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第10話 基本魔法

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今日から我が家にマリア様がくる。
なんて事は無い。
流石に王女であるため、いくら命の恩人とはいえ、
男爵の家に出向くことはできない。
そのため城内の訓練場に出向くことになっている。
施設で待つと、マリアと2名の護衛が到着した。


「おはよう!クリス、
 今日から宜しくお願いしますね!」


「おはようございます、マリア様!
 こちらこそ宜しくお願いします!」


マリアは公務ではないため、カジュアルな装いだ。
白を基調とした私服も似合っており可愛らしい。


「ん?その腕輪、素敵ですね!」


「鑑定の腕輪を使用人から貰いました」


「それは凄い!魔道具はとても高価です
 使用人からも慕われているのですね」


「みんな、俺には勿体ない人ばかりです」


「そんなクリスだからですよ……
 早速ですがクリスのステータスを
 鑑定してみましょう」


先日の儀式でスキルが付与がされると、
腕輪にも詳細が表示されるらしい。
今日はその使い方も教えてくれることになった。


「鑑定と心に強く願ってみてください!
 あなたの状態や所得スキルが、
 目の前に表示されるはずなので」


「はい……」


『(鑑定……)』


すると目の前に鑑定結果が文字として表示される。
前世で見たVRに近い反応だ。


名前:クリス・レガード Lv.5
MP:40
取得スキル:
休憩 Lv.1
 スキル使用によりMP全回復。
 使用回数 1日1回

取得魔法:なし


こんな形で表示された……
休憩のスキルレベルは1で、
自分のレベルも5と表示されていた。
休憩は1日1回の使用制限がある。
そして紙に書き出してマリアに見せた。


「それでは基本魔法の説明を始めますね!」


それからはマリアによる基本魔法の授業が始まった。
どうやら火、水のLv.1魔法を、基本魔法と呼ぶ。
何と基本魔法については、
スキル持ちでなくても発動可能なのだ。
しかし適正者に比べて威力が低い。
そしてこの半年間の目標は基本魔法習得だ。

俺に特筆した魔法スキルは無い。
それであれば学園試験合格に基本魔法は絶対に必要なのだ。


「火はファイアボール、
 水はウォーターショットと言います。
 まずイメージしやすいファイアボールから
 覚えましょう!」


前世は魔法が存在しない世界だった。
その分、早く魔法を使ってみたい衝動に駆られる。
マリアに注目すると周囲に赤い光が湧き出す。


「ファイアボール!」


呪文を唱えると火の玉が現れ鉄の壁に激突した。
とても適性のない魔法とは思えず驚いている。


「これが、魔法ですか」


剣術クラスの授業は全て剣術、筋トレ、
剣術、筋トレの繰り返しだった。
初めての魔法に目を輝かせてしまう。


「頭の中で火が生まれるイメージを持って!
 出来なくても根気強くやりましょう!」


「火が生まれるイメージですか?」


「どんな風に火が発生するか、
 具体的にイメージするのがコツです」


火が付くイメージ……
例えば燃焼の原理とか?


「ファイアボール!」


予想もしながったが、手元から火の玉が発生する。
まだコントロールは難しいが、
まさか一発目で成功するとは思わなかった。


「ま、マリア様、出ました!」


「お、驚きました!
 まさか適正のない魔法を初めてで……」


マリアは目を見開き、驚嘆の声を発している。
お付きの護衛二人も驚いているようだ。


「わ、忘れないうちに、
 もう一回やりましょう!」


この感覚は忘れさせたく無いらしい……
先ほどと同様に火を起こすイメージを浮かべる。


「ファイアボール!」 


さっきよりも火を玉の形で呼び出すことができた。


「凄いです!
 すぐに基本魔法の習得ができそうですね」


「マリア様のおかげです!!
 まさか俺も魔法が使えるなんて……」


2人でジャンプしながら喜び、
気づけば手を繋いでジャンプしていた。


「「……あ!」」
「「ご、ごめんなさい」」


驚きつつも手を離す……
二人とも頬が赤いのは魔法を使って、
暑かったからではなさそうだ……
マリアが照れて、チラッと上目遣いで見くる。
そんなマリアが可愛すぎて顔が熱くなってきた。
少し甘い沈黙が流れたが、
耐えきれなくなった護衛の1人が、


「……ゴッホン!」


軽く咳き込んだ。
もう1人の護衛は苦笑いしている。


「クリス、
 この調子で魔法を練習しましょう!」


「は、はい!マリア様」


そして気を取り直して魔法を唱えようと、
先ほどのイメージで唱える。


「ファイアボール!」


火の玉は出たのだが、
先程は感じなかった気怠さと眩暈を感じる。
少しよろめいてしまった……


「クリス!!」


「すいません!少し目眩と立ちくらみが……」


「クリス、失念していました!
 MPが残り僅かかもしれません。
 鑑定してみてください」


初めてなのに魔法を連発したのだ。
その影響だろうか。
鑑定して確認してみよう……


名前:クリス・レガード Lv.5
MP:10
取得スキル:休憩 Lv.1
 スキル使用によりMP全回復。
 使用回数 1日1回

取得魔法:ファイアボール


残りのMPは10だった。
俺は3発のファイアボールを打った。
そして残り10ということは1発当たり10ずつMPを消費したことになる。


「魔力量はMPと呼ばれています。
 無くなると命の危険もあるのです。
 特に0からは生命力を燃やしてしまい、
 死んでしまうかもしれません」


「MPはどのようにして上がるのですか?」


「枯渇に近い魔力を全回復した時に、
 最大値が上がると言われています」


なるほど。
それなら、もしかして……


「クリス、もし宜しければ、
 休憩スキルを試してみませんか?」


マリアからの提案により、
いよいよ休憩スキルを使ってみるのだが、
その結果に2人とも恐ろしい可能性を感じるのであった……
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