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神の憂鬱
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「……」
たった今、地球に存在していた人間達は全て滅んだ。同時に、他の動植物もまた二度と再生不可能な程傷つけられ、プランクトンレベルの小さな生命体は僅かながら残ってはいるが、人間の作り出した、自らを滅亡させる為の「核」という武器のせいで、それらさえもいずれ消えゆくだろう。
その様を物悲しく、虚しい表情で見ている、この星を管轄していた神。まさかこんな未来が待っているとは思いもしていなかった。
数十億年前に誕生したこの地球という星。その数億年後には小さな生命が生まれ、それらが徐々に意識を持つ生命体に進化し、更に知識を持つ生命体が出来、その上道具を扱う「人間」まで出来上がった時、この星を管轄していた神はとても喜んだ。
人間という高度な知識を持った生命体が出来上がるのはとても希少だから。
そしてやはり、神の想像通り人間達はその卓越した知恵を持って、どんどん発展し、他の動物を差し置いて地球上での王者となった。
そして本来、その星は人間の知識を活かして長い間繁栄する事が常なのだが、この地球のように人間の愚かな欲望のせいで自滅する事も稀にある。
そう、稀なのだ。
人間の欲望に際限がないのは神も承知なのだが、ここまで酷いのはここ数十億年でも滅多にみない現象だった。
「儂が手心を加えてやればよかったのかのう……。しかし、それは……」
神の力で運命に干渉するのは神の矜持が許さなかった。だがその結果がこれだ。
その事を省みて神は大きなため息を溢した。
少しして、地球から沢山の白い球、世に言う(魂)が星のように虚空へ飛んでいく。その様はとても美しいが、本来であれば地球の繁栄の為に使われるべき魂達である。それがまるで湯水の如く流れていくのを、悔しさ、悲しさ、申し訳無さが入り混じった、そして諦めも混ざった複雑な思いで、神は為す術もなく見ていた。
そこへ、違う星を管轄している神が物珍しそうに地球の様子を覗き込みに来た。
「ほう。滅んでしまったのだな」
手でひさしを作りおでこに当て遠くを眺めるような仕草で美しく散っていく魂達を眺める、違う星の神。
「何がいけなかったんじゃろうなあ。やはり、儂が一切手心を加えなかったのが原因なのじゃろうか」
「さあなあ。正しい道標はどれか、何を持って判断すべきかなぞ、運命にすら分からんと思うぞ」
「……」
返事をせず、そろそろ途切れそうな魂達の流れを虚しい表情で見つめる地球の神。そろそろ終わりか、と言うところで、突如覗きに来ていた神が声を上げた。
「お? 中々綺麗な魂! 何やら変わった能力も持っている様だ! これ頂いていくぞ。どうせ消えてしまうのなら、こちらの星で活用したいのでな」
不躾なその言葉に、地球の神はムッとした表情をする。
「神が星の運命に介入するのは感心せん」
「だがその結果が地球のあの有様だ。我はこうなる前に雫を落としてみたいのだ。運命に干渉してみたいのだ」
「……好きにしろ」
納得いかないといった表情を浮かべつつも、自身の星を省みると何も言えない地球の神は、仕方なさそうにそう答えると、覗きに来ていた違う星の神は、有り難い、と、目をつけたとある白い魂をひょいと手で掬いあげた。
「そう言えばそちらは魔法が使える星であったの。確か人型の動物や魔物もいたはずじゃが。そういうのは地球には存在しておらんかったが良いのか?」
「良い良い。寧ろその方がこの小さな雫が大きな波紋となり得る様な気がするしな。それに多少この魂を弄るつもりだ」
そう言ってもう地球の様子には無関心になった様で、その白い魂を掌で嬉しそうにコロコロ転がす違う星の神。どうやらその神が管轄している星は地球とは違う様相。それを若干気にした地球の神だが、これ以上関わる事は出来ないので、ふいと地球の最後を見届けようとそちらに視線をやる。
そして白い魂を掬い上げた神は、それを掌の上で転がしながら去っていった。
たった今、地球に存在していた人間達は全て滅んだ。同時に、他の動植物もまた二度と再生不可能な程傷つけられ、プランクトンレベルの小さな生命体は僅かながら残ってはいるが、人間の作り出した、自らを滅亡させる為の「核」という武器のせいで、それらさえもいずれ消えゆくだろう。
その様を物悲しく、虚しい表情で見ている、この星を管轄していた神。まさかこんな未来が待っているとは思いもしていなかった。
数十億年前に誕生したこの地球という星。その数億年後には小さな生命が生まれ、それらが徐々に意識を持つ生命体に進化し、更に知識を持つ生命体が出来、その上道具を扱う「人間」まで出来上がった時、この星を管轄していた神はとても喜んだ。
人間という高度な知識を持った生命体が出来上がるのはとても希少だから。
そしてやはり、神の想像通り人間達はその卓越した知恵を持って、どんどん発展し、他の動物を差し置いて地球上での王者となった。
そして本来、その星は人間の知識を活かして長い間繁栄する事が常なのだが、この地球のように人間の愚かな欲望のせいで自滅する事も稀にある。
そう、稀なのだ。
人間の欲望に際限がないのは神も承知なのだが、ここまで酷いのはここ数十億年でも滅多にみない現象だった。
「儂が手心を加えてやればよかったのかのう……。しかし、それは……」
神の力で運命に干渉するのは神の矜持が許さなかった。だがその結果がこれだ。
その事を省みて神は大きなため息を溢した。
少しして、地球から沢山の白い球、世に言う(魂)が星のように虚空へ飛んでいく。その様はとても美しいが、本来であれば地球の繁栄の為に使われるべき魂達である。それがまるで湯水の如く流れていくのを、悔しさ、悲しさ、申し訳無さが入り混じった、そして諦めも混ざった複雑な思いで、神は為す術もなく見ていた。
そこへ、違う星を管轄している神が物珍しそうに地球の様子を覗き込みに来た。
「ほう。滅んでしまったのだな」
手でひさしを作りおでこに当て遠くを眺めるような仕草で美しく散っていく魂達を眺める、違う星の神。
「何がいけなかったんじゃろうなあ。やはり、儂が一切手心を加えなかったのが原因なのじゃろうか」
「さあなあ。正しい道標はどれか、何を持って判断すべきかなぞ、運命にすら分からんと思うぞ」
「……」
返事をせず、そろそろ途切れそうな魂達の流れを虚しい表情で見つめる地球の神。そろそろ終わりか、と言うところで、突如覗きに来ていた神が声を上げた。
「お? 中々綺麗な魂! 何やら変わった能力も持っている様だ! これ頂いていくぞ。どうせ消えてしまうのなら、こちらの星で活用したいのでな」
不躾なその言葉に、地球の神はムッとした表情をする。
「神が星の運命に介入するのは感心せん」
「だがその結果が地球のあの有様だ。我はこうなる前に雫を落としてみたいのだ。運命に干渉してみたいのだ」
「……好きにしろ」
納得いかないといった表情を浮かべつつも、自身の星を省みると何も言えない地球の神は、仕方なさそうにそう答えると、覗きに来ていた違う星の神は、有り難い、と、目をつけたとある白い魂をひょいと手で掬いあげた。
「そう言えばそちらは魔法が使える星であったの。確か人型の動物や魔物もいたはずじゃが。そういうのは地球には存在しておらんかったが良いのか?」
「良い良い。寧ろその方がこの小さな雫が大きな波紋となり得る様な気がするしな。それに多少この魂を弄るつもりだ」
そう言ってもう地球の様子には無関心になった様で、その白い魂を掌で嬉しそうにコロコロ転がす違う星の神。どうやらその神が管轄している星は地球とは違う様相。それを若干気にした地球の神だが、これ以上関わる事は出来ないので、ふいと地球の最後を見届けようとそちらに視線をやる。
そして白い魂を掬い上げた神は、それを掌の上で転がしながら去っていった。
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