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おとなりさん
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コーポ強井では毎週月曜日と木曜日が普通ゴミ回収の日になっている。本来は当日の朝に出すのがルールなのだが、前日の夜くらいなら黙認してくれている。
私は基本的にはルールを守って当日の朝、出勤前などにゴミ出しをすることにしているのだが、月曜木曜に特別な用事が入ったりする場合には、心の中で謝りながら前日夜にゴミを出すことがある。
そんないつもと行動パターンが違った日に、私はゴミ置き場で今まで見たことのない住人を見かけた。
痩身の背の高い女性で、どことなく存在が希薄そうな人だった。出会ったのがゴミ捨て場でなく街中だったら、きっと見逃していただろう。
こんばんは、と先に挨拶をする。前に住んでいた団地では、やけにルールに厳しいおばさんが同じ棟に住んでいて、あまりに厳しくルールを破った人間を注意するどころか、ときには自分ルールとしか思えないようなルールまで押し付けてきて、ほぼ毎週のように誰かと何らかのトラブルを起こしていた。私もそのおばさんとはできるだけ顔を合わせないよう気を付けていたものだ。
このコーポ強井に引っ越してきてからはまだ、そういう人物とは出会っていないが、すべての住人を知っているわけでもない。だから、こういう場合には注意するようにしていた。
その女性から返ってきたのが普通のあいさつで、その女性もまた前日にゴミ出しをしているようなのを見て、ほっとした。
その流れで自己紹介をして、その女性が四〇四号室の住人、音鳴さんだと知ったのだ。
「引っ越してきたときにも一度伺ったんですけど。ご挨拶が遅れてすみません」
「いえ……こちらにはほとんど……寝に帰ってきているようなものなので」
部屋にいることが少ないのだという音鳴さんの言葉を聞いて、住んでる様子があまりないことに納得できた。
「あまり顔を合わす機会はないかもしれませんが……お隣どうしよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
最初の印象は、見た目は影が薄くて陰気そうだけど、丁寧で悪い人じゃなさそうだというものだった。
私は基本的にはルールを守って当日の朝、出勤前などにゴミ出しをすることにしているのだが、月曜木曜に特別な用事が入ったりする場合には、心の中で謝りながら前日夜にゴミを出すことがある。
そんないつもと行動パターンが違った日に、私はゴミ置き場で今まで見たことのない住人を見かけた。
痩身の背の高い女性で、どことなく存在が希薄そうな人だった。出会ったのがゴミ捨て場でなく街中だったら、きっと見逃していただろう。
こんばんは、と先に挨拶をする。前に住んでいた団地では、やけにルールに厳しいおばさんが同じ棟に住んでいて、あまりに厳しくルールを破った人間を注意するどころか、ときには自分ルールとしか思えないようなルールまで押し付けてきて、ほぼ毎週のように誰かと何らかのトラブルを起こしていた。私もそのおばさんとはできるだけ顔を合わせないよう気を付けていたものだ。
このコーポ強井に引っ越してきてからはまだ、そういう人物とは出会っていないが、すべての住人を知っているわけでもない。だから、こういう場合には注意するようにしていた。
その女性から返ってきたのが普通のあいさつで、その女性もまた前日にゴミ出しをしているようなのを見て、ほっとした。
その流れで自己紹介をして、その女性が四〇四号室の住人、音鳴さんだと知ったのだ。
「引っ越してきたときにも一度伺ったんですけど。ご挨拶が遅れてすみません」
「いえ……こちらにはほとんど……寝に帰ってきているようなものなので」
部屋にいることが少ないのだという音鳴さんの言葉を聞いて、住んでる様子があまりないことに納得できた。
「あまり顔を合わす機会はないかもしれませんが……お隣どうしよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
最初の印象は、見た目は影が薄くて陰気そうだけど、丁寧で悪い人じゃなさそうだというものだった。
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