の可能性が高い。
更に今回の目的は特異種を退治するだけでなく、
その魔力を筒に収めることだ。
「クラーケンって食べれる?」
ユーリが真剣な眼差しで言う。
クラーケンを食べるという発想が無かったので、
クリスは一瞬固まる。
「イカやタコみたいなものなのか?
食べてみたい?」
「食べてみたい!」
ユーリは目をキラキラ輝かせながら、
どんな味がするか楽しみで仕方ない様子だ。
俺と母上は、その様子がユーリらしいと微笑み合う。
「筒の回収はクレアの役目、
そしてクラーケンを倒すのはクリスだ」
クレアは、光の剣を足場に空を移動できるため、
魔法の筒を回収するのに適任だ。
しかし回収時は、攻撃出来ない。
そうなるとクリスしかトドメをさせないのだ。
「あとは、他の全員で船を守る」
ここまでが大まかな作戦だ。
そして定刻になり、船は出発する。
クラーケンの出現場所まで距離は遠く、
目的の場所まで自由行動となった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
いよいよクラーケンの出現地点まで迫る。
既に全員臨戦体制だ。
クレアは船で1番高い場所、見張り台に立つ。
空を移動しながら牽制して、
賢者の合図があれば筒の回収を行うのだ。
そしてついに海の支配者と遭遇するが、
想像以上の大きさに全員が驚愕した。
そして予想通り、特異種であり魔力を纏っている。
「クレア、光の剣で牽制できるか?」
賢者が指示するとクレアは光の剣を呼び出し、
クラーケンめがけて放つ。
しかしクラーケンもバブルバレットを放ち、
光の剣に当てて相殺した。
「な、光の剣が……」
特異種だけありクラーケンの魔力は強力だ。
そしてクラーケンに濃密な魔力が溢れる。
この波動に賢者は見覚えがあった。
「まずい!この波動は、水と風の融合魔法だ!」
以前にエレノアが融合魔法を使っていたが、
魔界でも使用者は限られると言っていた。
それだけに融合魔法は、高位な魔法である。
「クリス!
今すぐに覇王を撃て!」
賢者は融合魔法に警笛を鳴らした。
クリスは賢者の指示に従い、
姿を変えて覇王を発動する。
海原にクラーケンのハリケーンが生まれると、
即座にクリスは覇王を放ち相殺した。
しかし、激しい衝撃が船を襲う。
「みんな、無事か?」
賢者が全員の安否を確認するが、
見張り台を見たゲイルが大声で叫ぶ。
クレアは、あまりの衝撃に海に落ちてしまう。
しかし海に落ちる寸前でユーリがクレアを庇い、
代わりに落ちてしまった……
「ユーリ!!」
ユーリの決死の覚悟によりクレアを救ったが、
海に落ちたユーリを見失ってしまう。
悲鳴にも近いクレアの声が海原に響いた。
クラーケンの攻撃により、
ユーリは海に落ちてしまった。
海に潜り救う手段を誰も持っていない。
このままでは救ったユーリを死なせてしまう……
絶対絶命の状況の中、一人の少女が口を開いた。
そして、その言葉が危機的状況を切り開く。
0
お気に入りに追加
530
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる