一筋の光あらんことを

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四章【何処かで】

4-15 不可思議な頼み

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城内で魔物の大群を片付けたリオ達ーーと言うよりも、ほとんどは突然現れたカシルが倒したのだが‥‥

「‥‥どういうことなんだ」

リオは深刻な顔をしてカシルとハトネを睨む。

「なぜここにいるか、だろ?」

カシルが言うと、

「それはね、リオ君。サジャエルさんが‥‥」

ハトネが言おうとしたが、

「サジャエルがお前達二人をこの世界に‥‥か?」
「そうっ!そうなんだよ!よくわかったね!さすがリオ君だね!!」
「いちいち抱きつかないでくれ、ハトネ‥‥」

リオはため息を吐いた。

(だが、サジャエル。奴は一体、何者なんだ?)

彼女の行動の意味や正体が未だによくわからず、リオは考え込む。

「でも、なんで二人が一緒に?少なからずともカシル‥‥あなたは私達の敵‥‥だよね?そのあなたがどうしてハトネと‥‥」

リオが聞こうとしたが、

「ねえ‥‥リオ?この方たちは?」

何も知らないルイナ達が不安気に尋ねてきて、

「あっーー‥‥えーっと‥‥」

なんと説明したものかと、リオは口ごもってしまった。

「成程な」

カシルは何を確信したのか、小さくそう言って笑うので、リオはカシルを見て首を傾げるが、

「えーっとですね‥‥この二人は、その‥‥そう!私の仲間です!彼らもこの国の者ではなく、私と同じ他国から来たんですよ!」

リオはなんとか誤魔化そうと笑う。

「へえ!じゃあ、加勢に来てくれたのか!?それは助かるよ!オレはイリス、よろしく」

イリスはハトネとカシルに笑顔を向けた。

「おいリオ、本当に仲間なのか?なんか信用できないが‥‥」

ナガが怪しんできて、

「えーっ?何を言っているんだいナガ。二人はれっきとした仲間だよ。なあ?ハトネ!カシル!」
「うんうん!私はいつだってリオ君の仲間で恋びっぶふっ!!」

余計なことを言おうとするハトネの口をリオは自らの手で力強く塞ぐ。
ちらりと無言のカシルを見ると‥‥
とことんまでに嫌そうな顔をしている。

(そんなに嫌がらなくてもいいじゃん!!?)

リオは心の中で怒鳴った。

「とっ、とりあえず!!加勢も増えたんだし、先を急ぎましょうか!」

リオは無理矢理に話を終え、ルイナ達に言う。
戸惑いながらも、ルイナ達が先に走ったのを確認してから、

「まあ‥‥なんで二人でここにいるのかはまた後で聞くよ‥‥」

リオはため息を吐きながら言った。

「こっちだってお前がこの世界で何を目的に戦っているのかわからない。お互い様だろ」

カシルに言われ、それはそうだなとリオは納得し、ルイナ達の後を追う。


ーー城のエントランスには長い長い螺旋階段があった。

「これ、上るの‥‥?」

ハトネは先の見えないそれに顔をひきつらせる。

「上るしかねぇだろ」

ナガに言われ、

「はぁー‥‥ただ、リオ君に会いに来ただけなのに‥‥どうして来ていきなりこんなことに‥‥」

ハトネは大きくため息を吐いた。

それから、一同は螺旋階段に足を踏み入れる。


「‥‥リオ」

螺旋階段を走りながら、ルイナがリオに声を掛けてきて、

「シェイアード様は本当に、魔物達の側についたのでしょうか‥‥」

それはとても、不安気な声だった。

「大丈夫ですよ、ルイナ女王!私はシェイアードさんやあなた方と出会ってまだほんの少しですが‥‥シェイアードさんは、何か策があって、きっと魔物の所へ行っただけですよ」

リオはそう言って、優しく微笑んでやる。それに、ルイナも微笑んだ。

「ちょっとリオ君」
「なっ、何?」

ハトネが走りながらリオを睨んでくるので、

「やけにそのルイナさんって人と親しいんだねえ?」

ハトネの声のトーンが下がる。

「やっ‥‥親しいわけではなく‥‥」

リオは困ったようにハトネを見て、

(ただ、彼女に似ているから。だから私は、あの過ちの道をもう辿らない為にも、ルイナ女王を護る)

そう考えていると、

「リオ君!なんでそんなにルイナさんを見つめてるのかな!?」
「何っ!?お前っ‥‥女のくせにルイナ様が好きなのか!?」

イリスまで割り込んできた。
リオは言い返す気力がなく、とりあえず二人を無視してそのまま走る。

「ちょっと、イリスさんでしたっけ!?リオ君は女じゃないです!!男です!!!私と結婚するんです!」

ハトネがまたも大声を上げて、

「おっ、男ーーっ!?オカマ!?オカマだったのか!?」

それを真に受けるイリス。
やはりリオは言い返す気力がなく、代わりに大きなため息を吐いた。

「お前、大変だな。あの子、あんたのこと男と思ってるのか?」

ボソリとナガがハトネを指差しながら聞いてきて、

「うん‥‥」

リオは肩を落とす。
すると、ナガはルイナをちらりと見て、ルイナがこちらの様子を見ず、螺旋階段を走っているのを確認し、

「お前さ、奴のこと‥‥シェイアードのこと、好きなんだろ?」
「‥‥‥‥ーーえっ!!?」

言い当てられて、リオは一気に顔を真っ赤にした。

「なななななななんで!?」
「いや、なんとなく?奴も‥‥なーんかお前と親しそうだったし?」
「いやそのあのっ!!えーっと、えっと!!」

リオはパニックになる。

「なんだ小僧、恋でもしたのか?」

いつの間にかカシルがリオの隣にいて、

「ぶっ!!!ちちちちちちがっ‥‥」

リオは焦りすぎて吹き出した。

「小僧って、何だ?あんたもリオのこと男だと思ってるのか?」

ナガがカシルに尋ねれば、

「別に」

カシルが少しだけつまらなさそうに言うので、

「別にってなんだよそれ!」

リオは突っ込みをいれる。


ーーそうして、一行は無駄話をしながらも、なんとか螺旋階段を上り終えた。

(なっ、なんか、疲れた)

リオは頭を抱える。

「‥‥大きな扉がありますね」

ルイナが言い、

「扉の奥から殺気を感じるぞ」

カシルが言って、

「殺気?」

イリスは首を傾げた。

「とにかく、開けるぞ」

ナガが扉に手を掛ける。

「ねえ、リオ君。さっきから一体なんの為に戦ってるの?」

事情を知らないハトネが尋ねてきて、

「それはーー‥‥」

ギィイイイッ‥‥と、ナガが扉を開けていく。
ハトネに説明しようとしたが、リオはそこで言葉を止めた。

「‥‥あ、ぁ‥‥」

ルイナがか細い声を漏らしたのだ。
そして、恐怖に満ちたような顔をしている。
その隣で、ナガは舌打ちをした。

扉の先には、魔物の大群。
その中心に、見慣れた姿があったのだ。

「シェイアードさん!?」

声を発することができないルイナとナガの代わりに、リオがその名を叫ぶ。
彼は何も言わず、ただ静かに剣を抜いた。それを見てリオは、一歩だけ後退る。
シェイアードはリオの目を見つめ、

「リオ、頼みがある」

ようやくシェイアードは言葉を発した。

「えっ?」
「俺と戦ってくれ。型式は、そうだな。大会と同じく、一対一でだ」

シェイアードは軽く微笑むが、

「えっ、意味がわからないよ、シェイアードさん‥‥」

リオはシェイアードの言葉に驚きを隠せない。

「フライシルの血でもなく」

シェイアードはナガを見て、

「ファインライズの血でもなく」

次にルイナを見て、

「どちらの血でもない者に頼みたい」

最後にリオを見た。そんなことを言われたリオは、

「なんで、なんで私が?だったら、ここにいるあなたと全く無関係な人に頼んだら‥‥」

リオはイリスやハトネ、カシルを見る。

「‥‥そうだな。だが‥‥」

シェイアードは左目を軽く閉じ、

「お前と戦ってみたいと言ったのを覚えているか?それを今、ここで果たしたい」

そんなことを言われ、リオは涙がこぼれそうになった。どうして、自分が‥‥

「リタイアは無しだ。どちらかが死ぬまで、戦いはやめない」

シェイアードが言う。

「あっ、あなたなんなんですか!いきなり出てきてそんなっ」

ハトネが怒鳴ったが、ナガがハトネを制止して、

「‥‥リオ。戦ってやれよ」

そう言われ、リオは驚くようにナガを見た。

「こいつは、俺の兄は‥‥俺もルイナも選ばなかった」

ナガはシェイアードを静かに見つめる。

「でっ、でも、私‥‥」

自分が死ぬわけにはいかない。
かといって、シェイアードを殺したくもない。

「‥‥リオ。私からもお願いします。シェイアード様と、戦って下さい」
「ルイナ様!?」

リオはルイナの言葉に目を見開かせた。

「お願いします‥‥どうか、シェイアード様の頼みを‥‥」

リオはギリッと歯を鳴らし、諦めるように目を閉じる。
それから、ゆっくりと剣を構え、

「シェイアードさん‥‥なんで、こんな‥‥私‥‥」

それでも剣を構えてくれたリオを見て、

「‥‥ありがとう」

ーーと。
誰にも聞こえないような小さな声で、シェイアードは言った。
ただ、静かに微笑みながら。
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