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18 デート①
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「ねぇお姉ちゃん」
「何さ」
「この格好、変じゃないよね?」
「その質問は十二回目だな。変じゃないよ」
リビングをうろうろしている晶の言葉に、日向は呆れ気味に答える。
今日は日曜日。稔とのデートの日だ。
ペールブルーのシャツを着て、デニムのスカートを履き、クリーム色のカーディガンを羽織っている晶は、そわそわと落ち着きがない。
「メイクは? 変じゃない?」
晶の顔には淡く、オレンジ系とピンク系の色味のメイクが施されている。
「変じゃないよ。可愛い可愛い」
「髪も変じゃないよね?」
「変じゃないって。つーか髪は私がセットしただろうに」
髪をセットするのに慣れていない晶は、日向にセットを頼み、最終的に、ざっくり三つ編みのサイドポニーテールの髪型で落ち着いた。
髪全体にヘアアイロンでカールをかけているので、ふわふわとした印象になっている。
「そ、そうだけども……」
晶は不安そうな声を出す。そして時計を何度も見る。
「リラックスしな、晶。今から緊張してると保たないよ。時間まであと三十分はあるんだからさ」
「分かってるけどぉ……!」
ちなみに、晶たちの両親は出掛けている。
片方は休日出勤、もう片方はご近所の集まりで。
「ほら、ソファ座りな。お姉ちゃんが紅茶を用意してやろう。ティーバッグのだけど」
日向はそう言って、半強制的に晶をソファに座らせ、紅茶を用意する。
「ほい」
日向はお盆ごと、紅茶の入ったティーカップを二つ、ソファ前のローテーブルに置き、それぞれを晶の前と自分の前に置き直した。
「それ飲んで落ち着きな。少し蜂蜜入れてあるから」
「ありがとう……いただきます……」
晶は紅茶を一口飲み、はふぅ……と息を吐き出す。
「……今日のお姉ちゃん、すごい心強い……」
「失敬な。お前のお姉ちゃんはいつも心強いぞ」
「……うん、ありがとう……」
そして、晶が紅茶をちびちび飲んでいると、約束の時間になった。
と、同時にインターホンが鳴る。
「ヒッ!」
「怯えてどーすんの。ほら、ついてったげるから。あ、リップ直しな」
日向は残っていた紅茶をグイッと飲み干し、立ち上がる。
「あ、ま、待って……」
晶も少し慌てて紅茶を飲み干し、ソファに置いておいたショルダーポーチからリップクリームと口紅を取り出して洗面台に向かい、唇部分のメイクを直す。
そしてショルダーポーチを取りに行き、その中にリップクリームと口紅を戻し、日向のあとを追いかけていった。
「はーいお待たせしました」
「ども」
日向が玄関を開けると、日向と晶の予想通り、稔が立っていた。
稔の格好は、黒のジーパンにロゴTシャツ、その上に薄手のジャケット。靴はスニーカー。
「……うん! まあ、良いでしょう!」
「……俺は何かを審査されたんすか?」
日向へ呆れた顔を向けたあと、稔は日向に隠れるようにして自分を見ている晶へ顔を向ける。
「晶」
呼びかけても、晶は動かない。
「……? 晶?」
「恥ずかしがってないで行きなさい。時間、間に合わなくなるよ」
「……うぅ……」
晶は小さく呻き、そろりそろりと前に出て、少しだけ踵の高いカジュアルパンプスを履き、ショルダーポーチを肩にかけ、稔の前に出てきて、
「お、お待たせしました……」
と、視線を稔へ向ける。
そしたら、今度は稔が小さく唸り、しゃがみ込んだ。
「……? 稔?」
「なんでもない……いや、なんでもなくないけど……」
稔は緩慢な動作で立ち上がり、
「行くか」
「う、うん……」
「はい行ってらっしゃい。楽しんできな」
日向は軽く手を振ってそう言い、玄関を閉めた。
「……」
「……ほら」
動かない晶へ、稔が手を差し出す。
「……えっ、あ、は、はい……」
晶がその手を遠慮がちに握ると、
「……晶、一つ、いいか」
「へっ? な、なに……?」
「可愛い」
その言葉に、注がれる視線に、晶の顔が赤くなる。
「…………あ、ありがと……。……その……」
晶は視線を彷徨わせたあと、その瞳を稔へ向け、
「……稔も、格好良い、です……」
すると稔は目を瞬かせ、一拍してから顔を赤くし、
「……っ、……それは、どうも……」
「そろそろホントに時間に遅れるよ?」
「ひゃあ?!」「っ?!」
日向の声に、二人揃って肩を跳ねさせる。
いつ開けたのか、玄関ドアの隙間から、日向が二人を覗いていた。
「び、びっくりさせないでください……!」
稔が言うと、
「二人とも動かないんだもん。ほら、早く行ってらっしゃい」
日向の行動で気が抜けたのか、稔は「……ハァ……」と息を吐くと、
「そっすね。行ってきます。晶、行こう」
「う、うん……行ってきます……」
そして二人は、やっと歩きだした。
「何さ」
「この格好、変じゃないよね?」
「その質問は十二回目だな。変じゃないよ」
リビングをうろうろしている晶の言葉に、日向は呆れ気味に答える。
今日は日曜日。稔とのデートの日だ。
ペールブルーのシャツを着て、デニムのスカートを履き、クリーム色のカーディガンを羽織っている晶は、そわそわと落ち着きがない。
「メイクは? 変じゃない?」
晶の顔には淡く、オレンジ系とピンク系の色味のメイクが施されている。
「変じゃないよ。可愛い可愛い」
「髪も変じゃないよね?」
「変じゃないって。つーか髪は私がセットしただろうに」
髪をセットするのに慣れていない晶は、日向にセットを頼み、最終的に、ざっくり三つ編みのサイドポニーテールの髪型で落ち着いた。
髪全体にヘアアイロンでカールをかけているので、ふわふわとした印象になっている。
「そ、そうだけども……」
晶は不安そうな声を出す。そして時計を何度も見る。
「リラックスしな、晶。今から緊張してると保たないよ。時間まであと三十分はあるんだからさ」
「分かってるけどぉ……!」
ちなみに、晶たちの両親は出掛けている。
片方は休日出勤、もう片方はご近所の集まりで。
「ほら、ソファ座りな。お姉ちゃんが紅茶を用意してやろう。ティーバッグのだけど」
日向はそう言って、半強制的に晶をソファに座らせ、紅茶を用意する。
「ほい」
日向はお盆ごと、紅茶の入ったティーカップを二つ、ソファ前のローテーブルに置き、それぞれを晶の前と自分の前に置き直した。
「それ飲んで落ち着きな。少し蜂蜜入れてあるから」
「ありがとう……いただきます……」
晶は紅茶を一口飲み、はふぅ……と息を吐き出す。
「……今日のお姉ちゃん、すごい心強い……」
「失敬な。お前のお姉ちゃんはいつも心強いぞ」
「……うん、ありがとう……」
そして、晶が紅茶をちびちび飲んでいると、約束の時間になった。
と、同時にインターホンが鳴る。
「ヒッ!」
「怯えてどーすんの。ほら、ついてったげるから。あ、リップ直しな」
日向は残っていた紅茶をグイッと飲み干し、立ち上がる。
「あ、ま、待って……」
晶も少し慌てて紅茶を飲み干し、ソファに置いておいたショルダーポーチからリップクリームと口紅を取り出して洗面台に向かい、唇部分のメイクを直す。
そしてショルダーポーチを取りに行き、その中にリップクリームと口紅を戻し、日向のあとを追いかけていった。
「はーいお待たせしました」
「ども」
日向が玄関を開けると、日向と晶の予想通り、稔が立っていた。
稔の格好は、黒のジーパンにロゴTシャツ、その上に薄手のジャケット。靴はスニーカー。
「……うん! まあ、良いでしょう!」
「……俺は何かを審査されたんすか?」
日向へ呆れた顔を向けたあと、稔は日向に隠れるようにして自分を見ている晶へ顔を向ける。
「晶」
呼びかけても、晶は動かない。
「……? 晶?」
「恥ずかしがってないで行きなさい。時間、間に合わなくなるよ」
「……うぅ……」
晶は小さく呻き、そろりそろりと前に出て、少しだけ踵の高いカジュアルパンプスを履き、ショルダーポーチを肩にかけ、稔の前に出てきて、
「お、お待たせしました……」
と、視線を稔へ向ける。
そしたら、今度は稔が小さく唸り、しゃがみ込んだ。
「……? 稔?」
「なんでもない……いや、なんでもなくないけど……」
稔は緩慢な動作で立ち上がり、
「行くか」
「う、うん……」
「はい行ってらっしゃい。楽しんできな」
日向は軽く手を振ってそう言い、玄関を閉めた。
「……」
「……ほら」
動かない晶へ、稔が手を差し出す。
「……えっ、あ、は、はい……」
晶がその手を遠慮がちに握ると、
「……晶、一つ、いいか」
「へっ? な、なに……?」
「可愛い」
その言葉に、注がれる視線に、晶の顔が赤くなる。
「…………あ、ありがと……。……その……」
晶は視線を彷徨わせたあと、その瞳を稔へ向け、
「……稔も、格好良い、です……」
すると稔は目を瞬かせ、一拍してから顔を赤くし、
「……っ、……それは、どうも……」
「そろそろホントに時間に遅れるよ?」
「ひゃあ?!」「っ?!」
日向の声に、二人揃って肩を跳ねさせる。
いつ開けたのか、玄関ドアの隙間から、日向が二人を覗いていた。
「び、びっくりさせないでください……!」
稔が言うと、
「二人とも動かないんだもん。ほら、早く行ってらっしゃい」
日向の行動で気が抜けたのか、稔は「……ハァ……」と息を吐くと、
「そっすね。行ってきます。晶、行こう」
「う、うん……行ってきます……」
そして二人は、やっと歩きだした。
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