上 下
13 / 16
1章

キャンベル編1-1 招待状

しおりを挟む
 ジャスパー学園の学園祭から数日後、キャンベルは郵便受けの中をのぞいてみました。すると、新聞の朝刊ちょうかんのほか、見慣れない紙切れが二枚入っていたのです。

「なんでしょう?これは・・・」キャンベルが郵便受けの中身を持って店の中へと入っていき、見慣れない紙切れを改めて見てみました。それは色とりどりの花がプリントされた紙幣しへいのような紙切れで、黒い筆記体ひっきたいでこう書かれていました、『パラグリラサーカス招待券しょうたいけん』と。それを見たキャンベルは目を丸くしました。

「エルニスさん!これを見てくださいよ!」キャンベルが驚きと喜びの混じった声で叫んだので、エルニスはキャンベルが差し出した招待券を寝ぼけまなこで見てキョトンとしています。
「・・・なにこれ?パラ・・・グリ・・・ラ・・・サー・・・カス?はて・・・?」

「パラグリラサーカスですよ!世界中を飛び回っては、人々を魅了みりょうして去っていくと言われている様々な種族で構成こうせいされた幻想界ファンタジアナンバーワンとまで言われた最高のサーカス団ですよ!」しばらくしてエルニスはハッとしました。

「えっ?ウソでしょ!?予告なしに現れては、ゲリラ興行こうぎょうをしていくあの?チケットを取るのがむずかしいと言われているのに?!なんで、うちのポストに入っていたのかな?」

「それはわかりません、ですが、これは間違いなく本物のチケットです!場所と日時は、本日の町はずれの南の平原です。今日は休みですし、すぐるさんとリリスさん、ボブさんとシェリーさんは今、出かけています。行ってみましょう。

 晴れ渡る空の元、キャンベルとエルニスは城下町を出て、南の平原の方を見てみると、そこには、王冠を逆さにしたような台座だいざの上に赤と白の縞模様しまもようのテントが建っており、その周りにはすでに多くの人々が行きかっていました。

「わぁ、すでに大盛況だいせいきょうだね」
「あっ!あそこで並んでいますよ」キャンベルとエルニスはテントに入る列に並んで、テントに入れるようになるのを今か今かと待っています。

 しばらくして、キャンベルとエルニスは配券の係になっている赤と白の縞々しましまの衣装をまとい、白いメイクをしたピエロにあのチケットを見せました。

「・・・間違いなく、我らがパラグリラサーカスの招待券ですね。キャンベル様にエルニス様、お待ちしておりました。さぁ、中へどうぞ」
「えっ?」キャンベルとエルニスは頭をかしげながらテントの中へと入っていきます。

 テントの中は、中央の広場を中心に、たくさんの観客席がすり鉢状ばちじょう配置はいちされていました。

「わぁ、このテント、やっぱり大きいね」
「ですが、奥の方には観客席がありませんね?なんであそこだけ空いているのでしょう?」キャンベルとエルニスは観客席に上がっていき、手ごろな席に座っていきます。

「やぁ、君たちもサーカスに招待されたの?」キャンベルとエルニスが声のしたほうを振り向くと、そこには紫のブレザーとズボン、ギザギザの赤いマントと紫の山高帽を着用した赤毛のショートヘアーの少女が座っていたのです。

「あら、レミオンさん!」
「おはよう、レミオン!」

 レミオンは両の赤いひとみを向けてくると、笑みを浮かべて挨拶あいさつを返します。
「おはよう、キャンベルちゃんにエルニス君!」そして、間もなく会場の照明しょうめいが落ちました。

 間もなく、広場の中央にスポットライトが照らされ、そこには黒いスーツとシルクハットを着用した金色の毛並みを持つ猫の獣人じゅうじんが立っていたのです。

「皆さま!我らがパラグリラサーカスへようこそ!わたくし、当サーカス団長の『ゴールド・デュランダル』と申します!これより、様々な種族が共鳴し合う世紀のサーカスショーを開始いたします!」

 会場から割れんばかりの拍手はくしゅが起こると、オーケストラ調の音楽が鳴りひびき、会場が一気に明るくなりました。

「まずは、人間のセバスチャンの華麗かれいな玉乗りからご覧ください!」団長の合図とともに、先ほど配券係をしていたピエロの青年が現れ、赤と白の縞模様の大玉に乗って観客席の周囲を移動したかと思うと、そのまま広場の中央へと移動し、どこからか黄色い球が現れ、続いて緑、青の球が現れて、それらの球でジャグリングを始めたのです。

 セバスチャンは大玉に乗っているのにも関わらず、ふらつく様子もなくジャグリングを続けます。さらに、青紫あおむらさきむらさき、赤色、オレンジ色の球が次々に増えていき、セバスチャンは大玉に乗りつつ、七つの球でジャグリングを続けたのです。観客席からは驚きの声が上がります。

 ジャグリングのスピードが上がっていったかと思うと、セバスチャンは七つの球を真上へ放り投げ、右手を鳴らしたと同時に、七つの球はそれぞれの色の花火となって音と光をまき散らしたのです。

 そして、セバスチャンは大玉の上からジャンプして、華麗に着地して会釈えしゃくをしました。会場からはこれまた割れんばかりの拍手やかっさいが巻き起こりました。
「いいぞ!」
「ヒューヒュー!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

太郎ちゃん

ドスケベニート
児童書・童話
きれいな石ころを拾った太郎ちゃん。 それをお母さんに届けるために帰路を急ぐ。 しかし、立ちはだかる困難に苦戦を強いられる太郎ちゃん。 太郎ちゃんは無事お家へ帰ることはできるのか!? 何気ない日常に潜む危険に奮闘する、涙と愛のドタバタコメディー。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。童話パロディ短編集

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

フラワーキャッチャー

東山未怜
児童書・童話
春、中学1年生の恵梨は登校中、車に轢かれそうになったところを転校生・咲也(さくや)に突き飛ばされて助けられる。 実は咲也は花が絶滅した魔法界に花を甦らせるため、人の心に咲く花を集めに人間界にやってきた、「フラワーキャッチャー」だった。 けれど助けられたときに、咲也の力は恵梨に移ってしまった。 これからは恵梨が咲也の代わりに、人の心の花を集めることが使命だと告げられる。   恵梨は魔法のペンダントを預けられ、戸惑いながらもフラワーキャッチャーとしてがんばりはじめる。 お目付け役のハチドリ・ブルーベルと、ケンカしつつも共に行動しながら。 クラスメートの女子・真希は、恵梨の親友だったものの、なぜか小学4年生のあるときから恵梨に冷たくなった。さらには、咲也と親しげな恵梨をライバル視する。 合唱祭のピアノ伴奏に決まった恵梨の友人・奏子(そうこ)は、飼い猫が死んだ悲しみからピアノが弾けなくなってしまって……。 児童向けのドキワクな現代ファンタジーを、お楽しみいただけたら♪

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

月星人と少年

ピコ
児童書・童話
都会育ちの吉太少年は、とある事情で田舎の祖母の家に預けられる。 その家の裏手、竹藪の中には破天荒に暮らす小さな小さな姫がいた。 「拾ってもらう作戦を立てるぞー!おー!」 「「「「おー!」」」」 吉太少年に拾ってもらいたい姫の話です。

処理中です...