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69 橋本涼と高峰瑞樹
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後片付けの日。私はまた連絡係をしながら、頭の隅に引っかかってることを、今は連絡! と、振り切ろうと頑張っていた。
テーブルクロスが畳まれ、パーテーションが片付けられ、連絡をしながら着々と、教室がもとに戻っていくのを見る。
「こっち全部終わった!」
「了解です! 連絡します!」
クラスラインに送ったあと、みんなで再度チェックして、OKなことをクラスラインにまた送る。
そして、家庭科室へ移動。
家庭科室も片付けは終わっているんだけど、少しばかり残った材料やスイーツをどうするか、……まあ、誰がどう持って帰るか、を決めることになっている。
「で、どうする?」
並んだそれらとクラスメイトを見ながら、スイーツ担当の一人が言う。
「みんなで好きなの選んで、被ったら、じゃんけんで、は?」
それで行こう、ということになって。
スイーツは全て捌け、残っているのは食材たち。
また選び、被ったらじゃんけん。全て捌けた。私は、お持ち帰りクッキーを一袋ゲットした。涼は、スイーツのにも、食材のにも、参加しなかった。
そして、解散。そのままそこで食べる人は、そこでさよなら。文化祭実行委員の人たちは、このまま残って収支報告の処理をするつもりだそうだ。
衣装は一度、縫製組が持って帰る。展示したいなど、学校からの話が来なかったと確定すれば、接客スタッフや縫製組のものとなる。
私は涼と学校を出て、涼が、クラスTシャツの下からドッグタグを取り出したことに、少しだけ安堵した。
「涼、いいですか?」
私のほうから手を差し出す。
「ん」
涼は握ってくれた。また、少し、安堵する。けど、指を絡めてこないことに、少しだけ、不安が増す。
「涼、どちらの家にしますか?」
なるべく優しく、労わるように。そう心がけつつ、声をかける。
「……俺ので、いいか」
「もちろんです」
そのあとは、無言で。涼の家に着くまで黙ったままで、カメリアにも寄らず、部屋へ。
「どこ、座る?」
前のような質問。
「……涼の隣がいい」
「分かった」
そのままローテーブルに、並んで座る。
涼は、空いている手で、ローテーブルに頬杖をつき、前を見ながら、「どっから話すかな……」と、言った。
「まあ、最初から話すか。……このままでいいか?」
「うん」
そして涼は、話し始めてくれた。
◇
墨ノ目ではさ、高峰のヤツ、よく音楽室であんなふうに弾いてたんだ。俺ら……当時のダチとかはそこに集まって、それを聴いたり一緒に騒いでた。
『趣味じゃなくて、仕事に出来ないかな、これ』
高峰のそれに、みんなで、良いじゃないかって、才能あるって、言った。けど、高峰はギターを弾かなくなった。持ってこなくなった。……3年の、夏休み前に。
また聞かせてくれって、みんなで言って。それに、高峰はさ。
『ギターさ、……壊れたんだ。お金もないし、弾けないから。……それに、もういいかなって。だから、ごめん』
なら家から持ってこようかって、一人が言った。けど、高峰は慌ててそれを断った。怯えてる感じで。
俺はなんか嫌な予感がして、帰ってから、高峰に電話した。ホントは何かあるんじゃないか。言えないことがあるんじゃないかって。俺たちダチだろ、隠し事すんなって。
……高峰のギター、高峰の父親に、ぶっ壊されたんだと。将来、ギターでの仕事をしたいって言ったら、お前にそれは相応しくないって、怒鳴られて。
『そんで諦めるのか? 周りに言えよ?! お前は上手いしそれ目指してんなら、……親が怖いなら隠れてでも、ギター続けろよ』
『……ありがとう、けど、ごめん。今は無理そう。……いつか、決心ついたら、また、買うよ』
『ぐずぐずするなよ?! 俺が先にパティシエになっちまうからな?!』
『……そうだね。橋本のお菓子は美味しいしね。……まあ、頑張るよ。ありがとう』
でも結局、卒業まで、高峰がギターを弾いてるとこは見なかった。持ってるとこも見なかった。
で、同じ高校に通うんだから、そこで高峰に、いつかギターを弾かせてやるって、思ってた俺が、グレた。
◇
「高峰に何か言われんじゃねぇかって、怯えて。けど高峰は、何も、一言も、言ってこなくて。結局ギターも弾いてないらしくて。グレたから縁を切られたかなって、他人になったかなって、思ってたそこに、アレだ。……正直、どう反応すればいいか、分かんなくてさ。……心配させたっぽくて、悪い」
涼にも色々と言いたいけど、高峰? お前にも色々と言いたいし聞きたいぞ? つーかもう二人で話せ? 色々と。
「……高峰さんに連絡してもいいですか?」
「今のこと、聞くのか?」
「話をして欲しいんです。話し合って欲しいんです。私が口を挟むと、なんだか拗れそうなので。で、連絡してもいいですか?」
涼から反応がない。
「しますね」
「えっ」
私はスマホを取り出し、マリアちゃんに電話をかける。
『どうした?』
出てくれた。良かった。
「ごめん、急に。高峰さんのライン、教えてくれない? 緊急事態なの。今、詳しくは言えないけど、あとで話すから」
『……分かった。高峰に聞いてみる。そのあとまた、連絡するよ。一旦切る』
「分かった、ありがとう」
通話が切れたスマホを持ったまま、涼に抱きつく。
「……お前が心配してくれんのは、嬉しいけどさ。光海がそこまですることでも、ねぇんじゃねぇかな」
頭を撫でながら言われる。心配そうな、不安そうな声で。
「高峰さんは私に、涼のことを聞いてきました。当たり前な感じで。そして後夜祭では、飛び入り参加です。私に涼のことを聞いてからの、参加です。私は、高峰さんが涼との縁を切ったとは、思えません」
「……どうだろな」
スマホに通知が来た。マリアちゃんからと、グループの招待。
私は涼に抱きついたまま、それを見る。
『高峰に話した。OK貰ったから、一旦グループ作った。そこから高峰に連絡してくれ』
私は、ありがとう、と打って。すぐさまグループに入り、高峰にそのまま電話をかける。
「お、おい」
「私は話しません。涼が出て下さい。私は部屋から出ていますから、話すなり、切るなり、それはご自由に」
私は涼にスマホを持たせ、部屋から出ていく。ドアを閉め、話が聞こえない場所に、と、部屋から遠ざかる。
足が向いたのは、仏壇のある和室だった。
「……失礼します」
部屋に入り、仏壇の前に座る。日向子さんへ顔を向ける。
「……」
今、他人の私が一人で、お線香を上げるのは駄目だろう、と、思って。
写真を見つめたまま心の中で、文化祭での涼の様子を、なるべく細かく伝えていった。
暫くして、足音が聞こえて。
「ここに居たか」
スマホを持った涼が入ってきて、私は立ち上がった。
「すみません、一人で、この部屋に入ってしまって」
頭を深めに下げ、上げる。
「良いよ。母さんも、……ばあちゃんもご先祖さまも、光海のこと、好きだと思うし。で、これ、返す」
スマホを渡される。
「ありがとうございます」
「話したよ。高峰と。俺が出たから、あいつ、驚いてたけど」
言いながら、涼はその場に座った。対面になる形で、私も座る。
「そうでしたか」
「そーだよ。で、……まあ、色々話して、な。なんか、ダチ的なモンに、戻った」
頭をかいて、少し視線を逸らしながら言う涼に、「そうですか」と答えた。良い言葉が、見つからなかった。
「あとさ、お前、ロックもしてないスマホを人に気軽に渡すなよ。何されるか分かんねぇぞ」
今度は私を見て、言う。いつもの涼の顔だった。
「以後、気を付けます」
「そうしてくれ。……で、まだ、時間あるか?」
「はい。大丈夫です」
「なら、カメリアの、食ってくか?」
「食べます」
頷いた私に、涼は苦笑して。
「じゃ、買いに行くか」
と、立ち上がった。
テーブルクロスが畳まれ、パーテーションが片付けられ、連絡をしながら着々と、教室がもとに戻っていくのを見る。
「こっち全部終わった!」
「了解です! 連絡します!」
クラスラインに送ったあと、みんなで再度チェックして、OKなことをクラスラインにまた送る。
そして、家庭科室へ移動。
家庭科室も片付けは終わっているんだけど、少しばかり残った材料やスイーツをどうするか、……まあ、誰がどう持って帰るか、を決めることになっている。
「で、どうする?」
並んだそれらとクラスメイトを見ながら、スイーツ担当の一人が言う。
「みんなで好きなの選んで、被ったら、じゃんけんで、は?」
それで行こう、ということになって。
スイーツは全て捌け、残っているのは食材たち。
また選び、被ったらじゃんけん。全て捌けた。私は、お持ち帰りクッキーを一袋ゲットした。涼は、スイーツのにも、食材のにも、参加しなかった。
そして、解散。そのままそこで食べる人は、そこでさよなら。文化祭実行委員の人たちは、このまま残って収支報告の処理をするつもりだそうだ。
衣装は一度、縫製組が持って帰る。展示したいなど、学校からの話が来なかったと確定すれば、接客スタッフや縫製組のものとなる。
私は涼と学校を出て、涼が、クラスTシャツの下からドッグタグを取り出したことに、少しだけ安堵した。
「涼、いいですか?」
私のほうから手を差し出す。
「ん」
涼は握ってくれた。また、少し、安堵する。けど、指を絡めてこないことに、少しだけ、不安が増す。
「涼、どちらの家にしますか?」
なるべく優しく、労わるように。そう心がけつつ、声をかける。
「……俺ので、いいか」
「もちろんです」
そのあとは、無言で。涼の家に着くまで黙ったままで、カメリアにも寄らず、部屋へ。
「どこ、座る?」
前のような質問。
「……涼の隣がいい」
「分かった」
そのままローテーブルに、並んで座る。
涼は、空いている手で、ローテーブルに頬杖をつき、前を見ながら、「どっから話すかな……」と、言った。
「まあ、最初から話すか。……このままでいいか?」
「うん」
そして涼は、話し始めてくれた。
◇
墨ノ目ではさ、高峰のヤツ、よく音楽室であんなふうに弾いてたんだ。俺ら……当時のダチとかはそこに集まって、それを聴いたり一緒に騒いでた。
『趣味じゃなくて、仕事に出来ないかな、これ』
高峰のそれに、みんなで、良いじゃないかって、才能あるって、言った。けど、高峰はギターを弾かなくなった。持ってこなくなった。……3年の、夏休み前に。
また聞かせてくれって、みんなで言って。それに、高峰はさ。
『ギターさ、……壊れたんだ。お金もないし、弾けないから。……それに、もういいかなって。だから、ごめん』
なら家から持ってこようかって、一人が言った。けど、高峰は慌ててそれを断った。怯えてる感じで。
俺はなんか嫌な予感がして、帰ってから、高峰に電話した。ホントは何かあるんじゃないか。言えないことがあるんじゃないかって。俺たちダチだろ、隠し事すんなって。
……高峰のギター、高峰の父親に、ぶっ壊されたんだと。将来、ギターでの仕事をしたいって言ったら、お前にそれは相応しくないって、怒鳴られて。
『そんで諦めるのか? 周りに言えよ?! お前は上手いしそれ目指してんなら、……親が怖いなら隠れてでも、ギター続けろよ』
『……ありがとう、けど、ごめん。今は無理そう。……いつか、決心ついたら、また、買うよ』
『ぐずぐずするなよ?! 俺が先にパティシエになっちまうからな?!』
『……そうだね。橋本のお菓子は美味しいしね。……まあ、頑張るよ。ありがとう』
でも結局、卒業まで、高峰がギターを弾いてるとこは見なかった。持ってるとこも見なかった。
で、同じ高校に通うんだから、そこで高峰に、いつかギターを弾かせてやるって、思ってた俺が、グレた。
◇
「高峰に何か言われんじゃねぇかって、怯えて。けど高峰は、何も、一言も、言ってこなくて。結局ギターも弾いてないらしくて。グレたから縁を切られたかなって、他人になったかなって、思ってたそこに、アレだ。……正直、どう反応すればいいか、分かんなくてさ。……心配させたっぽくて、悪い」
涼にも色々と言いたいけど、高峰? お前にも色々と言いたいし聞きたいぞ? つーかもう二人で話せ? 色々と。
「……高峰さんに連絡してもいいですか?」
「今のこと、聞くのか?」
「話をして欲しいんです。話し合って欲しいんです。私が口を挟むと、なんだか拗れそうなので。で、連絡してもいいですか?」
涼から反応がない。
「しますね」
「えっ」
私はスマホを取り出し、マリアちゃんに電話をかける。
『どうした?』
出てくれた。良かった。
「ごめん、急に。高峰さんのライン、教えてくれない? 緊急事態なの。今、詳しくは言えないけど、あとで話すから」
『……分かった。高峰に聞いてみる。そのあとまた、連絡するよ。一旦切る』
「分かった、ありがとう」
通話が切れたスマホを持ったまま、涼に抱きつく。
「……お前が心配してくれんのは、嬉しいけどさ。光海がそこまですることでも、ねぇんじゃねぇかな」
頭を撫でながら言われる。心配そうな、不安そうな声で。
「高峰さんは私に、涼のことを聞いてきました。当たり前な感じで。そして後夜祭では、飛び入り参加です。私に涼のことを聞いてからの、参加です。私は、高峰さんが涼との縁を切ったとは、思えません」
「……どうだろな」
スマホに通知が来た。マリアちゃんからと、グループの招待。
私は涼に抱きついたまま、それを見る。
『高峰に話した。OK貰ったから、一旦グループ作った。そこから高峰に連絡してくれ』
私は、ありがとう、と打って。すぐさまグループに入り、高峰にそのまま電話をかける。
「お、おい」
「私は話しません。涼が出て下さい。私は部屋から出ていますから、話すなり、切るなり、それはご自由に」
私は涼にスマホを持たせ、部屋から出ていく。ドアを閉め、話が聞こえない場所に、と、部屋から遠ざかる。
足が向いたのは、仏壇のある和室だった。
「……失礼します」
部屋に入り、仏壇の前に座る。日向子さんへ顔を向ける。
「……」
今、他人の私が一人で、お線香を上げるのは駄目だろう、と、思って。
写真を見つめたまま心の中で、文化祭での涼の様子を、なるべく細かく伝えていった。
暫くして、足音が聞こえて。
「ここに居たか」
スマホを持った涼が入ってきて、私は立ち上がった。
「すみません、一人で、この部屋に入ってしまって」
頭を深めに下げ、上げる。
「良いよ。母さんも、……ばあちゃんもご先祖さまも、光海のこと、好きだと思うし。で、これ、返す」
スマホを渡される。
「ありがとうございます」
「話したよ。高峰と。俺が出たから、あいつ、驚いてたけど」
言いながら、涼はその場に座った。対面になる形で、私も座る。
「そうでしたか」
「そーだよ。で、……まあ、色々話して、な。なんか、ダチ的なモンに、戻った」
頭をかいて、少し視線を逸らしながら言う涼に、「そうですか」と答えた。良い言葉が、見つからなかった。
「あとさ、お前、ロックもしてないスマホを人に気軽に渡すなよ。何されるか分かんねぇぞ」
今度は私を見て、言う。いつもの涼の顔だった。
「以後、気を付けます」
「そうしてくれ。……で、まだ、時間あるか?」
「はい。大丈夫です」
「なら、カメリアの、食ってくか?」
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頷いた私に、涼は苦笑して。
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