33 / 71
32 肉団子鍋と転移
しおりを挟む
それから一時間くらいで、セイは色々質問と、答えと、提案をくれた。
まず、夕飯は食べたい。明日の仕事は十時からなので、私に余裕があればその前に、一旦家を見てほしい。帰る時間は、私に決めて欲しい。
私はそれらにほぼオッケーを出し、帰る時間の参考のためと、一つ、聞いた。
『セイの家のお風呂は、使える?』
『あ、いえ、いつも、洗浄……服を洗濯するみたいに体を清潔にするものなんですけど、それをしてるので』
『……お風呂、苦手?』
聞いたら、セイはキョトンとして。考え込んで、少しして。
『そういう訳では、なかったと、思います。けど、ここずっと、そうしてきたもので……』
『よし、じゃあ、お風呂入ってって』
『……え?』
『着替えとか必要なもの、家から持ってこれる?』
『え、あ、いえ、そういうものは持ち歩いているので……』
『ああ、別空間に?』
『はい』
『じゃ、お風呂入ってから帰る。良い?』
『は、い……』
ホントは布団も気になったけど、セイがいっぱいいっぱいに見えたから、そこを聞くのはやめておいた。
あ、あと夕飯のリクエストも聞いたけど、思いつかないとの回答を得たので、よっしゃ任せろ! と言った。
*
「さてでは、私の独断と偏見により決めた、お夕飯のメニューを発表します」
椅子に座り、言う。
「は、はい」
対面のセイは、緊張している。
「お鍋です。肉団子鍋にしようかと思っています」
今はまだ秋だけど、夜は冷え込むらしい。ので、このチョイス。
「いい?」
「にく、だんご、なべ」
「そ」
ピンときてない顔のセイに、スマホの画面を見せる。
「こういうヤツ」
と、見せたのは、冬によくやる土鍋の画像。
「あ、あぁ、はい。見たことあります。こういうの」
……見たこと、ね。
「で、私は鍋食べたあとのシメに、卵雑炊を食べるんだけども。セイはどうする? ご飯と一緒に鍋食べる? 雑炊にする?」
「……えぇと、では、雑炊、で」
「おっけ。あと今日、見てる? 休んどく?」
「あ、……見るだけでも、良いのなら」
「了解。じゃ、始めよっか。あ、セイ。今ある材料だと、さっき見せたのとちょっと違っちゃうの、そこはご了承を」
そしたら、セイがなんかムッとした。
「……それは、手に入らないものですか?」
「え? いや、たぶん、あのスーパーで買えると思う」
記憶をさらいながら言う。
「なら、行きましょう。お金はお支払います」
「でも、今から行くと、時間がね」
只今十八時半過ぎ。行き帰りで四十分プラス買い物時間で、二十時近くなってしまう。
「なら、スーパーまで転移します。往復時間はそれでゼロです。どうですか?」
「……あそこ人通り多いよ?」
言ったら、セイは笑顔で。
「大丈夫です。経験上、そういうのは心得てますので」
「……じゃあ、うん、頼む」
で、支度して──と言っても、見た目の確認して上着を着てエコバッグとスマホを持つだけ──玄関で靴を履く。その間に、セイが転移の説明をくれた。
「以前、簡易のものをお見せしたのは、覚えてますか?」
「紅茶の?」
髪を梳かしながら聞く。
「はい。原理はそれと同じですが、今回は人が二人、ナツキさんの家とスーパーが転移先です。そして、ナツキさんは転移が初めて」
そりゃあね。
……服も、問題なし。スマホ持ってる。
「スーパーは人が多い。なので、ナツキさんの負担軽減を考えて、あのスーパーの駐輪場に転移しようかと思ってます。スーパーに転移した際には、周りに目眩ましを。完全に姿を消すより、違和感なく溶け込めるんです。それと、転移の仕方なのですが……」
が?
と、洗面所から出る。
「その、万一の為に、手を、……片手でいいので、素手に、触れても、大丈夫でしょうか」
顔が赤いね。大丈夫だよ。
「ああ、うん、大丈夫。どう握れば良い?」
「えーと、できれば接触面積が多いほうが……」
「接触面積?」
「こう、あの、こんな、です」
セイが、自分の両手で実演してくれる。指と指を絡ませて、なるほど。接触面積。
「うん、分かった。左手で良い?」
「あ、はい。ナツキさんが、いえ、はい」
「うん。あと、ある?」
エコバッグとスマホをコートのポケットに入れて、玄関へ向かいながら聞く。
「あ、はい。転移ですが、ここからでも良いですか?」
靴を履くセイに、
「ここから? え? 玄関?」
同じ様に靴を履きながら聞いてしまった。
「はい。より時間短縮になるかと」
「おお。了解」
「では、……その、良いでしょうか」
おずおず差し出された右手を握り、指を絡ませる。ちょっと恥ずいけど、まあ、いいや。
「これでいい?」
「はい」
赤い顔で、けど、真剣な表情で。君はホントにいいヤツだ。
「セイ」
「はい」
「信じてる。万一なんて起こらない」
そしたらセイは、ちょっとだけ目を見開いて。
「はい。ありがとうございます」
真剣な顔のまま、けど、ふわりと笑う。
「では、行きます。しっかり立っていて下さい」
「了解」
一拍して、目の前の景色が変わる。
「転移完了です。目眩ましも効果を発揮しています。成功です」
「お、おお……」
周りを見れば、セイの言った通りにスーパーの駐輪場だ。それも、スーパーの入口に近い。
「……あの、ナツキさん」
「ん?」
「その、手……」
「あ、ああ。ごめんごめん。周りに気を取られてた」
手を離し、
「じゃあ行く?」
「あ、はい。あ、目眩ましはあと十分ほどで周りに溶け込んで消えます」
「ん、分かった」
で、買い物をして、お金も押し切られて払ってもらっちゃって。そんで、またパッと帰ってきました。
「はい。完了です。ご自宅なので目眩ましはかけてません」
「おーありがとう。マジで時間短縮になった。いや、疑ってた訳ではないけど」
「いえ、お役に立ててなによりです」
キッチンに食材を置き、コートを脱いで寝室のハンガーへ。
只今十九時前。四十分どころか、一時間短縮出来た。
「さーてはじめるよー」
と、キッチンに戻ったら。
「いや、えと、その」
セイが三匹に、いつかのように登られていた。
「ただいま、みんな」
返事をくれる。
「あ、そっか。セイ」
「え、はい」
「ただいま。おかえり」
「えっ、あ、……はい。おかえりなさい、ナツキさん。只今戻りました」
只今戻りました。……真面目ぇ。
「な、ナツキさん……?」
「いや、ちょっ、君は、本当に、くふっ」
エプロンを着けて手を洗い、食材を整理して、けど、肩の震えは、あまり治まらない。
「僕、変なこと、言いました?」
やめ、ちょっ、不満そうな声……!
「違う違う、全然違う。バカにしてるとかじゃないの。セイがね、真面目で、素直で、いいヤツだなあって」
可愛いなあってね。
思った訳ですよ。
「で、なんでセイはまた、その状態?」
一回振り返って聞いて、また作業に戻る。
「え、……や、褒めてもらいました」
「へー。転移の?」
「あ、ああ、ええ、はい」
鍋は事前にセットしてた。団子以外の食材も、下準備を完了させる。
「あのさ、さっきの転移、ちょっと質問いい?」
煮えにくいものから投入。着火。
「あ、はい」
ボウルに入れたひき肉と、生姜と醤油と少しの砂糖とマヨネーズ。を、捏ねる。
「あれ、光とか見えなかった気がするんだけど。私が気付かなかっただけ?」
こねこねこねこね捏ねまくる。よし、粘ってきた。
「あ、いえ。出してませんでした。ショーでも出したり出さなかったりします。最初から光ってたら、場所が丸わかりですから」
手を軽く拭って、土鍋の蓋を開ける。うん、最大火力のおかげで、ちゃんと湧いてる。そこに、肉ダネを一口より大きめに丸めて投入。完了。スプーンを使うより、私はこっちが楽だ。
「なるほど」
手を軽く拭って、きのことネギを入れ、蓋をする。
後ろへ振り向く。
「セイ、お鍋はあと、煮えるのを待つだけ。で、ウチ、カセットコンロがあるのね。お鍋する時にはローテーブルでさ、お鍋くつくつさせながら食べるんだけど、どう?」
「て、カセットコンロ、とは……」
「あ、あーそっか。そうだね。見せるから、ちょっと待って」
火加減を調節して、手を洗い、上の棚からそれらを出す。
「これ、ガスボンベ」
「えっ」
「で、この四角いのが、カセットコンロ。の、蓋を開けて、ボンベを装着。で、火を点けます」
ボッ、と灯った火は、均一。
「一旦消すね」
カチリと消す。
「っていうのなんだ。で、これ、動かせるから、ローテーブルに持っていける。どう?」
振り返ったら、なんか難しい顔をしていた。
「セイ?」
「……あっ、いえ。ちょっと、使えそうだな、と」
「使う? あ、魔法に?」
「はい。あ、ローテーブルの件、分かりました。このまま持っていけば良いですか?」
「あ、うん。ありがとう」
セイはそれをヒョイと持ち上げ、三匹に乗られたまま、ローテーブルへ。
……カセットコンロの理解、早くない? 料理の時とは大違いだな。なんだろ、機械だから? でもあんまり、魔法と機械って結びつかない……。
「と、こっちを忘れちゃいけない」
鍋を確認。うん、ちゃんと火、通ってる。お汁も美味しい。火を消して。
「セイー持ってって良いかなー?」
「あ、ちょっと待って下さい。……はい、大丈夫です」
何だろ今の間。
「じゃあ行くね」
と、土鍋をローテーブルへ。
「失礼します」
「はい」
カシャンと置いて、位置を確認。
「セイ、食器持って来るの、手伝ってくれる?」
「あ、はい」
キッチンに戻り、セイにお盆を持ってもらい、取り皿、箸を置いて。で、手が止まる。
「セイ、あのさ」
「はい」
「鍋のツユを掬うの、どっちが良い?」
と、見せたのは、レンゲと漆のさじ。
「……どっちがどう、いいんでしょう?」
「ん、こっちはいっぱい掬えるかな」
と、レンゲを持ち上げ、下げる。
「で、こっちはその逆。少しずつ」
漆のさじも同様に。
「猫舌かどうかが、最大の分かれ目かな」
「猫舌……」
考え始めてしまったので、
「じゃ、どっちも持ってこう」
まず、夕飯は食べたい。明日の仕事は十時からなので、私に余裕があればその前に、一旦家を見てほしい。帰る時間は、私に決めて欲しい。
私はそれらにほぼオッケーを出し、帰る時間の参考のためと、一つ、聞いた。
『セイの家のお風呂は、使える?』
『あ、いえ、いつも、洗浄……服を洗濯するみたいに体を清潔にするものなんですけど、それをしてるので』
『……お風呂、苦手?』
聞いたら、セイはキョトンとして。考え込んで、少しして。
『そういう訳では、なかったと、思います。けど、ここずっと、そうしてきたもので……』
『よし、じゃあ、お風呂入ってって』
『……え?』
『着替えとか必要なもの、家から持ってこれる?』
『え、あ、いえ、そういうものは持ち歩いているので……』
『ああ、別空間に?』
『はい』
『じゃ、お風呂入ってから帰る。良い?』
『は、い……』
ホントは布団も気になったけど、セイがいっぱいいっぱいに見えたから、そこを聞くのはやめておいた。
あ、あと夕飯のリクエストも聞いたけど、思いつかないとの回答を得たので、よっしゃ任せろ! と言った。
*
「さてでは、私の独断と偏見により決めた、お夕飯のメニューを発表します」
椅子に座り、言う。
「は、はい」
対面のセイは、緊張している。
「お鍋です。肉団子鍋にしようかと思っています」
今はまだ秋だけど、夜は冷え込むらしい。ので、このチョイス。
「いい?」
「にく、だんご、なべ」
「そ」
ピンときてない顔のセイに、スマホの画面を見せる。
「こういうヤツ」
と、見せたのは、冬によくやる土鍋の画像。
「あ、あぁ、はい。見たことあります。こういうの」
……見たこと、ね。
「で、私は鍋食べたあとのシメに、卵雑炊を食べるんだけども。セイはどうする? ご飯と一緒に鍋食べる? 雑炊にする?」
「……えぇと、では、雑炊、で」
「おっけ。あと今日、見てる? 休んどく?」
「あ、……見るだけでも、良いのなら」
「了解。じゃ、始めよっか。あ、セイ。今ある材料だと、さっき見せたのとちょっと違っちゃうの、そこはご了承を」
そしたら、セイがなんかムッとした。
「……それは、手に入らないものですか?」
「え? いや、たぶん、あのスーパーで買えると思う」
記憶をさらいながら言う。
「なら、行きましょう。お金はお支払います」
「でも、今から行くと、時間がね」
只今十八時半過ぎ。行き帰りで四十分プラス買い物時間で、二十時近くなってしまう。
「なら、スーパーまで転移します。往復時間はそれでゼロです。どうですか?」
「……あそこ人通り多いよ?」
言ったら、セイは笑顔で。
「大丈夫です。経験上、そういうのは心得てますので」
「……じゃあ、うん、頼む」
で、支度して──と言っても、見た目の確認して上着を着てエコバッグとスマホを持つだけ──玄関で靴を履く。その間に、セイが転移の説明をくれた。
「以前、簡易のものをお見せしたのは、覚えてますか?」
「紅茶の?」
髪を梳かしながら聞く。
「はい。原理はそれと同じですが、今回は人が二人、ナツキさんの家とスーパーが転移先です。そして、ナツキさんは転移が初めて」
そりゃあね。
……服も、問題なし。スマホ持ってる。
「スーパーは人が多い。なので、ナツキさんの負担軽減を考えて、あのスーパーの駐輪場に転移しようかと思ってます。スーパーに転移した際には、周りに目眩ましを。完全に姿を消すより、違和感なく溶け込めるんです。それと、転移の仕方なのですが……」
が?
と、洗面所から出る。
「その、万一の為に、手を、……片手でいいので、素手に、触れても、大丈夫でしょうか」
顔が赤いね。大丈夫だよ。
「ああ、うん、大丈夫。どう握れば良い?」
「えーと、できれば接触面積が多いほうが……」
「接触面積?」
「こう、あの、こんな、です」
セイが、自分の両手で実演してくれる。指と指を絡ませて、なるほど。接触面積。
「うん、分かった。左手で良い?」
「あ、はい。ナツキさんが、いえ、はい」
「うん。あと、ある?」
エコバッグとスマホをコートのポケットに入れて、玄関へ向かいながら聞く。
「あ、はい。転移ですが、ここからでも良いですか?」
靴を履くセイに、
「ここから? え? 玄関?」
同じ様に靴を履きながら聞いてしまった。
「はい。より時間短縮になるかと」
「おお。了解」
「では、……その、良いでしょうか」
おずおず差し出された右手を握り、指を絡ませる。ちょっと恥ずいけど、まあ、いいや。
「これでいい?」
「はい」
赤い顔で、けど、真剣な表情で。君はホントにいいヤツだ。
「セイ」
「はい」
「信じてる。万一なんて起こらない」
そしたらセイは、ちょっとだけ目を見開いて。
「はい。ありがとうございます」
真剣な顔のまま、けど、ふわりと笑う。
「では、行きます。しっかり立っていて下さい」
「了解」
一拍して、目の前の景色が変わる。
「転移完了です。目眩ましも効果を発揮しています。成功です」
「お、おお……」
周りを見れば、セイの言った通りにスーパーの駐輪場だ。それも、スーパーの入口に近い。
「……あの、ナツキさん」
「ん?」
「その、手……」
「あ、ああ。ごめんごめん。周りに気を取られてた」
手を離し、
「じゃあ行く?」
「あ、はい。あ、目眩ましはあと十分ほどで周りに溶け込んで消えます」
「ん、分かった」
で、買い物をして、お金も押し切られて払ってもらっちゃって。そんで、またパッと帰ってきました。
「はい。完了です。ご自宅なので目眩ましはかけてません」
「おーありがとう。マジで時間短縮になった。いや、疑ってた訳ではないけど」
「いえ、お役に立ててなによりです」
キッチンに食材を置き、コートを脱いで寝室のハンガーへ。
只今十九時前。四十分どころか、一時間短縮出来た。
「さーてはじめるよー」
と、キッチンに戻ったら。
「いや、えと、その」
セイが三匹に、いつかのように登られていた。
「ただいま、みんな」
返事をくれる。
「あ、そっか。セイ」
「え、はい」
「ただいま。おかえり」
「えっ、あ、……はい。おかえりなさい、ナツキさん。只今戻りました」
只今戻りました。……真面目ぇ。
「な、ナツキさん……?」
「いや、ちょっ、君は、本当に、くふっ」
エプロンを着けて手を洗い、食材を整理して、けど、肩の震えは、あまり治まらない。
「僕、変なこと、言いました?」
やめ、ちょっ、不満そうな声……!
「違う違う、全然違う。バカにしてるとかじゃないの。セイがね、真面目で、素直で、いいヤツだなあって」
可愛いなあってね。
思った訳ですよ。
「で、なんでセイはまた、その状態?」
一回振り返って聞いて、また作業に戻る。
「え、……や、褒めてもらいました」
「へー。転移の?」
「あ、ああ、ええ、はい」
鍋は事前にセットしてた。団子以外の食材も、下準備を完了させる。
「あのさ、さっきの転移、ちょっと質問いい?」
煮えにくいものから投入。着火。
「あ、はい」
ボウルに入れたひき肉と、生姜と醤油と少しの砂糖とマヨネーズ。を、捏ねる。
「あれ、光とか見えなかった気がするんだけど。私が気付かなかっただけ?」
こねこねこねこね捏ねまくる。よし、粘ってきた。
「あ、いえ。出してませんでした。ショーでも出したり出さなかったりします。最初から光ってたら、場所が丸わかりですから」
手を軽く拭って、土鍋の蓋を開ける。うん、最大火力のおかげで、ちゃんと湧いてる。そこに、肉ダネを一口より大きめに丸めて投入。完了。スプーンを使うより、私はこっちが楽だ。
「なるほど」
手を軽く拭って、きのことネギを入れ、蓋をする。
後ろへ振り向く。
「セイ、お鍋はあと、煮えるのを待つだけ。で、ウチ、カセットコンロがあるのね。お鍋する時にはローテーブルでさ、お鍋くつくつさせながら食べるんだけど、どう?」
「て、カセットコンロ、とは……」
「あ、あーそっか。そうだね。見せるから、ちょっと待って」
火加減を調節して、手を洗い、上の棚からそれらを出す。
「これ、ガスボンベ」
「えっ」
「で、この四角いのが、カセットコンロ。の、蓋を開けて、ボンベを装着。で、火を点けます」
ボッ、と灯った火は、均一。
「一旦消すね」
カチリと消す。
「っていうのなんだ。で、これ、動かせるから、ローテーブルに持っていける。どう?」
振り返ったら、なんか難しい顔をしていた。
「セイ?」
「……あっ、いえ。ちょっと、使えそうだな、と」
「使う? あ、魔法に?」
「はい。あ、ローテーブルの件、分かりました。このまま持っていけば良いですか?」
「あ、うん。ありがとう」
セイはそれをヒョイと持ち上げ、三匹に乗られたまま、ローテーブルへ。
……カセットコンロの理解、早くない? 料理の時とは大違いだな。なんだろ、機械だから? でもあんまり、魔法と機械って結びつかない……。
「と、こっちを忘れちゃいけない」
鍋を確認。うん、ちゃんと火、通ってる。お汁も美味しい。火を消して。
「セイー持ってって良いかなー?」
「あ、ちょっと待って下さい。……はい、大丈夫です」
何だろ今の間。
「じゃあ行くね」
と、土鍋をローテーブルへ。
「失礼します」
「はい」
カシャンと置いて、位置を確認。
「セイ、食器持って来るの、手伝ってくれる?」
「あ、はい」
キッチンに戻り、セイにお盆を持ってもらい、取り皿、箸を置いて。で、手が止まる。
「セイ、あのさ」
「はい」
「鍋のツユを掬うの、どっちが良い?」
と、見せたのは、レンゲと漆のさじ。
「……どっちがどう、いいんでしょう?」
「ん、こっちはいっぱい掬えるかな」
と、レンゲを持ち上げ、下げる。
「で、こっちはその逆。少しずつ」
漆のさじも同様に。
「猫舌かどうかが、最大の分かれ目かな」
「猫舌……」
考え始めてしまったので、
「じゃ、どっちも持ってこう」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる