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悪役令嬢の意趣返し
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「ウェルトレー公爵息女マグノリア・ウェルトレー嬢! 私は、今この瞬間をもって、君との婚約を破棄する! また、アメリア嬢への名誉毀損、窃盗、傷害などの罪により、君のその身柄を修道院送りとする!」
学院の卒業パーティーもそろそろお開きというところで、そんな声が響き渡りました。
「まあ、理由をお聞かせ願えますか? アルバート様」
私の取り巻きは波が引くようにいなくなり、私はホールの真ん中に一人になります。
「白々しい! アメリア嬢への残虐非道な行為の数々、忘れたとは言わせない!」
対する私の婚約者、スカイヴァシレア王国の第一王子アルバート・スカイヴァシレウス様は、ノット男爵のご息女、アメリア・ノット様の肩を抱き、壇上に上がっていらっしゃいます。アルバート様の取り巻きも……いえ、加えてアメリア様の取り巻きも一緒ですね。
「忘れていませんが、それが理由ですか?」
「な?!」
あら、アルバート様もアメリア様もそんな驚いた顔をして。
「陰口も、悪い噂も流しましたし、物を隠したり壊したり……」
私の言葉に二人の取り巻き達やホールの方々もざわめき出します。
「そっ、そうだ! 上階から水を浴びせたり、階段から突き落としもしたらしいな!」
あら?
「それらは存じ上げませんが……まあ、今となっては些末なこと。私がやったことに致しましょう」
物理的な攻撃はやってませんでしたが……まあ、彼女ならそう言うでしょうね。
私の態度が気に入らないのでしょう。アルバート様は顔を怒りに染め上げて、口を開きました。
「何を」
「アルバート様」
ですが、その言葉を断ち切らせていただきます。
さて、ここからはこちらの番です。堂々といかせてもらいましょう。
「そもそも、アルバート様とアメリア様は、何故そちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「は? それは君が」
「私がアメリア様へ非道い行いをしたから? なら何故非道い行いをしたか、お考えになりました?」
いつの間にかざわめきは消え、私の声がホール中に響き渡っていきます。
「何?」
「半年前、アメリア様が学院に転入して来た頃は、まだあなたは私を見て下さっていました。婚約者としてだけでなく、本当の、恋人として」
あの頃が懐かしい。
「ですが、時が経つにつれ、徐々にあなたはアメリア様とともに行動するようになり、彼女と親密になり、今では肩まで抱いて! 私の気持ちを考えた事がおありでしょうか……?」
俯き加減になり、扇子で口元を隠します。そして瞳を潤ませましょう。
また、ホールがざわめきに包まれ始めました。
「私は、この国の次期国王の婚約者として、人一倍努力して参りました。……ですがもう、あなたは私を見なくなった。その隣にいる彼女に心を移してしまわれました。……そして私は、私は地に落ちてしまったのです……」
私は震える声を出し、ゆっくりと丁寧にカーテシーをして、壇上を仰ぎ見ます。
泣きそうになりながら、無理に笑顔を作るように。
「私からは、以上でございます。……お二人とも、どうぞ、末永くお幸せに」
どうかしら。綺麗に捨て台詞を吐けたかしら?
私が嫉妬に狂ったのは事実。でもアメリア様が淑女でないと知ってから、私は二人の仲を裂こうとしました。
アルバート様に、もう一度私を見て欲しかった。でも、彼女の魅力に骨抜きにされた私の王子様は、二度とこちらを振り返りはしませんでした。
そこで私は、仲睦まじい二人の間に、罅を入れる事を考え始めます。罅なら、罅くらいなら、私でも入れられる。
ああ、あの罅、どれだけ深く入ったかしら。いつまで持ってくれるかしら。そのまま罅が広がって、砕けて粉々になればいいのに。
けれど、勘のいいアメリア様のこと、すぐに修復に取り掛かるでしょう。でもご存知? 一度入った亀裂って、直すのに、手間も時間もとってもかかるの。そして、元の姿には戻らないの。
ああ、このまま、修復されたとしても不完全に、お二人には素敵に歪な生涯を、送っていって欲しいものだわ。
学院の卒業パーティーもそろそろお開きというところで、そんな声が響き渡りました。
「まあ、理由をお聞かせ願えますか? アルバート様」
私の取り巻きは波が引くようにいなくなり、私はホールの真ん中に一人になります。
「白々しい! アメリア嬢への残虐非道な行為の数々、忘れたとは言わせない!」
対する私の婚約者、スカイヴァシレア王国の第一王子アルバート・スカイヴァシレウス様は、ノット男爵のご息女、アメリア・ノット様の肩を抱き、壇上に上がっていらっしゃいます。アルバート様の取り巻きも……いえ、加えてアメリア様の取り巻きも一緒ですね。
「忘れていませんが、それが理由ですか?」
「な?!」
あら、アルバート様もアメリア様もそんな驚いた顔をして。
「陰口も、悪い噂も流しましたし、物を隠したり壊したり……」
私の言葉に二人の取り巻き達やホールの方々もざわめき出します。
「そっ、そうだ! 上階から水を浴びせたり、階段から突き落としもしたらしいな!」
あら?
「それらは存じ上げませんが……まあ、今となっては些末なこと。私がやったことに致しましょう」
物理的な攻撃はやってませんでしたが……まあ、彼女ならそう言うでしょうね。
私の態度が気に入らないのでしょう。アルバート様は顔を怒りに染め上げて、口を開きました。
「何を」
「アルバート様」
ですが、その言葉を断ち切らせていただきます。
さて、ここからはこちらの番です。堂々といかせてもらいましょう。
「そもそも、アルバート様とアメリア様は、何故そちらにいらっしゃるのでしょうか?」
「は? それは君が」
「私がアメリア様へ非道い行いをしたから? なら何故非道い行いをしたか、お考えになりました?」
いつの間にかざわめきは消え、私の声がホール中に響き渡っていきます。
「何?」
「半年前、アメリア様が学院に転入して来た頃は、まだあなたは私を見て下さっていました。婚約者としてだけでなく、本当の、恋人として」
あの頃が懐かしい。
「ですが、時が経つにつれ、徐々にあなたはアメリア様とともに行動するようになり、彼女と親密になり、今では肩まで抱いて! 私の気持ちを考えた事がおありでしょうか……?」
俯き加減になり、扇子で口元を隠します。そして瞳を潤ませましょう。
また、ホールがざわめきに包まれ始めました。
「私は、この国の次期国王の婚約者として、人一倍努力して参りました。……ですがもう、あなたは私を見なくなった。その隣にいる彼女に心を移してしまわれました。……そして私は、私は地に落ちてしまったのです……」
私は震える声を出し、ゆっくりと丁寧にカーテシーをして、壇上を仰ぎ見ます。
泣きそうになりながら、無理に笑顔を作るように。
「私からは、以上でございます。……お二人とも、どうぞ、末永くお幸せに」
どうかしら。綺麗に捨て台詞を吐けたかしら?
私が嫉妬に狂ったのは事実。でもアメリア様が淑女でないと知ってから、私は二人の仲を裂こうとしました。
アルバート様に、もう一度私を見て欲しかった。でも、彼女の魅力に骨抜きにされた私の王子様は、二度とこちらを振り返りはしませんでした。
そこで私は、仲睦まじい二人の間に、罅を入れる事を考え始めます。罅なら、罅くらいなら、私でも入れられる。
ああ、あの罅、どれだけ深く入ったかしら。いつまで持ってくれるかしら。そのまま罅が広がって、砕けて粉々になればいいのに。
けれど、勘のいいアメリア様のこと、すぐに修復に取り掛かるでしょう。でもご存知? 一度入った亀裂って、直すのに、手間も時間もとってもかかるの。そして、元の姿には戻らないの。
ああ、このまま、修復されたとしても不完全に、お二人には素敵に歪な生涯を、送っていって欲しいものだわ。
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