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8 昼から午後へ③

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 そして、帰りのホームルームも終わり、部活へ向おうと教室を出た俺の所に、

「稔ー」

 晶がやって来た。そして、昼の女子二人も。

「あっちゃんと美来みくちゃんもね、見学したいって。良いかな?」
「……良いんじゃないか。ちゃんと許可貰えば」
「ん、分かった」

 こくりと頷いた晶を見てから、俺は歩き出す。

「えっ、あっ、待ってよー」

 その声に足を止めてしまったら、また、朝練のあとのように腕を掴まれた。

「一緒に行こうよ」

 左腕を掴まれた俺は、その柔らかさに意識を向けないようにして、なるべく冷静さを保とうと頑張る。

「……はぁ……別に、いいけど……」
「ねえ本田」

 その後ろから声が聞こえた。声の主は、晶が『あっちゃん』と呼ぶ、飯田朱音いいだあかね
 去年、飯田とは同じクラスだったので、知り合い程度ではある。

「なんだ?」
「昨日のアンタたちのやり取り、晶から聞いたんだけど」

 マジかよ。

「おおっとお? 稔を囲む女子が増えているぅ」
「なんかその言い方嫌だな吉野」

 振り向けば、吉野含む二年の部員が全員揃っていた。
 俺を入れると九人になる。

「中野さん本当に来るんだ?」

 宗太郎の言葉に、

「うん。あっちゃんと美来ちゃんも一緒だよ」
「まじかよ。こりゃあ頑張んねぇとなあ稔」
「だからなんかその言い方やめろ吉野」

 総勢十二名でぞろぞろと、第二体育館へ向かう。
 着いたら、晶たちは迷いなく部長のもとへ行き、話を通し、朝、晶が座っていたのと同じ場所へ座った。

「……一年が浮ついてんなぁ……」
「彼女いる一年いねぇの?」
「確かいない」
「そもそもウチ、彼女いんの三年だけだろ」

 二年の間でぼそぼそと交わされる会話。
 俺はそれに混ざることなく、更衣室へ向かう。

「いや、『俺、関係ありませんから』みたいな空気出すんじゃありませんよ」

 と、吉野が呆れた声で言いながら追いかけてきた。

「俺は巻き込まれている側だ。俺は悪くない」

 更衣室に入りながら、小声で言う。

「お前なぁ……中野さんのこと、諦められてねぇんだろ?」
「……」
「でさ、中野さんの心境に、お前の行動で何か変化が起きた訳だろ? チャンスじゃねえの?」

 俺は手早く着替え、

「……二度もフラれたくない」
「おお、臆病者」
「なんとでも言え」

 俺は更衣室を出て、部活の準備に取り掛かった。


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