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第三章【破滅へと至る者】

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急に現れ、ソートゥに槍を向けようとしたルヴィリだが、その一撃はパンプキンの防御魔法に阻まれてしまい、彼女は後退した。バサッ‥‥と、紅に染まった翼がヒラヒラと宙を舞う。

「‥‥いったい、シックスギアってのはどうなってるんですか」

各々、確かに口にしていた。仲間ではない、と。しかし、ルヴィリとマータは自ら志願してソートゥの元に来たとリダは言っていた。理由は知らないが、マータはレンジロウと組み、ルヴィリはこうしてソートゥを殺そうとしている。意味がわからないとアリアはリダを見るが、

「オイオイ、影の薄いテメェまでどうしちまったんだよ、ルヴィリ」

と、リダは聞く。

「見ての通りよ。私は‥‥この日を待っていた。ソートゥを殺す機会をうかがっていた。ヨミがこそこそ戴冠式の日にやって来るであろう反逆者達を監視してるのを小耳にはさんでね‥‥」
「反逆者ーー私達のことですか?」

シーカーが聞けば、ルヴィリは頷き、

「私一人では太刀打ち出来ない。あんたが邪魔だからね」

ルヴィリは槍の切っ先をパンプキンに向けた。

「でっ、でも‥‥どうして?」

なぜ、ソートゥを殺そうとするのか?ウェザの疑問に、

「今は説明してる場合じゃないわ、ウェザ」

また名前を呼ばれ、ウェザは戸惑う。なぜ彼女は自分のことを知っているのか‥‥
確かに、マシュマロから彼女も同郷だとは聞いた。だが、ウェザはルヴィリを知らない。あんな冷たい目をした天使がいれば、記憶に残っているはずなのだから。

「やれやれ。さすがに今は目的を優先すべきか」

パンプキンは肩を竦め、変わり果てたエクスに寄り添うソートゥを見た。

「目的って、何よ!エクスを‥‥エクスを返しなさいよ!」

ノルマルが叫べば、

「返せですって?お兄さまはあなた方のものではないでしょう?お兄さまは私のお兄さまなのですから。私はお兄さまを手に入れればそれでいい。そしてーー」

ガタガタガタガターー!!!!
玉座の間の外から騒がしい音が聞こえ、一同は振り向いた。廊下から何かが押し寄せて来る‥‥

「あれはーー地下牢で見た、マータの実験被害にあった方々です!」

シーカーの言葉にノルマルは押し寄せて来る男達を凝視した。先刻、自分を襲って来た男と同じく、皆、白目を剥いて口からダラダラ涎を垂らし続けている。そして恐らく、その中にオウルの父や、アイスビレッジの人々もいるかもしれない。

「キャァァァァ!はっ、早く扉を閉めないと!」

ウェザは悲鳴を上げながら宙を舞い、慌てて扉を閉め、鍵を掛けた。しかし、押し寄せて来る彼らは扉を壊そうとし、重たい扉は激しく揺れている。

「マータは裏切ったようですが、まあ、彼が残した材料はあります。私とお兄さまの邪魔をする者達を、私はこれから先も殺め続けましょう」

淡々と話す幼き女王。幼稚染みた思考で王を殺し、世界を犠牲にした。愛する兄さえも、こんな風にした。

「ーー終わったのよ!もう、異常は、魔女の夢は終わったのに、どうして、どうしてこんなことになるのよ!?英雄は!?この世界には、英雄がいるんでしょう!?そんなの‥‥どこにいるのよ!」

涙を流しながらノルマルはナイフを強く握る。エクスを守り、死んだヨミを想った。彼女は命を懸けて彼を守ったのに、それなのに‥‥

「エクスは、あんたのものじゃない!あたし達の‥‥仲間よ!」

敵わないとわかっているのに、ノルマルはソートゥ目掛けてナイフを向けて走る。虚ろな目をするエクスの金の目を見る。
立ちはだかるパンプキンが居ようとも構わない。

オウル達の為に、ウィシェ・ロンギングに接触した。利用価値がないとわかれば、すぐに離れた。
だが、彼は再び目の前に現れた。
必ず国を取り戻すと、奪われた人達を共に助けようと。
自分が焼いたアップルパイとクッキーを、文句も言わずおいしいと完食してくれた。

『俺の初めての友達に‥‥なってくれないか?』

そう、言った。

(あたしもよ‥‥あたしも、友達と呼べる人は居なかった。あたしが全部壊して、裏切ったから。だから、あたしに優しくしてくれても、愛情を向けてくれても、赦されない罪を抱えたあたしは応えることは出来なかった‥‥でも、エクス。あなたは、あたしの痛みの理由も聞かず、寄り添おうとした。友達としてーー!だから、ヨミ‥‥!)


ーー‥‥王子、の、仲間。どうか、王子を、王子を‥‥

喪われていく金の瞳が願ったこと。

(ヨミ!あんたのことは全然知らない。でも、あんたの頼みはあたしが聞いてあげる!あんたが大切にしようとしたもの、エクスの友達であるあたしが、絶対にーー!)

眼前に、愚者を見るようなパンプキンの視線を感じる。彼はこちらに手を翳し、魔術を放とうとしていた。だが、構わない。パンプキンなんて知らない。自分は、エクスを取り戻すんだーー!

「あたしは、何億も繰り返す日々を生きた魔女!今は弱い。でも、何度でも、エクスを取り戻すまで何度でも食らい付いてやるーー!」

向かってくる闇の閃光に、ノルマルは弱い炎の魔術を投げる。それはすぐに打ち消され、しかしノルマルは走ることをやめない。

死は怖くない。自分には、死を恐れる資格もない。

だが、右腕を誰かに掴まれ、温もりが伝ってきた。

「魔女だかなんだか知りませんが、そんな顔するんなら、無茶しないで下さい!」

怒るようなアリアの声。
彼女に腕を引っ張られ、そのまま体を放り投げられる。ノルマルは地面に転がるように倒れた。

「ぐっ‥‥!」

自分の代わりにパンプキンの魔術がアリアの方へ飛び、彼女は左腕で魔術を受け止める。

「馬鹿じゃないの?生身で魔術を受けるとか。その腕、もう使えないんじゃない?」

呆れるようなパンプキンの声。
しかし、アリアは右手に力を込め、強く剣を握る。それを大きく振り上げ、パンプキンに斬りかかった。

「利き腕が使えれば、腕一本失おうが関係ありませんよーー!」

痛みに耐え、剣を振り上げながらアリアは思い出す。守れなかったシェリー達の為に、涙を流した優しい王子のことを。
そんな彼が、レンジロウに裏切られ、妹に裏切られ、両親の変わり果てた姿を目の当たりにさせられ、ヨミを目の前で惨殺され‥‥
全てを奪われた彼に、なぜ、ここまでの不幸が降りかかったのだろうか。
アリアは歯を軋め、しかし、横目に見えた紅に気づき、

「パンプキンさん、ソートゥ様が大事なら、さっさと逃げた方がいいんじゃないですかねぇ?」

それを聞き、パンプキンは振り返る。彼の気がこちらに向いている間に、ルヴィリが再びソートゥを目指していた。しかし、

「はぁ‥‥アンタの考えは読めないわね」

ーーバンッ!と、空中に爆発音と煙が舞う。ルヴィリの槍はマジャの爆発魔法で阻まれた。

「マジャ‥‥あなたも哀れね」
「ハァ?」
「三代目ロンギング王と敵対し、でも、あなたは彼を愛していた。彼に幽閉され、解放された時にはすでに三代目は居なくなったこの世界。あなたには復讐も何も赦されない。けれど今も、三代目の束縛魔法から逃れられない。だからあなたは、ソートゥに従うしかない」

ルヴィリの言葉を聞いたマジャは目を見開かせる。

「なっ、なんでアンタがそんなこと‥‥!」

しかし、ルヴィリは答えず、槍を振るった。動揺したマジャに、

「マジャ。この戦いは捨て置くんだ。目的は達した」
「‥‥チッ」

パンプキンに言われ、マジャはルヴィリから離れる。

「パンプキン、あの子も連れていかないと」

ソートゥが言い、

「ああ、大丈夫。あの子供はもう別の場所に移しているよ」

その言葉を聞き、

「子供って‥‥まさか、教会から連れ去った男の子のことですか!?」

そうとしか思えず、アリアは声を上げた。しかし、それに対する返答はなく、

「じゃあね。早くここから出ないと、廊下に群がる奴等に食い殺されちゃうよ」

パンプキンはそう言い、ソートゥとエクスの元へ行き、マジャも連れ、転移魔法を使った。

「クソッ‥‥!!」

ルヴィリが悔しげに言い、

「なんなの?あいつらは、この城を捨てて行ったの?それに、エクス様が‥‥」

ウェザは俯き、涙を滲ませる。

「‥‥」

パンプキン達が消えて行った場所をシーカーはぼんやりと見つめ、しかし、ウェザと同じように俯いてしまい、

「葬式モードなのは構わねーけどよ、お前ら、こっから出ねーとマズイんじゃねーのか?」

リダに言われ、

「わかってるわよ!そんなこと!でもっ‥‥こんなのって、ない!」

あまりにも色々なことが同時に起きすぎて、ウェザは嘆くように叫んだ。
シーカーは無惨な扱いを受けた、転がるエクスの両親の首の前まで行き、それを拾い上げる。

「どうするの‥‥?」

泣き腫らしたノルマルが聞けば、

「丁重に、葬ってあげなければいけません。‥‥地下牢にドラゴンが居ます。逃げ出す時の協力を要請しました。実験された人々が群がる廊下を抜けなければなりませんが、地下牢まで行くしかありません‥‥恐らく、城外も危険な可能性があります」

それを聞き、

「あたしにも、預からせて‥‥」

と、王妃の首に手を伸ばした。シーカーは頷き、自分は王の、ノルマルは王妃の首を腕に抱く。それから、

「アリア、大丈夫‥‥?あたしのせいで‥‥」

自分を庇い、左腕を負傷した彼女に聞けば、

「ええ。腕が上がらないんで折れてるとは思いますが、まあ、支障はないですよ」

そう言って笑うので、ノルマルは「ごめんなさい‥‥」と、小さく謝る。

「ははっ、大丈夫ですって。気にし‥‥ゲホゲホッ‥‥ゴホッ‥‥くそっ、こんな時に‥‥っ」

先刻のように噎せ込むアリアを見て、シーカーが真っ先に彼女に駆け寄り、

「アリアさん。先程のドラゴンの血を飲んで下さい。貴女に倒れられたら、この先困ります」
「‥‥」

アリアの背中をさすりながらシーカーは言い、アリアは頷きながら、先刻渡された試験管の蓋を開け、ドラゴンの血を飲み干した。舌心地は悪く、ツンとした苦味のある味に、アリアは目を細める。効果はすぐにはなく、咳は止まらない。

「ここから無事出れたら、貴女の治療法をしっかり考えます。エクスを救う為、私には貴女の力が必要なのです‥‥それに、頑張って下さい。手に入れたいものを手に入れるまで、必ず」
「‥‥」

息苦しさに声を出すことは出来ないが、アリアは小さく笑んでシーカーに頷く。シーカーだけじゃない。アリアだって、エクスを救いたいと思った。

「ちょっ、なんの話!?っていうか、アリアと眼鏡様、いつの間にそんな親密に!?」

ウェザは話が読めないと焦り、ノルマルも不安気にアリアを見た。

「それよりも、さあ、一刻も早く逃げましょう。リダにルヴィリ‥‥お二人も手伝ってくれますね?」

シーカーに言われ、

「はぁ?自分らでなんとかすりゃいーだろ。俺だったらあんなもん相手にしなくてもこっから出れるぞ」
「そうよ。私だって一人で出れるわ」

協力する気なんて更々ないと言うリダとルヴィリに、

「ルヴィリさんーー貴女の目的は知りません。ですが、私もエクスを救う為、ソートゥやパンプキンを相手にしなければいけない。貴女はパンプキンに一人では太刀打ち出来ないと言いましたね。その為の力を貸します。鮮血のルヴィリと恐れられた貴女には、頼れる存在はいないでしょう?」
「‥‥」

シーカーに言われ、ルヴィリは彼を睨み付ける。しかし、彼女はため息を吐き、

「なら、さっさと行くわよ」

と、槍を構えた。

「オイオイ。マジかよお前。そんなキャラだったかぁ?」
「ぶっ刺すわよ、悪漢」

意外だなと言ってくるリダを一瞥しながらルヴィリは廊下に続く扉の方へ進む。

「リダ、貴方はアリアさんを守りながら行って下さい。さすがに我々では守りながら行くことは出来ません」

王の首を抱えながらシーカーはそう言い、

「アリアさんはいつ死んでもおかしくない病持ちです。ですが、貴方はアリアさんと戦いたいんですよね?なら、無事にここから出る手助けをすべきです」
「‥‥」

それを聞き、驚いたのはリダだけではない。ノルマルもウェザも目を見開かせ、彼女を見た。視線を受け、アリアは気まずそうに俯き、

「よして下さいよ、シーカーさん。だいぶマシになりました。一人でもやれます。それに、私よりノルマルさんとウェザさんを守ってあげて下さい。もしくはご自分の心配を。私は自分で動くのが好きなんです。守られるのは好きじゃないんで」

言いながら、右手に持った折れた剣をズルズル引きずり、ルヴィリの後に続く。

「だとよ」

と、リダが言えば、シーカーはやれやれと呆れ、

「だとよ、じゃありません。ああいうのを強がりと言うんです。まあ、いいでしょう。ノルマルさん、ウェザさん、気をしっかり‥‥行きますよ!ちなみに私は戦えないので、リダ。私をしっかり守って下さいね」
「‥‥」

リダはしばらくシーカーを凝視し、しかし彼を無視して扉の方へ進んだ。

「はぁ‥‥無力な人材を労ってほしいですね」
「眼鏡様は中身が鉄で出来てるから死なないんでしょ!?よくわからないけど!」

ウェザに言われ、

「頭を攻撃されたらさすがに死にますよ」

そんな会話をしていると、ルヴィリが扉を開け、外に群がっていた実験体が一気に押し寄せて来た。先陣を切るようにルヴィリは舞い上がり、一直線に彼らを串刺しにしていく。
やはり殺しは出来ないと、アリアは片手でなんとか剣を振り、近付いてくる敵に峰打ちを食らわせた。
手応えがないのか、リダは退屈そうに斧で凪ぎ払っていく。

その三人の後ろをシーカー、ノルマル、ウェザは走り、

「いやはや、頼りになりますねー」

と、シーカーは笑い、

「アリア以外は信用できないけど、今は仕方ないわね」

ノルマルも同意して頷く。
廊下を抜け、大群の中では知り合いの姿を見つけることは出来なかったが、

(オウルのお父さんや皆‥‥居たのかもしれない‥‥)

しかし、今は振り返ることはできない。ようやく最初にいたホールに辿り着き、地下牢を目指そうとした時だった。地鳴りのように床が揺れ始め、ガシャァァァァァーー!!と、何かが床を突き破る。

強風を巻き起こしながら、レッドドラゴンが姿を見せた。

「人の子よ、何やら騒ぎが起きたようだな」

地下牢に閉じ込められていた実験体達が動き出したことにより、ドラゴンは危機を察知し、シーカーを見てそう言う。

「はい。脱出する為、貴方の力を貸して頂きたい」

実質、城の出口にも実験体は群がっていた。彼らが外に放たれている可能性は高い。ドラゴンはルヴィリを見つめ、

「貴様は‥‥あの小童と共に我を捕らえた者!」
「ふん‥‥」

しばし、両者は睨み合い、次にドラゴンはアリアに視線を移し、

「それに貴様はなんだ?何故、我が亡き弟竜の臭いがする!?」
「は?」

ドラゴンに睨まれ、さすがにアリアは怯む。

「彼女の中には何故か、ドラゴンの血が流れているのです。彼女自身、その理由を知りません‥‥今は、貴方の命を救った私に免じ、我々を助けて頂けないでしょうか」
「むう‥‥!?」

シーカーの言葉にドラゴンは唸り、不服ながらも一同に背を向け、その背に乗るよう促した。

「私は一人で行くわ」
「俺もだ。こんぐらい簡単に出れる」

まだまだ殺り足りないのか、ルヴィリとリダはホールに残る実験体達を見る。
しかし、負傷しながら無茶をしすぎたのか、アリアがその場に片膝をついた。

「はぁっ‥‥いやぁ、こんな体で頑張りすぎましたかね‥‥歩くのもキツイ。誰か肩を貸してくれたら助かります」
「もうっ!アリア!無事に出れたらちゃんとあなたのこと話してよね!?あなたには秘密が多すぎるんですのよ!」

そう言いながらウェザはアリアの方へ飛び、

「それにーー信頼してくれていいんですのよ。確かに、あたくし達の付き合いは短い。おじ様は‥‥確かにあたくし達を裏切った。理由はわからない。でも、ここまで来たら運命共同体ですのよ!あなたがあたくし達に一定の距離を保って接してることなんてお見通しなんだからね!」
「‥‥」

そう、自信満々に言ってくるウェザを目を丸くして見つめ、

「人付き合いが苦手なんですよ、私」

そう言って苦笑する。ウェザの肩を借りようとした時、ふわりと体が浮いたことにアリアは「うわっ!?」と驚いた。リダの顔が近くにあり、彼に体が抱き抱えられたのだと気づく。

「オイ、眼鏡。ドラゴンに乗りゃいーんだろぉ?」

リダがシーカーにそう聞くと、その通りですと彼は頷いた。

「ちょっと、ロリコン!アリアはあたくしが連れてくわ!!アリアを降ろしなさいよロリコン!」
「ぷっ‥‥あんた、ロリコンだったの?確かに人間の若い女ばっか食い漁ってるけど‥‥あら、それだったらロリっ娘マジャと‥‥」

ウェザの叫びを聞きながらルヴィリが笑い、先刻のウェザと同じようなことを言ってくるので、

「うるせーぞ鳥女共!」
「‥‥」

怒鳴るリダに、さすがにアリアは今は何か言う元気もないので、仕方がないと身を任せるーーが、

「ああああああっ!!!!隠し財産!!エクスさんに報酬として貰う予定だった隠し財産は!?」

と、アリアが耳元で叫んだので、リダは体をよろめかせた。

「アリアのバカ!今はそんな場合じゃないの!」

ウェザに叱咤されるが、

「嫌ですその為にここまで来たのに!私の頑張りが無駄になるじゃないですかーーー!せめてちょっとでも報酬が」
「だから金の亡者とか世間で言われてるのよ!早く行くわよ!!」
「あのボウズの情報はマジだったんだな。いいじゃねーか、俺を倒しゃ、なんか多額の金が貰えるんだろ?俺を倒せばいーんだよ」

悪ノリしてくるリダに頭を抱え「そういう問題じゃないぃぃぃぃぃぃ」と、アリアは悲鳴を上げ、ウェザ、リダ、アリア、ルヴィリはドラゴンの背に乗る。

「行けますか、ノルマルさん」

大事そうに王の首を抱えながらシーカーが聞けば、

「ええ‥‥!」

王妃の首を抱えたノルマルは決意するように大きく頷いた。

「シーカー‥‥あたし、あんたを信用していなかった。あんたを古のネクロマンサーだって知ってたから」
「私も貴女が魔女であることは知っていました。貴女に比べれば短い生ですが‥‥私達はこの世界で何度もすれ違っていましたから。けれど」

シーカーは空いている方の手でノルマルの腕を引き、

「たった今、この瞬間から、私は貴女を全面的に信頼します。我が友ーーノルマル」
「‥‥同じくよ、シーカー。ここから出たらお互い隠し事はなしよ!」

二人はニッと笑い、ドラゴンの背を借りる。全員が乗ったことを確認し、開けっ放しの城門へとレッドドラゴンは飛んだ。

ーー増殖、とでも言うのだろうか。
ロンギング城からは実験体達が溢れ出し、城下町は悲鳴に包まれている。
しかし、それを救うような力は自分達にはない。
シーカーが地下牢で見た以上の人数の実験体達が溢れているのだ‥‥

まるで、かつて天界を中心に現れた黒い影のよう。
かつて、英雄ハルミナの母、フェルサが人間と魔族への復讐の為に死者の実験を始め、ネクロマンサーの青年と英雄になれなかった男とで始めた愚かなる実験。

あの日の、再来。
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