上 下
51 / 83

第51話.イライラの原因

しおりを挟む
『はいどうもみなさんこんばんはー』

1人で部屋にいるとどうしようもなくモヤモヤする。普段ならそんなことはまったくないが今日は違う。

りえが姉ちゃんに拉致された。

拉致されたといっても壁を1枚隔てたその先にいるのだが。しかしあの姉ちゃんのことだ、なにをしでかすか分かったもんじゃない。

さっきの笑い声はなんだったのだろう。まさかりえのことを焼いて食おうとか考えてないよな。さっきの笑いは絶対りえにちょっかい出してる。シンデレラに毒リンゴを渡した魔女みたいな笑い声だった。

ん? 足音が近づいて来てるような・・・・・・。

「幸一お待たせ、りえちゃん良い子だねー! あんたにはもったいないよ!」

こいつはなにを言ってるんだ。僕とりえは恋人同士とか、そういう関係じゃない。そりゃそういうことを考える日がなかったこともないけど、それでも良い友達として節度は保っている。

「別に、そんなんじゃないよ」

若干イライラしながら返事する。

僕はなんでこんなにイライラしているんだろう?

「あ、そうなの? まあでも、仲良いのはいいことだ」
「・・・・・・りえは?」
「リビングで待ってもらってる」
「ふーん」

姉ちゃんの脇を足早に通り抜けリビングに向かう。りえはまだちょっと緊張の余韻が残る顔でチョコンと座っていた。

「あ、幸一くん」
「りえ、姉ちゃんになんか変なこと言われなかった?」
「ううん、みづきさん良い人だね!」

良い人? 催眠術でもかけられたのか。「そ、そう?」 でもまあ、身内の印象が良くてなにより。「あのお姉さん怖い! もう来ない!」 とか言い出したらどうしようかと思った。

「りえちゃんゆっくりしていけば? ご飯作ってあげるよ」
「え? いいんですか?」
「いいよ、リクエストがあれば応えるし」

今日は姉ちゃんの手料理か、りえも一緒に食卓を囲むなら楽しい食事になりそうだ。まだお昼前だが、良い1日になりそうな予感がする。

「じゃあナポリタンが食べたいです」
「ナポリタンかー」

姉ちゃんの表情が若干曇る。まさか作れないなんて言うはずないよな、あんなの僕でも作れるぞ。「具材あったかなあ」 ああそこの心配か。僕は冷蔵庫の中身なんてロクに確認しないけど多分あるだろ。

「りえ、僕の部屋で遊ぼう」
「え、あ、うん」

あれこれ悩む姉ちゃんを尻目に僕の部屋に招待した。もちろんやましい意味ではない。姉ちゃんがナポリタン作ってる間に動画でも見て過ごそう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、昨日まで

ヘロディア
恋愛
幸せな毎日を彼氏と送っていた主人公。 今日もデートに行くのだが、そこで知らない少女を見てから彼氏の様子がおかしい。 その真相は…

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?

パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」 「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」 カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦 初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました! その後のお話もあるので良ければ

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。

ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は 愛だと思っていた。 何度も“好き”と言われ 次第に心を寄せるようになった。 だけど 彼の浮気を知ってしまった。 私の頭の中にあった愛の城は 完全に崩壊した。 彼の口にする“愛”は偽物だった。 * 作り話です * 短編で終わらせたいです * 暇つぶしにどうぞ

sweet!!

仔犬
BL
バイトに趣味と毎日を楽しく過ごしすぎてる3人が超絶美形不良に溺愛されるお話です。 「バイトが楽しすぎる……」 「唯のせいで羞恥心がなくなっちゃって」 「……いや、俺が媚び売れるとでも思ってんの?」

聖女は妹ではありません。本物の聖女は、私の方です

光子
恋愛
私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。 特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。 「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」 傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。 でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。 冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。 私は妹が大嫌いだった。 でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。 「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」  ――――ずっと我慢してたけど、もう限界。 好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ? 今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。 丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。 さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。 泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。 本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。 不定期更新。 この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めのか
恋愛
セヴィリエ伯爵令嬢クララは、幼馴染であるノランサス伯爵子息アランと婚約していたが、アランの女遊びに悩まされてきた。 ある日、アランの浮気相手から「アランは私と結婚したいと言っている」と言われ、アランからの手紙を渡される。そこには婚約を破棄すると書かれていた。 失意のクララは、国一番の変わり者と言われているドラヴァレン辺境伯ロイドからの求婚を受けることにした。 主人公が本当の愛を手に入れる話。 独自設定のファンタジーです。 さくっと読める短編です。 ※完結しました。ありがとうございました。 閲覧・いいね・お気に入り・感想などありがとうございます。 ご感想へのお返事は、執筆優先・ネタバレ防止のため控えさせていただきますが、大切に拝見しております。 本当にありがとうございます。

処理中です...