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第五章

恐怖の再来

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その後、私たちはレイチェル夫人と夕食をとったが、リックさんの疲労を考慮して、長話せずに解散した。
彼は来客用の部屋に案内され、私は自室に戻った。

リックさんと再会できて、心が少し浮き立っていた。
彼が迎えに来てくれた安堵感で心が満たされる一方、心のどこかで不安が残っていることに気づいた。
ベッドに体を預け、彼を思いながら、しばらく窓の外を見つめた。

外は小雨が降り続き、シトシトと心を静めるような音が響いている。
それでも、胸のざわつきが消えない。
リックさんに会えたことで安心したはずなのに、心が完全には落ち着かない。
明日に備えて眠らなければと思うが、眠れそうにない。

その時、突然軽いノックの音が聞こえた。
誰だろうという不安が一瞬よぎったが、リックさんかもしれないという期待がそれを打ち消した。
気を緩めてドアに近づくと、扉の向こうに治癒師見習いの青年が立っていた。
彼はぎこちない笑みを浮かべていたが、その姿を見た瞬間、胸の奥に押し込めていた恐怖がじわりと蘇った。

「どうかしましたか?」

私は警戒しながら尋ねた。

「レイチェル夫人に頼まれて、様子を見に来ました。明日ここを発つと聞いたので、その前に確認しておこうかと…。」

そう彼は説明したが、その言葉にはどこか不自然さを感じた。

彼の視線が私の顔をじっと見つめ、言葉とは裏腹に何かを探るような気配があった。
胸の奥で不安が広がり、心臓が早鐘を打ち始めた。

「……それ以上、近づかないで。」

一瞬、彼の視線が揺らいだ。
その瞬間、胸の中に押し込めていた恐怖が濁流のように溢れ出した。
目の前が狭くなり、息が詰まりそうになった。
視界が歪み、過去の恐ろしい記憶が鮮明に蘇る。

彼は驚いて後ずさった。

「すみません、そんなつもりじゃ……。」

彼の声が遠くに響いた。
彼が口を開くたびに、その声が不気味な圧力となって胸に重くのしかかる。
冷や汗が背中を伝い、手が震えているのがわかった。

「何を確認するのですか?あなたにお会いしたのはたった一度で、あなたは私の主治医でもありませんよね。」

気丈に振る舞ったが、声が震えた。
喉が渇き、言葉が詰まった。
息苦しさが増し、目の前がぼやけてきた。
恐怖が全身を支配し、頭の中が真っ白になりかけた。

「ずっとあなたのことが気になっていました。夫人にはあの日から近づかないようにと言われて、診察できなかったことが心残りで……。」

この人は本当に悪気はないのかもしれない。
でも、レイチェル夫人に頼まれたと嘘をつく人だ。
信用できなかった。

「治癒師見習いなら察して。あなたが怖いの。お願い、出て行って!」

私が声を荒げると、廊下から足音が聞こえた。
リックさんだった。
彼は状況を一目で理解したようだった。

「サラ?どうした?」

リックさんの声が聞こえた瞬間、ほっとして後ろに隠れた。
温もりに触れた瞬間、緊張が解け、全身が震えた。

「君に治療できることはない。出て行ってくれ。」

リックさんの冷静な声が、私の不安を和らげた。
治癒師見習いが戸惑いながら部屋を出ていくのを見て、ようやく息をついた。

その後、リックさんは私に近づき、そっと肩に手を置いた。

「サラ、大丈夫だ。俺がいる。もう何も心配いらない。」

リックさんの言葉に、張り詰めていた何かがぷつりと切れた。
堪えていた涙が溢れ、彼の胸に顔を埋めた。

「ごめんなさい、まだ怖いの……。」

震える声で告げると、リックさんは無言で私を強く抱きしめてくれた。
その瞬間、自分がどれだけ彼に依存していたかを痛感した。
彼がいなければ、この不安に押しつぶされていたかもしれない。

リックさんが私の背中を優しく撫でるたびに、少しずつ心の中の恐怖が和らいでいくのを感じた。
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