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第17話 差し伸べる手
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部屋の窓から入り込む風が、カーテンを揺らす。
リーナに用意してもらった紅茶を飲みながら、
本を読んでいると、ベルがゆっくりと目を覚ました……
「ん……」
「起きたか?」
「はい」
「あの、クリス様、本当に、
本当にありがとうございました……
あの、サーシャやみんなは?」
里のために死に物狂いで戦ったのだ。
捕らえられていた者達が、
どうなったのか気になるだろう。
「牢に閉じ込められていた人は、保護されたよ」
「そう、ですか」
親友や仲間が無事だと知り安堵して、
自然と瞳を潤ませる。
「あれから王国騎士団も来たからね」
「あの、クリス様……
このご恩は決して忘れません……
一生かけて恩返しします!」
ベルの命だけでなく里を救った。
更にその中には、かけがえのない友人もいる。
俺への感謝の想いが抑えきれないのかもしれない。
「そんな気にしなくても……」
当たり前のことをしたし、
勝手に俺が介入したと思っている。
流石に見捨てられないからな……
「だ、ダメです、私だけでなく、
里の皆んなを助けて下さったのです!
私だけが与えられてばかりでは、ダメです」
ベルは顔を赤くしながら訴える。
涙腺が緩んでいたのか更に泣いていた。
それだけベルにとって大きな事をしたのだろう。
「そうしたら父上に会いに行こう……
ベルの今後で話したい事もあるようだし」
そう言ってベルに向けて手を差し伸ばす。
立ち上がることは難しいから、手を貸したのだ。
驚いたベルは違った意味で頬を染める。
まるで茹でダコのように顔を赤くしながら手を取った。
そしてベルをベッドから起き上がらせると、自然と手が離れる。
「ぁっ」
「ん?何?」
「な、な、な何でもないです!」
表情がコロコロと変わるベルを見て、
俺は笑いながらベルに一声かける。
「転ぶなよー」
あ~、言ってるそばから転んだ。
全く目の離せないやつだな……
ほらっ!
もう、少しだけ手を貸してやるか。
そしてふらつくベルの手を引きながら、
父上の私室へ向かっていった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「キミが、白狼族のベルか」
「はい、ベルと申します」
「今回は騎士団の取り締まりが甘く、
迷惑をかけたな……
本当にすまなかった」
「いえ、男爵様が悪いわけでは」
「まあ、これでも王国騎士団の幹部でもあるからな」
父上は騎士団の中でも重要な役職を担うと聞いた。
白狼族の件は、父上の管轄ならば責任もあるだろう。
結果的に、後手に回ってしまったのだ。
「ところでベルよ」
「はい」
「其方のスキルは魔力を消費し続ける剣、
クリスからは聞いたが、
お前には魔力はない、違うか?」
先日の圧倒的な力は、
俺が魔力を与えたから発動出来た。
つまりベル一人では使えないスキルになる。
「その通りでございます」
「それならば我が家の使用人に空きがある……
働きながら魔法学園を目指すか?
当然だが給金から学費は差し引くがな」
「へ?」
あまりに急な申し出に、ベルは頭が空っぽになってしまい、全く理解が出来ない様子だ。
そんなベルを見ていると可笑しくなってしまった。
「あはは、ベル……
レガードの使用人になるかって事だよ」
「良いのですか?
私は身寄りのない、しかも獣人です……
皆様にご迷惑をおかけするのでは……」
「確かに普通の貴族ならば迷惑だろう……
しかし我々は剣に生きるレガード家だ!
王と名の付く剣技の所有者を、
邪険にはしたくないのだよ!」
獣王剣の秘密を解明することは、
レガード家にとっても利益になる。
当主として同情だけで行動しない。
実力のある者を引き込むのも、
貴族間の派閥争いとしては大切なのだ。
「よろしければ是非、一生をかけて皆様に……
クリス様に恩返しをさせてください!」
ベルは深々とおじきをして、
レガードのために、俺のために命をかけると誓う。
この瞬間、正式にレガード家に新たな使用人が誕生したのだった。
「教育係はリーナとする
これからはリーナに色々と聞きなさい」
そう言い残し父上は去っていった。
ベルもリーナに引き連れられて、
今後の身支度を始めていく……
そして俺も、父上の私室から庭に移動して、
試してみたかったことに着手する。
そのために、まずは休憩スキルを使って例のスキルを獲得するか確認したい。
名前:クリス・レガード Lv.12
MP:300
取得スキル:
休憩 Lv.1
獣王剣Lv.5 ←new
取得魔法:火魔法Lv.2
回復魔法Lv.2
獣王剣、やはり獲得していたか……
獲得は予想していたが、まさかレベル5とは思わなかった。
今使うと、どのように変化するのだろう……
ベルのように成人の身体になるのだろうか?
今すぐに使いたいが、人間の俺が使うと反動があるかもしれない。
出来れば休憩を使える状態で試した方が良いな……
ちょうど明日がマリア様との訓練の日だし、相談してみよう……
早く明日が待ち遠しい……
明日は素晴らしい一日になる。
そんな気がしている。
リーナに用意してもらった紅茶を飲みながら、
本を読んでいると、ベルがゆっくりと目を覚ました……
「ん……」
「起きたか?」
「はい」
「あの、クリス様、本当に、
本当にありがとうございました……
あの、サーシャやみんなは?」
里のために死に物狂いで戦ったのだ。
捕らえられていた者達が、
どうなったのか気になるだろう。
「牢に閉じ込められていた人は、保護されたよ」
「そう、ですか」
親友や仲間が無事だと知り安堵して、
自然と瞳を潤ませる。
「あれから王国騎士団も来たからね」
「あの、クリス様……
このご恩は決して忘れません……
一生かけて恩返しします!」
ベルの命だけでなく里を救った。
更にその中には、かけがえのない友人もいる。
俺への感謝の想いが抑えきれないのかもしれない。
「そんな気にしなくても……」
当たり前のことをしたし、
勝手に俺が介入したと思っている。
流石に見捨てられないからな……
「だ、ダメです、私だけでなく、
里の皆んなを助けて下さったのです!
私だけが与えられてばかりでは、ダメです」
ベルは顔を赤くしながら訴える。
涙腺が緩んでいたのか更に泣いていた。
それだけベルにとって大きな事をしたのだろう。
「そうしたら父上に会いに行こう……
ベルの今後で話したい事もあるようだし」
そう言ってベルに向けて手を差し伸ばす。
立ち上がることは難しいから、手を貸したのだ。
驚いたベルは違った意味で頬を染める。
まるで茹でダコのように顔を赤くしながら手を取った。
そしてベルをベッドから起き上がらせると、自然と手が離れる。
「ぁっ」
「ん?何?」
「な、な、な何でもないです!」
表情がコロコロと変わるベルを見て、
俺は笑いながらベルに一声かける。
「転ぶなよー」
あ~、言ってるそばから転んだ。
全く目の離せないやつだな……
ほらっ!
もう、少しだけ手を貸してやるか。
そしてふらつくベルの手を引きながら、
父上の私室へ向かっていった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「キミが、白狼族のベルか」
「はい、ベルと申します」
「今回は騎士団の取り締まりが甘く、
迷惑をかけたな……
本当にすまなかった」
「いえ、男爵様が悪いわけでは」
「まあ、これでも王国騎士団の幹部でもあるからな」
父上は騎士団の中でも重要な役職を担うと聞いた。
白狼族の件は、父上の管轄ならば責任もあるだろう。
結果的に、後手に回ってしまったのだ。
「ところでベルよ」
「はい」
「其方のスキルは魔力を消費し続ける剣、
クリスからは聞いたが、
お前には魔力はない、違うか?」
先日の圧倒的な力は、
俺が魔力を与えたから発動出来た。
つまりベル一人では使えないスキルになる。
「その通りでございます」
「それならば我が家の使用人に空きがある……
働きながら魔法学園を目指すか?
当然だが給金から学費は差し引くがな」
「へ?」
あまりに急な申し出に、ベルは頭が空っぽになってしまい、全く理解が出来ない様子だ。
そんなベルを見ていると可笑しくなってしまった。
「あはは、ベル……
レガードの使用人になるかって事だよ」
「良いのですか?
私は身寄りのない、しかも獣人です……
皆様にご迷惑をおかけするのでは……」
「確かに普通の貴族ならば迷惑だろう……
しかし我々は剣に生きるレガード家だ!
王と名の付く剣技の所有者を、
邪険にはしたくないのだよ!」
獣王剣の秘密を解明することは、
レガード家にとっても利益になる。
当主として同情だけで行動しない。
実力のある者を引き込むのも、
貴族間の派閥争いとしては大切なのだ。
「よろしければ是非、一生をかけて皆様に……
クリス様に恩返しをさせてください!」
ベルは深々とおじきをして、
レガードのために、俺のために命をかけると誓う。
この瞬間、正式にレガード家に新たな使用人が誕生したのだった。
「教育係はリーナとする
これからはリーナに色々と聞きなさい」
そう言い残し父上は去っていった。
ベルもリーナに引き連れられて、
今後の身支度を始めていく……
そして俺も、父上の私室から庭に移動して、
試してみたかったことに着手する。
そのために、まずは休憩スキルを使って例のスキルを獲得するか確認したい。
名前:クリス・レガード Lv.12
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取得スキル:
休憩 Lv.1
獣王剣Lv.5 ←new
取得魔法:火魔法Lv.2
回復魔法Lv.2
獣王剣、やはり獲得していたか……
獲得は予想していたが、まさかレベル5とは思わなかった。
今使うと、どのように変化するのだろう……
ベルのように成人の身体になるのだろうか?
今すぐに使いたいが、人間の俺が使うと反動があるかもしれない。
出来れば休憩を使える状態で試した方が良いな……
ちょうど明日がマリア様との訓練の日だし、相談してみよう……
早く明日が待ち遠しい……
明日は素晴らしい一日になる。
そんな気がしている。
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