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第24話 決意

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クリスから戦闘を託されたカート。
ここは何としても守り抜くと、
自分を鼓舞していた。


「この程度のスピードなら俺の盾で防ぐ!
 お前ら、攻撃に専念しろ」


「ふふふ、威勢が良くなったじゃない、カート」


「まずは俺から殺してみろよ」


敵を引きつけてクリスのために時間を作る。
不甲斐ないが時間稼ぎをすることしかできない。
カートは、与えられた役割に専念した。


「その誘いに乗ってあげる……
 いつまで私の高速剣に耐えられるかしら」


麻痺により速度が落ちているとはいえ、
それでもルミナスの剣聖だ。
カートに急接近する。
それを見たアリスが危険を察知した。


セシルの高速剣に何とか追いつき盾で防ぐ。
一つでも選択を誤れば高速剣の餌食になる。
死と隣り合わせの戦いに、カートは未だかつて体験したことのない恐怖を感じていた。


「ライトニング!」


「甘いわ、ダークスフィア」


雷の魔法に暗黒魔法を衝突させて相殺する。
そしてベルの攻撃も受け止めて蹴り飛ばした。


「小娘達2人の攻撃さえ注意を払えば良い!
 さっきよりも戦いやすくなったわ」


先程は押していた形勢も徐々に逆転し始める。


「アリス!後どれくらいで麻痺は切れる?」


「後、30秒」


迫るタイムリミットに誰もが恐怖する。
今までセシルの攻撃を凌げていたのは、
アリスの雷魔法による麻痺があったからだ。
麻痺が解ければ誰もセシルを止められない。
それはこの戦いにおいて敗北を意味する。


「早くしないと私の麻痺が解けるわよ」


セシルは相手の恐怖する顔に堪らなく快感を感じる。
麻痺が解けた瞬間、更に絶望感を与えられ、
その時の表情を思い浮かべるだけで、
自然と笑みが溢れていた。


アリスは焦っていた……
自分が雷魔法を当てなければ負ける。
更に魔法訓練の歳月が浅いため、
魔力量はクリスよりも圧倒的に少ないからだ。



「後、ライトニング2発しか打てない……
 もう外せない」



迫る死のカウントダウンに焦る。
球数も僅かな状況で必ず当てなければならない。
焦りはミスを生む。


アリスは、レベル差のある剣聖に対して、
攻撃を受けないギリギリの距離を保っていた。
しかし迫る時間に焦り、目測を誤ってしまう。


「しまった……」


「ふふふ、まずはレガードの娘から死んでもらう」



至近距離からの高速剣は、確実に避けられない。
アリスは死を覚悟する。


ベルは、アイテムの使い所を考えていた。
レガードの金庫から預かった魔法のアイテム。
まさに今こそ使うべき時だ。


「アリス様を守って」


ベルが放った小さな盾は、
急速にアリスとセシルの間に割り込み、
大きな盾に変化した。



「これは……聖者の盾」



セシルは自分の攻撃が無効化された事に驚く。
しかし聖者の盾は一度限りの秘宝だ。
徐々に消えていく。

そして聖者の盾消滅の瞬間に、
アリスは全てを賭ける事にした。


「ライトニング」


だが、それすらもセシルは予測する。


「魔力の流れが見えたわ」


雷魔法が当たる瞬間で回避され、
誰もが重要な一撃を外したと認識した。
しかし、アリスはこの格上との戦いの中で成長を見せる。


「外した……
 でも、まだいける!」


感覚的に魔力を制御し始める。
飛ばした雷を留めて剣の形に変化させ、
セシルへ向かわせた。



「なに……」



またしても麻痺を上書きする。
セシルは驚愕と共に怒りが込み上げていた。




「当たった」




「…………」




セシルは、怪しく笑みを浮かべながら、
言葉を発する。



「分かったわ、貴方達は強い……
 認めてあげる」



「でも、お遊びはここまでよ」



急にセシルの空気が変わり、
暗黒のオーラが溢れていく。


「ダークスフィア」


暗黒魔法を三連続で唱えて、
全てアリスに誘導した。
そして急速にセシルもアリスの元へ迫る。



「ヤバい、アリスが狙われる!」



カートはいち早く気づいたが、
一番距離が離れている。
このままでは間に合わない。


ベルは即座にアリスとセシルの間に入るが、
代わりに暗黒魔法3連撃を受けてしまう。



「っく……」



正面に立つセシルは、ベルを弾き飛ばした。



「死になさい」



苦虫を噛み潰したような表情でセシルを睨む。
アリスはこの瞬間、死を覚悟した。



「お兄様……ごめんなさい」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





目を覚ましたシャルロット。
今はマリアと共に喜び抱き合っている。



「すまなかったわね、クリス」



「良かったです、本当に」



一時は心臓が止まっていた。
そこから救い出せて心底ほっとしている。
そしてこんな思いは誰にもさせるわけにいかない。



「セシルのところに行くんでしょ?」



その言葉に俺は無言で頷く。



「頼むわ、私の分も……
 そして、セシルを倒して」



「必ず倒します!」



シャルロットの思いを受け止める。
死闘の末に、倒せなかった未練がある。




「クリス」


「マリア様……」


「まりあ」


「え?」


「さっき呼んでくれた」



さっき告白した時の事だ……
ちゃんと伝わっていたようだ。



「マリア、行ってくる…
 そして必ず倒してくる」



そう言葉を伝えると、
マリアは俺に身を委ねて、
そして胸に顔をうずめる。



「私もクリスが好き」



「マリア……」



「必ず、帰ってきて」




美しい瞳を見ていると吸い込まれるように、
目が離せなくなってしまった。
すると自然と二人の唇は、
お互いを求めて重なり合う。
唇が離れると共にマリアを見つめると、
潤んだ瞳をする姿が愛しくて堪らない。


そんな愛する君を見て、俺は決心する。
未来のために、大切な人のために……
今日ここでルミナスの最強を倒す。



そして俺は休憩スキルを使用する。




【休憩スキルレベルアップ】
 Lv.1→Lv.2
※休憩使用後のスキルレベル上昇率UP

スキルがレベルアップしました。
獣王剣Lv.6

スキルがレベルアップしました。
獣王剣Lv.7

スキルがレベルアップしました
獣王剣Lv.8

スキルがレベルアップしました
獣王剣Lv.9

スキルがカンストしたことにより新スキル獲得成功
覇王Lv.1






俺は決意を胸に戦場へ走り始めた。
そして剣聖セシルとの戦いは最終局面を迎える……
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