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28、個性豊かな母親たち
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自分の隣にいる人物に対して呼ばれた呼称に、思わず呆然と立ち尽くす凪。仕方がないだろう。サルージャの母親というのは理解してたものの、まさか王妃だなんて誰が思うものか。
もし最初の時点で勘づいた人がいたのなら天才と賞賛したいものだ。
何はともあれ、立ち尽くす凪にキョトンとした顔をするサルージャの母親…もとい王妃。
「ナギちゃんどうしたの?具合悪いの?」
「いえ、大丈夫です。元気です」
(そう体は大丈夫。頭の中は大丈夫じゃないけど)
ぐるぐると頭の中でサルージャのことを考える凪の背を王妃は押しながら、四人の女性に彼女を紹介した。
「まず彼女はイージス君のお母さんのナターシャちゃんです」
「もう、王妃様…せめて最初は格好をつかせてくださいな」
ナターシャと呼ばれた女性は頬を染め恥ずかしそうにしながら、腰をおりドレスの端をつまんで礼をとった。
「初めまして、ナターシャ・ローガンよ。息子のイージス共々よろしくね」
ふわりと凪に微笑むナターシャは、イージスとそっくりの顔だ。柔らかい雰囲気の彼女に凪は肩の力を抜いた。
「こちらこそ、お世話になってます」
「まぁまぁまぁ!なんて礼儀正しいの!」
「わぷッ……!」
(な、何事!?)
自分もと頭を下げた凪は次の瞬間誰かに抱きしめられた。顔にあたる柔らかい感触はおそらく、おっ……げふんげふん、女性の胸部だろう。
「はじめまして!私、ヴィルムの母のアリス・グロイツと言いますの。よろしくお願いしますわ!」
赤い髪の女性はヴィルムの母親だった。少しつり目がちの目、所々はねている髪はヴィルムに似ている。身長も高めで凪の顔が彼女の胸の間にちょうど挟まっている。
もがもがと身動きを取れずにいる凪を救い出したのは、清楚で物静かそうな女性だった。
「あらあら、可愛いのは分かるけどそんなに抱きしめては可哀想よ?」
灰色の髪の女性は、やんわりとアリスの腕を掴んで凪から引き剥がした。
「うふふ、うちのロルフちゃんと一緒で瞳の色が左右で違うのね?」
「えっと、ロルフさんのお母様ですか?」
「えぇ、そうよ。ルーチェ・タルトと言うわ。……あの子は口数が少なくて大変でしょう?」
その通りですとは答えられない。
「えっと……」
「ごめんなさいね。小さい頃、よく瞳の色が原因でいじめられたことがあって一度塞ぎ込んでからあんな性格に育っちゃって……。ねぇ、ロルフちゃんに何もされてない?」
「?」
(どうゆうこと?)
ヴィルムとイージスが幼児化した原因を凪は可愛さに興奮して聞き流していたため、なんでそういうことを言うのか分からず首を傾げる。
「あら、分からないのならいいわ……。あの子、まだ黒い部分は見せてないのね」
ほっと胸をなでおろし、何か安心するルーチェに凪はキョトンとする。
(黒い部分?)
不思議な単語に再び首を傾げていた。
「わはははっ、ウチはミラージュ・ブロットや。ナギちゃんえらいべっぴんさんやなぁ?ウチの息子と結婚せぇへんか?」
「へっ…?」
突然とんでもない話をぶっ込んできた訛り言葉の茶髪の女性。どう考えてもマルクの母親だろう。
マルクが常識人なだけに、彼女のぶっ飛んだ発言に目をむいてしまう。
「あ、あの……」
「あらあら、それはうちのルーちゃんが立候補中よ?ミラージュちゃん」
「えぇ?ウチのマルも充分婿としては優良やと思うけどなぁ?」
「それなら私の息子であるヴィルムもいいと思いますわ」
「私の息子のイージスもいいと思うのですけど?」
「ロルフちゃんも一部を除けば優良物件だと思うわよ?」
自分の息子が一番凪の婿にふさわしいと謎の競争を始める彼らの母親たちに凪は絶句する。
「「「「「ナギちゃんは誰がいい?」」」」」
五人の中で決着が着かなかったのか矛先を凪に向ける母親たち。
突然そんなことを言われて思考回路がショートした凪は踵を返し、出口へと走る。
「ご、ごめんなさーい!」
十三歳の女の子には厳しい状況だったようだ。
もし最初の時点で勘づいた人がいたのなら天才と賞賛したいものだ。
何はともあれ、立ち尽くす凪にキョトンとした顔をするサルージャの母親…もとい王妃。
「ナギちゃんどうしたの?具合悪いの?」
「いえ、大丈夫です。元気です」
(そう体は大丈夫。頭の中は大丈夫じゃないけど)
ぐるぐると頭の中でサルージャのことを考える凪の背を王妃は押しながら、四人の女性に彼女を紹介した。
「まず彼女はイージス君のお母さんのナターシャちゃんです」
「もう、王妃様…せめて最初は格好をつかせてくださいな」
ナターシャと呼ばれた女性は頬を染め恥ずかしそうにしながら、腰をおりドレスの端をつまんで礼をとった。
「初めまして、ナターシャ・ローガンよ。息子のイージス共々よろしくね」
ふわりと凪に微笑むナターシャは、イージスとそっくりの顔だ。柔らかい雰囲気の彼女に凪は肩の力を抜いた。
「こちらこそ、お世話になってます」
「まぁまぁまぁ!なんて礼儀正しいの!」
「わぷッ……!」
(な、何事!?)
自分もと頭を下げた凪は次の瞬間誰かに抱きしめられた。顔にあたる柔らかい感触はおそらく、おっ……げふんげふん、女性の胸部だろう。
「はじめまして!私、ヴィルムの母のアリス・グロイツと言いますの。よろしくお願いしますわ!」
赤い髪の女性はヴィルムの母親だった。少しつり目がちの目、所々はねている髪はヴィルムに似ている。身長も高めで凪の顔が彼女の胸の間にちょうど挟まっている。
もがもがと身動きを取れずにいる凪を救い出したのは、清楚で物静かそうな女性だった。
「あらあら、可愛いのは分かるけどそんなに抱きしめては可哀想よ?」
灰色の髪の女性は、やんわりとアリスの腕を掴んで凪から引き剥がした。
「うふふ、うちのロルフちゃんと一緒で瞳の色が左右で違うのね?」
「えっと、ロルフさんのお母様ですか?」
「えぇ、そうよ。ルーチェ・タルトと言うわ。……あの子は口数が少なくて大変でしょう?」
その通りですとは答えられない。
「えっと……」
「ごめんなさいね。小さい頃、よく瞳の色が原因でいじめられたことがあって一度塞ぎ込んでからあんな性格に育っちゃって……。ねぇ、ロルフちゃんに何もされてない?」
「?」
(どうゆうこと?)
ヴィルムとイージスが幼児化した原因を凪は可愛さに興奮して聞き流していたため、なんでそういうことを言うのか分からず首を傾げる。
「あら、分からないのならいいわ……。あの子、まだ黒い部分は見せてないのね」
ほっと胸をなでおろし、何か安心するルーチェに凪はキョトンとする。
(黒い部分?)
不思議な単語に再び首を傾げていた。
「わはははっ、ウチはミラージュ・ブロットや。ナギちゃんえらいべっぴんさんやなぁ?ウチの息子と結婚せぇへんか?」
「へっ…?」
突然とんでもない話をぶっ込んできた訛り言葉の茶髪の女性。どう考えてもマルクの母親だろう。
マルクが常識人なだけに、彼女のぶっ飛んだ発言に目をむいてしまう。
「あ、あの……」
「あらあら、それはうちのルーちゃんが立候補中よ?ミラージュちゃん」
「えぇ?ウチのマルも充分婿としては優良やと思うけどなぁ?」
「それなら私の息子であるヴィルムもいいと思いますわ」
「私の息子のイージスもいいと思うのですけど?」
「ロルフちゃんも一部を除けば優良物件だと思うわよ?」
自分の息子が一番凪の婿にふさわしいと謎の競争を始める彼らの母親たちに凪は絶句する。
「「「「「ナギちゃんは誰がいい?」」」」」
五人の中で決着が着かなかったのか矛先を凪に向ける母親たち。
突然そんなことを言われて思考回路がショートした凪は踵を返し、出口へと走る。
「ご、ごめんなさーい!」
十三歳の女の子には厳しい状況だったようだ。
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