【改稿版】休憩スキルで異世界無双！チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

第52話 魔女

辺り一面に霧が広がる。
瞬く間に全てを飲み込んで、
敵味方関係なく位置を認識できなくなった。


クレアは焦っていた。
ユーリと僅かに離れた瞬間を狙われ、
必ず守ると約束した筈が見失ってしまった。


「ユーリ！どこだ！」


エルフの剣士達が奇襲を仕掛けるために、
霧の中から様子を窺っている。
クレアを見つけると剣や魔法で襲ってきた。
もうクレアには、相手を生かすほどの余裕は無い。
敵と分かれば手加減出来なくなった。


「お前ら、絶対に許さない」


クレアは光の剣を上空に留めて、
霧の中から敵を認識できたと同時に向かわせる。


「クレア！」


近くにいたカートを見つける。
二人で合言葉を使い確認し合った。


「ユーリは？」


「駄目だ、はぐれてしまった」


お互いに見つけられず苦労していた。
既にユーリは、エレノアに捕まっているかもしれない。
そう考えると心配で胸が張り裂けそうだった。


「くそ……クリスか師匠がいれば、
　探知できるんだが」


「きっとユーリの方に、
　向かっているんじゃないか？」


カートがそのように言うと、
今まさにその賢者が到着した。


「師匠！」


「馬鹿者！
　クレア、後で説教だからな！」


クレアは独断専行で走ってしまい、
心の底から反省していた。


「師匠、私のせいで……」


一度のミスでユーリを失うとは思いもしない。
クレアはショックを隠し切れないでいた。


「今、クリスが向かっている。
　反省しているなら自分で挽回しな！」


「師匠……」


賢者は魔力探知でクレアを探し、
霧の中でも場所を特定した。
二人を回収して、クリスの後を追うことにしたのだ。
そして、今からユーリの魔力探知に切り替える。


「あんた達、いくよ！」


賢者の後にクレアとカートも付いていく。
邪魔するエルフを払い除けて、
霧の中を突き進んだ……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



魔女エレノアは、
使い魔のデーモンに命令をした。


「さあ、デーモン。
　あの子を捕らえなさい！」


ユーリにデーモンが迫る。
その姿を目前にした時、
ユーリの瞳に涙が溢れた。



「あねご、クリス……
　ごめんなさい……」



その瞬間、ある人物が急接近した。
この身体強化で移動できるのは、
ユーリの知る中でも唯一人だ。


そして、その人物の強烈な蹴りが炸裂し、
デーモンを弾き飛ばす。


「な、何だと！
　デーモンを蹴り飛ばしただと」


ユーリは目の前で起きていることが信じられない。
そしてその人物が危機に駆けつけると、
嬉しさで瞳を輝かせた。


「エレノア……
　これ以上、お前の好きにはさせない！」
　

ユーリの前に突如クリスが現れる。
探知を使い、この霧の中でも、
ユーリまで辿り着いてみせた。


「威勢よく出てきたが、
　まだ子供じゃないか」


エレノアは、口元に笑みを浮かべて、
クリスを見ている。


「その顔で滑稽だな」


「何だと？」


エレノアはクリスが何を言っているのか、
まるで分からない。


「俺の名前は、クリス・レガード。
　お前の姿は、俺の母親の姿なんだよ」


「ほう……
　それは知らなかった……
　ならば本当の姿に戻そう」


クリスの言葉にエレノアは変装を解く。
常時魔力を消費するスキルのため、
元の姿に戻したのだ。
その容姿は黒いドレスに身を包み、
2本のツノが左右に生える魔族。
とても美しく妖艶な空気を纏っている。


「あら、見惚れちゃったかしら？」


「…………」


「貴方も、私のしもべにしてあげるわよ」


クリスはその言葉に嫌悪感を感じ、
何も返答せずに睨み返す。


「あらあら、怖い……」


「お前の目的は何だ？」


「ふふふ、せっかくだし教えてあげる」


クリスは何も考えずに話しているわけではない。
賢者が合流するのを待っているのだ。
ユーリを守りながら戦うのではなく、
増援を待つよう指示を受けている。


「エルフの里の弱体化が狙いではないわ……
　エルフの里はね、牧場なのよ」


「は？」


いきなり何を言い出すのかと疑問に思う。
それほどエレノアは、
突拍子もない事を言い始めた。



「エルフは屈強よ！
　でもね、その血はどうしても欲しいの……
　私たち魔族にとってはね」


「どういうことだ？」


「貴方、いつも一緒にいるじゃない」


エレノアの言っていることが分からない。
クリスは困惑している。


「魔女はね、ハーフなのよ」


「やめて！！！」


ユーリは、想いを寄せるクリスに知られたくない。
そのユーリの感情を読み取ったエレノアは、
更に邪悪な笑みを浮かべている。


「あらあら、貴方も私と同じなのよ……
　魔族とエルフのハーフ、
　それが魔女なのだから」


その瞬間、ユーリは膝から崩れ落ちた。


「ユーリ……」


クリスは、悲しみに胸を痛めるユーリの肩を支える。


「貴方達、そう言うことね……
　人間と魔女が結ばれることはないわ！
　だって、貴方には私と同じ……
　人殺しの血が混ざっているのだから」



「やめろ！」



俺はこれ以上、エレノアに喋らせるつもりは無くなった。
魔女に向かってバブルバレットを放つ。
しかし、それをデーモンが防いでしまう。


「覚えているでしょう？
　私が、貴方の村を襲ったのよ……
　そして貴方の力を解放させて、
　抑え切れなくなったじゃない」



更にエレノアは笑みを浮かべて、
ユーリに悲劇の事実を伝える。



「貴方は自分の親を殺したのよ」



ユーリは思い出した。
幼少の頃、その辛すぎる事実に目を背け、
記憶を封印してきた。
隠れ住んでいた村をエレノアに襲われ、
力を解放させられた。
その力を抑え込むために、
家族は必死になってユーリを守ったのだ。


「私のせいだ……
　私のせいでみんな……」


「ユーリ！
　奴の声に耳を貸すな！」


当初、このような状況になった場合、
全員が合流するまで時間稼ぎをするよう賢者と約束をしていた。
だが、これ以上ユーリを苦しませるのは我慢ならない……


「俺は言った筈だ」


「なーに？」


「これ以上は、黙ってろ！」


クリスは右手人差し指に魔力を集める。
そして修行で得た力を一気に解放した。
火魔法の腕はLv.1まで落ちたが、
その代わり水魔法はLv.7まで上がった。


水魔法Lv.5、バブルショットガン


威力に特化した弾丸を、二発発射した。
そのうちの一発の弾丸はクリスタルを破壊し、
もう一発はデーモンの足を射抜く。


「な、何！
　クリスタルを一撃だと！」


過去、エレノアはこのクリスタルを使い、
魔界の魔法使いを圧倒してきた。
しかし一撃で葬られて驚きを隠せない。


「デーモン、暗黒魔法をお見舞いしてやれ」


「無駄だ！」


一瞬、エレノアはクリスの姿を見失った。
目の前にいた筈のクリスの姿が消えて、
気付いた時にはデーモンの目前にいる。
更に強化格闘術でデーモンの腕をへし折った。


「終わりだ……」


強烈な蹴りをデーモンに喰らわせる。
一瞬で吹き飛ばし壁に頭がめり込んだ。
修行によって鍛えられ、
強化格闘術もLv.8まで上がっている。


「デーモンを格闘術のみで倒しただと……」


エレノアは悪い夢を見ているのかと思った。
呼び出した魔物は魔界の一級品。
格闘のみで戦えるのは、四天王の中でも限られている。


「貴方、相当強いのね……
　でも、それでも最後に笑うのは私よ」


エレノアは、不気味な笑みを浮かべる。


「だってそうでしょう？
　人間と魔女は相容れない……
　私の中に眠る才能は理解されない。
　だって、魔女は特別なんだもの」


「お前、思い上がるなよ！」


クリスはバブルショットガンを放つ。
強力な弾丸をエレノアに飛ばすが、
当たる寸前で、エレノアは魔法の障壁を呼び出し防いでしまった。


「牧場なのよ、ここはね……
　エルフを攫い、
　魔界で子供を産ませるの」



エレノアは、歪んだ笑みを浮かべながら言葉を放つ。



「そこのお嬢さんと同じ……
　魔女をね……」



ユーリは、心の底から自分に流れる魔女の血を呪った。
エレノアと同じ存在であることが許せない。
そして気づけば涙で前が見えなくなっていた……


「クリス……
　わたし、わたしは……」


泣き崩れるユーリを抱きしめて、
俺はユーリの瞳に溢れる涙を拭う。


「ユーリ、俺は、お前を信じてる……
　他の誰が何と言おうと、
　お前は人殺しなんかじゃない……」


俺はユーリの瞳を真っ直ぐに見て、
想いを伝える。


「食いしん坊で、おちゃらけてて、
　食い意地が悪くて、そんでもって……
　母上が大好きで……」


「ク、クリス！」


「そんなユーリを、俺も……
　みんなも大好きなんだよ……」


「え？」


そして俺はユーリの頭を撫でる。


「みんながお前を好きなのは、
　魔女とか一切関係ない……
　ユーリだからだ……」


その言葉を聞いた瞬間に、
ユーリの瞳は涙が溢れて止まらない。


「クリス……私、
　クリスのこと……」


「ふふふ、あはははははは」



エレノアが、俺とユーリの話を聞いて嘲笑う。



「馬鹿馬鹿しい……
　人間と魔女の愛だと？
　私が全力で否定してやろう！」


「それならば、私がお前を否定してやるよ」


ユーリを誰よりも想う、もう一人の人物が現れる。
それはクレア・レガードだ。
ようやく、クレア達が到着したのだ。
ここから魔女エレノアとの戦いは熾烈を極めていく。