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3章 闇の魔女クドラク

クドラク教

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 「えっ!?ウソでしょ!?」
「今学期の登校は絶望的って言われていたのに!?」
「病み上がりとは思えない・・・!」

かぼちゃ町の聖クルス校の高等部の教室でのホームルーム開始直後、生徒たちはおどろきと歓声かんせいを巻き起こしたのです。今、生徒たちの前に、スレンダーな体つきに、ストレートな黒髪のロングヘアーの整った顔立ちをした女子生徒が教師に連れられてやってきました。

「えー、今日からひじりれいさんが学業に復帰することになった!」
「皆さん、よろしくお願いしますわ!」
麗華の受け答えの声は張りがあり、以前は早退することも珍しくなかった病弱びょうじゃくな彼女の面影おもかげはないように見えます。麗華の顔を見たシャノンは首をかしげます。
「あの目は・・・まさかね・・・」

 昼休みの廊下ろうかで、麗華の目の前にウェーブのかかった茶髪にツリ目の女子生徒がやってきました。

「あら、勝子かつこさん、何か?」
「アンタ、本当は仮病で休んでいたんでしょ?か弱くて育ちがよさそうにしていたのも演技ね!?」
勝子が麗華の制服の襟首えりくびをつかむと、麗華は学校でも有名な問題児に対して一歩も引かずに、その手を取ってひねります。

「あら勝子さん、変わっていませんわね、言いがかりはやめて下さる?」
麗華はクスッと笑みを浮かべてさらに手をひねると、勝子は「いたっ!」とわめいて手を払います。
「アイツ、あんなにタフだったかしら?力もやけに強いし、なによりも手が冷たかった・・・!」

勝子は身震みぶるいしながらその場を後にしました。その様子を見ていたシャノンの疑問ぎもんは深まります。

 下校時間になると、シャノンは他の生徒たちと一緒に校門を出ていき、中央街へと差し掛かりました。そこでは十数人の男女が、町を行きかう人々にチラシやポケットティッシュなどを配ったり、電動でんどうメガホンを持って語り掛けています。

「皆さん、クドラク教に入りませんか!?人々にとみをもたらす幸福の教えです!」
「信じる者は救われますよ!」
「私はクドラク教に入ってから病気も治りましたし、マモン財閥ざいばつの社長も、若い頃は貧乏びんぼうのどん底でしたが、クドラク教の信者になってからは、日本の経済けいざいを動かす長者の仲間入りを果たしました!」町の人々はチラシなどを受け取る者もいれば、手を軽く振ってことわる者もいます。

「クドラク教・・・確か、数百年前に東欧で起こった、比較的新しい宗教・・・でも、お父様はクドラク教には近づくなって言っていたっけ・・・!」シャノンは人目を忍ぶように、その場を後にしました。

 翌朝、シャノンはホームルームが始まる前よりも早く、教室に入りました。

「シャノンさん、おはようございますわ」
「ええ、おはよう・・・!」麗華がシャノンに気さくにあいさつをしてきた後、他の生徒たちの話し声が聞こえてきました。

「ねぇ、あの勝子さんが入院したって本当?」
「そうらしいわ、昨夜、町中で絶叫がしたと思ったら、勝子さんが血を流して倒れていたそうよ、その後、救急車で運ばれて一命はとりとめたらしいけど、当分登校できないみたい」
「怖いね・・・!通り魔事件かな・・・?」
「それで、教会が動いたらしいぞ、もしかしたら異種族の仕業か!?」
「そんな化け物、この太蔵たいぞう様が返り討ちにしてやるぜ!」ホームルームの始まりを知らせるチャイムが鳴ると、生徒たちは着席します。
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