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第一章 そこは竜の都
二十九話
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それに是と答えようとして、けれどアイリスの口は上手く動かない。
「向上心も責任感も大事だが、それは第一にアイリスのためのものだ。他者を重んじる事も大切だが」
そしてヘイルは、アイリスの肩に手を置いた。
「ずっと周りを窺うというのは、疲れるぞ」
「…………は……ぃ……」
何処か戸惑いながらもなんとか出した声は、とてもか細く。
そんなアイリスの肩を一度軽く叩いて、ヘイルは柔らかい表情になる。
「大事は起きないようこちらも尽くす。が、生活をすれば必然的に、細々と何かしらは起きるだろう。あまり気負うな」
「……分かり、ました」
先ほどよりはしっかりと返事をし、アイリスは頷いた。
「アイリス。私、それとシャオンも、面倒事の場数は踏んでるから、何かあっても大体安心して」
「……トラブル、ですか?」
おずおずと首を傾げたアイリスに、ブランゼンは大きく頷く。
「ヘイルは行動力というか、実行力というか。そういうのが有り余って溢れ易いの。今は昔よりは落ち着いたけれど」
悪戯でもする顔付きでブランゼンは笑った。
「小さい頃から城の探検は日課だったし、どれだけ隠れられるか真剣に計画を練って実行したし」
「おい」
「単独で視察に出て追いかける羽目になるし、大体何かしら改善点を見つけて来るし」
「おい、ブランゼン」
「人間を見に行くって言って、本当に人の街まで行ったりして。最終的にみんなで怒られて、でも何かしら役に立つ結果になったりして」
これは、単に驚くべきか。それとも凄いと言うべきか。顔を顰めるヘイルが目に入り、アイリスは真面目な顔をする事にした。
「そんな感じで昔から色々付き合わされてたから、大概の事はなんとかなるわ。良いことだって、沢山あるだろうから」
「……分かりました。何があるか分かりませんが、ブランゼンさんとシャオンさんには、色々とご相談させて頂きます」
そもそも竜で、領主と近しく、知識と経験を持つ存在。何もなくとも、単純に竜の知識を得るのにだって、ブランゼン達の協力はとても有り難い。
「別に、問題を起こそうとして起こした訳ではない……」
ぼそりと言ったヘイルを見て、ブランゼンは呆れ顔になった。
「分かってるわよ。だから余計面倒なんじゃない。それに今は、もっと上手く立ち回ってるでしょ」
口を少しだけ曲げ、ヘイルは黙った。
(やっぱり仲、良いなあ……)
領主──玻璃の長と、その側近。まっすぐに推測できるのはこの程度。持ち得る情報でより捻った見方をすると、特別な──。
そんな事を考えていたアイリスと、ヘイルの目が、
「……よし、市場に行くぞ」
合ったかと思うと、ヘイルは腕を組んでそう言った。
「向上心も責任感も大事だが、それは第一にアイリスのためのものだ。他者を重んじる事も大切だが」
そしてヘイルは、アイリスの肩に手を置いた。
「ずっと周りを窺うというのは、疲れるぞ」
「…………は……ぃ……」
何処か戸惑いながらもなんとか出した声は、とてもか細く。
そんなアイリスの肩を一度軽く叩いて、ヘイルは柔らかい表情になる。
「大事は起きないようこちらも尽くす。が、生活をすれば必然的に、細々と何かしらは起きるだろう。あまり気負うな」
「……分かり、ました」
先ほどよりはしっかりと返事をし、アイリスは頷いた。
「アイリス。私、それとシャオンも、面倒事の場数は踏んでるから、何かあっても大体安心して」
「……トラブル、ですか?」
おずおずと首を傾げたアイリスに、ブランゼンは大きく頷く。
「ヘイルは行動力というか、実行力というか。そういうのが有り余って溢れ易いの。今は昔よりは落ち着いたけれど」
悪戯でもする顔付きでブランゼンは笑った。
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「おい」
「単独で視察に出て追いかける羽目になるし、大体何かしら改善点を見つけて来るし」
「おい、ブランゼン」
「人間を見に行くって言って、本当に人の街まで行ったりして。最終的にみんなで怒られて、でも何かしら役に立つ結果になったりして」
これは、単に驚くべきか。それとも凄いと言うべきか。顔を顰めるヘイルが目に入り、アイリスは真面目な顔をする事にした。
「そんな感じで昔から色々付き合わされてたから、大概の事はなんとかなるわ。良いことだって、沢山あるだろうから」
「……分かりました。何があるか分かりませんが、ブランゼンさんとシャオンさんには、色々とご相談させて頂きます」
そもそも竜で、領主と近しく、知識と経験を持つ存在。何もなくとも、単純に竜の知識を得るのにだって、ブランゼン達の協力はとても有り難い。
「別に、問題を起こそうとして起こした訳ではない……」
ぼそりと言ったヘイルを見て、ブランゼンは呆れ顔になった。
「分かってるわよ。だから余計面倒なんじゃない。それに今は、もっと上手く立ち回ってるでしょ」
口を少しだけ曲げ、ヘイルは黙った。
(やっぱり仲、良いなあ……)
領主──玻璃の長と、その側近。まっすぐに推測できるのはこの程度。持ち得る情報でより捻った見方をすると、特別な──。
そんな事を考えていたアイリスと、ヘイルの目が、
「……よし、市場に行くぞ」
合ったかと思うと、ヘイルは腕を組んでそう言った。
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