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13、子犬、ピンチ!

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「で?この犬っころを飼いたいと?」
「構わないだろう?迷惑をかけないから」
「はぁ。迷惑なら現在進行形でかけておろうが…まったく」

(……んむぅ)

 頭上でロートさんと誰かが会話をしていますね。……まだ寝てていいですか?ダメですか。そうですか。まぁ、誰だか知りたいですよね。私は知りたくありませんが。
 モゾモゾと毛布の中で体勢をととのえてひょっこりと顔を覗かせると、私を間に挟んでロートさんとモノクルをかけた灰色の髪の男性がいました。切れ長の目とすっと通った鼻筋、綺麗な顔立ちで神経質そうな男性です。 
 毛布から出た私を射殺いころさんばかりの眼力で見つめてきます。
 正直言って、怖いです。尻尾も股の内側にすっぽり収まってしまいました。

「おい、そんなに睨むなよ」
「別に睨んでいない。観察しているだけだ」
「それもどうかと思うがな…」

 ため息をついて、私を抱えあげたロートさん。…えっ、ちょっとまって、そのままの状態だとこのモノクルさんと向かい合わせになるんですが?やめて、モノクルさんの顔に近づけないで。
 そんな私の内心の葛藤など知らずにモノクルさんに私をなかば強引に押しつけたロートさん。モノクルさんは、なぜだか押し退けたりしませんでした。意外としっかりと、しかし、力をかけすぎないで私を抱えています。

「じゃあ、今日から二日間任せたぜ」
「はぁっ!?」
『えっ!?』

 まって、待とうよロートさん。私説明されてませんよ?赤ちゃんだからって説明しなかったんですか!?せめて一言お願いしますよ。さらに言えば、このモノクルさん、誰ですか!?

 キャンキャンと吠えると、ロートさんに軽く指で額を弾かれました。

「いいか、こいつに…チェイスにお前を預けるが、別に手放すわけじゃない。この砦で安全に暮らしてもらうためには、チェイスの了承を得ないといけないんだ。だから…な?たった二日だ。いい子だから待てるだろう?」

 こっそりと私にだけ聞こえる声の大きさで言ってきます。

(何、赤ちゃんにそういう理解力求めてんの?はやいよ、はやすぎるぞ!)

 納得したくありませんが、納得しました。本当に、不服でしたが。

「ってことで、俺はこれから二日間王都に戻るから、留守頼んだぜ!」
「おっ、おいっ!」

 そう言うやいなや、部屋から電光石火のごとく消えました。
 取り残されたチェイスさんと私。気まずいです。何とかこの気まずさをどうにかしなければと思っていたときです。チェイスさんが行動を起こしました。
 スタスタと部屋を出てどこかに移動するチェイスさん。表情は、ハッキリ言って無表情です。
 無言のまま、立ち止まったのは誰かの私室と思われる部屋。多分ですが、チェイスさんの部屋だと思います。

「今日から二日間、お前の暮らす部屋だ。くれぐれも、部屋のものは壊すなよ」

 イエス、マム。
 私は一抹の不安を感じながら、部屋に入ったのでした。
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