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45 ホームステイについてと、期末試験対策
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「梅雨だねー」
桜ちゃんが言う。
「そんな感じだねー」
なんとなく、同意する。
「梅雨の宣言は、早くて来週じゃなかったか?」
マリアちゃんが言った。
いつものコーヒーチェーンである。
「でもさ、雨、降ってるし。ザアザアと」
桜ちゃんが、窓の外を見ながら言う。
「降ってるな。それは」
「もう少しすると、期末の準備に入るし……」
「それが終われば夏休みだよ、桜ちゃん」
「夏休みの話になったから、聞くが。今年はどうするんだ? 光海」
夏休み、今年は。
「ホームステイのこと? それなら、悩み中。ラファエルさんとアデルさんにも、相談したよ。で、悩み中」
「橋本ちゃんには言ったの?」
「一応。少し驚いてたけど、悩み中だからさ、悩み中なのも含めて、分かったって言ってくれた」
この話は、去年の夏休みに遡る。
バイトを始めたばかりの私の、そのバイトの決め手のことを思ってくれての、ラファエルさんの提案だった。
『(光海、この短期間でここまで話せるようになったんだ。一度、本場に行ってみる気はないかい?)』
それは、ラファエルさんの故郷、フランスに、しかもラファエルさんのお姉さんの家に行くこと。いわゆるホームステイをしないかと、提案してくれた。
私は行きたいと伝え、家族と相談し、元々、中学の時にはパスポートを取得していたのもあって、一週間なら、と、家族は承諾してくれた。
そして一週間、夢のような時間を過ごしたのだ。
「で、なんに悩んでるの?」
桜ちゃんに聞かれる。
「んー……アデルさんのことも気になるし。来年になったら受験に向けて本格的に動くから、今のうちに、お金稼ぎたいし。それと、涼が……」
『邪魔になるならやめるけど。俺も行けないか?』
「て。それもあって、悩み中」
「それ、一緒に行きたくないってこと?」
桜ちゃんが聞いてくれる。
「んーん。涼もフランス、興味があるし。体験できるなら、とは思う。けど、そしたら、涼の保護者は私になるでしょ? 努まるかなって」
「橋本、パスポートは持ってるのか?」
「持ってるって。ほら、修学旅行のために取ったんだってさ」
「なら、橋本ちゃんの家族がOKしたら、橋本ちゃんとの問題は解決でない?」
「そうなの?」
「そうだよ」
「私もそう思う」
二人に頷かれる。
「なら、……あれ? あとは、アデルさんとお金の問題だけだ?」
「アデルさんに、その悩んでることは伝えたのか?」
マリアちゃんが聞く。
「ん、まあ……大丈夫って、言ってくれたけど……」
「ならそれを信じろ!」
「同感だ」
な、悩みがどんどん解決していく……。
「で、みつみん。みつみんはさ、ずっとバイトしてるでしょ? 散財してる訳でもなくさ。そんなに溜まってないとは、思えないし。そもそも、みつみんのご両親はさ、みつみんの進路のこと、応援してくれてるんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「ならさ、甘えようよ! 足りなかったら、下さい、とか、貸してください、とかさ。私はそう思うんだけど。マリアちゃんは?」
「桜にほとんど言われてしまったな。同じ意見だ」
「良いのかな?」
「それこそ家族で相談だよ!」
「話さなければ、何も変わらないからな。悩んでチャンスを逃すより、どんな方法でも良いから足掻くべきだと、私は思う」
……そっか。そうだよね。出来る努力はすべきだよね!
「桜ちゃん! マリアちゃん! ありがとう! 私、ちゃんと相談するね!」
「良いってことよ!」
「ためになったなら、なによりだ」
良い友達を得たなぁ……。
「でさ、話、変えて良い?」
桜ちゃんが言う。
「どうぞどうぞ」
「期末、終わったらさ。打ち上げしない?」
「いいよ」
「賛成」
「イエーイ! で、いつのどこにする?」
そして、話を詰め、場所が。
私のバイト先になりました。
私、客としてそこに入るの、ほぼ1年ぶりなんだけど……。なんか、逆に緊張する……。
◇
そして、相談内容を、関わりある全ての人に相談して、私と涼は、一週間、ラファエルさんのお姉さんの家に、ホームステイすることが決まりました。正直、全部良い方向に行ってくれて、ホッとした。
あ、因みに時期は、涼のテスト結果で、いつになるか決まります。
「では、今日からは、試験対策強化期間とします」
「おう」
「基礎固めを維持しつつ、範囲を総ざらいします。ヤマを張ったりはしません。良いですか?」
「ああ」
「では、始めましょう」
私の部屋で、期末の試験勉強が始まった。
愛流にも、期末試験が近いからと、写真は控えて貰うことになった。……その代わり、終わったら丸一日、撮られまくることを了承せざるを得なかったけど。
そして、涼の試験勉強も大事だけど、私のも、当然大事だ。怠って順位を落とし、最悪の事態にはなりたくない。
という熱意がありすぎたのか、終わったら、涼は久しぶりに突っ伏した。
「……すみません、やりすぎましたか……?」
突っ伏している涼の背中をさする。
「や、ちょい、全力を出しすぎた。今度から調節する……」
「(……ありがとう、涼)」
フランス語で言う。
「……(こっちこそ)」
フランス語で返される。
ホームステイが決まってから、期末の対策期間に入るまで、少しだけ、涼にフランス語を覚えてもらった。
文法とかを覚えてもらうより、リスニングとスピーキングでやっていった。私の予想通り、涼は、2、3度それを聴くだけで、とても近い発音が出来た。そして、短く簡単な会話なら、出来るようになったのだ。
どうやれば、そこまで出来るのか。涼に、聞いてみた。
『(光海と行くって決めたから)』
と、フランス語で、返された。
ならばこその、試験対策だ。バイトも挟みつつ、全力で。
涼は、家でもしっかり復習しているのに加え、今はテストに力を注ぐ、と、朝の時もテスト対策をしている。そして、それはしっかり実を結びつつある、と、私は実感している。
それが安心を齎すのか、私も集中して取り組めるし、自分の勉強にも集中できる。目指せ総合5位以内だ。
そして、試験当日が来た。
桜ちゃんが言う。
「そんな感じだねー」
なんとなく、同意する。
「梅雨の宣言は、早くて来週じゃなかったか?」
マリアちゃんが言った。
いつものコーヒーチェーンである。
「でもさ、雨、降ってるし。ザアザアと」
桜ちゃんが、窓の外を見ながら言う。
「降ってるな。それは」
「もう少しすると、期末の準備に入るし……」
「それが終われば夏休みだよ、桜ちゃん」
「夏休みの話になったから、聞くが。今年はどうするんだ? 光海」
夏休み、今年は。
「ホームステイのこと? それなら、悩み中。ラファエルさんとアデルさんにも、相談したよ。で、悩み中」
「橋本ちゃんには言ったの?」
「一応。少し驚いてたけど、悩み中だからさ、悩み中なのも含めて、分かったって言ってくれた」
この話は、去年の夏休みに遡る。
バイトを始めたばかりの私の、そのバイトの決め手のことを思ってくれての、ラファエルさんの提案だった。
『(光海、この短期間でここまで話せるようになったんだ。一度、本場に行ってみる気はないかい?)』
それは、ラファエルさんの故郷、フランスに、しかもラファエルさんのお姉さんの家に行くこと。いわゆるホームステイをしないかと、提案してくれた。
私は行きたいと伝え、家族と相談し、元々、中学の時にはパスポートを取得していたのもあって、一週間なら、と、家族は承諾してくれた。
そして一週間、夢のような時間を過ごしたのだ。
「で、なんに悩んでるの?」
桜ちゃんに聞かれる。
「んー……アデルさんのことも気になるし。来年になったら受験に向けて本格的に動くから、今のうちに、お金稼ぎたいし。それと、涼が……」
『邪魔になるならやめるけど。俺も行けないか?』
「て。それもあって、悩み中」
「それ、一緒に行きたくないってこと?」
桜ちゃんが聞いてくれる。
「んーん。涼もフランス、興味があるし。体験できるなら、とは思う。けど、そしたら、涼の保護者は私になるでしょ? 努まるかなって」
「橋本、パスポートは持ってるのか?」
「持ってるって。ほら、修学旅行のために取ったんだってさ」
「なら、橋本ちゃんの家族がOKしたら、橋本ちゃんとの問題は解決でない?」
「そうなの?」
「そうだよ」
「私もそう思う」
二人に頷かれる。
「なら、……あれ? あとは、アデルさんとお金の問題だけだ?」
「アデルさんに、その悩んでることは伝えたのか?」
マリアちゃんが聞く。
「ん、まあ……大丈夫って、言ってくれたけど……」
「ならそれを信じろ!」
「同感だ」
な、悩みがどんどん解決していく……。
「で、みつみん。みつみんはさ、ずっとバイトしてるでしょ? 散財してる訳でもなくさ。そんなに溜まってないとは、思えないし。そもそも、みつみんのご両親はさ、みつみんの進路のこと、応援してくれてるんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
「ならさ、甘えようよ! 足りなかったら、下さい、とか、貸してください、とかさ。私はそう思うんだけど。マリアちゃんは?」
「桜にほとんど言われてしまったな。同じ意見だ」
「良いのかな?」
「それこそ家族で相談だよ!」
「話さなければ、何も変わらないからな。悩んでチャンスを逃すより、どんな方法でも良いから足掻くべきだと、私は思う」
……そっか。そうだよね。出来る努力はすべきだよね!
「桜ちゃん! マリアちゃん! ありがとう! 私、ちゃんと相談するね!」
「良いってことよ!」
「ためになったなら、なによりだ」
良い友達を得たなぁ……。
「でさ、話、変えて良い?」
桜ちゃんが言う。
「どうぞどうぞ」
「期末、終わったらさ。打ち上げしない?」
「いいよ」
「賛成」
「イエーイ! で、いつのどこにする?」
そして、話を詰め、場所が。
私のバイト先になりました。
私、客としてそこに入るの、ほぼ1年ぶりなんだけど……。なんか、逆に緊張する……。
◇
そして、相談内容を、関わりある全ての人に相談して、私と涼は、一週間、ラファエルさんのお姉さんの家に、ホームステイすることが決まりました。正直、全部良い方向に行ってくれて、ホッとした。
あ、因みに時期は、涼のテスト結果で、いつになるか決まります。
「では、今日からは、試験対策強化期間とします」
「おう」
「基礎固めを維持しつつ、範囲を総ざらいします。ヤマを張ったりはしません。良いですか?」
「ああ」
「では、始めましょう」
私の部屋で、期末の試験勉強が始まった。
愛流にも、期末試験が近いからと、写真は控えて貰うことになった。……その代わり、終わったら丸一日、撮られまくることを了承せざるを得なかったけど。
そして、涼の試験勉強も大事だけど、私のも、当然大事だ。怠って順位を落とし、最悪の事態にはなりたくない。
という熱意がありすぎたのか、終わったら、涼は久しぶりに突っ伏した。
「……すみません、やりすぎましたか……?」
突っ伏している涼の背中をさする。
「や、ちょい、全力を出しすぎた。今度から調節する……」
「(……ありがとう、涼)」
フランス語で言う。
「……(こっちこそ)」
フランス語で返される。
ホームステイが決まってから、期末の対策期間に入るまで、少しだけ、涼にフランス語を覚えてもらった。
文法とかを覚えてもらうより、リスニングとスピーキングでやっていった。私の予想通り、涼は、2、3度それを聴くだけで、とても近い発音が出来た。そして、短く簡単な会話なら、出来るようになったのだ。
どうやれば、そこまで出来るのか。涼に、聞いてみた。
『(光海と行くって決めたから)』
と、フランス語で、返された。
ならばこその、試験対策だ。バイトも挟みつつ、全力で。
涼は、家でもしっかり復習しているのに加え、今はテストに力を注ぐ、と、朝の時もテスト対策をしている。そして、それはしっかり実を結びつつある、と、私は実感している。
それが安心を齎すのか、私も集中して取り組めるし、自分の勉強にも集中できる。目指せ総合5位以内だ。
そして、試験当日が来た。
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