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102 ハッピーエンドハッピーバレンタイン
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桜ちゃんのその問いかけに、それは、あり得るのだろうか。と、私は思ってしまった。
「どうだろうな……そのほうがウェルナーさんの幸せに繋がるなら、今、私の意味不明な行動で混乱させてるより、良いかも知れない……」
苦しそうに言ったそれに、
「マリアちゃんそれは」「変じゃない? マリアちゃん」
被った私と桜ちゃんは、身振り手振りで譲り合って、私から話すことになった。
「……えーとね、マリアちゃん。マリアちゃん今、ウェルナーさんの幸せに繋がるならって、言ったよね。気持ちはともかく、ウェルナーさんを幸せにしたいって、そういう思いはあるって思えたよ。合ってる?」
聞けば、マリアちゃんは、少し顔を上げて。
「そりゃあな。こんな私にここまで付き合ってくれたんだ。幸せになって欲しいと思うよ」
皮肉を込めた笑顔で言った。
「私からはね。意味不明な行動って、言ったけど、なんでそう行動したかは、マリアちゃんの中でちゃんと答えが出てるじゃんってこと」
桜ちゃんの言葉に、
「……そうか?」
マリアちゃんはその顔のまま、首を傾げる。
「そうだよ。最初の、友人って言ったけど、それに縛られてる感じがし始めて、からがさ。全部に繋がると思うんだ」
桜ちゃんは抹茶オレを飲んで、
「高峰っちとのことでウェルナーさんを思い出して、それにムカついた。それって、高峰っちはともかく、ウェルナーさんを友人と思ってないから、違う人の隣に立たされそうになって、思い出したってことじゃない? 他もそう。友人と思ってないから、友人としての行動に、不満があるんだよ。それで最後。本当に友人で良いと思ってるなら、そんな苦しそうに言わないと思うんだ、いつものマリアちゃんなら」
桜ちゃんの分析がすごい……。
「私もね、マリアちゃんはウェルナーさんのこと、友人として扱いたくないって思ってるみたいに見えるし聞こえるよ。もうさ、荒療治だけどさ。直球で、ウェルナーさんにそれ、全部言ったほうがスッキリするんじゃないかな。ウェルナーさんだって、思い悩んでるんだし。嫌われたくないって自分で言ったし。直接話し合ったほうが良いと思う」
マリアちゃんは、ため息を吐いて。
「もう、それしかないか。……どんな結果になっても、今よりマシな気はするし。どこかで時間作って、話してみる」
「今やろうよ」「今連絡しなよ」
被ったけど、今度は問題ない。
気落ちしてるふうなマリアちゃんになんとかスマホを出してもらって。
どこかで時間作って話せないかって連絡してもらって。
そしたら。
「……ちょっと、見てくれないか」
マリアちゃんが、その画面を見せてくれたので、二人で見る。
『分かった。俺からも、話したいことがあるんだ、マリア。今、抜けても大丈夫だから、そのまま会いに行ける。どこに行けば良い?』
「話したいことって、なんだろうな……。あと、場所、どこにすれば良いのかな……」
「みつみんのバイト先は? 最初にあそこで会ったんだし」
「……二人とも、一緒に来てくれないか……?」
「私は、良いけど」
「私もオッケーだよ。何かありそうになったら、補助するよ」
「ありがとう……」
マリアちゃんは、それを送って。3人で、お店へ。
行ったら、ウェルナーさんが、エイプリルさんにコーヒーを注文しているところで。
ドアベルの音に気付いた二人が、こっちを見て、エイプリルさんは、注文をメモし終えてたから、そのままこっちへ来て。ウェルナーさんは、ぎこちない笑顔をこっちに見せた。
「いらっしゃいませ。皆さん。ウェルナーさんから聞いてましたが、席は同じ、ということで良いですか?」
エイプリルさんのそれに、桜ちゃんが。
「マリアちゃんは同じ席で。私たちは近くに座ってる」
私もそれに頷いて、エイプリルさんは「分かりました」と、水を持ってくるために厨房へ。
私たちはマリアちゃんを、ウェルナーさんの前に座らせて、私と桜ちゃんは、隣のテーブルへ。
「三人一緒じゃないのか?」
不思議そうに言うウェルナーさんに、
「はい。このままで。私たちは付き添いなので」
私はそう答え、水を持ってきてくれたエイプリルさんに、私はココア、桜ちゃんはカフェオレを頼み、マリアちゃんは少し考えると言って、エイプリルさんは下がった。
「……それで、マリア」
ウェルナーさんは、ちらっと私たちを見てから、
「なんだか、落ち込んでるようにも見えるけど……それは、大丈夫なのか?」
「大丈夫です。個人的な理由なので」
「そうか、分かった。それじゃ……マリアからの話と俺の話、どっちからする?」
覚悟を決めたような顔で、マリアちゃんに向き合い、そう聞いて。
「……呼び出した側ですから、ウェルナーさんから、どうぞ」
その、マリアちゃんの言葉に。
「分かった。俺から話すよ」
ウェルナーさんは、苦笑を浮かべて。
「マリア。俺、マリアの友人に相応しくないよ」
おっと、ウェルナーさん?
「相応しくなれない。……どうしても、気持ちを傾けてしまうから。だから、マリア、友人、辞めないか? もとに戻れないか? マリアに迷惑をかけたくないんだ」
それを聞いたマリアちゃんが、諦めた顔になって、それを見た私は慌てて立ち上がって。桜ちゃんも同じように立ち上がって。
「(待った待った待った。ウェルナーさん、待って下さい。そういう話だとしたら、待って下さい)」
「みつみんのがたぶんドイツ語なのは分かるけど、私からも言います。相応しくないとか、今は言わないで下さい。マリアちゃんの話を聞いてあげて、ウェルナーさん」
「えっと……? それは、マリアのために、なるのか?」
「なります」
「なりますから」
私たちは、頷いて。
それから私は、困ったように私たちを見ていたマリアちゃんに向かって。
「(マリアちゃん、相談してくれたこと、ちゃんと全部、言って。気持ち、全部。今のウェルナーさんの言葉、マリアちゃんを想ってのことだよ)」
「いや、その、光海。無理にマリアに話させるのは、俺の本意じゃない。無理して欲しくないんだ、マリアに」
慌てて言ったウェルナーさんに、その反応に、私は驚いて、マリアちゃんも少し驚いた顔をウェルナーさんに向けた。
「(……ウェルナーさん、イタリア語、聞き取れましたっけ……?)」
私の言葉に、ウェルナーさんはハッとしたように口を塞ぎ、
「……や、その、……少し、勉強、してたから……悪い。こういうのが、駄目なんだよな。友人なのに、悪い」
「(全然悪くないです。マリアちゃんの気持ちを聞いてあげて下さい。身を引こうとしないで、ウェルナーさん)」
あえて、イタリア語で言った。
「もう、なんとなくしか話が掴めなくなってきたけど、ウェルナーさんはマリアちゃんを不幸にしてないので。マリアちゃんの話を聞いてあげて、ウェルナーさん」
桜ちゃんもそう言って、そこに飲み物を持ってきてくれたエイプリルさんが来て、私たちは席に戻り、呆然として、自分たちと私たちを見る、ウェルナーさんとマリアちゃんに、
「マリアちゃん、話して。大丈夫。こういう話なら、絶対悪い方向にいかないから」
「そうだよ、マリアちゃん。話が全部分かってるみつみんがこう言うんだよ。相談してくれたこと、ウェルナーさんに、話して。ちゃんと。そうじゃないと、たぶん、後悔しちゃうよ」
それを聞いたマリアちゃんは、顔を歪めて、ウェルナーさんに向き合って。
「……話、私からのを、聞いてもらって良いですか」
「わ、分かった……けど、無理しないで「(ウェルナーさん、最後まで聞いてあげて下さい)」……分かった。最後まで、聞くよ。マリア、話してくれ」
マリアちゃんは、少しずつ、話し始めて。それを聞いていたウェルナーさんの顔が、だんだん、驚きに変わっていって。
「だからこの前、急に、呼び出したりしてしまったんです。完全に、私の我が儘なんです」
「……そ、れは……マリア。その、……あの、…………俺、マリアを好きでいて、良いって、こと、なのか?」
「それが、ウェルナーさんのご迷惑にならないのなら」
マリアちゃんのその言葉に、ウェルナーさんは真剣な顔をして。
「ならないよ。絶対」
そして、少し申し訳さそうに。
「……マリア、あのさ、俺、諦めが悪くて、イタリア語、ずっと勉強してたんだ。聞き取るだけじゃなくて、会話も、出来るくらいに」
ウェルナーさん、話せたんかい。
「(……マリア、君を愛しても、良いのかな)」
ウェルナーさん? 直球だな?
「(…………逆に、私は、ウェルナーさんに相応しく在れますか? ずっと、こういう態度を取って来た、私ですけど)」
「(マリア。それ、全部、嬉しかったんだ。とっても嬉しくて、けど、友人だからって思って、気持ちを抑えてた。だけど、抑えなくていいなら、全部、そのまま、伝えて良いかな。……いや、伝えたい。言わせて欲しい。マリア、やっぱり俺、君を好きだよ。どうしても諦められないよ。もっと、積極的になりたい。今からでも、バラ、贈って良いか?)」
マリアちゃんは、驚いた顔をしてから、それを、優しい微笑みに変えて。
「(……嬉しいので、貰いたいです)」
その一連を、見て、聞いていたウェルナーさんの顔が、赤くなっていって。
「(……ずるいよマリア……もっと好きになるよ……? 俺……)」
嬉しそうに、困ったように、頭に手を当てるウェルナーさんに、
「(私も、ドイツ語、話せるようになりたいです。教えてくれますか?)」
マリアちゃんがそう言ったら、ウェルナーさんは、完全に顔を伏せてしまって、頭に当てていた手で、顔を覆うようにしながら、
「(……いくらでも教えるよ……)」
……丸く収まったな、これ。
と、桜ちゃんにトントンと軽く叩かれ、ハッピーエンド? と口パクで聞かれて。
私は頷いて、スマホを出して、桜ちゃんにことのあらましを送る。
それを読んだ桜ちゃんは、
『マジでハッピーエンドだね』
そう返信してくれた。
「どうだろうな……そのほうがウェルナーさんの幸せに繋がるなら、今、私の意味不明な行動で混乱させてるより、良いかも知れない……」
苦しそうに言ったそれに、
「マリアちゃんそれは」「変じゃない? マリアちゃん」
被った私と桜ちゃんは、身振り手振りで譲り合って、私から話すことになった。
「……えーとね、マリアちゃん。マリアちゃん今、ウェルナーさんの幸せに繋がるならって、言ったよね。気持ちはともかく、ウェルナーさんを幸せにしたいって、そういう思いはあるって思えたよ。合ってる?」
聞けば、マリアちゃんは、少し顔を上げて。
「そりゃあな。こんな私にここまで付き合ってくれたんだ。幸せになって欲しいと思うよ」
皮肉を込めた笑顔で言った。
「私からはね。意味不明な行動って、言ったけど、なんでそう行動したかは、マリアちゃんの中でちゃんと答えが出てるじゃんってこと」
桜ちゃんの言葉に、
「……そうか?」
マリアちゃんはその顔のまま、首を傾げる。
「そうだよ。最初の、友人って言ったけど、それに縛られてる感じがし始めて、からがさ。全部に繋がると思うんだ」
桜ちゃんは抹茶オレを飲んで、
「高峰っちとのことでウェルナーさんを思い出して、それにムカついた。それって、高峰っちはともかく、ウェルナーさんを友人と思ってないから、違う人の隣に立たされそうになって、思い出したってことじゃない? 他もそう。友人と思ってないから、友人としての行動に、不満があるんだよ。それで最後。本当に友人で良いと思ってるなら、そんな苦しそうに言わないと思うんだ、いつものマリアちゃんなら」
桜ちゃんの分析がすごい……。
「私もね、マリアちゃんはウェルナーさんのこと、友人として扱いたくないって思ってるみたいに見えるし聞こえるよ。もうさ、荒療治だけどさ。直球で、ウェルナーさんにそれ、全部言ったほうがスッキリするんじゃないかな。ウェルナーさんだって、思い悩んでるんだし。嫌われたくないって自分で言ったし。直接話し合ったほうが良いと思う」
マリアちゃんは、ため息を吐いて。
「もう、それしかないか。……どんな結果になっても、今よりマシな気はするし。どこかで時間作って、話してみる」
「今やろうよ」「今連絡しなよ」
被ったけど、今度は問題ない。
気落ちしてるふうなマリアちゃんになんとかスマホを出してもらって。
どこかで時間作って話せないかって連絡してもらって。
そしたら。
「……ちょっと、見てくれないか」
マリアちゃんが、その画面を見せてくれたので、二人で見る。
『分かった。俺からも、話したいことがあるんだ、マリア。今、抜けても大丈夫だから、そのまま会いに行ける。どこに行けば良い?』
「話したいことって、なんだろうな……。あと、場所、どこにすれば良いのかな……」
「みつみんのバイト先は? 最初にあそこで会ったんだし」
「……二人とも、一緒に来てくれないか……?」
「私は、良いけど」
「私もオッケーだよ。何かありそうになったら、補助するよ」
「ありがとう……」
マリアちゃんは、それを送って。3人で、お店へ。
行ったら、ウェルナーさんが、エイプリルさんにコーヒーを注文しているところで。
ドアベルの音に気付いた二人が、こっちを見て、エイプリルさんは、注文をメモし終えてたから、そのままこっちへ来て。ウェルナーさんは、ぎこちない笑顔をこっちに見せた。
「いらっしゃいませ。皆さん。ウェルナーさんから聞いてましたが、席は同じ、ということで良いですか?」
エイプリルさんのそれに、桜ちゃんが。
「マリアちゃんは同じ席で。私たちは近くに座ってる」
私もそれに頷いて、エイプリルさんは「分かりました」と、水を持ってくるために厨房へ。
私たちはマリアちゃんを、ウェルナーさんの前に座らせて、私と桜ちゃんは、隣のテーブルへ。
「三人一緒じゃないのか?」
不思議そうに言うウェルナーさんに、
「はい。このままで。私たちは付き添いなので」
私はそう答え、水を持ってきてくれたエイプリルさんに、私はココア、桜ちゃんはカフェオレを頼み、マリアちゃんは少し考えると言って、エイプリルさんは下がった。
「……それで、マリア」
ウェルナーさんは、ちらっと私たちを見てから、
「なんだか、落ち込んでるようにも見えるけど……それは、大丈夫なのか?」
「大丈夫です。個人的な理由なので」
「そうか、分かった。それじゃ……マリアからの話と俺の話、どっちからする?」
覚悟を決めたような顔で、マリアちゃんに向き合い、そう聞いて。
「……呼び出した側ですから、ウェルナーさんから、どうぞ」
その、マリアちゃんの言葉に。
「分かった。俺から話すよ」
ウェルナーさんは、苦笑を浮かべて。
「マリア。俺、マリアの友人に相応しくないよ」
おっと、ウェルナーさん?
「相応しくなれない。……どうしても、気持ちを傾けてしまうから。だから、マリア、友人、辞めないか? もとに戻れないか? マリアに迷惑をかけたくないんだ」
それを聞いたマリアちゃんが、諦めた顔になって、それを見た私は慌てて立ち上がって。桜ちゃんも同じように立ち上がって。
「(待った待った待った。ウェルナーさん、待って下さい。そういう話だとしたら、待って下さい)」
「みつみんのがたぶんドイツ語なのは分かるけど、私からも言います。相応しくないとか、今は言わないで下さい。マリアちゃんの話を聞いてあげて、ウェルナーさん」
「えっと……? それは、マリアのために、なるのか?」
「なります」
「なりますから」
私たちは、頷いて。
それから私は、困ったように私たちを見ていたマリアちゃんに向かって。
「(マリアちゃん、相談してくれたこと、ちゃんと全部、言って。気持ち、全部。今のウェルナーさんの言葉、マリアちゃんを想ってのことだよ)」
「いや、その、光海。無理にマリアに話させるのは、俺の本意じゃない。無理して欲しくないんだ、マリアに」
慌てて言ったウェルナーさんに、その反応に、私は驚いて、マリアちゃんも少し驚いた顔をウェルナーさんに向けた。
「(……ウェルナーさん、イタリア語、聞き取れましたっけ……?)」
私の言葉に、ウェルナーさんはハッとしたように口を塞ぎ、
「……や、その、……少し、勉強、してたから……悪い。こういうのが、駄目なんだよな。友人なのに、悪い」
「(全然悪くないです。マリアちゃんの気持ちを聞いてあげて下さい。身を引こうとしないで、ウェルナーさん)」
あえて、イタリア語で言った。
「もう、なんとなくしか話が掴めなくなってきたけど、ウェルナーさんはマリアちゃんを不幸にしてないので。マリアちゃんの話を聞いてあげて、ウェルナーさん」
桜ちゃんもそう言って、そこに飲み物を持ってきてくれたエイプリルさんが来て、私たちは席に戻り、呆然として、自分たちと私たちを見る、ウェルナーさんとマリアちゃんに、
「マリアちゃん、話して。大丈夫。こういう話なら、絶対悪い方向にいかないから」
「そうだよ、マリアちゃん。話が全部分かってるみつみんがこう言うんだよ。相談してくれたこと、ウェルナーさんに、話して。ちゃんと。そうじゃないと、たぶん、後悔しちゃうよ」
それを聞いたマリアちゃんは、顔を歪めて、ウェルナーさんに向き合って。
「……話、私からのを、聞いてもらって良いですか」
「わ、分かった……けど、無理しないで「(ウェルナーさん、最後まで聞いてあげて下さい)」……分かった。最後まで、聞くよ。マリア、話してくれ」
マリアちゃんは、少しずつ、話し始めて。それを聞いていたウェルナーさんの顔が、だんだん、驚きに変わっていって。
「だからこの前、急に、呼び出したりしてしまったんです。完全に、私の我が儘なんです」
「……そ、れは……マリア。その、……あの、…………俺、マリアを好きでいて、良いって、こと、なのか?」
「それが、ウェルナーさんのご迷惑にならないのなら」
マリアちゃんのその言葉に、ウェルナーさんは真剣な顔をして。
「ならないよ。絶対」
そして、少し申し訳さそうに。
「……マリア、あのさ、俺、諦めが悪くて、イタリア語、ずっと勉強してたんだ。聞き取るだけじゃなくて、会話も、出来るくらいに」
ウェルナーさん、話せたんかい。
「(……マリア、君を愛しても、良いのかな)」
ウェルナーさん? 直球だな?
「(…………逆に、私は、ウェルナーさんに相応しく在れますか? ずっと、こういう態度を取って来た、私ですけど)」
「(マリア。それ、全部、嬉しかったんだ。とっても嬉しくて、けど、友人だからって思って、気持ちを抑えてた。だけど、抑えなくていいなら、全部、そのまま、伝えて良いかな。……いや、伝えたい。言わせて欲しい。マリア、やっぱり俺、君を好きだよ。どうしても諦められないよ。もっと、積極的になりたい。今からでも、バラ、贈って良いか?)」
マリアちゃんは、驚いた顔をしてから、それを、優しい微笑みに変えて。
「(……嬉しいので、貰いたいです)」
その一連を、見て、聞いていたウェルナーさんの顔が、赤くなっていって。
「(……ずるいよマリア……もっと好きになるよ……? 俺……)」
嬉しそうに、困ったように、頭に手を当てるウェルナーさんに、
「(私も、ドイツ語、話せるようになりたいです。教えてくれますか?)」
マリアちゃんがそう言ったら、ウェルナーさんは、完全に顔を伏せてしまって、頭に当てていた手で、顔を覆うようにしながら、
「(……いくらでも教えるよ……)」
……丸く収まったな、これ。
と、桜ちゃんにトントンと軽く叩かれ、ハッピーエンド? と口パクで聞かれて。
私は頷いて、スマホを出して、桜ちゃんにことのあらましを送る。
それを読んだ桜ちゃんは、
『マジでハッピーエンドだね』
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