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ネミルはついに決意する?
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※※※
いつもミークが寝泊まりしているネミルの部屋。そのベッドには食堂で腹を満たした姉弟が、新しい寝間着に着替えスヤスヤと眠っている。
ミークは食事を済ませた後、例の簡易シャワーを使用し姉弟を綺麗に洗った。そして着ていた衣服は相当汚れていたので、それらを洗濯する間子どもサイズの寝巻きをネミルの親に用意して貰い、今はそれを着て寝ている。
スー、スー、と自身のベッドで寝息を立てている幼い2人を、ギルドの仕事から帰って来ていたネミルが優しくトン、トンと一定のリズムでお腹を叩いている。それを傍目にミークはネミルに「ごめんね」と謝罪する。
「急なお願いしちゃって。迷惑じゃなかった?」
「問題ないわ。この子達これまで隠蔽のマントで身を隠しながら、ずっと道中野宿してたんでしょ? 今日位はベッドで寝かしてあげた方が良いしね」
ネミルは微笑みながらそう伝えると、ミークは笑顔で「ありがとう」と答えた。相変わらずの整った美しい顔。それが笑顔になると破壊力は抜群。出会った当初は無愛想だったミークも、慣れてきた事もあって表情が崩れる事が増えてきている。そんな自然な様子を垣間見せるミークは、同性のネミルであっても時折心臓が跳ね上がる程ドキッとする。
そしてネミルは少し無言になった後、はあ、と溜息1つ。
「……ミークってば化け物みたいに強いのに、相変わらず超絶美女ね。何そのギャップ?」
「いや化け物って……。それよりネミルだって美人じゃん。てかもういい加減サーシェクに告白したら? 傍から見ててじれったい」
ミークとしては意趣返しのつもりでサーシェクの事を言ってみた様で。一方のネミルは急にサーシェクの事を言われ一気に顔をトマトの様に真っ赤にさせる。「こ、こ、ここ、こくはっ……、告白なんて……」としどろもどろになりつつ、照れ隠しに床に敷いてある布団の枕に顔を埋める。そんなネミルを見てミークは「アハハ」と笑う。
「この町来てそんな長い訳じゃないけど、サーシェクの人柄は判ってるつもり。良い人じゃん。きっと大事にしてくれるよ」
ミークの言葉を聞いてネミルはそーっと真っ赤な顔を枕から上げミークを見る。
「……でも、先に進む勇気が……」
「普段は冒険者達に強く言い返してたりしてるのに、こういう事は弱いんだね」
クスクス笑いながらミークがそう言うと、ネミルはむー、と頬を膨らませる。
「ミーク、からかってる?」
「ううん、寧ろ応援してるかな? ネミルはこの世界に来て初めての友達だから、幸せになって欲しいもん」
そう言ってミークは月明かりが差し込む天窓を見上げる。相変わらず月は大小2つある。どうやらその2つの月同士は入れ替わる様に回転している様で、今は綺麗に横に並んでこの町を優しい光で照らしている。
ふと、思い出す。とある人の事を。もしかしたらミークも、同じ様に想い焦がれていたのかも知れない。
「……羨ましいよ」
つい、本音を零してしまうミーク。憂いを帯びた表情で。その声はとても小さかったが、静かな夜だったのでネミルの耳に届いていた。
……そうね。ミークは告白する事さえ出来ないのよね……。
以前ミークから大事な人が既に亡くなっている事を聞いている。いたたまれなくなったネミルは、そっとミークを後ろから抱きしめる。そして意を決した表情で、ミークと同じく月明かりが入ってきている天窓を見上げ、「よし、私、勇気出す」とグッと拳を握りしめた。
ネミルの決意に「え~、本当かなあ?」とジト目するミーク。
「ほ、本当なんだから。つ、つつ、次こそ? 次会った時こそ? そ、その……、言うわ!」
「言うって、何を?」
「そ、それは! そ、その……」
もにょもにょ言っているネミルに、ミークはクス、っと笑いながらネミルに向き合い、そして今度はミークがネミルを抱きしめる。
「明日から暫く居ないけど、その間に頑張って」
「……はい」
弱気な返事をするネミルが何だか可愛く思えたミークは、よしよし、と頭を撫で「じゃあ私達も寝よっか」と、床に2人分敷いてある布団の片方に潜り込んだ。
……もし望仁がいたら、私も同じ様な悩みを抱えていたのかな?
※※※
朝靄が宿屋の周りを立ち込めている早朝。入り口には眠そうな目を擦っているニャリルと、隣でふわあ、と大きな口で欠伸しているエイリー。
「くわぁ~、眠いにゃ~」
「そういや昨日、初の森での訓練だったもんね。素材と魔石集め大変だった……」
そう話しながら2人は揃ってん~、と伸びをする。そこへラミーが2人の元に歩いてきた。どうやら2人の会話が聞こえていた様子。
「何を言っているのよ。採取した素材と魔石、私が魔法で全部運んで帰ったじゃない。本来なら自分達だけで持って帰らないといけないのだから、相当楽だった筈よ?」
ラミーに手厳しい事を突っ込まれ、ニャリルはぺたんと猫耳を倒しエイリーも尖った耳をへにゃんとさせる。そこへ丁度ミークがネミルと共に宿屋の扉を開け出てきた。
「おはよう皆。ラミー、扉越しに聞こえてたけど、2人共初日にしては上出来だったし、目的はコボルト討伐だったし良いじゃん」
フォローを入れたミークの言葉を聞いて、途端にニャリルの猫耳がピン、と立ちエイリーの耳もピヨンと真っ直ぐになる。だがそれを聞いたラミーは「甘いわねえ」と溜息1つ。そして直ぐ真顔に変わりニャリルとエイリーに話すラミー。
「2人共、今回の調査、気を引き締めて付いて来る様に。危なくなったら即撤退。分かったわね?」
「はい!」「にゃ!」
「……返事だけは良いんだから」
呆れた様に呟くラミーにミークは「まあまあ」と肩をポン、と叩く。
「昨日も言ったけどちゃんとこいつ等が監視してるから。これ1機で相当強い魔物も倒せちゃうし大丈夫大丈夫」
そう言ってミークは羽虫サイズのドローン5機をポシェットから取り出し、そして空中に浮遊させ、ニャリルとエイリーの肩辺りでホバリングさせた。
「……本当ならこいつ等も無い方がいいにゃ」
ニャリルが不満そうに呟くのをラミーは聞き逃さなかった。
「何を言っているの? 付いてくる事さえ本当は危険なのよ? 同じ人間、男達に襲われそうになったの覚えていないの? 確かに今は強くなったけれど、それでも圧倒的に経験が足りていないの判っている? 冒険者舐めないで」
鋭い目つきでニャリルを嗜めるラミー。その真剣な物言いにニャリルはまたも猫耳をペタンと折り曲げふさふさ茶色尻尾までへにゃんとさせ「ごめんなさいにゃ……」と頭を下げる。
「ラミーは2人が心配だから強く言ったんだよ。だから無茶な行動はなるべく控えるようにね」
ミークもフォローを交えながら軽くニャリルに注意する。ニャリルは「はいにゃ」と申し訳無さそうに答える。
「そうだよね。私も勢いで付いていきたいって言ったけど、ミークとラミーからしたら負担が増えるだけだもんね。つい勢いで言っちゃったけど、こっちこそ付いていきたいって言ってごめんなさい」
エイリーがそう言ってミークとラミーに謝罪すると「もう決まった事だから良いわよ。私も同意したし」とラミーは答える。
「とにかく行こうか。ネミル、2人をお願いね」
「ええ。ミーク、気をつけて」
ずっとニコニコしながら黙って皆の会話を聞いていたネミルがそう答えた後、徐ろにミークがネミルの耳元にやって来る。
「帰ったら結果、聞かせてね」
ニヤリとしながらミークがそう囁くと、ネミルは一気に顔を真っ赤にさせ「わ、わわ、わわ分かったわよ!」としどろもどろになって答えた。
「? ネミルどうしたにゃ?」
「な、何でもないから! い、いってらっしゃい!」
何だか慌てながら4人を送り出そうとするネミルに、ミーク以外の3人は揃って「?」と不思議そうな顔をした。ミークだけはクスクスと笑っていたが。
いつもミークが寝泊まりしているネミルの部屋。そのベッドには食堂で腹を満たした姉弟が、新しい寝間着に着替えスヤスヤと眠っている。
ミークは食事を済ませた後、例の簡易シャワーを使用し姉弟を綺麗に洗った。そして着ていた衣服は相当汚れていたので、それらを洗濯する間子どもサイズの寝巻きをネミルの親に用意して貰い、今はそれを着て寝ている。
スー、スー、と自身のベッドで寝息を立てている幼い2人を、ギルドの仕事から帰って来ていたネミルが優しくトン、トンと一定のリズムでお腹を叩いている。それを傍目にミークはネミルに「ごめんね」と謝罪する。
「急なお願いしちゃって。迷惑じゃなかった?」
「問題ないわ。この子達これまで隠蔽のマントで身を隠しながら、ずっと道中野宿してたんでしょ? 今日位はベッドで寝かしてあげた方が良いしね」
ネミルは微笑みながらそう伝えると、ミークは笑顔で「ありがとう」と答えた。相変わらずの整った美しい顔。それが笑顔になると破壊力は抜群。出会った当初は無愛想だったミークも、慣れてきた事もあって表情が崩れる事が増えてきている。そんな自然な様子を垣間見せるミークは、同性のネミルであっても時折心臓が跳ね上がる程ドキッとする。
そしてネミルは少し無言になった後、はあ、と溜息1つ。
「……ミークってば化け物みたいに強いのに、相変わらず超絶美女ね。何そのギャップ?」
「いや化け物って……。それよりネミルだって美人じゃん。てかもういい加減サーシェクに告白したら? 傍から見ててじれったい」
ミークとしては意趣返しのつもりでサーシェクの事を言ってみた様で。一方のネミルは急にサーシェクの事を言われ一気に顔をトマトの様に真っ赤にさせる。「こ、こ、ここ、こくはっ……、告白なんて……」としどろもどろになりつつ、照れ隠しに床に敷いてある布団の枕に顔を埋める。そんなネミルを見てミークは「アハハ」と笑う。
「この町来てそんな長い訳じゃないけど、サーシェクの人柄は判ってるつもり。良い人じゃん。きっと大事にしてくれるよ」
ミークの言葉を聞いてネミルはそーっと真っ赤な顔を枕から上げミークを見る。
「……でも、先に進む勇気が……」
「普段は冒険者達に強く言い返してたりしてるのに、こういう事は弱いんだね」
クスクス笑いながらミークがそう言うと、ネミルはむー、と頬を膨らませる。
「ミーク、からかってる?」
「ううん、寧ろ応援してるかな? ネミルはこの世界に来て初めての友達だから、幸せになって欲しいもん」
そう言ってミークは月明かりが差し込む天窓を見上げる。相変わらず月は大小2つある。どうやらその2つの月同士は入れ替わる様に回転している様で、今は綺麗に横に並んでこの町を優しい光で照らしている。
ふと、思い出す。とある人の事を。もしかしたらミークも、同じ様に想い焦がれていたのかも知れない。
「……羨ましいよ」
つい、本音を零してしまうミーク。憂いを帯びた表情で。その声はとても小さかったが、静かな夜だったのでネミルの耳に届いていた。
……そうね。ミークは告白する事さえ出来ないのよね……。
以前ミークから大事な人が既に亡くなっている事を聞いている。いたたまれなくなったネミルは、そっとミークを後ろから抱きしめる。そして意を決した表情で、ミークと同じく月明かりが入ってきている天窓を見上げ、「よし、私、勇気出す」とグッと拳を握りしめた。
ネミルの決意に「え~、本当かなあ?」とジト目するミーク。
「ほ、本当なんだから。つ、つつ、次こそ? 次会った時こそ? そ、その……、言うわ!」
「言うって、何を?」
「そ、それは! そ、その……」
もにょもにょ言っているネミルに、ミークはクス、っと笑いながらネミルに向き合い、そして今度はミークがネミルを抱きしめる。
「明日から暫く居ないけど、その間に頑張って」
「……はい」
弱気な返事をするネミルが何だか可愛く思えたミークは、よしよし、と頭を撫で「じゃあ私達も寝よっか」と、床に2人分敷いてある布団の片方に潜り込んだ。
……もし望仁がいたら、私も同じ様な悩みを抱えていたのかな?
※※※
朝靄が宿屋の周りを立ち込めている早朝。入り口には眠そうな目を擦っているニャリルと、隣でふわあ、と大きな口で欠伸しているエイリー。
「くわぁ~、眠いにゃ~」
「そういや昨日、初の森での訓練だったもんね。素材と魔石集め大変だった……」
そう話しながら2人は揃ってん~、と伸びをする。そこへラミーが2人の元に歩いてきた。どうやら2人の会話が聞こえていた様子。
「何を言っているのよ。採取した素材と魔石、私が魔法で全部運んで帰ったじゃない。本来なら自分達だけで持って帰らないといけないのだから、相当楽だった筈よ?」
ラミーに手厳しい事を突っ込まれ、ニャリルはぺたんと猫耳を倒しエイリーも尖った耳をへにゃんとさせる。そこへ丁度ミークがネミルと共に宿屋の扉を開け出てきた。
「おはよう皆。ラミー、扉越しに聞こえてたけど、2人共初日にしては上出来だったし、目的はコボルト討伐だったし良いじゃん」
フォローを入れたミークの言葉を聞いて、途端にニャリルの猫耳がピン、と立ちエイリーの耳もピヨンと真っ直ぐになる。だがそれを聞いたラミーは「甘いわねえ」と溜息1つ。そして直ぐ真顔に変わりニャリルとエイリーに話すラミー。
「2人共、今回の調査、気を引き締めて付いて来る様に。危なくなったら即撤退。分かったわね?」
「はい!」「にゃ!」
「……返事だけは良いんだから」
呆れた様に呟くラミーにミークは「まあまあ」と肩をポン、と叩く。
「昨日も言ったけどちゃんとこいつ等が監視してるから。これ1機で相当強い魔物も倒せちゃうし大丈夫大丈夫」
そう言ってミークは羽虫サイズのドローン5機をポシェットから取り出し、そして空中に浮遊させ、ニャリルとエイリーの肩辺りでホバリングさせた。
「……本当ならこいつ等も無い方がいいにゃ」
ニャリルが不満そうに呟くのをラミーは聞き逃さなかった。
「何を言っているの? 付いてくる事さえ本当は危険なのよ? 同じ人間、男達に襲われそうになったの覚えていないの? 確かに今は強くなったけれど、それでも圧倒的に経験が足りていないの判っている? 冒険者舐めないで」
鋭い目つきでニャリルを嗜めるラミー。その真剣な物言いにニャリルはまたも猫耳をペタンと折り曲げふさふさ茶色尻尾までへにゃんとさせ「ごめんなさいにゃ……」と頭を下げる。
「ラミーは2人が心配だから強く言ったんだよ。だから無茶な行動はなるべく控えるようにね」
ミークもフォローを交えながら軽くニャリルに注意する。ニャリルは「はいにゃ」と申し訳無さそうに答える。
「そうだよね。私も勢いで付いていきたいって言ったけど、ミークとラミーからしたら負担が増えるだけだもんね。つい勢いで言っちゃったけど、こっちこそ付いていきたいって言ってごめんなさい」
エイリーがそう言ってミークとラミーに謝罪すると「もう決まった事だから良いわよ。私も同意したし」とラミーは答える。
「とにかく行こうか。ネミル、2人をお願いね」
「ええ。ミーク、気をつけて」
ずっとニコニコしながら黙って皆の会話を聞いていたネミルがそう答えた後、徐ろにミークがネミルの耳元にやって来る。
「帰ったら結果、聞かせてね」
ニヤリとしながらミークがそう囁くと、ネミルは一気に顔を真っ赤にさせ「わ、わわ、わわ分かったわよ!」としどろもどろになって答えた。
「? ネミルどうしたにゃ?」
「な、何でもないから! い、いってらっしゃい!」
何だか慌てながら4人を送り出そうとするネミルに、ミーク以外の3人は揃って「?」と不思議そうな顔をした。ミークだけはクスクスと笑っていたが。
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