上 下
18 / 125

第18話 王都にて

しおりを挟む
マリアとの訓練に向かう前に、
王国騎士団の本部に来ている。
父上の幼馴染に会いに来たのだ。
珍しい大楯スキルを持っていて、
幼少の頃から親戚のように良くしてもらった。



「カートさん、久しぶりです」


「おう!クリス!
 昨日は大活躍だったな!」


「ありがとうございます!
 昨日はいらっしゃらなかったですね」


「あ~王都に出る不審者が多くてな」


最近の騎士団は多忙を極めている。
マリアを狙った誘拐事件が起きて以来、
王都内での警備に人員を割いていた。
しかしそれと同時に手薄になった王都外での犯罪に対処できなくなっており、
それが先日の白狼族襲撃なのだ。


「最近特に多いのが子供の誘拐だな……
 それも貴族を狙ってる」


「貴族ですか?」


「ああ、それも魔法学園の子供だ。
 お前も気をつけろよ」


王都では貴族の子供を狙った犯行が多い。
通学路で1人になった隙に攫われる。
その後は捜索しても痕跡自体見つからず、兵士が日夜交代で警備、捜索していた。


「そんなことが王都で起きているなんて……
 確かに父上もかなり忙しそうですが」


「アイツは苦労を背負い込むからな。
 全く弱音は吐かないだろうぜ」


父上は自分に厳しく人にも厳しい。
そのため普段から弱音は一切吐かない……


「父上は、強いですからね」


「まあ、あんな奴にも弱点はあったけどな」


父上の弱点と聞いて驚く。
あの完璧主義者に苦手なものは、
絶対に無いと思っていたからだ。


「あはは、それは亡くなったクレアだよ!
 クレアは、それはそれは気が強くてな……
 いつもゲイルを尻に敷いていたぞ」


「あ、あの父上がですか?」


鳩が豆鉄砲を食ったような顔とは、
まさに今の俺の顔だろう。


「お前とアリスは小さかったからな……
 だがクレアは強かった。
 性格も、実力もな」


最強の魔術師クレア・レガード。
母上は、宮廷魔術師の序列一位と、
父上から聞いていた。


「なんか通り名があったな
 クレアを表す名前、何だったか?
 爆炎の?いや、違う」


そんなものがあったのか……
通り名があるということは、
戦い方に特徴があったのか?


「まあ思い出したら教えてやるよ」


「あはは、ぜひ知りたいです」


そしてカートさんの部下が数人集まり、
今から警備に行く時間となった。
忙しくなりそうなので別れの挨拶をする。


「じゃあ、そろそろマリア様のところに、
 行く時間なので失礼しますね!」


「本当に気をつけろよ!クリス!」


「わかってますよ!カートおじさん!」


「ばか!その呼び方で呼ぶなって
 言ってるだろう!」


懐かしい呼び方でカートさんを呼ぶと、
嫌がっているが照れ臭そうに笑う。
昔からカートさんは、俺にとって良い親戚のおじさんなのだ。

そして俺もマリア様との待ち合わせの場所である、城の訓練所へ向かうのだった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「マリア様、おはようございます!」


「おはよう!聞いたわよ!
 昨日は大活躍したらしいじゃない!」


マリア様にも白狼族の話が届いており、
情報伝達の早さに驚いていると、
居合わせる護衛の一人が説明する。


「私がお伝えしたのですよ」


騎士団に所属するキャロルが声を発した。
キャロルは騎士団の中でも手練れの騎士である。
だからこそマリアの専属なのだ。



「そう言うことですね」


「クリス、早速訓練の成果が出て嬉しいです!」



マリアが回復魔法を授けてくれなければ、
俺もベルも確実に死んでいただろう。
改めてマリアへの恩を感じていた……



「マリア様から回復魔法を教えて頂かなければ、
 本当に死んでました」


「ふふふ、クリスが頑張ったからですよ……
 あれからスキルに変化はありますか?」


「あれから回復魔法と火魔法は、
 レベル2まで上がりました」


休憩スキルを使って、
火魔法、回復魔法共にレベルが上がっている。
ついでにアンチポイズンを覚えた事も伝えておいた。


「す、凄い!
 まさかこの短期間で2つのスキルを、
 レベル2にするなんて……」


マリアもその事実に驚く。
スキルの強化は、年単位で取り組むものだ。
しかし俺の場合、この3日間で達成してしまい、
まさに休憩スキルは規格外の成長を促すスキルだった。


「そして実はですが、
 もう一つスキルを手に入れまして……」


「あ、新しいスキルですか?」


基本的に新スキルは手に入らない。
儀式で手に入るのは多くても2種類。
3種類目以降は奇跡的な事例だ。


「獣王剣と言いまして……
 反動が強いかもしれないので、
 休憩スキルを使える状況で試したいのです」


「なるほど、物凄く仰々しい名前だものね。
 警戒するのは分かるわ……
 今日の訓練はそのスキルの確認にする?」



「ぜ、是非お願いします!」



いよいよ俺も獣王剣を使うことになる。
反動が起きた時にマリアがいると安心だ。
なんと言っても回復魔法レベル5なのだ。
そんな現金な考えを思いついてしまったが、
この後、俺の閃きによりマリアが混乱?してしまうとは思いもしないのだった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...