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29 五歳児の試練 17 ※
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効いたのはウルロワ様の薬か、メイファー様の薬か、ラスカー兄様の毒か。
別荘に来たのが深夜三時頃。四時間程しか眠っていないにも係わらず朝の目覚めはすっきりしていて体も軽い。
目の前にはとびきりハンサムな笑顔。
「お早うルスラン。眠かったらもっと寝ていて良いんだよ」
隣で眠っていた兄様が、僕の前髪を梳いて顔中に朝の挨拶のキスをしてくれる。
「お早う、兄様。よく眠れて体の調子も良いんだ。僕より兄様は?大丈夫?」
兄様の頬や額に掌を当てて異常が無いか確かめる。
「私も調子が良い。何よりお前が側に居てくれるからね。最高な朝だ」
僕の目を見つめ微笑みながら掌に口付ける兄様はいつもの兄様だ。
朝日で髪がキラキラ光る兄様は王子様度が増しているけど。うぅ、眩しい。
「よかった……」
昨日より随分顔色が良い。
「でも兄様、今は大丈夫でもこの先はどうなの?メイファー様にお願いして対応策を考えるとか……」
「いや、これは私の心の問題だ。研究院に頼るのは正直気乗りしない。実験動物のような扱いはされたくないしね」
「メイファー様は凄く親切な方だったよ?あの方なら……」
「研究者というのは自身の知的欲求の為なら何でもする生き物だ。それに私は自分で能力を把握して対応したい。前向きにね」
「兄様……兄様なら出来るよ、きっと」
兄様から「前向きに」って言葉が聞けて嬉しい。やっぱりポジティブシンキングは大事だよね。
「ではルスランの怪我を確認しよう」
「え?大丈夫だよ。痛みも全然無いし」
「いや、ちゃんと確かめないと。こんなに綺麗な肌に傷が一つでも残ったら大変だ」
兄様が毒の影響など感じさせない素早さで起き上がり、喋りながら寝間着を脱がされ体を傾けられる。僕は寝台の上で兄様にされるがままだ。自分が猫に遊ばれてコロコロ転がる毛糸玉のような気がしてきた。
常備されていたラスカー兄様の寝間着の上だけを着ていたから、脱がせるのは簡単だ。僕はまだこの別荘に来たことは無く、合うサイズの下着が無かった。
素っ裸で寝台にちょこんと座らされ、左腕を上げられて二の腕の裏を軽く唇で挟まれた。
「そ、こは、痣になってない、でしょ?」
「痣に出ていないだけかもしれない。触れたら痛いかもしれないよ?」
だから優しく確認しないと、とはむはむ唇で噛んで確認される。
う……気持ちいい。
「ここは……大丈夫だね……ふふ、柔らかい」
肘から二の腕を肩に向かって確認した後、コロリと横にされ、肋骨は舌で探るようになぞられ、脇腹はまた唇で挟まれる。
同時に手も体中を優しく摩られるから、あまりの気持ち良さに全身の力が抜ける。
「少し痣が残ってる。全部舐めて治そう」
兄様が舐めたりした後は薄荷を塗ったようにスーッとした後にぽかぽかしてきて気持ちいい。
ぽーっとしている内に、兄様の手で右足を持ち上げられ、恥ずかしい所が丸見えだ。
「に、兄様、そんな所は打ってないよ」
「昨日は蝋燭の灯りだけだったからよく見えなかった。ちゃんと確認しないと。今なら明るいからよく見えるし」
明るいから恥ずかしいんだけど!
「ほら、この太股だってこんなに柔らかいんだから……ああ、なんて柔らかいんだ……自分では見られない傷付いた場所があるかもしれないだろう?」
「あ……ん」
大きな手で揉んだり摩ったりしながら、両方の足をゆっくりと確かめられる。
「うーん……よく見えないな……ルスラン、後ろを向いてお尻を上げて」
「え?」
理解する前にまたひょいひょいと体を俯せにされてお尻を持ち上げられる。
「ひゃあっ!」
内股を濡れた弾力がある物が這う。舌で舐め上げられた。
兄様の確認作業がゆっくり進む内に舌のザラつきが鮮明になってきて、それに意識が集中してしまう。
背筋をゾクゾクと悪寒に似た感覚が走る。
「昨夜は怪我を治療する事を考えて毒を生成したが、今朝は肌の事も考えてみたんだ。お前のこの綺麗な肌をより美しくできるなら……この能力も悪くはない」
内股に這わされた兄様の舌は昨日よりも面積が広い。その平べったい舌でぬるついた唾液を塗りつけられていく。
「あ!」
急に刺激が強くなった。兄様の舌の表面がトゲトゲしている。
「あ……にぃさま、それ、やめ……」
「適度な刺激は肌に良い。私の唾液に清浄作用も入れたから……全部綺麗にしてあげようね」
既に下半身は兄様の唾液に濡らされているのに、全部という言葉に嫌な予感が……。
「ここは一番大事だ」
ベロリと窄まりを一舐めされて背筋が伸びる。
「んにゃ!」
「ああ……ルスランが本当に私の側にいる。嬉しいよ。これからちゃんと毒と向き合って考えていこう……お前が居るなら……きっと……」
足と後ろのあとに、左半身もついでにと言って、結局その他全身を丁寧に、念入りに、兄様にケアされ、体の調子は良いのに精神的にはぐったりしているような感じで、夢と現を行ったり来たりするのだった……。
治療しているとそのまままた眠ってしまったルスランの寝顔に口付ける。
優しい子だ。強くもある。
酷い環境で虐待され、心に深い傷を負っているにも係わらず、ルスランは常に他者を思いやる気持ちを忘れない。それを愛おしく思う気持ちと他者に向けられた時の嫉妬が混在する。
他の事なら動揺などしないが、ルスランの私を見る目は別だ。
誰に悪し様に罵られようと気にはしないが、この子に嫌われたら立ち直れない自信がある。
だから自分でも受け入れ難い能力を、受け入れて貰えるかを試す、などどいう事は一生一代の大博打と言っても過言では無い。
ルスランに能力を打ち明けたのは予定外だった。
元々これは私が考えた事だったのだ。
運動機能を低下させる毒とそれを緩和する毒を生成し、絶妙な加減で自身に投与する。医師が把握出来ない毒を使い、ルスランを北へ来させる予定だった。
もちろん能力の事を言うつもりなど毛頭無かった。
優しいルスランは私の見舞いに北の地までやって来る筈。そして仕事に出られない程弱った私を見捨てて家に戻ったりはしないだろう、と。
姑息と言われようが、その時の私は精神的に追い詰められていた。
第四騎士団に配属された私は中々思うようにルスランに会う事は出来ない。そんな中決定的な事が耳に入り、行動せずにはいられなくなった。
ギルシュが部隊長に昇進したのだ。
入団最速で最年少の部隊長だ。しかも巷では花形と噂される王城の正門正面に位置する第一騎士団。
第一騎士団は王城正面前管轄ということもあり、国内行事を執り行う事が多く、国民からの人気が高い。しかし騎士としての地位を築こうとするなら、第四騎士団が一番の出世街道だ。第四騎士団担当区域の北側は一番国境が近い位置にあり、王城の裏門に面している。王の背後を守っているのだ。治めるには能力の高い者が配属される傾向にある。その選ばれた者がさらに役職を持つほどになれば、その実力は言わずもがな。
しかし私は出世などに興味は無い。
私が欲しいのは愛しいルスランだけ。
朝起きて寝ぼけ眼の可愛い顔に口付けお早うと言い、眠る前に柔らかな髪を撫で口付けてお休みと囁く。そんな日々が欲しいのだ。
だが私とは遠く離れて暮らすルスランはどう思うだろう?一時は救いようが無いほど荒れたギルシュが、一部隊を任されるようになるまで努力し、結果を出したのだ。
私は焦った。
とにかく側にルスランを、と。
その予定が狂ったのはグロイバル内の病院に入院した頃からだ。何故か毒を制御できなくなったのだ。
確かにこの能力は扱いにくく、精神状態が影響するので大変だ。だがこの能力とは長い付き合いだ。いきなり命に関わる事象が起こることは無い。
昨日今日始めた事ではない、二十年だ。二十年自らの体で毒を扱ってきたのだ。
それが入院以降、毒の種類が勝手に増え、分析も出来ず、それに対処する毒が生成出来なかった。じわじわと毒が回り意識が飛んだ。
気付けば私は真っ暗な部屋に寝かされていて、目の前にルスランが居た。
ルスランが私を助ける為に傷付いた事は非常に心が痛む。それについては、これから私が誠心誠意、責任を持って、優しく、しっかり、じっくりと対応するとしよう。
あの大公が係わってきたのには嫌な予感がするが、結果として作戦は成功に向かっている。
ルスランは逃げること無く側に居てくれ、私の事を恐れてもいない。
いくら口では何とも思っていないと言っても本心は態度に出るものだ。
心にも無い言葉を吐く者達を数多く知っている。過去に私の容姿や公爵家長男という立場目当てで近づこうとした輩は皆同じ目をしていた。
ルスランの瞳には私を心配する色しか浮かんでいなかった。
予定が狂い、一時は本気で死を覚悟したが、こうなったからには諦めはしない。
いや、あの柔らかく甘い体を味わったら手放すなど無理な話だ。
昨夜のルスランは味も香りも格別に甘く、あの髪と目と肌を見ていると極上の桃でも食べているかのようだった。繊細で甘い果実。酒でもないのに私をこんなにも酔わせてしまう。小さい頃からの経験で数多くの毒に耐性がある私を中毒にしてしまった。
ルスランと一緒にいるとやはり精神的に安定し、力に影響が出るのは分かるが、良い意味での違和感を感じる。
朝目覚めた瞬間に感じた体の回復は今までに無いものだった。幸福感さえ感じる清々しさ。分かるのだ、新しい要因でこうなっているのだと。
毒の暴走理由は分からないが、回復についてはもしかしたら、と思うところはある。
とにかく今は、体が絶好調なばかりか愛しいルスランと一緒に居られる。この上ない状況だ。
この環境の為になら、自分の能力に怯える演技だろうが何でも出来る。そして応援してくれるレイモンドもいる。
私を心配するルスランが側にいる今、これから来るであろう邪魔者を遠ざける事も簡単だろう。
ほうら、来た。
別荘に来たのが深夜三時頃。四時間程しか眠っていないにも係わらず朝の目覚めはすっきりしていて体も軽い。
目の前にはとびきりハンサムな笑顔。
「お早うルスラン。眠かったらもっと寝ていて良いんだよ」
隣で眠っていた兄様が、僕の前髪を梳いて顔中に朝の挨拶のキスをしてくれる。
「お早う、兄様。よく眠れて体の調子も良いんだ。僕より兄様は?大丈夫?」
兄様の頬や額に掌を当てて異常が無いか確かめる。
「私も調子が良い。何よりお前が側に居てくれるからね。最高な朝だ」
僕の目を見つめ微笑みながら掌に口付ける兄様はいつもの兄様だ。
朝日で髪がキラキラ光る兄様は王子様度が増しているけど。うぅ、眩しい。
「よかった……」
昨日より随分顔色が良い。
「でも兄様、今は大丈夫でもこの先はどうなの?メイファー様にお願いして対応策を考えるとか……」
「いや、これは私の心の問題だ。研究院に頼るのは正直気乗りしない。実験動物のような扱いはされたくないしね」
「メイファー様は凄く親切な方だったよ?あの方なら……」
「研究者というのは自身の知的欲求の為なら何でもする生き物だ。それに私は自分で能力を把握して対応したい。前向きにね」
「兄様……兄様なら出来るよ、きっと」
兄様から「前向きに」って言葉が聞けて嬉しい。やっぱりポジティブシンキングは大事だよね。
「ではルスランの怪我を確認しよう」
「え?大丈夫だよ。痛みも全然無いし」
「いや、ちゃんと確かめないと。こんなに綺麗な肌に傷が一つでも残ったら大変だ」
兄様が毒の影響など感じさせない素早さで起き上がり、喋りながら寝間着を脱がされ体を傾けられる。僕は寝台の上で兄様にされるがままだ。自分が猫に遊ばれてコロコロ転がる毛糸玉のような気がしてきた。
常備されていたラスカー兄様の寝間着の上だけを着ていたから、脱がせるのは簡単だ。僕はまだこの別荘に来たことは無く、合うサイズの下着が無かった。
素っ裸で寝台にちょこんと座らされ、左腕を上げられて二の腕の裏を軽く唇で挟まれた。
「そ、こは、痣になってない、でしょ?」
「痣に出ていないだけかもしれない。触れたら痛いかもしれないよ?」
だから優しく確認しないと、とはむはむ唇で噛んで確認される。
う……気持ちいい。
「ここは……大丈夫だね……ふふ、柔らかい」
肘から二の腕を肩に向かって確認した後、コロリと横にされ、肋骨は舌で探るようになぞられ、脇腹はまた唇で挟まれる。
同時に手も体中を優しく摩られるから、あまりの気持ち良さに全身の力が抜ける。
「少し痣が残ってる。全部舐めて治そう」
兄様が舐めたりした後は薄荷を塗ったようにスーッとした後にぽかぽかしてきて気持ちいい。
ぽーっとしている内に、兄様の手で右足を持ち上げられ、恥ずかしい所が丸見えだ。
「に、兄様、そんな所は打ってないよ」
「昨日は蝋燭の灯りだけだったからよく見えなかった。ちゃんと確認しないと。今なら明るいからよく見えるし」
明るいから恥ずかしいんだけど!
「ほら、この太股だってこんなに柔らかいんだから……ああ、なんて柔らかいんだ……自分では見られない傷付いた場所があるかもしれないだろう?」
「あ……ん」
大きな手で揉んだり摩ったりしながら、両方の足をゆっくりと確かめられる。
「うーん……よく見えないな……ルスラン、後ろを向いてお尻を上げて」
「え?」
理解する前にまたひょいひょいと体を俯せにされてお尻を持ち上げられる。
「ひゃあっ!」
内股を濡れた弾力がある物が這う。舌で舐め上げられた。
兄様の確認作業がゆっくり進む内に舌のザラつきが鮮明になってきて、それに意識が集中してしまう。
背筋をゾクゾクと悪寒に似た感覚が走る。
「昨夜は怪我を治療する事を考えて毒を生成したが、今朝は肌の事も考えてみたんだ。お前のこの綺麗な肌をより美しくできるなら……この能力も悪くはない」
内股に這わされた兄様の舌は昨日よりも面積が広い。その平べったい舌でぬるついた唾液を塗りつけられていく。
「あ!」
急に刺激が強くなった。兄様の舌の表面がトゲトゲしている。
「あ……にぃさま、それ、やめ……」
「適度な刺激は肌に良い。私の唾液に清浄作用も入れたから……全部綺麗にしてあげようね」
既に下半身は兄様の唾液に濡らされているのに、全部という言葉に嫌な予感が……。
「ここは一番大事だ」
ベロリと窄まりを一舐めされて背筋が伸びる。
「んにゃ!」
「ああ……ルスランが本当に私の側にいる。嬉しいよ。これからちゃんと毒と向き合って考えていこう……お前が居るなら……きっと……」
足と後ろのあとに、左半身もついでにと言って、結局その他全身を丁寧に、念入りに、兄様にケアされ、体の調子は良いのに精神的にはぐったりしているような感じで、夢と現を行ったり来たりするのだった……。
治療しているとそのまままた眠ってしまったルスランの寝顔に口付ける。
優しい子だ。強くもある。
酷い環境で虐待され、心に深い傷を負っているにも係わらず、ルスランは常に他者を思いやる気持ちを忘れない。それを愛おしく思う気持ちと他者に向けられた時の嫉妬が混在する。
他の事なら動揺などしないが、ルスランの私を見る目は別だ。
誰に悪し様に罵られようと気にはしないが、この子に嫌われたら立ち直れない自信がある。
だから自分でも受け入れ難い能力を、受け入れて貰えるかを試す、などどいう事は一生一代の大博打と言っても過言では無い。
ルスランに能力を打ち明けたのは予定外だった。
元々これは私が考えた事だったのだ。
運動機能を低下させる毒とそれを緩和する毒を生成し、絶妙な加減で自身に投与する。医師が把握出来ない毒を使い、ルスランを北へ来させる予定だった。
もちろん能力の事を言うつもりなど毛頭無かった。
優しいルスランは私の見舞いに北の地までやって来る筈。そして仕事に出られない程弱った私を見捨てて家に戻ったりはしないだろう、と。
姑息と言われようが、その時の私は精神的に追い詰められていた。
第四騎士団に配属された私は中々思うようにルスランに会う事は出来ない。そんな中決定的な事が耳に入り、行動せずにはいられなくなった。
ギルシュが部隊長に昇進したのだ。
入団最速で最年少の部隊長だ。しかも巷では花形と噂される王城の正門正面に位置する第一騎士団。
第一騎士団は王城正面前管轄ということもあり、国内行事を執り行う事が多く、国民からの人気が高い。しかし騎士としての地位を築こうとするなら、第四騎士団が一番の出世街道だ。第四騎士団担当区域の北側は一番国境が近い位置にあり、王城の裏門に面している。王の背後を守っているのだ。治めるには能力の高い者が配属される傾向にある。その選ばれた者がさらに役職を持つほどになれば、その実力は言わずもがな。
しかし私は出世などに興味は無い。
私が欲しいのは愛しいルスランだけ。
朝起きて寝ぼけ眼の可愛い顔に口付けお早うと言い、眠る前に柔らかな髪を撫で口付けてお休みと囁く。そんな日々が欲しいのだ。
だが私とは遠く離れて暮らすルスランはどう思うだろう?一時は救いようが無いほど荒れたギルシュが、一部隊を任されるようになるまで努力し、結果を出したのだ。
私は焦った。
とにかく側にルスランを、と。
その予定が狂ったのはグロイバル内の病院に入院した頃からだ。何故か毒を制御できなくなったのだ。
確かにこの能力は扱いにくく、精神状態が影響するので大変だ。だがこの能力とは長い付き合いだ。いきなり命に関わる事象が起こることは無い。
昨日今日始めた事ではない、二十年だ。二十年自らの体で毒を扱ってきたのだ。
それが入院以降、毒の種類が勝手に増え、分析も出来ず、それに対処する毒が生成出来なかった。じわじわと毒が回り意識が飛んだ。
気付けば私は真っ暗な部屋に寝かされていて、目の前にルスランが居た。
ルスランが私を助ける為に傷付いた事は非常に心が痛む。それについては、これから私が誠心誠意、責任を持って、優しく、しっかり、じっくりと対応するとしよう。
あの大公が係わってきたのには嫌な予感がするが、結果として作戦は成功に向かっている。
ルスランは逃げること無く側に居てくれ、私の事を恐れてもいない。
いくら口では何とも思っていないと言っても本心は態度に出るものだ。
心にも無い言葉を吐く者達を数多く知っている。過去に私の容姿や公爵家長男という立場目当てで近づこうとした輩は皆同じ目をしていた。
ルスランの瞳には私を心配する色しか浮かんでいなかった。
予定が狂い、一時は本気で死を覚悟したが、こうなったからには諦めはしない。
いや、あの柔らかく甘い体を味わったら手放すなど無理な話だ。
昨夜のルスランは味も香りも格別に甘く、あの髪と目と肌を見ていると極上の桃でも食べているかのようだった。繊細で甘い果実。酒でもないのに私をこんなにも酔わせてしまう。小さい頃からの経験で数多くの毒に耐性がある私を中毒にしてしまった。
ルスランと一緒にいるとやはり精神的に安定し、力に影響が出るのは分かるが、良い意味での違和感を感じる。
朝目覚めた瞬間に感じた体の回復は今までに無いものだった。幸福感さえ感じる清々しさ。分かるのだ、新しい要因でこうなっているのだと。
毒の暴走理由は分からないが、回復についてはもしかしたら、と思うところはある。
とにかく今は、体が絶好調なばかりか愛しいルスランと一緒に居られる。この上ない状況だ。
この環境の為になら、自分の能力に怯える演技だろうが何でも出来る。そして応援してくれるレイモンドもいる。
私を心配するルスランが側にいる今、これから来るであろう邪魔者を遠ざける事も簡単だろう。
ほうら、来た。
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