85 / 123
85 廃れた世界と、同窓会
しおりを挟む
「……」
ソファに座り、いつもと違う銘柄の、先輩からのおこぼれを吸いながら、その画面を眺める。
思いつきのように送ってみた幾つかのメッセージは、未読のままで。
「カズ、何見てんの?」
自慢の胸を押し付けながら、覗こうとしてくる今カノに、
「んー……暇つぶし」
スマホの画面を暗くしながら言って、口からタバコを外し、彼女にキスをする。スマホをポケットに突っ込み、少し強引に腰を引き寄せる。
そのまま舌を絡めれば、さっきまで飲んでいたらしい、カルーアミルクの味がした。
抗うどころか、そのまま求めてくる彼女へ、コレ高ぇんだよなと思いながら、吸い始めたばかりだったタバコを床に落として、応えていく。こちらからも、求めていく。
「ヤるなら場所変えろよお前ら。見ながら歌いたくねぇわ」
「……へーい」
最近フラレたらしい別の先輩の、苛立ちが混じった言葉に、『カズ』は、口と手を離した。
今は、カラオケ大会の最中で。最下位の奴には、吐くまでイッキの刑が用意されている。
「えーヤダ。ココまでしておいてさぁ。ねぇ、カズ」
乱れた服をそのままに、彼女はカズに跨った。
「んまぁ、俺も、消化不良ではある」
太腿を掴み、引き寄せて押し付け、言う。腹の下は既に熱く、──けれど、胸の奥底はまた、冷えている。
付き合い始めて、2週間近く。その前から何度かしていたが、胸がデカくて躊躇いのないコイツのとそれは、まあ結構、気分がイイ。イイが、一時的なもので。
「ねぇ、なら、場所変えよ?」
甘く誘われ、キスをされる。首に腕を回され、今度は、彼女から舌を絡めてくる。
「……」
それに応えながら、コイツとはいつまで保つかな、と、思う。前のとは、それなりに長く──1ヶ月半くらい続いたんだよな。そう、思い出しながら。
『教えてあげるよ』
初めてのそれが、寝取るという行為だと分かっていても、快楽は快楽で。教えられて、溺れるように教え込まれて、バレて死ぬほどボコられてから、そういや、ここはそういう場所だったと、我に返った。
頭は冷えたが、覚えてしまったそれを、体は求めるようになる。
求めて、満たされて。暫くしたら飢えてきて、また求める。求めれば求めるほど、飢えは、強くなっていった。いつ現れたのか分からない胸の冷えも、強くなっていって。
気付けば、周りには、そんな自分を求める女で溢れていて。
「ヤメロっつっただろうが」
後頭部を強めに殴られて、その先輩が飲んでいたハイボールを浴びる。
彼女は、殴られる直前に身を引いていて、「もー、濡れちゃったじゃん」と、避けきれずにハイボールがかかった服をつまんで、不満そうに言った。
「……あーうん。悪い。先輩も、スンマセン。──お詫びです!」
誰が頼んだか忘れた赤ワインを、先輩にぶっかけた。
「……カズ……テメェ……」
赤く染まった先輩が、明確に怒りを向けてくる。
「やー、すんませんすんません」
心無い謝罪を口にすれば、それは、開始の合図となる。
「お前ら、程々にしとけ。出禁はあとが面倒い」
喧嘩の最中、リーダー格から、そんな注意を受けた。
「オーッス、勝ちー」
わざと覇気のない声で宣言して、床に転がり呻く先輩を踏みつけ、
「やー、勉強になりました。アザッス」
笑顔で、そう言った。
そのあとカズは、最下位の奴が吐くのを見届けて、彼女と『ホテル』に入る。
満たされても、飢えは消えない。胸の奥の冷えは、強くなるばかり。
「……」
寝ている彼女の横で、いつものタバコを燻らせながら、スマホを開いて。
未読のままのそれに、煙を吹きかけた。
成川光海。その、ラインの画面に。
◇
「橋本、髪、スゲェな。耳もスゲェ」
「言われると思った」
久しぶりに顔を合わせる友人に、涼はそう答える。
同窓会の会場である、墨ノ目の近くにあるファミレスに入ったら、
『なんだそれ橋本! めったくそ変わったな?!』
友人の一人に叫ばれた。
そして、まだ開始時間前だというのに、既に来ていた友人たちに囲まれて。
『高峰、助けろ』
『そこは自分で頑張って』
そんなやり取りを交わしながら、席についた。
「橋本、背ぇ伸びた?」
「4月の検査だと、181。今は知らん」
「あれじゃん。自販機と同じくらいじゃん」
「てか、ピアス、それ、どう付けてるん? 何個?」
「全部で20。種類は……アンテナと、インダストリアルと、……テキトーに選んだから、覚えてねぇな。てか、もう時間になるだろ。バラけなくて良いのか?」
現在、涼を囲んだ4人の友人たちと、そこに高峰も加えた6人で、テーブルに座っている。
同窓会の開始時間は、昼の12時。それまでもう、10分もない。
「別にこのままで良くね」
「2年ぶりだぜ? 積もる話もあるだろ」
「橋本、ラインのアカ消ししたじゃん。高峰もお前のこと話さないし。情報ゼロよ?」
涼は、渋い顔をする。
中学時代のアカウントは、友人の言う通りに消したのだ。グレたから、知り合い全てと、縁を切りたくて。
そのあと、そういう連中とつるみ始め、新しく作り、2年になる前の春休みに、今度はブロックという形で縁を切り、アカウントはそのまま使っている。
「繋がり直せば?」
高峰が言う。
「あ? 作り直したん?」
「なんだよ、高峰経由で参加の連絡来たから、持ってないのかと思ってた」
涼がなにか言う前に、周りは続々とスマホを取り出し、ラインを開く。
「一人ずつやってくとめんどいだろ? まず俺が招待するからさ。そこから繋がろうや」
一人が言い、QRを表示させる。
「……その積極性、どっから来んだよ……」
言いながらも、涼もスマホを出し、ラインを開き、それを読み取った。
「……通知の勢いが怖えわ」
同窓会グループに入った途端、4人が確認のメッセージやスタンプを送ってくる。
「このアイコン、犬? 何の犬?」
「サモエド」
「橋本、犬好きだっけ?」
「嫌いではねぇけど……この犬、彼女の家の犬だから。マシュマロって名前な」
友達登録をしながら、そう答えたら、
「彼女」
「彼女?」
「彼女って、Loverの彼女?」
「え? 橋本に?」
「なんだ悪いか」
涼が顔を上げると、友人たちは目を丸くしていた。
「……そんな意外か」
「いや、だってお前、……、……相手、誰?」
一人が、周囲を見てから、急に声を潜め、聞いてきた。
「クラスメイトだけど? その反応はなん?」
涼の言葉に、4人は揃って高峰へ顔を向ける。
「うん、嘘じゃないよ。橋本、名前くらい教えたら?」
「なんか、変なことに巻き込まれてる気がすんだけど? 言って平気なのか? これ」
周りの様子に困惑する涼に、
「僕から言おうか?」
「光海。成川光海」
顔をしかめて言った涼を見て、高峰は軽く吹き出した。
「橋本……ホント……成川さん大好きだよね……」
「笑うとこじゃねぇ」
二人のやり取りを見ていた友人たちは、
「まじか……」
「これ、今日、戦争起きる?」
「怖え。今から怖え」
「え、あ、じゃあ、高峰は? 高峰もか?」
「ううん。僕には居ないよ。あと、僕、今日は橋本の盾役を任されてる」
その言葉に、友人たちは呆気に取られ、
「はーい。まだ全員揃ってないけど、一応時間なんで。同窓会始めまーす」
立ち上がった、幹事の女子のそれで、同窓会が始まった。
ソファに座り、いつもと違う銘柄の、先輩からのおこぼれを吸いながら、その画面を眺める。
思いつきのように送ってみた幾つかのメッセージは、未読のままで。
「カズ、何見てんの?」
自慢の胸を押し付けながら、覗こうとしてくる今カノに、
「んー……暇つぶし」
スマホの画面を暗くしながら言って、口からタバコを外し、彼女にキスをする。スマホをポケットに突っ込み、少し強引に腰を引き寄せる。
そのまま舌を絡めれば、さっきまで飲んでいたらしい、カルーアミルクの味がした。
抗うどころか、そのまま求めてくる彼女へ、コレ高ぇんだよなと思いながら、吸い始めたばかりだったタバコを床に落として、応えていく。こちらからも、求めていく。
「ヤるなら場所変えろよお前ら。見ながら歌いたくねぇわ」
「……へーい」
最近フラレたらしい別の先輩の、苛立ちが混じった言葉に、『カズ』は、口と手を離した。
今は、カラオケ大会の最中で。最下位の奴には、吐くまでイッキの刑が用意されている。
「えーヤダ。ココまでしておいてさぁ。ねぇ、カズ」
乱れた服をそのままに、彼女はカズに跨った。
「んまぁ、俺も、消化不良ではある」
太腿を掴み、引き寄せて押し付け、言う。腹の下は既に熱く、──けれど、胸の奥底はまた、冷えている。
付き合い始めて、2週間近く。その前から何度かしていたが、胸がデカくて躊躇いのないコイツのとそれは、まあ結構、気分がイイ。イイが、一時的なもので。
「ねぇ、なら、場所変えよ?」
甘く誘われ、キスをされる。首に腕を回され、今度は、彼女から舌を絡めてくる。
「……」
それに応えながら、コイツとはいつまで保つかな、と、思う。前のとは、それなりに長く──1ヶ月半くらい続いたんだよな。そう、思い出しながら。
『教えてあげるよ』
初めてのそれが、寝取るという行為だと分かっていても、快楽は快楽で。教えられて、溺れるように教え込まれて、バレて死ぬほどボコられてから、そういや、ここはそういう場所だったと、我に返った。
頭は冷えたが、覚えてしまったそれを、体は求めるようになる。
求めて、満たされて。暫くしたら飢えてきて、また求める。求めれば求めるほど、飢えは、強くなっていった。いつ現れたのか分からない胸の冷えも、強くなっていって。
気付けば、周りには、そんな自分を求める女で溢れていて。
「ヤメロっつっただろうが」
後頭部を強めに殴られて、その先輩が飲んでいたハイボールを浴びる。
彼女は、殴られる直前に身を引いていて、「もー、濡れちゃったじゃん」と、避けきれずにハイボールがかかった服をつまんで、不満そうに言った。
「……あーうん。悪い。先輩も、スンマセン。──お詫びです!」
誰が頼んだか忘れた赤ワインを、先輩にぶっかけた。
「……カズ……テメェ……」
赤く染まった先輩が、明確に怒りを向けてくる。
「やー、すんませんすんません」
心無い謝罪を口にすれば、それは、開始の合図となる。
「お前ら、程々にしとけ。出禁はあとが面倒い」
喧嘩の最中、リーダー格から、そんな注意を受けた。
「オーッス、勝ちー」
わざと覇気のない声で宣言して、床に転がり呻く先輩を踏みつけ、
「やー、勉強になりました。アザッス」
笑顔で、そう言った。
そのあとカズは、最下位の奴が吐くのを見届けて、彼女と『ホテル』に入る。
満たされても、飢えは消えない。胸の奥の冷えは、強くなるばかり。
「……」
寝ている彼女の横で、いつものタバコを燻らせながら、スマホを開いて。
未読のままのそれに、煙を吹きかけた。
成川光海。その、ラインの画面に。
◇
「橋本、髪、スゲェな。耳もスゲェ」
「言われると思った」
久しぶりに顔を合わせる友人に、涼はそう答える。
同窓会の会場である、墨ノ目の近くにあるファミレスに入ったら、
『なんだそれ橋本! めったくそ変わったな?!』
友人の一人に叫ばれた。
そして、まだ開始時間前だというのに、既に来ていた友人たちに囲まれて。
『高峰、助けろ』
『そこは自分で頑張って』
そんなやり取りを交わしながら、席についた。
「橋本、背ぇ伸びた?」
「4月の検査だと、181。今は知らん」
「あれじゃん。自販機と同じくらいじゃん」
「てか、ピアス、それ、どう付けてるん? 何個?」
「全部で20。種類は……アンテナと、インダストリアルと、……テキトーに選んだから、覚えてねぇな。てか、もう時間になるだろ。バラけなくて良いのか?」
現在、涼を囲んだ4人の友人たちと、そこに高峰も加えた6人で、テーブルに座っている。
同窓会の開始時間は、昼の12時。それまでもう、10分もない。
「別にこのままで良くね」
「2年ぶりだぜ? 積もる話もあるだろ」
「橋本、ラインのアカ消ししたじゃん。高峰もお前のこと話さないし。情報ゼロよ?」
涼は、渋い顔をする。
中学時代のアカウントは、友人の言う通りに消したのだ。グレたから、知り合い全てと、縁を切りたくて。
そのあと、そういう連中とつるみ始め、新しく作り、2年になる前の春休みに、今度はブロックという形で縁を切り、アカウントはそのまま使っている。
「繋がり直せば?」
高峰が言う。
「あ? 作り直したん?」
「なんだよ、高峰経由で参加の連絡来たから、持ってないのかと思ってた」
涼がなにか言う前に、周りは続々とスマホを取り出し、ラインを開く。
「一人ずつやってくとめんどいだろ? まず俺が招待するからさ。そこから繋がろうや」
一人が言い、QRを表示させる。
「……その積極性、どっから来んだよ……」
言いながらも、涼もスマホを出し、ラインを開き、それを読み取った。
「……通知の勢いが怖えわ」
同窓会グループに入った途端、4人が確認のメッセージやスタンプを送ってくる。
「このアイコン、犬? 何の犬?」
「サモエド」
「橋本、犬好きだっけ?」
「嫌いではねぇけど……この犬、彼女の家の犬だから。マシュマロって名前な」
友達登録をしながら、そう答えたら、
「彼女」
「彼女?」
「彼女って、Loverの彼女?」
「え? 橋本に?」
「なんだ悪いか」
涼が顔を上げると、友人たちは目を丸くしていた。
「……そんな意外か」
「いや、だってお前、……、……相手、誰?」
一人が、周囲を見てから、急に声を潜め、聞いてきた。
「クラスメイトだけど? その反応はなん?」
涼の言葉に、4人は揃って高峰へ顔を向ける。
「うん、嘘じゃないよ。橋本、名前くらい教えたら?」
「なんか、変なことに巻き込まれてる気がすんだけど? 言って平気なのか? これ」
周りの様子に困惑する涼に、
「僕から言おうか?」
「光海。成川光海」
顔をしかめて言った涼を見て、高峰は軽く吹き出した。
「橋本……ホント……成川さん大好きだよね……」
「笑うとこじゃねぇ」
二人のやり取りを見ていた友人たちは、
「まじか……」
「これ、今日、戦争起きる?」
「怖え。今から怖え」
「え、あ、じゃあ、高峰は? 高峰もか?」
「ううん。僕には居ないよ。あと、僕、今日は橋本の盾役を任されてる」
その言葉に、友人たちは呆気に取られ、
「はーい。まだ全員揃ってないけど、一応時間なんで。同窓会始めまーす」
立ち上がった、幹事の女子のそれで、同窓会が始まった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
初恋
ももん
恋愛
全ての変化を嫌う女の子高橋玲香(たかはしれいか)と、いつもみんなに囲まれる人気者の水野春樹(みずのはるき)の物語です。
水野春樹により様々な変化をもたらされていく高橋玲香の様子や、水野春樹の抱える問題を細かく掘り下げて、キャラクターがどんな思考、どんな性格をしているかを細かく表現しています。
少し長いですが、「変化」を楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
まだ完結していないので、楽しみに待っていただけると幸いです。
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
お隣さんは陰陽師
タニマリ
恋愛
小さな時から幽霊が見える私。周りには変な子だと思われ、いつしか見えることを隠すようになっていった。
高校生となったある日、母の生まれ故郷に引っ越すこととなり海辺の街へとやってきた。
今日から住む母の実家の隣には、立派な庭のある大きなお屋敷が建っていて……
様々な幽霊たちと繰り広げられる、恋愛色強めの現代版陰陽師のお話です。
悪役令嬢は断罪回避のためにお兄様と契約結婚をすることにしました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
☆おしらせ☆
8/25の週から更新頻度を変更し、週に2回程度の更新ペースになります。どうぞよろしくお願いいたします。
☆あらすじ☆
わたし、マリア・アラトルソワは、乙女ゲーム「ブルーメ」の中の悪役令嬢である。
十七歳の春。
前世の記憶を思い出し、その事実に気が付いたわたしは焦った。
乙女ゲームの悪役令嬢マリアは、すべての攻略対象のルートにおいて、ヒロインの恋路を邪魔する役割として登場する。
わたしの活躍(?)によって、ヒロインと攻略対象は愛を深め合うのだ。
そんな陰の立役者(?)であるわたしは、どの攻略対象ルートでも悲しいほどあっけなく断罪されて、国外追放されたり修道院送りにされたりする。一番ひどいのはこの国の第一王子ルートで、刺客を使ってヒロインを殺そうとしたわたしを、第一王子が正当防衛とばかりに斬り殺すというものだ。
ピンチだわ。人生どころか前世の人生も含めた中での最大のピンチ‼
このままではまずいと、わたしはあまり賢くない頭をフル回転させて考えた。
まだゲームははじまっていない。ゲームのはじまりは来年の春だ。つまり一年あるが…はっきり言おう、去年の一年間で、もうすでにいろいろやらかしていた。このままでは悪役令嬢まっしぐらだ。
うぐぐぐぐ……。
この状況を打破するためには、どうすればいいのか。
一生懸命考えたわたしは、そこでピコンと名案ならぬ迷案を思いついた。
悪役令嬢は、当て馬である。
ヒロインの恋のライバルだ。
では、物理的にヒロインのライバルになり得ない立場になっておけば、わたしは晴れて当て馬的な役割からは解放され、悪役令嬢にはならないのではあるまいか!
そしておバカなわたしは、ここで一つ、大きな間違いを犯す。
「おほほほほほほ~」と高笑いをしながらわたしが向かった先は、お兄様の部屋。
お兄様は、実はわたしの従兄で、本当の兄ではない。
そこに目を付けたわたしは、何も考えずにこう宣った。
「お兄様、わたしと(契約)結婚してくださいませ‼」
このときわたしは、失念していたのだ。
そう、お兄様が、この上なく厄介で意地悪で、それでいて粘着質な男だったと言うことを‼
そして、わたしを嫌っていたはずの攻略対象たちの様子も、なにやら変わってきてーー
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる