ワンナイトラブの思い出

ワンナイトラブの思い出 2

　私が響輝くんと出会う一年ぐらい前だったかな。あのときの私はホントに淫乱ドスケベ女で、アプリで男漁りしまくってた。相手にも困らなかったから、さながらバイキングみたいな感じでアレコレ食い散らかしてたんだよね。

　基本的に相手は社会人が多かったけど……あるときたまたま大学生男子のアカウントが目についた。プロフによると某難関大学に通っていて、しかも身長が190センチもあるらしい。今まで出会った男にそこまで背丈のある男はいなかったから、ちょっと興味が出ちゃったんだよね。

　ああいうアプリって女側から声かけたら、男側は喜ぶだろうって思うじゃん？ それが意外とそうとも限らないんだよね。むしろ私みたいなのが自分からアプローチかけたら「こいつサクラじゃね？」って男側に思われちゃうみたい。中高生の頃は「男子からコクると失敗するけど、女子からだと成功しやすい」ってのがよく言われてたけど、オンラインで大人同士ってなると違うよねそりゃあ。

　そんなこんなで、私はちょっとした出来心から、タクミくんって名前の190センチ大学生くんに接触を試みた。最初は「やっぱサクラ疑われるかな……」って思ったけど杞憂で、すんなり会う約束ができた。

　あの日も今日と同じで、カラッカラの寒風が吹く日だった。待ち合わせの駅で会ったときは、「うわっ、でっか」って思った。身長180センチでさえ結構レアなのに、190ってなったらそりゃあね。最初は数字を盛ってる可能性も考えたけど、そこは正直だったみたい。顔はすごく整ってるってワケじゃないんだけど、割と知的な感じがしなくもない……っていうのは先入観ってヤツかな。「身長190がガチなら、某難関大学の学生ってのもホントでしょ」みたいな思い込みが、私にそう感じさせたのかもしれない。

　ホテルに行くまでの道中、私たちの間に会話はなかった。なんだっけ……私が「190ある人ってなかなか会ったことないんだよね。すごいなぁ」みたいなこと言ったら、思ったよりあちらが不機嫌な感じになったんだっけ。よく覚えてないけど、そんな流れだったかなぁ。まぁでも私も向こうもヤるモードだったから、そこで別れたりはしなかったけど。

　んで……ホテルの部屋でいざ一発！ って流れになったんだけど、そしたらなんか急に向こうが赤ちゃんっぽくなって……ベッドに押し倒されて脱がされた後、全裸の私に覆いかぶさってきて、めっちゃベロベロおっぱい舐めてきたんだよね。なんかもう、おっぱいというか乳首への執着がすごくって。デッカい男なのになんだか赤ちゃん返りしちゃったみたいに思えてさ、正直ちょっと引いたんだよね。赤ちゃんはかわいいけどデッカい赤ちゃんはキツかったよ……

　まぁそんなこんなで怖くなっちゃったから、「口でしてあげる」って言って……それでサクッと射精させてさ、賢者モードにさせてから帰ろうとしたんだよね。あそこのホテルは部屋の中にお金払う機械があって、そこにクレカか現金入れるシステムになってた。いっつも男の人に出してもらってたから、彼も払ってくれるかなー……なんて思ってたけど、そしたら彼、「俺貧乏大学生で、お金とか全然なくて……」みたいな話してきたんだよね。そっから連鎖する感じで、彼の身の上話が始まったんだったかな。

　彼、ずいぶんとタイヘンな人生だったらしい。もう細かいところはあんまり覚えてないんだけど、父子家庭で育って、父親には虐待されてて……みたいな内容だったと思う。私も片親家庭で、母親にはほぼ構ってもらえなかったから、片親家庭同士ってこともあってなんだか共感しちゃったんだよね。そしたら向こうはあからさまに不機嫌な感じになってさ、マジで空気が冷えっ冷えだったよ。外で吹いてる寒風が、部屋の中に吹き込んできたんじゃないかってレベルの冷えっぷり。私も「あ、ヤベ、地雷踏んだ」って思ったよ。

　もう逃げたくてしょうがなかったから、さっさと機械にクレカ差し込んで決済。そのままサササッとホテルから脱出した。思えばホテル代払ったの、あのときぐらいだったなぁ。会ってヤる男は社会人ばっかりだったから、いっつも向こうが出してくれたんだよね。でもまぁこのときの相手は貧乏大学生だし、私は有り余るレベルでお金持ってるから、こっちがホテル代払うことに不満はないけどさ。