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2章 森の危機

2-6 暴君の復活

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 タイラントがカギ爪を持つ太い腕を振りかざすと、エルニスは短剣で爪を受け止めます。

「なんて力だ・・・!」エルニスはどんどん押されて少しよろめくと、タイラントは口から炎を吐きしました。しかし、炎が消えるとそこには、エルニスの姿はありませんでした。

「ヤツめ!?どこに消えた?」

「ここだっ!」上空を見るとそこには、背に白い翼を生やしたエルニスがいたのです。エルニスは素早く飛び回りながら、短剣でタイラントを迎え撃ちますが、タイラントも負けておらず、カギ爪で短剣を受け止め、両者一歩もゆずらない戦いを繰り広げています。

「ああ・・・エルニスさんのピンチですよ!」キャンベルから回復魔法をかけてもらったテイルは立ち上がり、エルフたちに呼びかけます。

「みんな、お願い!エルニスを助けて!」しかし、エルフたちは不平不満ふへいふまんを言うばかりで、レイドの手下たちは、我先にと逃げて行ってしまいました。

「なぜ敵を助けなければならん!?」
「お前、思い出したぞ!我々を裏切って、人間に付いたテイルじゃないのか!?なぜおまえの言うことを聞かねばならん!?」
異種族いしゅぞくを助けてなんになる?!」

 これに、テイルは啖呵たんかを切ってさけびます。
「もういいわ!私たちが助ける!」テイルとキャンベルもエルニスの元に向かいます。

 エルニスが地上にはたき落とされ、壁のすみに追い詰められた時、タイラントの炎が迫ってきたその時でした。突如とつじょ、キャンベルの炎の魔法が、タイラントの炎を押し返し、そのスキに、テイルがエルニスをかっさらいます。

「テイル!キャンベルちゃん!?」

「待たせてごめんね、エルニス」
「わたしも加勢かせいしますよ!あきらめないでください!」

 すると、エルニスは心が高鳴るのを感じると同時に、彼の全身が光に包まれ、光が収まると、エルニスの姿は人の姿ではなく、背中に白い翼を持つ、空色のウロコがある恐竜の本体に、頭に二本の銀色の角、大きく鋭いカギ爪を持つたくましい手足をそなえた、金色のひとみを持つりゅうの姿になっていたのです。

「あの姿は・・・まさか!?」テイルがおどろいていると、キャンベルはうなずきました。
「間違いありません!神々に仕えるとされる伝説の竜『エンゼルドラゴン』です!」

「そんなもの・・・恐れるに足らん!」

 タイラントが炎を吐きだすと、竜になったエルニスは、天使の翼の羽ばたき一つでかき消してしまい、全身からまばゆい電撃でんげきをスパークさせ、両手を向けていかづちを放ちました。

「うぉおおおおっ!」電撃を受けたタイラントの体は炭のように真っ黒になり、その場で崩れ落ちていきました。

 エルニスが元の人の姿になると、黒い灰の塊は風で吹き飛ばされていき、その中から、十歳にも満たない、ぼろの服を着たエルフの少年が現れたのです。

「こんな小さな子供があの悪魔の正体だったのか!?」少年は起き上がって叫びます。

「小さいって?みんなそう言うんだ!エルフと人間の間に生まれたボクは、エルフたちからは半端者はんぱものとして仲間外れにして、人間たちは大したちからのないボクをバカにするだけバカにした!

 ある時、ボクはカオスと言う悪魔と出会い、人間とエルフに復讐ふくしゅうするべく力をもらったんだ・・・!」これに、テイルは周りにいたエルフたちに語り掛けます。

「聞いた!?差別する心が、この子を悪魔にしてしまったことを!エルフと異種族が手をとりあったからこそ、人間とエルフ両方の脅威きょういであるあの悪魔に勝てたことを!このままだったら、また第二、第三のタイラントが現れるからね!」

「皆さん!私たち、みんなボロボロです!戦いに身を投じるとは、こういう事なんですよ!」

 これに、エルフたちはしばらく黙りこみましたが、やがて口々にこう言いました。

「やっぱり、戦いなんて嫌だ!」
「レイドさん、やはり私は人間とあらそう事を望みません!」
 塔の外に去っていくエルフたちを見たレイドは、力なくその場を後にしました。

 あの後、キャンベルはエルフの里に入ることを許され、薬を買う事ができたおかげで、マジカの領主りょうしゅバーサの病気はすっかり良くなったのです。これに、マジカの人たちはキャンベルの周りに集まり、彼女の活躍かつやくをたたえました。

「あなたのおかげで、バーサさんの病気も良くなりましたし、エルフたちも、あなたたちに感謝かんしゃしているみたいですよ」
「そうですか、よかったです」キャンベルはそばにいたリンと目があいましたが、リンはフンとそっぽを向いて去っていきました。
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