となりの音鳴さん

翠山都

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置き餌問題

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 お隣さんには恵まれたが、問題がまったくないわけではない。むしろ人が住んで集まる限りは、まったくないことなんてのはあり得ないんじゃないかと思う。私はこれまでに六度引っ越しを経験したが、どの場所でも必ず何らかの問題を抱えていた。
 コーポ強井における問題は、一つは住人に関連するもの、そしてもう一つは周辺地域に関連するものだ。
 コーポ強井の一階は、四階とは対照的に、単身者のお年寄りばかりが部屋を借りている。大抵のお年寄りにとって階段の上り下りはつらいから、エレベーターのないこのアパートの一階にお年寄りが多くなるのは、まあ納得だ。
 そのこと自体はいいのだけれども、このお年寄り連中、アパートの周辺に寄りつく猫や鳩なんかにエサをやる。多くの集合住宅につきものの、置き餌問題だ。
 長期間にわたって動物にエサをやり続けると、それらはエサを貰える場所の付近にコロニーをつくり、その地域一帯に猫やら鳩やらが集まってくるようになる。
 本来なら猫が多い場所には鳩が集まってこないことが多いのだが、この猫たちは人間からエサを貰えるため、わざわざ鳩を襲わない。そのため、地域に猫の数が増えるのに、鳩の数も増えるという不自然な現象が生まれる。エサやりをする人間が住人の中にたった一人いるだけで、そういう現象が起きてしまうのだ。
 しかもこのコーポ強井では、一階に住むお年寄り全員が連帯して、動物へのエサやりをやってしまっているらしいのだった。
 動物が集まってしまうことで一番困るのは糞害だ。集まった動物たちはそこらかしこで糞をするから、道を歩くときにはよく気をつけないといけない。
 階段に猫の糞が落ちていることもある。こういうのも、住んでみなければわからないことの一つだ。私が住んでいるのは四階だからかまだ経験してはいないが、ドアを開けたらそこに猫のおしっこがひっかけられていたり、猫の糞が落ちていて、ドアで挟みつぶしてしまったりなんていう事態もあるらしい。急いで出かけなきゃいけないというときにそのような事態にぶつかったら、いろいろと大変なことになるだろうし、大きな怒りを覚えることだろう。
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