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歓びの里 [ランド、七日間の記録]編
日録6 中指の美丈夫
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「「チュン兄…っ!」」
双子の姉妹が同時に振り返る。
「――…ったく、部屋の外まで丸聞こえだぞ。話に夢中になって仕事、おろそかにすんじゃねえよ」
腹の下で、”チュン兄”と呼ばれた男の溜め息まじりの声が聞こえる。男はやれやれとばかりに、先ほど脱出したばかりの部屋の扉をくぐろうと、一歩足を踏み出した。
(せっかくの脱出の機会が…)
一瞬の逃走劇に、落胆の声が胸の内で洩れる。
「”チュンジ”――頭、気をつけろよ」
「お?…おお、悪いあんがとよ。何度ぶつけても慣れねえ。扉、低くねえか?」
男は礼を言うと、腰をかがめながら、そろそろと慎重に扉をくぐる。
「馬鹿、お前がクソでかいんだ。それにぶつけたところで、これ以上悪くなる頭もあるまい。俺が気をつけろって言ったのは、客人の頭をぶつけるなって意味だよ」
後ろから続く男の言葉はなかなか辛辣だ。チラリと目を上げると、すぐ後ろからついてくるのは、こちらも背の高い男の姿。
彼もまたエンジュと同じ翠玉色の髪の持ち主だった。
何本も編んだ細い三つ編みを、後ろですっきりと一つに束ねている。
切れ上がった淡い緑色の眼差しは鋭いものの、目が合ってニコリと笑うと、思いのほか優しい印象になる。
身にまとうのは、左右の襟を斜めにうち合わせた垂領の袍。裾を膝までたくし上げ、美しい色彩の帯を腰にしっかり巻きつけて押さえている。
裾からすらりと伸びる足には革のすね当てを巻き、足もとには動きやすそうな短靴が見える。
男は右袖を通さず肩を落とし、中に着た無地の白い襯衣をのぞかせていた。そうすると華やかな文様柄が白に映えて、一層際立って見えた。
衣の上からでもそれとわかる厚い胸板に、張り詰めた逞しい筋肉。男のランドですら惚れ惚れとするような美丈夫だ。
おぼろげに、自分はこうなりたいと思い描いた姿が目の前にあった。羨望の眼差しを浮かべてやしないだろうかと、ランドはそっと目を伏せる。
今の自分は、まるで荷物か子供のように、男の肩に担ぎ上げられている状況だ――この差はどうだろう。
確かに大人たちに比べると、体の厚みはまだまだ足りないという想いはある。それでもこんな風に軽々と肩に担がれるほど、貧弱ではないはずなのに。
そんなことを考えると、なんだか胸の辺りがモヤモヤとする。
視線を感じて目線を上げると、じっとこちらを見ていたのか男の視線とぶつかった。面白がるような気持ちを隠しもしない、淡い緑の瞳。
反射的に目を逸らしかけた途端――目の前から男の姿が消えた。勢いよく体がぐるんと半回転する。ランドを担いだまま、男が体ごと勢いよく振り返ったのだ。
落とさないと分かっていても、思わず男の背中を掴む手に力が込もる。
「――黙って聞いてりゃ、馬鹿だのクソだのいいたい放題言いやがって…っ。俺がクソでかいって言うんなら、お前だってクソでかいってことだからな?」
「馬鹿め。客人を抱えたまま雑に動くんじゃねぇ。すぐに頭に血がのぼんのはてめえの悪いところだぞ。降ろして差し上げろ」
ちっと鋭く舌打ちをして、男は吐き捨てるように言った。
口惜し気に言葉をつまらせたものの、チュンジと呼ばれた男は言われた通り、肩に担いだランドの体をそっと床に下ろす。
「その…乱暴に扱ってしまい、すまない」
「すまないじゃなくて、申し訳ありません――な。は~つくづく見た目だけでもお前と一緒だなんて、マジありえねえ」
床に下ろされて、ランドは向かい合う二人を見上げた。そこには、見た目も背丈も身につけるものまで瓜二つの美丈夫の姿があった。
ランドは思わず息を呑む。――目が奪われるほど見目のいい双子。これはこの里に住まう者の必須条件なのだろうか。
ランドが口も利けず、棒を呑んだように立ち尽くしていると、男たちがそれに気づいてこちらに向き直った。
「はは――おんなじ顔が二つも並ぶとびっくりするよなあ」
チュンジがクシャリと破顔する。二つ並んだ顔をまじまじと見比べながら、顔どころの話ではないとランドは改めて息を呑む。
背丈はもちろん体型も同じ。さらに、まるで鏡に映った自分のように、向かい合った同じ位置に黒子まである。そんなところまで一緒なのだ。
「一緒にすんじゃねえつったろ。見た目は瓜二つでも、お前は自分の身の丈も分からず、頭をぶつけるしか能のない木偶の坊。俺はこのかた屋敷の中で頭をぶつけるなんざトンマな真似をしたことはないからな」
「――おまえな…っ」
さらに言い争いが続くかと思った時。
「――およしになってくださいませ。お客様の前です。本当にもう…顔を合わせれば子供のように口喧嘩ばかり…」
呆れたような声が二人の間に割り込んだ。青い前掛け――ウコムジだ。
「う…む、だがこいつが…」
そう反論しかけた男に、今度は赤い前掛け――サコムジが溜め息まじりに叱りつける。
「チュンジ兄様は口では勝てっこないのですから、わざわざ相手の土俵で無謀な勝負をなさる必要はないでしょう」
サコムジの言葉に、チュンジがあからさまに渋い顔をする。それでも言い返さない辺り、あながち間違いでもないのだろう。
納得いかないとばかりに口を尖らす男に、今度はウコムジが言い募る。
「私ごときが差し出口ですが、どこで戦うのか――またどう戦うのか。それが闘いの勝敗を決するということを、何よりお兄様が一番ご存知なのではありませんか?」
ぐうの音もでないほど正論である。たおやかな女人たちに諭される大きな姿を横目に見ながら、同じ男としてランドは心から同情した。
「それでお兄様方は、お揃いでどのようなご用向きでこちらに来られたのですか?」
ひとしきりチュンジを諭してすっきりしたウコムジが改めて問うた。
「巡回がてらご挨拶に…だな。こちらに主が招き入れた客人がいると聞いた。お守りする俺らが顔も合わせないというのはおかしな話だろ?」
「それはその通りですが…お客様は先ほど起きたばかりですのよ? これからお支度もありますし」
そう言って、自身の手の中の洗面器を軽く掲げてみせる。
「固いこと言うな。俺らが通りかからなかったら、客人はまんまと部屋から抜け出してたんだぞ」
ウコムジとサコムジは顔を見合わせる。
男の言う通りなので、ぐうの音も出ないようだ。溜め息を一つこぼすと。
「…あまりお時間はかけられませんよ?」と念を押して、一歩後ろに下がる。
それと入れ替わりに男たちが一歩前に進み出た。
「お初にお目にかかる…ランド様。俺たちはこの屋敷を護衛する”中指”」
見た目も同じで名前も同じ――これも同じだ。思わず彼らの背後に控える美しい双子の姉妹を見る――だがその前に、男の声がランドの意識を引き戻した。
「――と言いたいところだが」
視線を戻してランドはぎょっとする。目の前の男がそれはもう嫌そうに顔をしかめ、さらには盛大な溜め息を吐いたからだ。
「…こいつと同じってのはどうにも我慢ならねえ。俺のことは長い指…“長指”と呼んでくれ」
その隣で苦笑まじりにもう一人が続く。
「俺はチュンジでいい。よろしくな。坊主」
並び立つ二人は、見れば見るほど瓜二つ。だが並べると、決定的に違うところがひと目で分かった。その顔つきだ。
チャンジは人当たりのいい笑顔を絶やさず、一見優し気だ。しかし何を考えているのか、その表情からは全く読み取れない。
先ほどからのやり取りを見る限り、頭の回転が早いということは分かるものの、どういう性格なのかは今だに掴めずにいる。
ところがチュンジにはそれら複雑で曖昧なところが一切ない。見るからに裏表のない大らかな笑顔。
おそらく腹にイチモツを抱えることには縁遠く、考えるより先に体が動く、そんな感じの人柄に見えた。
「お兄様方、挨拶はお済みになりましたか?」
「ああ――ところでお前たち、先ほど部屋の中から『小褲』とか聞こえたが…」
チャンジがちらりとランドに視線を走らせ、そのまま姉妹を振り返る。
「まさか――ひん剝いたのか?」
その言葉に、ランドは真っ赤になって顔を下げ、二人の姉妹は揃って顔を赤らめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでいただき、ありがとうございます。
次話はひとまず三日後に更新予定ですm(__)m
まだ安定せず、不定期で申し訳ありません。
次回更新も頑張りますので、
どうぞよろしくお願いします。
双子の姉妹が同時に振り返る。
「――…ったく、部屋の外まで丸聞こえだぞ。話に夢中になって仕事、おろそかにすんじゃねえよ」
腹の下で、”チュン兄”と呼ばれた男の溜め息まじりの声が聞こえる。男はやれやれとばかりに、先ほど脱出したばかりの部屋の扉をくぐろうと、一歩足を踏み出した。
(せっかくの脱出の機会が…)
一瞬の逃走劇に、落胆の声が胸の内で洩れる。
「”チュンジ”――頭、気をつけろよ」
「お?…おお、悪いあんがとよ。何度ぶつけても慣れねえ。扉、低くねえか?」
男は礼を言うと、腰をかがめながら、そろそろと慎重に扉をくぐる。
「馬鹿、お前がクソでかいんだ。それにぶつけたところで、これ以上悪くなる頭もあるまい。俺が気をつけろって言ったのは、客人の頭をぶつけるなって意味だよ」
後ろから続く男の言葉はなかなか辛辣だ。チラリと目を上げると、すぐ後ろからついてくるのは、こちらも背の高い男の姿。
彼もまたエンジュと同じ翠玉色の髪の持ち主だった。
何本も編んだ細い三つ編みを、後ろですっきりと一つに束ねている。
切れ上がった淡い緑色の眼差しは鋭いものの、目が合ってニコリと笑うと、思いのほか優しい印象になる。
身にまとうのは、左右の襟を斜めにうち合わせた垂領の袍。裾を膝までたくし上げ、美しい色彩の帯を腰にしっかり巻きつけて押さえている。
裾からすらりと伸びる足には革のすね当てを巻き、足もとには動きやすそうな短靴が見える。
男は右袖を通さず肩を落とし、中に着た無地の白い襯衣をのぞかせていた。そうすると華やかな文様柄が白に映えて、一層際立って見えた。
衣の上からでもそれとわかる厚い胸板に、張り詰めた逞しい筋肉。男のランドですら惚れ惚れとするような美丈夫だ。
おぼろげに、自分はこうなりたいと思い描いた姿が目の前にあった。羨望の眼差しを浮かべてやしないだろうかと、ランドはそっと目を伏せる。
今の自分は、まるで荷物か子供のように、男の肩に担ぎ上げられている状況だ――この差はどうだろう。
確かに大人たちに比べると、体の厚みはまだまだ足りないという想いはある。それでもこんな風に軽々と肩に担がれるほど、貧弱ではないはずなのに。
そんなことを考えると、なんだか胸の辺りがモヤモヤとする。
視線を感じて目線を上げると、じっとこちらを見ていたのか男の視線とぶつかった。面白がるような気持ちを隠しもしない、淡い緑の瞳。
反射的に目を逸らしかけた途端――目の前から男の姿が消えた。勢いよく体がぐるんと半回転する。ランドを担いだまま、男が体ごと勢いよく振り返ったのだ。
落とさないと分かっていても、思わず男の背中を掴む手に力が込もる。
「――黙って聞いてりゃ、馬鹿だのクソだのいいたい放題言いやがって…っ。俺がクソでかいって言うんなら、お前だってクソでかいってことだからな?」
「馬鹿め。客人を抱えたまま雑に動くんじゃねぇ。すぐに頭に血がのぼんのはてめえの悪いところだぞ。降ろして差し上げろ」
ちっと鋭く舌打ちをして、男は吐き捨てるように言った。
口惜し気に言葉をつまらせたものの、チュンジと呼ばれた男は言われた通り、肩に担いだランドの体をそっと床に下ろす。
「その…乱暴に扱ってしまい、すまない」
「すまないじゃなくて、申し訳ありません――な。は~つくづく見た目だけでもお前と一緒だなんて、マジありえねえ」
床に下ろされて、ランドは向かい合う二人を見上げた。そこには、見た目も背丈も身につけるものまで瓜二つの美丈夫の姿があった。
ランドは思わず息を呑む。――目が奪われるほど見目のいい双子。これはこの里に住まう者の必須条件なのだろうか。
ランドが口も利けず、棒を呑んだように立ち尽くしていると、男たちがそれに気づいてこちらに向き直った。
「はは――おんなじ顔が二つも並ぶとびっくりするよなあ」
チュンジがクシャリと破顔する。二つ並んだ顔をまじまじと見比べながら、顔どころの話ではないとランドは改めて息を呑む。
背丈はもちろん体型も同じ。さらに、まるで鏡に映った自分のように、向かい合った同じ位置に黒子まである。そんなところまで一緒なのだ。
「一緒にすんじゃねえつったろ。見た目は瓜二つでも、お前は自分の身の丈も分からず、頭をぶつけるしか能のない木偶の坊。俺はこのかた屋敷の中で頭をぶつけるなんざトンマな真似をしたことはないからな」
「――おまえな…っ」
さらに言い争いが続くかと思った時。
「――およしになってくださいませ。お客様の前です。本当にもう…顔を合わせれば子供のように口喧嘩ばかり…」
呆れたような声が二人の間に割り込んだ。青い前掛け――ウコムジだ。
「う…む、だがこいつが…」
そう反論しかけた男に、今度は赤い前掛け――サコムジが溜め息まじりに叱りつける。
「チュンジ兄様は口では勝てっこないのですから、わざわざ相手の土俵で無謀な勝負をなさる必要はないでしょう」
サコムジの言葉に、チュンジがあからさまに渋い顔をする。それでも言い返さない辺り、あながち間違いでもないのだろう。
納得いかないとばかりに口を尖らす男に、今度はウコムジが言い募る。
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ぐうの音もでないほど正論である。たおやかな女人たちに諭される大きな姿を横目に見ながら、同じ男としてランドは心から同情した。
「それでお兄様方は、お揃いでどのようなご用向きでこちらに来られたのですか?」
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「巡回がてらご挨拶に…だな。こちらに主が招き入れた客人がいると聞いた。お守りする俺らが顔も合わせないというのはおかしな話だろ?」
「それはその通りですが…お客様は先ほど起きたばかりですのよ? これからお支度もありますし」
そう言って、自身の手の中の洗面器を軽く掲げてみせる。
「固いこと言うな。俺らが通りかからなかったら、客人はまんまと部屋から抜け出してたんだぞ」
ウコムジとサコムジは顔を見合わせる。
男の言う通りなので、ぐうの音も出ないようだ。溜め息を一つこぼすと。
「…あまりお時間はかけられませんよ?」と念を押して、一歩後ろに下がる。
それと入れ替わりに男たちが一歩前に進み出た。
「お初にお目にかかる…ランド様。俺たちはこの屋敷を護衛する”中指”」
見た目も同じで名前も同じ――これも同じだ。思わず彼らの背後に控える美しい双子の姉妹を見る――だがその前に、男の声がランドの意識を引き戻した。
「――と言いたいところだが」
視線を戻してランドはぎょっとする。目の前の男がそれはもう嫌そうに顔をしかめ、さらには盛大な溜め息を吐いたからだ。
「…こいつと同じってのはどうにも我慢ならねえ。俺のことは長い指…“長指”と呼んでくれ」
その隣で苦笑まじりにもう一人が続く。
「俺はチュンジでいい。よろしくな。坊主」
並び立つ二人は、見れば見るほど瓜二つ。だが並べると、決定的に違うところがひと目で分かった。その顔つきだ。
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「ああ――ところでお前たち、先ほど部屋の中から『小褲』とか聞こえたが…」
チャンジがちらりとランドに視線を走らせ、そのまま姉妹を振り返る。
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その言葉に、ランドは真っ赤になって顔を下げ、二人の姉妹は揃って顔を赤らめた。
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