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6、胃袋を掴んだっぽい
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王宮に戻った後、凪はある部屋へと案内された。
「ここはなんですか?」
「これから君が使う部屋だ。部屋の中のものは好きに使っていい」
「はぁ」
イマイチ理解ができない。普通は寮とかではないのかと考える凪。案内された部屋はフカフカのマットが床には敷かれ、大きなクローゼット、風呂、トイレ、台所…などなど、最低限生活に必要なものが揃っていた。ただし、王宮の一角というのが微妙だ。
「何かあったら隣にある部屋どちらでもいいからノックしてくれ。俺とヴィルムの部屋だ」
「わかりました」
「向かい側の三部屋でもいいぞ。マルク、イージス、ロルフ達がいる」
「はい」
周りを魔術師団長達に囲まれるとは何とも高待遇か。若干引け目に感じた凪はある提案をする。
「あの、ご飯っていつもどうしてるんですか?」
「外にある飲食店に行っている」
「その、ご迷惑でなければ今日のご飯作らせてほしいんですけど…いいですか?」
お金を持ってない凪からしたら、これしかお礼の仕方がないと考えた。それに対する反応はというと…
「本当か!ちょっと待ってろ、材料を貰ってくる!」
驚くくらい喜んでいる。そして、すぐにいなくなるサルージャ。凪はそれを呆然と見送るだけだった。
30分後…。
「さぁ、好きなものを使ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
戻ってきたサルージャは手ぶらだった。貰えなかったんだなと考えた凪だが、その後に続く人たちを見て目を見はった。執事らしき人達が部屋に運んでくる大量の野菜や果物、調味料。台所にある大きめの机の上にはそれがこぼれ落ちそうなほど乗せられた。
(どれだけ持ってくるの?6人分でいいんですけど?)
予想をはるかに超えた材料の量に凪はドン引きした。
「ありがとう。仕事に戻っていい」
運んでくれた人に礼を言って下がらせるサルージャ。
「じゃあ、サルージャ様も自分の部屋に戻ってくださいますか?」
凪がそう言うとキョトンとした。
「ここにいてはダメか?」
「いるだけなら邪魔ですし、出てってください」
しゅんと少し寂しげな様子で聞いてきたが、スッパリときった凪。肩を落として大人しく出ていく様子が可哀想に見えたが、首をふり考えないようにする。
「さて、料理料理ー!」
パチンと両頬を叩き気を引き締めた。
────────────────────
「ふぅ、こんなものかな?」
目の前にある作り上げた料理たちを見て満足する出来栄えだと自画自賛する凪。
作った料理は、ハンバーグ(なんの肉かはわからない)、サラダ、フライドポテト、サンドイッチ、コンソメスープと簡単なものばかりだ。
「それにしても米がないのは残念だった。……さて、呼んでくるか」
料理が出来上がったので全員を呼びに行く凪。
「ご飯ができたので部屋に来てくださーい」
それぞれの部屋の扉を叩きながらそう言ってすぐに部屋に戻る。数分もしないうちに全員が集まった。
「やったなぁ、手料理やぁ」
「あぁ」
「一体どんなものでしょうね。楽しみです」
「…うん」
「追い出されたが、いったいどんな料理が出来上がっているのだろうな」
一様に楽しみな様子がひしひしと伝わってくる。家庭的な料理しか作っていない凪の胃は少し痛くなった。落とさないようにトレーにのせ、リビングにあるテーブルに運ぶ。
「「「「「おぉ」」」」」
全部運び終わった。目がキラキラと光ってそれを眺めているサルージャ達。
「どうぞ」
自分も席につきながら、食べるよう促す。
「「「「「恵みの神に感謝を」」」」」
「いただきます」
違う言葉を言いながら手を合わせたが誰も気にした様子はない。まずはコンソメスープに手を伸ばした凪。
「うん、美味しい」
この世界に来てから最初に食べたご飯。口の中にじんわりと広がる野菜の旨み。細かく刻んで入れた材料の味がよくわかる。ほっこりとしていると…
ガシッ
「えっ?」
隣に座っていた青い髪の少年ロルフに手をがっしりと握られた。
「な、なんですか?」
「……美味」
「あ、ありがとうございます」
褒め言葉を言いたかったのだろうか。しかし、手を離そうとしない。
「…毎日作って?」
「毎日、ですか…」
まさかのおねだりだった。見た目15か16歳くらいのロルフ。とても22歳には見えない。
「でも、材料とか…」
「それは大丈夫ですよ。こちらで準備します。あなたに負担がかかるのなら話は変わりますが」
今度は別のところから声が聞こえる。緑の髪の男性イージスだ。
「そんなことはありませんが」
「じゃあ、なんだ?」
向かい側から別の声が聞こえた。ヴィルムだ。
「皆さん、これよりも美味しいもの食べてますよね?」
「でもなぁ、こっちのほうがええんよ。というよりも、こっちのが美味いわ」
ヴィルムの隣から声が上がる。茶色の髪の男性マルクだ。
「そうですか…」
「というわけでお願い出来ないだろうか。勿論、お金は払う」
最後にサルージャが言う。
「いえ、お金は別にいいです。材料さえ貰えれば」
今日たくさん買ってもらったものを見ながら言う凪。これだけ貢がれてさらにお金をもらうのは人間的にどうかと考えたのだ。
「あぁ、頼む」
そう言って再び食事を再開する面々。全員顔をほころばせている。実に幸せそうだ。
(胃袋、掴むつもりなかったけど掴んじゃったっぽいなぁ)
喜んだらいいのか分からないなんとも微妙な気持ちで料理を口に運んだ凪だった。
「ここはなんですか?」
「これから君が使う部屋だ。部屋の中のものは好きに使っていい」
「はぁ」
イマイチ理解ができない。普通は寮とかではないのかと考える凪。案内された部屋はフカフカのマットが床には敷かれ、大きなクローゼット、風呂、トイレ、台所…などなど、最低限生活に必要なものが揃っていた。ただし、王宮の一角というのが微妙だ。
「何かあったら隣にある部屋どちらでもいいからノックしてくれ。俺とヴィルムの部屋だ」
「わかりました」
「向かい側の三部屋でもいいぞ。マルク、イージス、ロルフ達がいる」
「はい」
周りを魔術師団長達に囲まれるとは何とも高待遇か。若干引け目に感じた凪はある提案をする。
「あの、ご飯っていつもどうしてるんですか?」
「外にある飲食店に行っている」
「その、ご迷惑でなければ今日のご飯作らせてほしいんですけど…いいですか?」
お金を持ってない凪からしたら、これしかお礼の仕方がないと考えた。それに対する反応はというと…
「本当か!ちょっと待ってろ、材料を貰ってくる!」
驚くくらい喜んでいる。そして、すぐにいなくなるサルージャ。凪はそれを呆然と見送るだけだった。
30分後…。
「さぁ、好きなものを使ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
戻ってきたサルージャは手ぶらだった。貰えなかったんだなと考えた凪だが、その後に続く人たちを見て目を見はった。執事らしき人達が部屋に運んでくる大量の野菜や果物、調味料。台所にある大きめの机の上にはそれがこぼれ落ちそうなほど乗せられた。
(どれだけ持ってくるの?6人分でいいんですけど?)
予想をはるかに超えた材料の量に凪はドン引きした。
「ありがとう。仕事に戻っていい」
運んでくれた人に礼を言って下がらせるサルージャ。
「じゃあ、サルージャ様も自分の部屋に戻ってくださいますか?」
凪がそう言うとキョトンとした。
「ここにいてはダメか?」
「いるだけなら邪魔ですし、出てってください」
しゅんと少し寂しげな様子で聞いてきたが、スッパリときった凪。肩を落として大人しく出ていく様子が可哀想に見えたが、首をふり考えないようにする。
「さて、料理料理ー!」
パチンと両頬を叩き気を引き締めた。
────────────────────
「ふぅ、こんなものかな?」
目の前にある作り上げた料理たちを見て満足する出来栄えだと自画自賛する凪。
作った料理は、ハンバーグ(なんの肉かはわからない)、サラダ、フライドポテト、サンドイッチ、コンソメスープと簡単なものばかりだ。
「それにしても米がないのは残念だった。……さて、呼んでくるか」
料理が出来上がったので全員を呼びに行く凪。
「ご飯ができたので部屋に来てくださーい」
それぞれの部屋の扉を叩きながらそう言ってすぐに部屋に戻る。数分もしないうちに全員が集まった。
「やったなぁ、手料理やぁ」
「あぁ」
「一体どんなものでしょうね。楽しみです」
「…うん」
「追い出されたが、いったいどんな料理が出来上がっているのだろうな」
一様に楽しみな様子がひしひしと伝わってくる。家庭的な料理しか作っていない凪の胃は少し痛くなった。落とさないようにトレーにのせ、リビングにあるテーブルに運ぶ。
「「「「「おぉ」」」」」
全部運び終わった。目がキラキラと光ってそれを眺めているサルージャ達。
「どうぞ」
自分も席につきながら、食べるよう促す。
「「「「「恵みの神に感謝を」」」」」
「いただきます」
違う言葉を言いながら手を合わせたが誰も気にした様子はない。まずはコンソメスープに手を伸ばした凪。
「うん、美味しい」
この世界に来てから最初に食べたご飯。口の中にじんわりと広がる野菜の旨み。細かく刻んで入れた材料の味がよくわかる。ほっこりとしていると…
ガシッ
「えっ?」
隣に座っていた青い髪の少年ロルフに手をがっしりと握られた。
「な、なんですか?」
「……美味」
「あ、ありがとうございます」
褒め言葉を言いたかったのだろうか。しかし、手を離そうとしない。
「…毎日作って?」
「毎日、ですか…」
まさかのおねだりだった。見た目15か16歳くらいのロルフ。とても22歳には見えない。
「でも、材料とか…」
「それは大丈夫ですよ。こちらで準備します。あなたに負担がかかるのなら話は変わりますが」
今度は別のところから声が聞こえる。緑の髪の男性イージスだ。
「そんなことはありませんが」
「じゃあ、なんだ?」
向かい側から別の声が聞こえた。ヴィルムだ。
「皆さん、これよりも美味しいもの食べてますよね?」
「でもなぁ、こっちのほうがええんよ。というよりも、こっちのが美味いわ」
ヴィルムの隣から声が上がる。茶色の髪の男性マルクだ。
「そうですか…」
「というわけでお願い出来ないだろうか。勿論、お金は払う」
最後にサルージャが言う。
「いえ、お金は別にいいです。材料さえ貰えれば」
今日たくさん買ってもらったものを見ながら言う凪。これだけ貢がれてさらにお金をもらうのは人間的にどうかと考えたのだ。
「あぁ、頼む」
そう言って再び食事を再開する面々。全員顔をほころばせている。実に幸せそうだ。
(胃袋、掴むつもりなかったけど掴んじゃったっぽいなぁ)
喜んだらいいのか分からないなんとも微妙な気持ちで料理を口に運んだ凪だった。
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