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8、もふもふパラダイス
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「ぐぬぬ…」
「ほれほれどうした?見たかったんだろ?」
眉間に皺を寄せている凪に対して、意地悪そうな顔をするヴィルム。今、凪の目の前にはもふもふしたライオンのような生き物がいる。ヴィルムの召喚獣だ。
元魔王と契約を結んだ後、唖然としているお偉いさん方を置いてサルージャ達を連れて自分の部屋へと戻ってきた凪。そうしたら、サルージャが、「もうここで全員の召喚獣を紹介しよう」と言い出し、今の状態に至る。
「触らせてくれないんですか?」
恨みがましくヴィルムを見つめる凪。
「お前は、見せて欲しかったんだろ?」
ニヤニヤしているだけのヴィルム。内心ケチだと罵ったあと、元魔王を呼び出して存分にもふっていると…
『『『『『……』』』』』
無言で5つの方向から焼かれるのではないのかと言うほどの熱い視線がささった。しかし、その視線の先を見る勇気をもちろん凪は持っていないため、無視を決め込む。5分か10分たった頃だろうか。
「はぁ、ゲイン…行っていいぞ」
一番最初に折れたのは、まさかのヴィルム。ゲインと呼ばれた凪に熱視線を送ってきていた召喚獣は、のっそりと歩きこちらに向かってくる。元魔王は凪の腕の中で骨抜き状態だ。だらーんと情けない顔をする狼を傍らに寝かせ、目の前に伏せたライオンの召喚獣ゲインを見つめる。
『…』
無言で頭を手に擦り寄せてくる。
(こ、これは…撫でてってこと?)
戸惑いながらもその毛並みの良さそうな体に手を滑らす。フサァっとなんとも言えない触り心地と、撫でたら気持ちよさそうな幸せそうな顔をしたゲインを見て、凪の頭の中にあった遠慮の2文字が、スポッと抜けた。
「ふわぁぁ…」
そのふわサラの体に思い切り抱きついた。初めはビクッとしたゲインだったが、それは一瞬のことで凪の好きなようにさせてくれる。しばらくゲインと戯れていると、
『ぼ、ぼくもなでて…?』
つんつんと背中をつつかれた。振り向くとちょこんと座った、額に宝石があるウサギがエメラルドの瞳をうるうるさせて見あげていた。
「可愛いー!」
思わずぎゅっと抱きしめると、その可愛いウサギはぷるぷると少し照れたように震える。
「あぁ、なんて羨ま…主人が許可する前に行くのはダメですよ?シトリー」
シトリーと呼ばれたウサギはイージスの召喚獣のようだ。
『ご、ごめんなしゃい』
少し舌っ足らずな話し方で謝るシトリー。可愛すぎる。
「イージスさん、いじめちゃダメですよ?」
「いえ、いじめたわけでは…」
「羨ましいって言いかけたの、聞こえたんですからね?」
ぷりぷりと怒ったフリでイージスを叱る凪。
「「「「「『『『『『『…(可愛い)』』』』』』」」」」」
この部屋にいた凪以外の全員の心が一致した瞬間であった。
「あの、他の人の召喚獣も触っちゃ…ダメ…です、か?」
座っていたので必然的に上目遣いで尋ねた凪。それを聞いた(見た)サルージャ、ロルフ、マルクは即答で許可を出した。
「コイツはハリスや、よろしくしたってな?」
マルクに背中を押されるようにして前に出てきたトラ。白銀色の輝くような毛並みからは高潔さが滲み出ている。
『ふ、ふん。特別に撫でさせてやろう』
偉そうな態度をしているが、その尻尾はゆらゆらと機嫌が良さそうに揺れている。
「よろしくね、ハリス」
ふんわりと微笑みながら撫でれば、ダラっと表情を崩すハリス。ゴロゴロとなる喉はご機嫌さがよくわかる。
『俺も撫でやがれっ!』
ハリスを撫でていると、小さな塊がぶつかってきた。ドンッと体を押され、不意だったこともありそのままコロンと倒れた。凪の胸の上にしがみついたソレはキツネだった。しかもただのキツネではない。九つの尾がある狐だ。
「…こら、危ないからダメ。…謝って、リーシェ」
『むむむ、悪かったな』
リーシェと呼ばれたキツネはロルフの召喚獣だった。生意気そうだが、素直な子のようだ。しゅんと少しヘタった耳としっぽが愛くるしい。
「大丈夫だよ」
ふわふわした毛を撫でながらそういう凪。撫でていくにつれ、リーシェに元気が戻ってくる。リーシェが満足するまで撫でてあげていると、
『その、私はもふもふしていませんがダメでしょうか?』
恐る恐る近づいてきた黒い生き物。サルージャの召喚獣でドラゴンだ。ぬいぐるみのような愛くるしい見た目をしている。もふもふが好きな凪だが、ツルツルとした爬虫類の鱗も好きだった。
「勿論!」
「本当に、ビザリスまでいいのか?」
「うん!」
凪が手を伸ばせばちょっとずつ近づいてくる。トカゲや蛇などは触ったことがあるが、当たり前のことながらドラゴンは触ったことがない凪。ワクワクと好奇心を隠さないまま、すぐ目の前まで来たビザリスを撫でた。ツルッとした触り心地だが全ての鱗が硬いわけではなかった。生え変わったばかりなのかはわからないが、柔らかい鱗もある。体温が変わらないトカゲとは違って温かい。
背中の翼は、時折パタパタと動く。傷つけないように慎重に触ってみると、膜のようなものが張っていた。
「ふにぁ、もふもふ…ふわふわ…ツルツル最高…まさに天国…!」
幸せすぎて、顔の力が全て抜けてふにゃっと満面の笑みをこぼした凪。背後にゲインとハリス、左右にシトリーとリーシェ、腕の中にはビザリス、そして、いつの間に復活したのか頭の上に元魔王が乗っている。
サルージャ達は、動物(召喚獣)達に囲まれ戯れ笑顔な凪を見て、デレっと魔術師団長らしくない笑みを浮かべたのだった。
「ほれほれどうした?見たかったんだろ?」
眉間に皺を寄せている凪に対して、意地悪そうな顔をするヴィルム。今、凪の目の前にはもふもふしたライオンのような生き物がいる。ヴィルムの召喚獣だ。
元魔王と契約を結んだ後、唖然としているお偉いさん方を置いてサルージャ達を連れて自分の部屋へと戻ってきた凪。そうしたら、サルージャが、「もうここで全員の召喚獣を紹介しよう」と言い出し、今の状態に至る。
「触らせてくれないんですか?」
恨みがましくヴィルムを見つめる凪。
「お前は、見せて欲しかったんだろ?」
ニヤニヤしているだけのヴィルム。内心ケチだと罵ったあと、元魔王を呼び出して存分にもふっていると…
『『『『『……』』』』』
無言で5つの方向から焼かれるのではないのかと言うほどの熱い視線がささった。しかし、その視線の先を見る勇気をもちろん凪は持っていないため、無視を決め込む。5分か10分たった頃だろうか。
「はぁ、ゲイン…行っていいぞ」
一番最初に折れたのは、まさかのヴィルム。ゲインと呼ばれた凪に熱視線を送ってきていた召喚獣は、のっそりと歩きこちらに向かってくる。元魔王は凪の腕の中で骨抜き状態だ。だらーんと情けない顔をする狼を傍らに寝かせ、目の前に伏せたライオンの召喚獣ゲインを見つめる。
『…』
無言で頭を手に擦り寄せてくる。
(こ、これは…撫でてってこと?)
戸惑いながらもその毛並みの良さそうな体に手を滑らす。フサァっとなんとも言えない触り心地と、撫でたら気持ちよさそうな幸せそうな顔をしたゲインを見て、凪の頭の中にあった遠慮の2文字が、スポッと抜けた。
「ふわぁぁ…」
そのふわサラの体に思い切り抱きついた。初めはビクッとしたゲインだったが、それは一瞬のことで凪の好きなようにさせてくれる。しばらくゲインと戯れていると、
『ぼ、ぼくもなでて…?』
つんつんと背中をつつかれた。振り向くとちょこんと座った、額に宝石があるウサギがエメラルドの瞳をうるうるさせて見あげていた。
「可愛いー!」
思わずぎゅっと抱きしめると、その可愛いウサギはぷるぷると少し照れたように震える。
「あぁ、なんて羨ま…主人が許可する前に行くのはダメですよ?シトリー」
シトリーと呼ばれたウサギはイージスの召喚獣のようだ。
『ご、ごめんなしゃい』
少し舌っ足らずな話し方で謝るシトリー。可愛すぎる。
「イージスさん、いじめちゃダメですよ?」
「いえ、いじめたわけでは…」
「羨ましいって言いかけたの、聞こえたんですからね?」
ぷりぷりと怒ったフリでイージスを叱る凪。
「「「「「『『『『『『…(可愛い)』』』』』』」」」」」
この部屋にいた凪以外の全員の心が一致した瞬間であった。
「あの、他の人の召喚獣も触っちゃ…ダメ…です、か?」
座っていたので必然的に上目遣いで尋ねた凪。それを聞いた(見た)サルージャ、ロルフ、マルクは即答で許可を出した。
「コイツはハリスや、よろしくしたってな?」
マルクに背中を押されるようにして前に出てきたトラ。白銀色の輝くような毛並みからは高潔さが滲み出ている。
『ふ、ふん。特別に撫でさせてやろう』
偉そうな態度をしているが、その尻尾はゆらゆらと機嫌が良さそうに揺れている。
「よろしくね、ハリス」
ふんわりと微笑みながら撫でれば、ダラっと表情を崩すハリス。ゴロゴロとなる喉はご機嫌さがよくわかる。
『俺も撫でやがれっ!』
ハリスを撫でていると、小さな塊がぶつかってきた。ドンッと体を押され、不意だったこともありそのままコロンと倒れた。凪の胸の上にしがみついたソレはキツネだった。しかもただのキツネではない。九つの尾がある狐だ。
「…こら、危ないからダメ。…謝って、リーシェ」
『むむむ、悪かったな』
リーシェと呼ばれたキツネはロルフの召喚獣だった。生意気そうだが、素直な子のようだ。しゅんと少しヘタった耳としっぽが愛くるしい。
「大丈夫だよ」
ふわふわした毛を撫でながらそういう凪。撫でていくにつれ、リーシェに元気が戻ってくる。リーシェが満足するまで撫でてあげていると、
『その、私はもふもふしていませんがダメでしょうか?』
恐る恐る近づいてきた黒い生き物。サルージャの召喚獣でドラゴンだ。ぬいぐるみのような愛くるしい見た目をしている。もふもふが好きな凪だが、ツルツルとした爬虫類の鱗も好きだった。
「勿論!」
「本当に、ビザリスまでいいのか?」
「うん!」
凪が手を伸ばせばちょっとずつ近づいてくる。トカゲや蛇などは触ったことがあるが、当たり前のことながらドラゴンは触ったことがない凪。ワクワクと好奇心を隠さないまま、すぐ目の前まで来たビザリスを撫でた。ツルッとした触り心地だが全ての鱗が硬いわけではなかった。生え変わったばかりなのかはわからないが、柔らかい鱗もある。体温が変わらないトカゲとは違って温かい。
背中の翼は、時折パタパタと動く。傷つけないように慎重に触ってみると、膜のようなものが張っていた。
「ふにぁ、もふもふ…ふわふわ…ツルツル最高…まさに天国…!」
幸せすぎて、顔の力が全て抜けてふにゃっと満面の笑みをこぼした凪。背後にゲインとハリス、左右にシトリーとリーシェ、腕の中にはビザリス、そして、いつの間に復活したのか頭の上に元魔王が乗っている。
サルージャ達は、動物(召喚獣)達に囲まれ戯れ笑顔な凪を見て、デレっと魔術師団長らしくない笑みを浮かべたのだった。
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