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1章

すぐる編1-6 すぐるとブライアン

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 すぐるたちが玉座の間を後にすると、ブライアンも城の外へと出ていきました。アイリス女王はとなりにいるマーリンにたずねます。

「どうなると思いますか?マーリン様」
「さぁ、全く先が読めません、ブライアンは十年に一度ともいうべき魔法の天才ですが、その才能が彼を傲慢ごうまんに変えました。

 元々、ブライアンは貴族の家クリスティーン家に生まれた大人しい少年で、近所の悪ガキたちにいじめられていました。しかし、たまたま通りかかったワシは、彼の魔法使いの才能を見抜き、弟子にならないかとさそいました。

 弟子になりたての頃は、まっすぐな心を持った少年で、きっと素晴すばらしい魔法使いになると確信かくしんしました。しかし、魔法の力に目覚めていくにつれて、彼はその力におぼれるようになり、魔法で自分をいじめていた悪ガキたちに仕返しをするようになったのです。

 今まで自分をバカにしてきた者たちが、自分におびえて逃げていく様子に、ブライアンは心をいためる様子もなく、ただ、高らかに笑い飛ばしました。そんなふるまいをワシは注意しましたが、ブライアンはまるで耳をす様子もなく、

「ぼくに歯向かうからそうなった」とか、「怖がっているやつは勝手かってにビビらせておけばいい」とか、「なんで、魔力を持たない弱い奴に、ぼくが遠慮えんりょしなければならないのですか?」と言う始末しまつです」

「そうですか・・・でも、ブライアンは貴族の生まれで、元々、わがままだったと聞いています」
「一方、すぐるという者は、確かに認定級は『B級』ですが、多くのA級魔導士たちを亡き者にしてきた悪魔王カオスを、すぐるは倒したと聞いています。おそらく、その実力や戦歴せんれきは、A級魔導士のそれを簡単に圧倒あっとうするでしょう。それに・・・」

「・・・どうしたんですか?」アイリス女王が再びたずねます。

「すぐるも今までに自身の『魔力』のせいで、周囲の人間たちにうとまれ続けたそうです、その辺はブライアンと同じ境遇きょうぐうのはずなのに、自身の魔法に対する考え方、向き合い方は、ブライアンのそれとはまるでことなります。

 自分の魔法の力を世のため人のために生かしたいと言うあの言葉にいつわりはないように見えましたし、なにより、ワシの師である魔聖ませいえいじと同じく、まっすぐな目をしていました。

 さすがわが師えいじの孫というべきでしょう。だが、もし、道を間違えるような事があれば・・・」これに、アイリス女王はうなずきました。

「なるほど、ですが、あのすぐるさんに限って、自ら魔の道に行くとも思えません。私はそう思います」
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