異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

第五章

心を打ち明ける

「さて、俺の話はこれくらいだけど、サラも話したいことがあるんだよな？」

リックさんが軽く笑いながら尋ねた。

「うん。」

私は深呼吸をし、心の内を話す決心をした。

「リックさん、実は私、今すごく精神が不安定で、元の世界で言うとPTSDという病気にかかっているの。」

「PTSD？」

彼は首をかしげた。

「そう、心的外傷後ストレス障害のことなの。そんな病気で……。」

リックさんの眉間に皺が寄る。

「ああ、何となく病名でわかったよ。」

彼の表情から、昨日の私を見てすでに何かを察していたことがわかる。

「時々、あの出来事を思い出すと、胸が苦しくなるの。」

「今は大丈夫か？この話で苦しくなるなら、無理しなくていいからな。」

リックさんの声は柔らかく、優しい響きがあった。

その気遣いに、私は心が少し軽くなったように感じた。

「うん、苦しくなっても、リックさんがそばにいれば大丈夫。」

リックさんは少し驚いた表情を見せた後、すぐに微笑んだ。

「俺の婚約者はかわいいことを言うね。」

彼の言葉に、一瞬、心が温かくなる。
私は目を伏せて、小さな笑みを浮かべた。
リックさんにはすべてを話しても大丈夫。
そう自分に言い聞かせた。

「どうしたら克服できるか考えてみたの。」

言葉が続かなくなり、私は深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
リックさんのまなざしが真剣で、その視線を避けるように一度目を閉じる。

「もう二度と、負けたくないって思うの。」

沈黙が一瞬流れる。
リックさんは考え込むように視線を落とし、私の言葉をかみしめるように聞いているようだった。

「だから、おじいちゃんからすべての魔法を学びたいの。」

リックさんが少し顔を上げて、優しい目で見つめてくれた。

「返り討ちにできるくらい強くならないと、心に平穏が来ない気がする……。」

リックさんは少し眉を下げて、困ったような表情を見せた。
一瞬、沈黙が流れる。
唇をかみしめ、視線を落とした。

「俺が守るって言っても聞かなそうだな。」

私は静かに首を振り、深呼吸して答える。
息を整えながら、言葉を選んだ。

「守られるだけじゃ、だめなの。私もリックさんを守れる力がほしいの。」

リックさんの目を見つめながら、拳を握りしめる。
彼に自分の覚悟を伝えたい、その一心で、言葉を選ぶ。

「もう誰にも負けたくない。あの時の自分を二度と繰り返したくないの。」

声に微かな震えがあったが、それを振り払うように、深く息をつく。
リックさんが少し驚いたように眉を上げた後、すぐに落ち着いた声で答えた。

「エリオスさんなら快諾してくれるだろう。その代わり、オルデン領に行ってからだよ。追手が来るかもしれないし、その対策ができるなら、俺は応援する。」

彼の顔を見上げ、迷いが消えるのを感じた。

「ありがとう、リックさん！」

嬉しさのあまり、私は思わずリックさんに抱きついた。
胸の鼓動が速くなるのを感じる。

リックさんは一瞬驚いたようだったが、すぐに私をしっかりと受け止めてくれた。
彼の瞳には驚きと、それを包む優しさが映っていた。
彼は笑顔で私の背中に手を回し、ゆっくりと包むように抱きしめてくれた。
彼の腕の中で感じる温もりが心地よい。
彼はギュッと抱きしめ、優しく頭を撫でてくれた。
支えられている安心感が胸に広がる。

心臓が激しく鼓動し、彼の温もりを感じるたびに決意が強まった。