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冒険者達は女を追う
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※※※
ギルドからデムバックの入り口までやって来た冒険者達は、あちこちで倒れている警備隊員達を見て唖然としていた。
「おいおい何だこりゃあ……」
「全員のされちまってる」
「ん? 門番担当の2人は既に気が付いてるみたいだ。おーい!」
冒険者の1人が既に意識を回復し地べたに座っていた門番2人を発見し駆け寄る。
「おいお前等もしかして……」
「何だお前等もあの女達に会ったのか。じゃあ判ると思うが、お察しの通りあの女達に皆やられたんだよ」
乾いた笑顔を浮かべながら冒険者の1人の腕を借り立ち上がりながら話す門番の1人。
「たかが女にやられやがって……、と言わない辺り、どうやらお前達もあの女達の強さを知ってんだな?」
「……まあな」
そう答えたのはゴールドランクの男。それを見てもう1人の門番が「ヘッ。ちゃんと認める辺り流石ゴールドランク様だ」と言いながら立ち上がる。
「そういや警備隊長が縛られてたんだが、あれもあの女共が?」
「そうだ。ゴールドランクのラミーにな」
門番がそう言うと、冒険者達は一斉にざわざわする。
「ラミー? あの王都で魔法使いとして有名な?」
「そうらしい。だが勘違いするなよ? そこら辺で寝っ転がってる奴等はラミーじゃなく、猫獣人とエルフの女にやられた」
「……何だと?」
「もう1つ言っておいてやるけど、一番恐ろしいのは多分ラミーじゃねえ。滅茶苦茶別嬪の、左目だけ紅い黒髪のあの女だ。俺等2人がかりで本気で殺しにかかったのに、簡単にあしらわれちまった。しかもあの女は少しも本気を出してなかったと思う」
「「「「……」」」」
門番の言葉に冒険者達は静まり返る。その様子を見て門番2人は共に苦笑する。
「気持ちは分かるが、とりあえず寝転がってる連中起こすの手伝ってくれ」
「あ、ああ……」
ゴールドランクがそう返事したところで、門の入り口からガタン、と何やら音が聞こえた。皆一斉にそちらを見る。するとそこには、皆が見覚えのある女性が1人、震えながらそこに居た。
「あ、あいつ見た事あるぞ!」
「そうだデムバックの住人の女だ!」
「ひっ!」
冒険者達が各々声を上げるのを聞いて、女性は悲鳴を上げ門の外の方へ駆け出す。
「もしかしたら他の女達の居場所知ってるかも知れねぇぞ!」
「そうだ追いかけろ!」
冒険者の誰かがそう声を上げると、「「おおー!!」」と皆で逃げ出した女性を追いかけ出した。その様子を見てゴールドランクの男は門番と門の外を交互に見ながらどうしようか思いあぐねている。
「行かなくて良いのか?」
「いやしかし、警備隊員達を起こさねぇと」
「頼んでおいてなんだが、まあこいつ等は多分放置しててもそのうち起きるだろ。殺された訳でもないし」
「そ、そうか。じゃあ任せた」
ああ、という門番の返事を背中で聞きながら、ゴールドランクの男も冒険者達同様、女性を追いかける為外に出た。
※※※
「はあ……、はあ……、はあ……。しまった」
女性は後悔しながら必死で皆が隠れている洞穴へ急ぐ。後ろから遠くの方で追ってくる男達の声が聞こえる。
「はあ……、はあ……。騒がしいからって、つい、覗いてしまったのが……、良くなかった」
女性はミラリスと共に湖畔の洞穴に逃げ隠れていた1人。既に半年近くはあそこでの生活しているのではないだろうか? そんな状況に息がつまりそうになっていた上、季節も夏に差し掛かろうとしている最中、着替え等を自分の家に取りに帰れるか、町の様子を独断で見に来ていたのである。
彼女達は以前、新町長、王族のヴァルドーが襲来してきた時、ミラリスのみが知る、警備隊員達も知らない壁の穴から逃げる事が出来た。なのでもし、再度町に入るのであれば、その小さな壁の穴から入れば良いのだが、何やら騒ぎ声が聞こえたので、彼女はつい気になって町の入り口から覗いたのである。
すると自分達を苦しめた警備隊員達が全員地面に寝転がってるではないか。しかも門番も一緒に。一体何があったのか。女性は警備隊員達が寝転がってるのをざまあみると思うのと同時に、好奇心が騒いでしまい、つい門から中に入ろうとしたのである。
そこへ運悪く冒険者達がやって来てしまい、見つかり今の事態となる。とりあえず捕まると何をされるか分かっているので、女性は必死に逃げ惑う。
大きな壁に囲われたデムバックの町の傍は森。木々が女性の身を隠すのにうってつけではあるものの、追ってくるのは冒険者。当然彼等の方が森の中での移動、さもすれば魔物を探し出し狩っている訳で、対象物を探すのには長けている。
「おい! こっちに足跡だ!」
「歩幅が小さくなってるな。疲れてきてるからもうすぐ捕まえられるぞ!」
そんな声が聞こえて来た。どうしよう? もうそこまで来ている? 女性は疲れた足を引きずる様にしながら、息も絶え絶えに必死になって逃げる。
だが突然、眼の前にバッと1人の男が現れた。「キャ!」驚いて尻餅をつく女性。
「ようし読み通りだ。森の中の捜索は俺達の方が慣れてっからなあ」
「あ、ああ…」
「ヘヘヘ。そう怯えんなって。悪い様にはしねぇからよぉ」
恐怖で身体が固まってしまい、尻もちをついたまま震えて動けない女性。その様子にニタニタと咲いながら手を掴もうとする冒険者の男。
だがそこで突然、ガサササッ、と沢山の枝が男の顔を叩いてきた。
「え? い、痛ててっ! な。何だこりゃあ!」
突如視界を遮られ腕で枝を払うも、枝は何故かずっと冒険者の顔を叩く。大したダメージは無いものの、枝葉が微妙に痛痒くとにかく邪魔である。
「ク、クソッ! 邪魔臭ぇなあ! 魔物か?」
一体何が起こっている? 女性は地面に座ったまま眼の前の様子を呆気に取られてみている。だが直ぐ、これはチャンスだ、と疲れた足に鞭打ちながら立ち上がり、男と反対側に逃げた。
「な! ク、クソッ! 一体何なんだよ!」
苛立った冒険者は腰につけていた剣で枝葉を一気に叩き斬る。だが既に女性はその場には居なかった。
「あ~! 逃がしちまった! 一体今のは何だったんだよ!」
その場で地団駄を踏む冒険者。そして、その様子を安堵しながら見ている、姿が見えないとある羽の生えた男の子。彼が冒険者の邪魔をしていた様である。
『ふう……。何とか助ける事が出来たな。でもまさか、女の人達があんな洞穴に沢山いるなんてね。この事エイリーに伝えたいけど。……というかエイリー大丈夫かなあ?』
そこへ、後からやって来た冒険者達が合流した。姿は見えていない筈だが、ついサッと木陰に隠れる精霊ことスピカ。
「おいお前何やってんだよ。たかが女1人逃がすなんてよぉ」
「仕方ねぇだろ! 枝が邪魔しやがったんだ! 俺の顔にガサガサってよぉ」
「はあ? 枝が? お前言い訳するにしてももっとマシな事言えよ」
「ほ、本当なんだって!」
そこへあのゴールドランクの男も追いついて合流する。
「枝か……。精霊のいたずら、かも知れねぇな。ここ最近はとくと見なくなっちまったが。ファリスにある迷いの森じゃあ昔は良く出たらしいからな」
ゴールドランクの言葉を聞いて皆は何となく納得している。精霊のいたずら、とは昔は良くあった現象で、森の中で不可思議な体験をする事を総称してそう伝えられている。
「まあ仕方ねぇよ。それにあの女は他の冒険者が追跡中だ。どうやら目的地がある様だからそこに向かってんだろう。多分そこには他の女もいる」
それを聞いた、枝葉に邪魔された冒険者はハッとする。
「そうか! 捕まえて吐かせるよりそっちの方が確実だな」
「そういうこった。とりあえず俺等も追いかけてる冒険者と合流するぞ」
そう言ってゴールドランクを含めた冒険者達は、皆揃って後を追いかけた。
そしてその後を、精霊のスピカも付いて行った。
ギルドからデムバックの入り口までやって来た冒険者達は、あちこちで倒れている警備隊員達を見て唖然としていた。
「おいおい何だこりゃあ……」
「全員のされちまってる」
「ん? 門番担当の2人は既に気が付いてるみたいだ。おーい!」
冒険者の1人が既に意識を回復し地べたに座っていた門番2人を発見し駆け寄る。
「おいお前等もしかして……」
「何だお前等もあの女達に会ったのか。じゃあ判ると思うが、お察しの通りあの女達に皆やられたんだよ」
乾いた笑顔を浮かべながら冒険者の1人の腕を借り立ち上がりながら話す門番の1人。
「たかが女にやられやがって……、と言わない辺り、どうやらお前達もあの女達の強さを知ってんだな?」
「……まあな」
そう答えたのはゴールドランクの男。それを見てもう1人の門番が「ヘッ。ちゃんと認める辺り流石ゴールドランク様だ」と言いながら立ち上がる。
「そういや警備隊長が縛られてたんだが、あれもあの女共が?」
「そうだ。ゴールドランクのラミーにな」
門番がそう言うと、冒険者達は一斉にざわざわする。
「ラミー? あの王都で魔法使いとして有名な?」
「そうらしい。だが勘違いするなよ? そこら辺で寝っ転がってる奴等はラミーじゃなく、猫獣人とエルフの女にやられた」
「……何だと?」
「もう1つ言っておいてやるけど、一番恐ろしいのは多分ラミーじゃねえ。滅茶苦茶別嬪の、左目だけ紅い黒髪のあの女だ。俺等2人がかりで本気で殺しにかかったのに、簡単にあしらわれちまった。しかもあの女は少しも本気を出してなかったと思う」
「「「「……」」」」
門番の言葉に冒険者達は静まり返る。その様子を見て門番2人は共に苦笑する。
「気持ちは分かるが、とりあえず寝転がってる連中起こすの手伝ってくれ」
「あ、ああ……」
ゴールドランクがそう返事したところで、門の入り口からガタン、と何やら音が聞こえた。皆一斉にそちらを見る。するとそこには、皆が見覚えのある女性が1人、震えながらそこに居た。
「あ、あいつ見た事あるぞ!」
「そうだデムバックの住人の女だ!」
「ひっ!」
冒険者達が各々声を上げるのを聞いて、女性は悲鳴を上げ門の外の方へ駆け出す。
「もしかしたら他の女達の居場所知ってるかも知れねぇぞ!」
「そうだ追いかけろ!」
冒険者の誰かがそう声を上げると、「「おおー!!」」と皆で逃げ出した女性を追いかけ出した。その様子を見てゴールドランクの男は門番と門の外を交互に見ながらどうしようか思いあぐねている。
「行かなくて良いのか?」
「いやしかし、警備隊員達を起こさねぇと」
「頼んでおいてなんだが、まあこいつ等は多分放置しててもそのうち起きるだろ。殺された訳でもないし」
「そ、そうか。じゃあ任せた」
ああ、という門番の返事を背中で聞きながら、ゴールドランクの男も冒険者達同様、女性を追いかける為外に出た。
※※※
「はあ……、はあ……、はあ……。しまった」
女性は後悔しながら必死で皆が隠れている洞穴へ急ぐ。後ろから遠くの方で追ってくる男達の声が聞こえる。
「はあ……、はあ……。騒がしいからって、つい、覗いてしまったのが……、良くなかった」
女性はミラリスと共に湖畔の洞穴に逃げ隠れていた1人。既に半年近くはあそこでの生活しているのではないだろうか? そんな状況に息がつまりそうになっていた上、季節も夏に差し掛かろうとしている最中、着替え等を自分の家に取りに帰れるか、町の様子を独断で見に来ていたのである。
彼女達は以前、新町長、王族のヴァルドーが襲来してきた時、ミラリスのみが知る、警備隊員達も知らない壁の穴から逃げる事が出来た。なのでもし、再度町に入るのであれば、その小さな壁の穴から入れば良いのだが、何やら騒ぎ声が聞こえたので、彼女はつい気になって町の入り口から覗いたのである。
すると自分達を苦しめた警備隊員達が全員地面に寝転がってるではないか。しかも門番も一緒に。一体何があったのか。女性は警備隊員達が寝転がってるのをざまあみると思うのと同時に、好奇心が騒いでしまい、つい門から中に入ろうとしたのである。
そこへ運悪く冒険者達がやって来てしまい、見つかり今の事態となる。とりあえず捕まると何をされるか分かっているので、女性は必死に逃げ惑う。
大きな壁に囲われたデムバックの町の傍は森。木々が女性の身を隠すのにうってつけではあるものの、追ってくるのは冒険者。当然彼等の方が森の中での移動、さもすれば魔物を探し出し狩っている訳で、対象物を探すのには長けている。
「おい! こっちに足跡だ!」
「歩幅が小さくなってるな。疲れてきてるからもうすぐ捕まえられるぞ!」
そんな声が聞こえて来た。どうしよう? もうそこまで来ている? 女性は疲れた足を引きずる様にしながら、息も絶え絶えに必死になって逃げる。
だが突然、眼の前にバッと1人の男が現れた。「キャ!」驚いて尻餅をつく女性。
「ようし読み通りだ。森の中の捜索は俺達の方が慣れてっからなあ」
「あ、ああ…」
「ヘヘヘ。そう怯えんなって。悪い様にはしねぇからよぉ」
恐怖で身体が固まってしまい、尻もちをついたまま震えて動けない女性。その様子にニタニタと咲いながら手を掴もうとする冒険者の男。
だがそこで突然、ガサササッ、と沢山の枝が男の顔を叩いてきた。
「え? い、痛ててっ! な。何だこりゃあ!」
突如視界を遮られ腕で枝を払うも、枝は何故かずっと冒険者の顔を叩く。大したダメージは無いものの、枝葉が微妙に痛痒くとにかく邪魔である。
「ク、クソッ! 邪魔臭ぇなあ! 魔物か?」
一体何が起こっている? 女性は地面に座ったまま眼の前の様子を呆気に取られてみている。だが直ぐ、これはチャンスだ、と疲れた足に鞭打ちながら立ち上がり、男と反対側に逃げた。
「な! ク、クソッ! 一体何なんだよ!」
苛立った冒険者は腰につけていた剣で枝葉を一気に叩き斬る。だが既に女性はその場には居なかった。
「あ~! 逃がしちまった! 一体今のは何だったんだよ!」
その場で地団駄を踏む冒険者。そして、その様子を安堵しながら見ている、姿が見えないとある羽の生えた男の子。彼が冒険者の邪魔をしていた様である。
『ふう……。何とか助ける事が出来たな。でもまさか、女の人達があんな洞穴に沢山いるなんてね。この事エイリーに伝えたいけど。……というかエイリー大丈夫かなあ?』
そこへ、後からやって来た冒険者達が合流した。姿は見えていない筈だが、ついサッと木陰に隠れる精霊ことスピカ。
「おいお前何やってんだよ。たかが女1人逃がすなんてよぉ」
「仕方ねぇだろ! 枝が邪魔しやがったんだ! 俺の顔にガサガサってよぉ」
「はあ? 枝が? お前言い訳するにしてももっとマシな事言えよ」
「ほ、本当なんだって!」
そこへあのゴールドランクの男も追いついて合流する。
「枝か……。精霊のいたずら、かも知れねぇな。ここ最近はとくと見なくなっちまったが。ファリスにある迷いの森じゃあ昔は良く出たらしいからな」
ゴールドランクの言葉を聞いて皆は何となく納得している。精霊のいたずら、とは昔は良くあった現象で、森の中で不可思議な体験をする事を総称してそう伝えられている。
「まあ仕方ねぇよ。それにあの女は他の冒険者が追跡中だ。どうやら目的地がある様だからそこに向かってんだろう。多分そこには他の女もいる」
それを聞いた、枝葉に邪魔された冒険者はハッとする。
「そうか! 捕まえて吐かせるよりそっちの方が確実だな」
「そういうこった。とりあえず俺等も追いかけてる冒険者と合流するぞ」
そう言ってゴールドランクを含めた冒険者達は、皆揃って後を追いかけた。
そしてその後を、精霊のスピカも付いて行った。
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