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第三章【破滅へと至る者】

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辺りはすっかりと暗くなり、レンジロウの皮膚の再生が終わった。シーカーの腹部の治癒も済ませ、数時間に渡り、一人で治癒を続けたウェザは疲れ切り、シーカーに背負われ、教会の方へと向かう。

治癒をしながらウェザは、目に見える範囲の再生は出来るが体をバラバラにされたり、臓器を引きずり出されていたらさすがに治癒は出来ないと語る。
正に、リダとマジャの戦い方はそれだった。シスターも子供達も、そうやって殺された。

だから、エクス達に声を掛けられても、自分の治癒術ではシックスギアを前になんの力にもなれないーーと。


天使の村ーー教会に戻り、エクスとアリアはシスターを埋めた場所に殺された十人の子供達の遺体を順番に運び、丁重に葬り、祈りを捧げた。

治癒は終わったが、浅い呼吸を繰り返すレンジロウをベッドに寝かせ、ノルマルは側で彼を見守る。力を使い果たしたウェザもベッドに転がり込んだ。ヨミの話はまた後ですると。

命が助かった二人の少女は、他の子供達が殺された壮絶な光景を目にしてしまったのだ。ガタガタと体を震わせ、えんえんと泣き続けている。

「アリアは、この教会の為に金が必要だったのか?」

エクスが聞くと、アリアは首を横に振り、

「まあ、ここに仕送りもしてましたよ。でも、国からここにお金は入ってますし、経営難ではなかったです。色々あって、私がここで世話になったのは十歳の頃までなんです。シェリーに会いに、たまーに顔を見せに来た程度。私は自分の為にお金が欲しいだけです」
「ふむ。噂によれば、幼い頃からギルドの依頼を受け、金を稼いでいたらしいですね?不殺のアリア、金の亡者アリアーー規格外‥‥なんて、色々な呼び名があるみたいですし。そして、五歳の頃、リダに両親を殺された」

シーカーがそう言ったので、自分の事を調べられたアリアは横目で彼を睨んだ。

「なんでお前がその話を知っているんだ?」

先程、アリアから両親が殺された話を聞いたばかりのエクスは首を傾げる。シーカーは微笑み「私は探求者ですから」などと言った。

「‥‥一体どこからそんな情報を‥‥まあ、孤児院の先生曰く、当時、私は現場にいたらしいんです。母がリダに犯され、助けようとした父は殺された。精神を壊した母はその場で自害したーー私は、その光景を側で見ていたらしい。でも、その光景を覚えていない‥‥でも、リダを見ると、あの目を知っていると感じた。だから、接触はしたはず。なぜ私は生きているのか‥‥子供だから、見過ごされた?いや、でも‥‥」

リダの暴挙を見て、自分が生きていることにアリアはずっと疑問を感じていると語る。

「まあ、そんなこんなでたまたま近くで傍観していた一人、今は亡き孤児院の先生に私は拾われ、五歳から十歳までの五年間世話になったわけです。でも、窮屈な生活に耐えられなくなって孤児院を飛び出し、自分で金を稼いで生きる道を選びました」
「‥‥」

たった十歳でそのような人生を送れるのだろうかーー想像できず、エクスは驚くように話を聞いていた。そうして、

「アリアは、これからどうするんだ?」
「どうもこうも‥‥」

エクスに聞かれ、しかし、自分が今まで通りにしていたら、他の人々に迷惑が掛かるかもしれない。自分を狙うリダが、無関係な人達を傷付けるかもしれない。

「どうせなら、私達と行動を共にする方が安全だと思います。リダとマジャに顔を知られた貴女はどこへ行っても危険です。なら、私達と居る方がまだ安全ではありませんか?お互いに協力して守り合えます」

シーカーが言い、以前も彼は自分を戦力に加えたいと言っていたことをアリアは思い出す。

「なんか、まんまと乗せられている気しかしませんね‥‥」
「そのままにされていたらの話だが、城に父の隠し財産があるんだ。戴冠式の日、城に乗り込めたらレンジロウに礼にと渡そうと思っている。協力してもらえるなら、君にも勿論財産をわける」

エクスがそう言ったので、アリアは目を輝かせ、

「マジですか!?ざっ、財産ってことは、そりゃもう結構な額なんじゃ‥‥」
「アリアさんは防御型、エクスとノルマルさんは攻撃型、ウェザさんは回復型、レンジロウさんはサポート型‥‥ふむ。これだけ揃えば、なかなか良いかもしれませんね」

シーカーはそう言ってエクスを見た。

「って、待って下さい!私もウェザさんもまだ返事してませんけど!?」


◆◆◆◆◆◆

「はぁぁぁぁぁぁぁ生き返ったぁぁぁぁ」

力を使い果たしたウェザだったが、しばらく休息をとり、ようやく話ができる状態となった。

「鎧のおじ様は、たぶん今日は起きないと思うわ。まあ、王子様がいることだし、話を始めてもいいのよね?」

と、ウェザは確認する。
天使の村ーー教会。レンジロウを寝室で休め、先刻シスターに迎え入れられた客室で、エクス、シーカー、ノルマルはウェザの前に座り、二人の少女の遊び相手をしながらアリアも耳を澄ませた。

「今日の昼頃、ハルミナの街に白銀のヨミが来たの。前にリダとマジャが暴れに来たじゃない?だから、街中はパニックよ!でも、彼女は一人で来て‥‥真っ先にあたくしに声を掛けたの」


◆◆◆◆◆◆

「最高の治癒術者の子孫は貴女か?」

白銀の鎧を身に纏い、白銀に揺れる髪を一つに束ね、金の目がウェザを捉える。自分よりも大きく美しい翼に、ウェザは一瞬見惚れた。

「‥‥貴女は何度か、ウィシェ王子に接触しているな?」
「ーーえっ!?」

ウェザは驚いて目を見開かせる。シックスギアにはエクスがウィシェであるということは知られていないと聞いていたからだ。ウェザは何も答えず、誤魔化すように明後日の方向を見る。

「隠す必要はない。この数週間‥‥私が独自に調べたまでだ。私はーーかつて彼のお父上に仕えた身。現在の国の愚行故、信じてもらえぬかもしれないが、私はウィシェ王子の味方だ」

そう言ったヨミの目は、どこか優しく、どこか悲しげで、しかし、真実を語る目だった。

「今、王子は天使の村におられる。皮肉にも、そこに今からリダとマジャが向かっている。勿論、偶然だ。私はまだ、表立って王子に協力は出来ない。リダ達‥‥いや、一番はパンプキンに警戒されるわけにはいかないのだ。恐らく、王子達は無傷では済まないと思う。リダとマジャはシックスギアの中で一番狂暴であり、強い」

ヨミはウェザの前に片膝をつき、

「どうかーー貴女の力を貸してほしい。まだ、ウィシェ王子に協力できないこの無力な私の代わりに、彼を助けてやってほしい‥‥」
「えっ!?ちょっと‥‥顔をあげて下さらない!?そっ、そんなこと言われても、どうしてあなたがそこまで‥‥」
「‥‥私にとって、四代目ロンギング王は何よりも大切な存在だった」

ヨミは顔を上げ、静かに微笑んで言った。彼女が悲しそうな、切なそうな表情をしていた理由が、ウェザにはなんとなくわかった。


◆◆◆◆◆◆

「ヨミは今はまだ無理だけど、戴冠式の日に必ず王子達は来るだろうと予想していたわ。その日には、必ず力を貸すって」

そう言いながら、ウェザはエクスに一枚の手紙を差し出す。エクスはそれを受け取り、すぐに開いた。

ーーそこには戴冠式の日時と、会場の簡易な間取り図、当日のシックスギアの配置状況、ソートゥが待機する場所が書かれている。
大人数ではバレるだろうから、何人かで状況を見張り、誰か一人、ヨミが居る場所まで来てほしいと。

「きっと、ヨミは危険を承知であなたに協力しようとしているわ」

エクスは受け取った手紙に目を通しながら、数週間前にここで初めてヨミと対峙した日を思い出す。お互い、あの時に初めて出会い、それ以降は再会していない。
今思えば、歯向かうレンジロウにヨミは攻撃したが、リダやマジャと違い、怪我は負わせていなかった。

『私をあのようなならず者共と同等に呼ぶな!私は誇り高きロンギング国が兵士の一人であるぞ!』

かつて、父に仕えたという女性。今もきっと、その忠誠はそこにあるのであろう。なぜ、彼女がシックスギアなんて立場にいるのかはわからない。だがそこに、彼女の意思はないような気がする。

「‥‥当日、ヨミの元へは俺一人で行こう。彼女と、話もしたい」

エクスがそう言い、シーカーとノルマルは頷いた。

「リダ、マジャ、ルヴィリ、マータはそれぞれ別の場所に配置されていますね。我々は彼らの動向を見ておきましょう。エクスとヨミの邪魔をさせないように」
「あたしは見たことないけど、パンプキンの名前がないわね?」

シーカーとノルマルの話を聞きながら、パンプキンはソートゥの味方だと言っていたことをエクスは思い出す。恐らく、ソートゥの近くに居る可能性が高い。

「あのー。シーカーさん?その‘我々’の中に、もしかして私とウェザさんも入ってるんですか?」

少女二人の相手をしながらアリアが聞けば、シーカーは「もちろんです」とニッコリ笑う。

「‥‥まあ、なんかもう、こうなったら失うものもないですし、たんまりお金貰えるって話なんでまあ。ただ、戴冠式の日、リダとマジャの監視は嫌ですよ?そうですねぇ、マータって子の監視をさせて下さい。見た目に反して残虐って噂も聞きますし、ちょっと気になります」

そう言ったアリアに「はい、それは当日臨機応変に」なんてシーカーは受け流した。それからウェザに視線を移し、

「ウェザさんはーー頑なに拒否されていましたが」
「‥‥まあ、なんですの。ヨミに頭を下げられちゃったのが痛いわね。まあ、あんな乙女心見せられちゃったら、ヨミと王子様を会わせてあげたくなっちゃうっ!て気持ちも大きいわ」
「?」

ウェザの言葉にエクスは首を傾げた。

「うっ、ううっ‥‥頭が痛いでありますぅ‥‥」
「!?」

そう言いながら誰かが客室に入って来たので、一同は驚き、しかし、

「えっ!?れっ、れんじ、ろう?」

ノルマルは驚いて彼を指差した。

「今日は目覚めないんじゃなかったのか?」

エクスがウェザに確認するも、彼女はノルマルと同じように驚いた顔をしてレンジロウを見て、アリアも思わず立ち上がり、

「へえ。レンジロウさん、兜を外したら凄くイケおじなんですね!」

なんて言う。兜を外し、今まで隠れていた茶の髪が露になっていた。

「れっ、レンジロウ」

ノルマルも立ち上がり、よろよろと彼の前まで歩く。

「ごめんなさい!あたしがマジャの気を引こうとあいつを挑発したから!だから、レンジロウ、死んじゃってたかもしれない!ウェザが来てくれなかったら、助からなかった!あたしのせいで、ごめんなさい‥‥ごめんなさい!」

ノルマルは頭を下げ、何度も何度も謝った。レンジロウは微笑み、彼女の頭に手を起きながら、

「違うであります。自分が勝手にノルマル殿を守ったまでであります。いやぁ‥‥なんだか、背丈的にイノリの姿と重なって。それに、ノルマル殿は大事な仲間であります!仲間を守るのは、当たり前のこと。それにですな、そうやって自分の非を認め、謝れるのは素晴らしいことでありますよ」

なんて、彼はいつも通りに笑う。ノルマルは頭を下げたまま、小さく「ごめんなさい」と「ありがとう」を言った。
それから、レンジロウは自分を二度も救ってくれたウェザに視線を向け、

「ウェザ殿‥‥本当に、二度も命を救って下さり、なんと言っていいものか‥‥」
「!!!!!!!!!」

そう言われ、ウェザは視線を泳がし、

「おっ、オホホホ!当たり前よ!あたくしの治癒術は並大抵のものと違うの!そっ、そうねー。二回も助けてあげたんだから、何かお礼でも欲しいところね!」

ビシッーー!と、レンジロウを指差す。

「おっ、お礼でありますか!?何をしたらいいでありますか!?」
「ふっ、ふんっ!考えておくからお待ちなさいな!そっ、それよりそんなヘンテコな頭より、いつもの間抜けな兜を被ったらどうですの?」
「へっ、ヘンテコ‥‥間抜け‥‥」

自分よりも永くを生きているウェザであるが、見た目は若い少女。そんな彼女にそう言われては、レンジロウは落ち込むしかなかった。

「おや。これってもしかして、ウェザさん、レンジロウさんに胸キュンなんじゃ?」
「リダが貴女に惚れてるような感じですね。若いっていいですねー」
「笑えない冗談はいけませんよシーカーさん?そうだなぁ‥‥イノリさんのお母さん亡くなってるし、複雑なところ‥‥」
「おや?レンジロウさんは奥さんを亡くされて?」
「ええはい。イノリさんから聞いたんですけど、まあ、レンジロウさんがそのうち皆さんに話してくれるでしょう」

アリアとシーカーはこそこそとそんな話をする。
エクスはレンジロウとウェザのやり取りをおかしそうに見つめ、小さく笑った。


◆◆◆◆◆◆

夜も更け、教会で一夜を明かすこととなる。
まだ本調子ではないレンジロウは先に休み、ウェザもエクス達に同行するかを考えると空き部屋にこもった。
アリアはぼんやりと、シスターと子供達を埋めた場所に座り込み、夜空を仰ぐ。
シーカーはヨミからの手紙を一晩中見ながら、戴冠式の日、スムーズに事が進むようにと知恵を働かせた。

教会の外ーーエクスは剣を見つめながら、今日守れなかったもの、これから守らねばならないもの‥‥色々と考える。

「まあ、まともに眠れないわよね」

すると、背後から声を掛けられ、エクスはノルマルに振り向いた。

「エクスは、強いね。辛い立場なはずなのに、その目は復讐に燃えない」
「いや‥‥幽閉され、拷問を受けながら、憎悪が募り、理不尽な何かに復讐を考えた。死んでも呪ってやるって。だが、シーカーが俺を救い出した」

あの日を思い出し、エクスは苦笑する。

「謎が多い奴だが、俺はーーあいつに感謝している。あいつがいなければ、俺は死んでいた。あいつが自分はパパだなんて変な冗談を言うから、俺は笑えた。面と向かっては言えないが‥‥俺はあいつのことを大事に思ってるよ。これを、友と言うのだろうか?」
「そうね‥‥」

ノルマルは小さく微笑み、

「昔ね、あなたと同じ‥‥右目を失い、右腕を失った男がいたの。まあ、あなたは両目も両腕も両足も失ったけど‥‥その男が救われるかもしれない一瞬の時間があった。でも、あたしがその一瞬を奪い、永遠の復讐に繋げてしまったーーあたしは彼の幸福を壊した」

そう言いながらエクスを見つめ、

「だから、自己満足。あたしはたぶん、無意識に‥‥失われたあなたの目を見て、彼を重ねている。復讐に染まらないあなたを見て、こんな結末もあるんだって、自己完結してるだけ」
「‥‥」
「あたしには、好きな人がたくさんいる!でもね、わかってるからよ。あたしは、幸せになっちゃいけないって。幸せになれないから、夢を見る。繰り返し繰り返し、何度も」

そう語る彼女は、全く辛そうではない。何かしらの運命を受け止めているような顔だ。

「あたしは多くの人の幸せを奪った。だから、無駄な贖罪をしようとしてるだけなのかもね‥‥オウルのお父さんを始め、奪われた人達の家族を取り戻さなきゃって」

だが、少しだけ、彼女の声が震えていることに気付く。エクスはそんな彼女の背中を叩き、

「同じさ。俺も好きな人がたくさん出来た。シーカー、レンジロウ、ノルマル。アリアもウェザもいい奴らだから、たぶん好きになる。幸せになれないなら、これから幸せになれるよう生きたらいい。ノルマル。俺の友達になってくれないか?」
「‥‥え?」
「俺にはさ、友なんていなかったから。シーカーのことも勝手に友人だと思い込んでるだけで。だからノルマル。俺の初めての友達に‥‥なってくれないか?」

そう言って、彼女に右手を差し出した。

「‥‥意味、わかんない」

ノルマルは困ったように笑い、

「あたし、最初はあなたを見限った。あなたに期待してないって、酷いことを言った。でも、あなたは頑張ってる。あたしなんかより、ずっと。それに、あたしが焼いたお菓子をおいしそうに食べてくれる‥‥こんなあたしが友達でもいいの?」
「ああ。毎日、君のクッキーとアップルパイが食べたいくらいだ」

手を差し伸べたままエクスは笑顔を見せ、ノルマルは彼の手を握り返す。


「あらまぁ、まるで青春ね」
「‥‥」

偶然二人で話をしていたウェザとアリアは、物陰からエクスとノルマルの様子を見ていた。

「あら、アリア。複雑な顔しちゃって。まさかあなた、王子のこと好きですの!?」
「はっ!?まっさかぁ!?エクスさんとは出会ってちょっとですよ?そんなわけ‥‥」
「皆のヒロインウェザ様は騙せませんのよぉ!?あたくしは人の恋路に敏感!あっ、でもあなた、ファーストキッスを敵に奪われちゃいましたものねぇ!?悪評高いリダだけど、一部の女性にはカッコいいと人気ですのよぉ?」
「その話題、コロシマスヨ?ウェザさんだって妻子持ちのレンジロウさんがカッコ良かったからって気になり始めたくせにぃ?」
「ちっがぁあああああああああああああああ」

叫ぶウェザをアリアはケタケタと笑ってやり、

「そんなウェザさんに朗報。レンジロウさんは十年以上も前に奥さんを亡くされています。不謹慎ですが‥‥恋は可能だと思いますよ」
「‥‥へ?」

そうこう話していると、

「二人共、そんなところで何を騒いでるんだ?」

あまりに騒ぎすぎて、いつの間にかエクスとノルマルが近くまで来ていた。

「いやいや。お二人が良い雰囲気だったので、ついつい」

なんてアリアが言えば、

「ああ。俺とノルマルは友達になったんだ。なあ、ノルマル」
「えっ、ええ。友達‥‥友達‥‥うふふ」

友達が嬉しいのか、ノルマルはマフラーに顔を埋め、笑っている。

「あっ、あらぁ‥‥?いい雰囲気だと思いましたのに。まあ、ヨミのこともありますし、王子様の恋模様、楽しみにしたいですわぁ!」
「当のエクスさんに恋の概念が無い気がしてきました」

夜空の下、笑い声が響き合う。しかし、心の中ではそれぞれの傷は癒えぬまま。
今日という凄惨な日を越え、この敗北を、屈辱を、後悔を、悔しさを胸に抱き、戴冠式の日は近づいた。
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