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五日目-2
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ロファースは崩壊したファイス国を後にした。
エルフの里を抜けて着いたこの場所。見ず知らずの場所だが、歩くしかない。
エウルドスの真意を知りたい。
この世界を争いのない平和な世界にしたい。
ーーザザザザザッ‥‥
規則正しい、しかし雑音のような音が聞こえてくる。
(これは、足音?)
よく耳をすませば、金属音が奏でる大勢の足音だとすぐにわかった。
もしかしたら自分を追うエウルドスの騎士かもしれないとロファースは思い、足音とは逆の方向に駆け出す。
ーーどこまで走っても一面草原だった。
ファイス国跡から一向に街や村すら見当たらない。
走り続けて数分、ようやくその場に立ち止まり、荒れた息を整える。
足音がしなくなったことに気づき、くるりと背後を見た。
何も、居ない。
(考えすぎ、か‥‥)
一体、何の足音だったのか気になりはしたが、ロファースは再び足を動かす。行けども、変わらず草原は続いた。
(ここは一体‥‥何もありはしない‥‥)
そう考え、気が滅入りそうになった時、遠くに人影を見つける。
今のロファースには情報が必要だ。ちょうど良かったと思い、ロファースはその人影に向かって走り出した。
「すっ、すみません!」
そう声を掛ければ、人影はくるりとロファースの方に振り向く。
黒いコートに身を包み、金の髪が陽に映えていた。
二十代前半から半ばくらいの長身の男である。
「あの、この近くに街や村はないでしょうか?一面草原で‥‥」
そう尋ねると、長身の男は青い目を細め、
「この大陸は最近見つけられた場所だ。今から全てを作り始めるところだろう。ファイス国がつい先日完成したが、どこかの国に滅ぼされたとのことだ。お前がどこから来たかは知らないが、ここら一帯、怪しい奴等がウロウロしているようだからな、早く抜け出した方がいいかもな」
「怪しい奴等?」
先ほどの足音と何か関係しているのだろうかとロファースは思う。
「あなたはここで何をしているんです?こんな、何もない場所で‥‥」
「それはお互い様だろう。俺は人を捜している。それだけだ」
そう言って、長身の男はくるりとロファースに背を向け、行ってしまった。
(と言うか、どうやってこの大陸から出ればいいんだ?最近見つけられた場所ってことは、港すらないんじゃ‥‥)
嫌な考えを振り捨て、ロファースはまたしばらく歩くことにする。そうするより他にない。
ーーザッザッザッザッ‥‥
するとまた、何者らかの足音が聞こえてくる。今度はさっきよりも近かったーーそして、ロファースはとっさに後ろに下がる。
見覚えのある姿が目に入ったからだ。
「よう、ロファース」
「‥‥セルダー」
再び、剣を手にした友が目の前に立ちはだかる。
「ははっ、奇遇だな。俺らもちょうどこの大陸の調査を任されてさぁ、そしたらお前が居るのをたまたま見掛けてーー」
「後をつけて来たってわけか?」
セルダーの周りには他のエウルドス兵が二十人程いる。下手な動きをすればどうなるかーー‥‥ロファースにはそれがわかっていた。焦るべき場面ではあるが、今は落ち着いて行動するしかない。
「‥‥セルダー。聞きたいことがあるんだ。イルダンさんは俺を危険だと言った。エモイト王の死の真相を俺が口外することを恐れているのならわかる。でも、何か別のことのようだった‥‥なぜ、俺は殺されなければならないんだ?」
ロファースはセルダーの目を真っ直ぐに見て疑問を尋ねる。しかし、
「‥‥テメェだけじゃねぇよ」
セルダーはロファースから視線を逸らし、歯を食いしばりながらそう言った為、ロファースは眉を潜めた。
「‥‥話は後だ。ロファース、とりあえず来てもらおうか。お前にはエウルドスに戻ってもらうぜ」
セルダーは再び顔を上げ、そう言い放つ。しかし、ロファースは首を横に振り、
「俺はエウルドスを捨てた。もう戻らない」
そう答え、二人の間に少しの沈黙が流れた。
「お前がどう言おうが関係ないね。お前はエウルドスに戻って、エウルドスで死ぬ運命なんだ」
「死ぬ運命って‥‥」
「全部わかるさ。エウルドスに戻れば」
セルダーの言葉の後で、周囲にいた兵達がロファースを取り囲み、力強く両腕を掴まれたが、ロファースは抵抗しなかった。
「暴れないのかよ?」
セルダーに問われ、
「俺は真実が知りたい」
ロファースはそう答える。
「ふーん‥‥まあ、いいか。前の変なフードの奴も今は居ないみたいだし、お前一人じゃ剣すら抜けないもんな」
馬鹿にされるよう笑われたが、ロファースは気にならなかった。セルダーの言うように、剣を抜く気はない。
「イルダンさんは居ないのか?」
「ああ。今は次の戦の準備中だからな。代わりに俺が先輩の仕事を任されてるわけ」
「また、エウルドスは戦をするのか‥‥」
姿を見せたことのないエウルドス王。
見たことはないが、話だけを繋ぎ合わせていけば、本当に残酷な王なのであろう。
「お前もか?セルダー」
「あ?」
急なロファースの問い掛けの意味が分からず、セルダーは首を傾げる。
「お前も戦争を求めているからエウルドスに疑問を持たないのか?」
そう聞くが、セルダーはそれに答えなかった。
ロファースは兵に両腕を拘束され、四方から槍や剣を向けられたまま歩いていた。
すると、セルダーはピタリと足を止め、
「そういや、覚えてるか?ロファース」
「何を」
「エルフの里だよ。お前と話したろ?確か、この大陸の戦帰りにどこかの森で見つけたとかなんだとか‥‥時間もあるし、ちょっと探してみようぜ!面白そうじゃねーか?」
そう言って、セルダーは無邪気に笑う。こんな会話をしていれば、まるで以前のままのようだが‥‥
「見つけてどうするんだ?」
「どうしようかねぇ」
特に何も考えていないのか、それとも本心を隠しているのか‥‥セルダーの表情が今は読み取れない。
だが、一つだけ確かなこと。
絶対に、セルダー達をエルフの里に行かせてはいけない。
再び足を進め、
「セルダー。お前はエウルドス王に会ったことがあるのか?」
セルダーの話を聞くからに、彼はつい先日‥‥そう、四日前に正式な騎士になったはずだが、ほぼ重要な任務につかされているような気がする。
第一、イルダンの任務を代わりに任されているのがそれを物語っていた。
そんな重要な立場であれば、王に一目くらい会えたのではないかとロファースは思う。
「お前がエウルドスを出た直後‥‥二日前にな、イルダン先輩に呼び出されてお前が居なくなったって聞かされて、いきなり王に会わされたよ。いやぁ、驚いたぜ本当に。まだ正式な騎士に成り立てだって言うのに、イルダン先輩の隊に入ってお前を追う任務を任されてさ」
セルダーはこの二日で起きたことをとんとんと話し、
「まあ、精神的揺さぶりってやつ?お前と仲が良かった俺とイルダン先輩を筆頭にするって魂胆じゃね?」
それを聞いたロファースはため息を吐き、
「はは、俺も馬鹿だったよ。まさか友達と思っていた奴がこんな性格が悪かったとはさ」
そう、嘲笑うかのように言ってやれば、セルダーは悪態を吐いた。
「やめだやめ。無駄話や無駄な行動してたらイルダン先輩に怒られちまうぜ」
とっととエウルドスに戻るかと、小さく呟いたのが聞こえ、どうやらセルダーの中からエルフの里への興味がなくなったことに対し、ロファースは安心する。
だが同時に、諦めにも似たような思いを抱いた。
自分はこのまま本当に死ぬのだろうか?
叶わないであろう夢を見始めたばかりだと言うのに。
不意に、一人の少女の姿が脳裏に過る。たった一度しか、しかもほんのわずかの時間しか話さなかった少女。
(彼女は今、何をしているだろう?)
言葉通り、彼女は待っていてくれるであろうか?また、会いに行けるであろうか?
だが、逃げる術がない。もう、エウルドスに戻るしかない‥‥
「ぎゃあぁあああ!?」
その時、背後から複数の悲鳴がした。振り向けば、ロファースを囲んで居た兵達が悲鳴と共に倒れているではないか。
セルダーや前方を進んでいた兵達も驚いてその光景を見た。
すると、倒れた兵達の間からこちらに向かう人影が見え、
「やれやれ‥‥遅くなりましたね」
と、その人は言う。
「少し用があって先に発たせていただきましたが、まさかエウルドス兵が居るとは」
ため息混じりに彼ーーフードの男が言い、
「とりあえず行きましょうか、ロファース君」
「えっ」
急に、体の自由を感じる。
ロファースの両腕を掴んでいた兵の手が離れたのだ。
周りを見れば、セルダーだけでない。兵達はなぜか、体をガタガタと震わせている。
ゾクッと‥‥ようやくロファースもその理由に気づいた。フードの男は得体の知れない力を纏っている。
今ならば、セルダーや兵達が動揺している今ならば、確実に逃げられる。だが‥‥
異常なまでの力に、素性のわからぬ彼に、やはり疑念を抱いた。
この男を信じてもいいのだろうかと、なかなか足が動かない。
しばらくしてようやくロファースはゆっくりと歩き出していた。それを見てセルダーはようやく意識をその場に戻し、
「ーーっ‥‥ロファースを捕らえろ!」
その声と共に、圧倒されていた兵達も動き出す。
それを見てフードの男は小さく笑い、服の袖に隠れたままの右腕を前に出す。
何が起きたのかーーバチバチと、フードの男の前に雷の塊のようなものが生み出された。
「さてさて。動けばどうなるかわかりますよね」
それを見た兵達はまた動きを止めてしまう。
「ちっ‥‥どいつもこいつもーー!」
だが、セルダーだけは剣を構え、こちらに駆け出した。
ガンッーー!
ロファースもとっさに剣を構え、セルダーの攻撃を受け止める。
「セルダー!俺は帰らない!俺にはやるべきことがあるんだ!」
「お前は死ぬんだよ!死ぬべき存在なんだ!」
ギギッーー‥‥鉄の擦れる音が嫌に響き、ギンッーー!と、ロファースはセルダーの剣圧に弾き飛ばされ、地面に体を打ち付ける。
「終わりだロファース!帰って殺されるも、今殺されるのも、同じことだぁあああっ!」
ロファースが身を起こした時、頭上にはすでにセルダーの剣が一直線に振り下ろされようとしていた!
避けることも考えられず、ただ頭の中は真っ白になり‥‥
ドンッーーと、体が揺れる感覚と、ジャキッーーと、何かが切れる音。
それは肉を貫かれたような音ではなかった。
風により、赤いそれが流されていく。
「いやはや、少々、遊びすぎましたね」
目の前にはフードの男が立っていて、ロファースの体は彼に押し飛ばされていたのだ。
それにより、切っ先のずれたセルダーの剣が切ったのは肉ではなく、ロファースの髪だった。
長かった髪は短くなっている。
よく見ると、フードの男はロファースを庇ったようで、彼は左腕にセルダーの剣を掠め、ぽたぽたと血が流れていた。
ちらりと、初めてフードの下から男の目が見えた。紅い‥‥
「てめぇは‥‥てめぇは何なんだ!なんで邪魔しやがるっ!」
セルダーも呆気にとられていたようだが、フードの男にそう叫ぶ。
「あなた方エウルドスが護ろうとしているものーー僕がそれに関わっていたと言ったら‥‥わかりますか?」
「ーー!?」
それを聞いたセルダーは目を見開かせた。
「ですが、こんな話をあなたにする意味はない。ロファース君、ここは引きますよ」
フードの男はロファースの肩を掴み、転移魔術を唱える。
ーー彼の転移魔術により、またもや見知らぬ平原にロファース達は立っていた。
ロファースはフードの男の左腕の負傷を見つめるが、彼は「掠り傷ですから気にしないで下さい」と笑う。だが、どう見ても掠り傷ではない。掠り傷だったら、そんなに血は滴り落ちない。
(‥‥俺はこの人を信用していなかった。なのに、この人は俺を庇った‥‥俺が早く動けていれば‥‥怪我をすることは‥‥!)
ロファースが地面に視線を落とすと、
「‥‥クレスルド」
「え?」
「僕の名前です」
いきなり名乗った彼を、ロファースは無言で見つめた。
「名前を明かしたからといって信用してもらえるとは思っていません。ですが、人に名乗るのは、あなたが初めてです。昔はね‥‥紅だのと呼ばれたり、僕に全てを託した王ーークナイの名を名乗ったりとしていました。ですが、本当の名は、さっき言った通りです」
「全てを託した‥‥王?」
名前を明かされたことも驚いたが、それよりも気になることが多々あった。
尋ねれば、彼は首を横に振り、答えはしない。
冷たい風が吹く。
セルダーの剣により短くなってしまった自らの赤い髪に触れた。
そしてもう一度彼の傷を見つめ、
「それよりも、早くどこか休める場所で手当てを‥‥」
「構いません。掠り傷ですからすぐ治ります」
「それのどこが‥‥!」
「今は僕のことはいい。今は、君が危険な状況なんです」
フードの男ーークレスルドはロファースの言葉を遮り、深刻な声でそう言う。
「っ‥‥!?一体、あなたやセルダー達は何を知っているんですか!?」
「僕が言えることはただ一つ。僕はエウルドスを壊すつもりです」
「エウルドスを壊す!?」
ロファースは目を見開かせ、
「ええ‥‥単に、僕自身の過ちを拭う為です」
「一体、なんなんですか?話が見えてこない‥‥」
だが、彼はそれ以上何も語らない。
セルダーもイルダンもだ。
何かを知っているはずなのに、はっきりと言ってはくれない。
「‥‥ロファース君。もう一度エルフの里へ行きましょう」
「え?」
「里の長に少し用が出来ました。一緒に来ていただいて良いですか?」
心配する必要はないのかもしれないが、自分を庇って彼は負傷したのだ。ロファースはこくっと頷く。
◆◆◆◆◆
怪我を負い、転移魔術を続けたせいか、クレスルドの呼吸は荒くなっていた。
なんとかエルフの里へ続く森まで転移し、彼の後に続きながらロファースも進む。
「‥‥っ!?」
急にクレスルドは立ち止まり、珍しく動揺を見せた。
「‥‥結界が」
クレスルドは低い声で言い、
「何者かに結界が‥‥壊されている」
「え!?俺が里を出た後、道はなくなっていて、わからないけどたぶん、結界を張り直していたはずなのに!?」
ロファースが言い、
「‥‥チェアルが無用心に結界を解くはずは‥‥僕やエルフ同等の力を持った奴なんて‥‥まさか‥‥」
クレスルドはぶつぶつ言うと、ロファースに向き直り、
「君はここに居て下さい。僕は里を見てきます」
それだけ言ってクレスルドは転移魔術ですぐさま消えてしまった。ロファースは戸惑い、自分もエルフの里に向かおうと決め、走り出す。
まさかとは思うが、嫌な予感がしたからだ。
エルフの里を抜けて着いたこの場所。見ず知らずの場所だが、歩くしかない。
エウルドスの真意を知りたい。
この世界を争いのない平和な世界にしたい。
ーーザザザザザッ‥‥
規則正しい、しかし雑音のような音が聞こえてくる。
(これは、足音?)
よく耳をすませば、金属音が奏でる大勢の足音だとすぐにわかった。
もしかしたら自分を追うエウルドスの騎士かもしれないとロファースは思い、足音とは逆の方向に駆け出す。
ーーどこまで走っても一面草原だった。
ファイス国跡から一向に街や村すら見当たらない。
走り続けて数分、ようやくその場に立ち止まり、荒れた息を整える。
足音がしなくなったことに気づき、くるりと背後を見た。
何も、居ない。
(考えすぎ、か‥‥)
一体、何の足音だったのか気になりはしたが、ロファースは再び足を動かす。行けども、変わらず草原は続いた。
(ここは一体‥‥何もありはしない‥‥)
そう考え、気が滅入りそうになった時、遠くに人影を見つける。
今のロファースには情報が必要だ。ちょうど良かったと思い、ロファースはその人影に向かって走り出した。
「すっ、すみません!」
そう声を掛ければ、人影はくるりとロファースの方に振り向く。
黒いコートに身を包み、金の髪が陽に映えていた。
二十代前半から半ばくらいの長身の男である。
「あの、この近くに街や村はないでしょうか?一面草原で‥‥」
そう尋ねると、長身の男は青い目を細め、
「この大陸は最近見つけられた場所だ。今から全てを作り始めるところだろう。ファイス国がつい先日完成したが、どこかの国に滅ぼされたとのことだ。お前がどこから来たかは知らないが、ここら一帯、怪しい奴等がウロウロしているようだからな、早く抜け出した方がいいかもな」
「怪しい奴等?」
先ほどの足音と何か関係しているのだろうかとロファースは思う。
「あなたはここで何をしているんです?こんな、何もない場所で‥‥」
「それはお互い様だろう。俺は人を捜している。それだけだ」
そう言って、長身の男はくるりとロファースに背を向け、行ってしまった。
(と言うか、どうやってこの大陸から出ればいいんだ?最近見つけられた場所ってことは、港すらないんじゃ‥‥)
嫌な考えを振り捨て、ロファースはまたしばらく歩くことにする。そうするより他にない。
ーーザッザッザッザッ‥‥
するとまた、何者らかの足音が聞こえてくる。今度はさっきよりも近かったーーそして、ロファースはとっさに後ろに下がる。
見覚えのある姿が目に入ったからだ。
「よう、ロファース」
「‥‥セルダー」
再び、剣を手にした友が目の前に立ちはだかる。
「ははっ、奇遇だな。俺らもちょうどこの大陸の調査を任されてさぁ、そしたらお前が居るのをたまたま見掛けてーー」
「後をつけて来たってわけか?」
セルダーの周りには他のエウルドス兵が二十人程いる。下手な動きをすればどうなるかーー‥‥ロファースにはそれがわかっていた。焦るべき場面ではあるが、今は落ち着いて行動するしかない。
「‥‥セルダー。聞きたいことがあるんだ。イルダンさんは俺を危険だと言った。エモイト王の死の真相を俺が口外することを恐れているのならわかる。でも、何か別のことのようだった‥‥なぜ、俺は殺されなければならないんだ?」
ロファースはセルダーの目を真っ直ぐに見て疑問を尋ねる。しかし、
「‥‥テメェだけじゃねぇよ」
セルダーはロファースから視線を逸らし、歯を食いしばりながらそう言った為、ロファースは眉を潜めた。
「‥‥話は後だ。ロファース、とりあえず来てもらおうか。お前にはエウルドスに戻ってもらうぜ」
セルダーは再び顔を上げ、そう言い放つ。しかし、ロファースは首を横に振り、
「俺はエウルドスを捨てた。もう戻らない」
そう答え、二人の間に少しの沈黙が流れた。
「お前がどう言おうが関係ないね。お前はエウルドスに戻って、エウルドスで死ぬ運命なんだ」
「死ぬ運命って‥‥」
「全部わかるさ。エウルドスに戻れば」
セルダーの言葉の後で、周囲にいた兵達がロファースを取り囲み、力強く両腕を掴まれたが、ロファースは抵抗しなかった。
「暴れないのかよ?」
セルダーに問われ、
「俺は真実が知りたい」
ロファースはそう答える。
「ふーん‥‥まあ、いいか。前の変なフードの奴も今は居ないみたいだし、お前一人じゃ剣すら抜けないもんな」
馬鹿にされるよう笑われたが、ロファースは気にならなかった。セルダーの言うように、剣を抜く気はない。
「イルダンさんは居ないのか?」
「ああ。今は次の戦の準備中だからな。代わりに俺が先輩の仕事を任されてるわけ」
「また、エウルドスは戦をするのか‥‥」
姿を見せたことのないエウルドス王。
見たことはないが、話だけを繋ぎ合わせていけば、本当に残酷な王なのであろう。
「お前もか?セルダー」
「あ?」
急なロファースの問い掛けの意味が分からず、セルダーは首を傾げる。
「お前も戦争を求めているからエウルドスに疑問を持たないのか?」
そう聞くが、セルダーはそれに答えなかった。
ロファースは兵に両腕を拘束され、四方から槍や剣を向けられたまま歩いていた。
すると、セルダーはピタリと足を止め、
「そういや、覚えてるか?ロファース」
「何を」
「エルフの里だよ。お前と話したろ?確か、この大陸の戦帰りにどこかの森で見つけたとかなんだとか‥‥時間もあるし、ちょっと探してみようぜ!面白そうじゃねーか?」
そう言って、セルダーは無邪気に笑う。こんな会話をしていれば、まるで以前のままのようだが‥‥
「見つけてどうするんだ?」
「どうしようかねぇ」
特に何も考えていないのか、それとも本心を隠しているのか‥‥セルダーの表情が今は読み取れない。
だが、一つだけ確かなこと。
絶対に、セルダー達をエルフの里に行かせてはいけない。
再び足を進め、
「セルダー。お前はエウルドス王に会ったことがあるのか?」
セルダーの話を聞くからに、彼はつい先日‥‥そう、四日前に正式な騎士になったはずだが、ほぼ重要な任務につかされているような気がする。
第一、イルダンの任務を代わりに任されているのがそれを物語っていた。
そんな重要な立場であれば、王に一目くらい会えたのではないかとロファースは思う。
「お前がエウルドスを出た直後‥‥二日前にな、イルダン先輩に呼び出されてお前が居なくなったって聞かされて、いきなり王に会わされたよ。いやぁ、驚いたぜ本当に。まだ正式な騎士に成り立てだって言うのに、イルダン先輩の隊に入ってお前を追う任務を任されてさ」
セルダーはこの二日で起きたことをとんとんと話し、
「まあ、精神的揺さぶりってやつ?お前と仲が良かった俺とイルダン先輩を筆頭にするって魂胆じゃね?」
それを聞いたロファースはため息を吐き、
「はは、俺も馬鹿だったよ。まさか友達と思っていた奴がこんな性格が悪かったとはさ」
そう、嘲笑うかのように言ってやれば、セルダーは悪態を吐いた。
「やめだやめ。無駄話や無駄な行動してたらイルダン先輩に怒られちまうぜ」
とっととエウルドスに戻るかと、小さく呟いたのが聞こえ、どうやらセルダーの中からエルフの里への興味がなくなったことに対し、ロファースは安心する。
だが同時に、諦めにも似たような思いを抱いた。
自分はこのまま本当に死ぬのだろうか?
叶わないであろう夢を見始めたばかりだと言うのに。
不意に、一人の少女の姿が脳裏に過る。たった一度しか、しかもほんのわずかの時間しか話さなかった少女。
(彼女は今、何をしているだろう?)
言葉通り、彼女は待っていてくれるであろうか?また、会いに行けるであろうか?
だが、逃げる術がない。もう、エウルドスに戻るしかない‥‥
「ぎゃあぁあああ!?」
その時、背後から複数の悲鳴がした。振り向けば、ロファースを囲んで居た兵達が悲鳴と共に倒れているではないか。
セルダーや前方を進んでいた兵達も驚いてその光景を見た。
すると、倒れた兵達の間からこちらに向かう人影が見え、
「やれやれ‥‥遅くなりましたね」
と、その人は言う。
「少し用があって先に発たせていただきましたが、まさかエウルドス兵が居るとは」
ため息混じりに彼ーーフードの男が言い、
「とりあえず行きましょうか、ロファース君」
「えっ」
急に、体の自由を感じる。
ロファースの両腕を掴んでいた兵の手が離れたのだ。
周りを見れば、セルダーだけでない。兵達はなぜか、体をガタガタと震わせている。
ゾクッと‥‥ようやくロファースもその理由に気づいた。フードの男は得体の知れない力を纏っている。
今ならば、セルダーや兵達が動揺している今ならば、確実に逃げられる。だが‥‥
異常なまでの力に、素性のわからぬ彼に、やはり疑念を抱いた。
この男を信じてもいいのだろうかと、なかなか足が動かない。
しばらくしてようやくロファースはゆっくりと歩き出していた。それを見てセルダーはようやく意識をその場に戻し、
「ーーっ‥‥ロファースを捕らえろ!」
その声と共に、圧倒されていた兵達も動き出す。
それを見てフードの男は小さく笑い、服の袖に隠れたままの右腕を前に出す。
何が起きたのかーーバチバチと、フードの男の前に雷の塊のようなものが生み出された。
「さてさて。動けばどうなるかわかりますよね」
それを見た兵達はまた動きを止めてしまう。
「ちっ‥‥どいつもこいつもーー!」
だが、セルダーだけは剣を構え、こちらに駆け出した。
ガンッーー!
ロファースもとっさに剣を構え、セルダーの攻撃を受け止める。
「セルダー!俺は帰らない!俺にはやるべきことがあるんだ!」
「お前は死ぬんだよ!死ぬべき存在なんだ!」
ギギッーー‥‥鉄の擦れる音が嫌に響き、ギンッーー!と、ロファースはセルダーの剣圧に弾き飛ばされ、地面に体を打ち付ける。
「終わりだロファース!帰って殺されるも、今殺されるのも、同じことだぁあああっ!」
ロファースが身を起こした時、頭上にはすでにセルダーの剣が一直線に振り下ろされようとしていた!
避けることも考えられず、ただ頭の中は真っ白になり‥‥
ドンッーーと、体が揺れる感覚と、ジャキッーーと、何かが切れる音。
それは肉を貫かれたような音ではなかった。
風により、赤いそれが流されていく。
「いやはや、少々、遊びすぎましたね」
目の前にはフードの男が立っていて、ロファースの体は彼に押し飛ばされていたのだ。
それにより、切っ先のずれたセルダーの剣が切ったのは肉ではなく、ロファースの髪だった。
長かった髪は短くなっている。
よく見ると、フードの男はロファースを庇ったようで、彼は左腕にセルダーの剣を掠め、ぽたぽたと血が流れていた。
ちらりと、初めてフードの下から男の目が見えた。紅い‥‥
「てめぇは‥‥てめぇは何なんだ!なんで邪魔しやがるっ!」
セルダーも呆気にとられていたようだが、フードの男にそう叫ぶ。
「あなた方エウルドスが護ろうとしているものーー僕がそれに関わっていたと言ったら‥‥わかりますか?」
「ーー!?」
それを聞いたセルダーは目を見開かせた。
「ですが、こんな話をあなたにする意味はない。ロファース君、ここは引きますよ」
フードの男はロファースの肩を掴み、転移魔術を唱える。
ーー彼の転移魔術により、またもや見知らぬ平原にロファース達は立っていた。
ロファースはフードの男の左腕の負傷を見つめるが、彼は「掠り傷ですから気にしないで下さい」と笑う。だが、どう見ても掠り傷ではない。掠り傷だったら、そんなに血は滴り落ちない。
(‥‥俺はこの人を信用していなかった。なのに、この人は俺を庇った‥‥俺が早く動けていれば‥‥怪我をすることは‥‥!)
ロファースが地面に視線を落とすと、
「‥‥クレスルド」
「え?」
「僕の名前です」
いきなり名乗った彼を、ロファースは無言で見つめた。
「名前を明かしたからといって信用してもらえるとは思っていません。ですが、人に名乗るのは、あなたが初めてです。昔はね‥‥紅だのと呼ばれたり、僕に全てを託した王ーークナイの名を名乗ったりとしていました。ですが、本当の名は、さっき言った通りです」
「全てを託した‥‥王?」
名前を明かされたことも驚いたが、それよりも気になることが多々あった。
尋ねれば、彼は首を横に振り、答えはしない。
冷たい風が吹く。
セルダーの剣により短くなってしまった自らの赤い髪に触れた。
そしてもう一度彼の傷を見つめ、
「それよりも、早くどこか休める場所で手当てを‥‥」
「構いません。掠り傷ですからすぐ治ります」
「それのどこが‥‥!」
「今は僕のことはいい。今は、君が危険な状況なんです」
フードの男ーークレスルドはロファースの言葉を遮り、深刻な声でそう言う。
「っ‥‥!?一体、あなたやセルダー達は何を知っているんですか!?」
「僕が言えることはただ一つ。僕はエウルドスを壊すつもりです」
「エウルドスを壊す!?」
ロファースは目を見開かせ、
「ええ‥‥単に、僕自身の過ちを拭う為です」
「一体、なんなんですか?話が見えてこない‥‥」
だが、彼はそれ以上何も語らない。
セルダーもイルダンもだ。
何かを知っているはずなのに、はっきりと言ってはくれない。
「‥‥ロファース君。もう一度エルフの里へ行きましょう」
「え?」
「里の長に少し用が出来ました。一緒に来ていただいて良いですか?」
心配する必要はないのかもしれないが、自分を庇って彼は負傷したのだ。ロファースはこくっと頷く。
◆◆◆◆◆
怪我を負い、転移魔術を続けたせいか、クレスルドの呼吸は荒くなっていた。
なんとかエルフの里へ続く森まで転移し、彼の後に続きながらロファースも進む。
「‥‥っ!?」
急にクレスルドは立ち止まり、珍しく動揺を見せた。
「‥‥結界が」
クレスルドは低い声で言い、
「何者かに結界が‥‥壊されている」
「え!?俺が里を出た後、道はなくなっていて、わからないけどたぶん、結界を張り直していたはずなのに!?」
ロファースが言い、
「‥‥チェアルが無用心に結界を解くはずは‥‥僕やエルフ同等の力を持った奴なんて‥‥まさか‥‥」
クレスルドはぶつぶつ言うと、ロファースに向き直り、
「君はここに居て下さい。僕は里を見てきます」
それだけ言ってクレスルドは転移魔術ですぐさま消えてしまった。ロファースは戸惑い、自分もエルフの里に向かおうと決め、走り出す。
まさかとは思うが、嫌な予感がしたからだ。
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ある日突然、澪は金持ちの美男子・藤堂千鶴に見染められる。しかしこの男は変態で異常なストーカーであった。澪はド変態イケメン金持ち千鶴に翻弄される日々を送る。『誰か平凡な日々を私に返して頂戴!』
★変態美男子の『千鶴』と
バイオレンスな『澪』が送る
愛と笑いの物語!
ドタバタラブ?コメディー
ギャグ50%シリアス50%の比率
でお送り致します。
※他社サイトで2007年に執筆開始いたしました。
※感想をくださったら、飛び跳ねて喜び感涙いたします。
※2007年当時に執筆した作品かつ著者が10代の頃に執筆した物のため、黒歴史感満載です。
改行等の修正は施しましたが、内容自体に手を加えていません。
2007年12月16日 執筆開始
2015年12月9日 復活(後にすぐまた休止)
2022年6月28日 アルファポリス様にて転用
※実は別名義で「雪村 里帆」としてドギツイ裏有の小説をアルファポリス様で執筆しております。
現在の私の活動はこちらでご覧ください(閲覧注意ですw)。
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
『ラノベ作家のおっさん…異世界に転生する』
来夢
ファンタジー
『あらすじ』
心臓病を患っている、主人公である鈴也(レイヤ)は、幼少の時から見た夢を脚色しながら物語にして、ライトノベルの作品として投稿しようと書き始めた。
そんなある日…鈴也は小説を書き始めたのが切っ掛けなのか、10年振りに夢の続きを見る。
すると、今まで見た夢の中の男の子と女の子は、青年の姿に成長していて、自分の書いている物語の主人公でもあるヴェルは、理由は分からないが呪いの攻撃を受けて横たわっていた。
ジュリエッタというヒロインの聖女は「ホーリーライト!デスペル!!」と、仲間の静止を聞かず、涙を流しながら呪いを解く魔法を掛け続けるが、ついには力尽きて死んでしまった。
「へっ?そんな馬鹿な!主人公が死んだら物語の続きはどうするんだ!」
そんな後味の悪い夢から覚め、風呂に入ると心臓発作で鈴也は死んでしまう。
その後、直ぐに世界が暗転。神様に会うようなセレモニーも無く、チートスキルを授かる事もなく、ただ日本にいた記憶を残したまま赤ん坊になって、自分の書いた小説の中の世界へと転生をする。
”自分の書いた小説に抗える事が出来るのか?いや、抗わないと周りの人達が不幸になる。書いた以上責任もあるし、物語が進めば転生をしてしまった自分も青年になると死んでしまう
そう思い、自分の書いた物語に抗う事を決意する。
暗澹のオールド・ワン
ふじさき
ファンタジー
中央大陸に位置するシエラ村で、少年・ジュド=ルーカスはいつもと変わらない平穏で退屈な日々を過ごしていた。
「…はやく僕も外の世界を冒険したいな」
祖父の冒険譚を読み耽る毎日。
いつもと同じように部屋の窓際、お気に入りの定位置に椅子を運び、外の景色を眺めている少年。
そんな彼もいつしか少年から青年へと成長し、とうとう旅立つ日がやって来る。
待ちに待った冒険を前に高鳴る気持ちを抑えきれない青年は、両親や生まれ育った村との別れを惜しみつつも外の世界へと遂に足を踏み出した…!
待ち受ける困難、たくさんの仲間との出会い、いくつもの別れを経験していく主人公。
そして、彼らは平穏な日々の裏に隠された世界の真実を知ることとなる。
冒険の果てに彼らが選択した未来とは―。
想定外の展開と衝撃の最期が待ち受ける異世界ダークファンタジー、開幕!
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
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