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第一部
二話 夕闇ディスペアー(12years old)
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家に帰り屋敷の皆から祝福を受けた後、俺は早々に自分の部屋に引っ込んだ。
ふらふらとベットに近寄り、そのままぼふっと倒れ込んで、思い出してしまった悲しい現実に絶望する。
馬車の中で思い出したのは、この世界が前世で流行った乙女ゲームの世界だということだ。
俺の名前、この髪と瞳の色、精霊師として十分すぎる素質。間違いない。タイトルはよく覚えていないが、原作は深夜アニメ化までした結構人気のあったゲーム作品だった気がする。
けれども、残念ながら、本当に残念ながら、俺は主人公でもその攻略対象者でもなく、悪役令息レイナルド・リモナであった。
よりによって、俺は悪役の公爵令息に生まれてしまったのだ。
「一体何故なんだ」
つい声が出た。
俺が前世で何をした。
取り立てて大きな徳も積んでいないが、ラストに完膚なきまでに成敗される悪役に生まれ変わるほどの悪行を行った覚えはないぞ!
この世界にいるであろう神をひとしきり呪った後、俺は未来のことを考え、また絶望した。
実は、俺はこのゲームの中身を全く知らなかったのだ。
そりゃそうだろう。俺はいたって普通の一般男子だったんだ。乙女ゲームなんてやったことねーよ!
なんで?
なんでこんなことに?!
前世の記憶を持って生まれるってあれでしょ。この先の展開がわかってて最悪な未来を回避するために主人公が活躍して、未来を改変して幸せになるって流れなんじゃないの?!
「俺この先のこと何一つ知らないけど?!」
絶望した俺はまた神を呪った。
これから起きる出来事は何一つ知らない。だが、悲しいことに、ゲームの内容は知らないけれども一時期SNSでトレンドになって流れてきた不穏なワードは多少なりとも覚えている。
『ダメナルド安定の裏切り』
『約束された末路』
「って……怖!」
普通に怖いわ!!
約束された末路って何?
俺は一体何をやらかすんだ!?
覚えがあるのは、SNSで流れてきたレイナルドのキラキラしい立ち絵と、倒される時の無様なスチル絵である。
ゲーム界隈のファンの間ではその画像を使う大喜利大会になっていたから、印象に残っているフレーズは少し覚えている。
『残念令息ダメナルドの失墜』
『顔だけワルナルド様』
『スペックだけ良いナルド様』
『ダメさが寧ろ愛しいナルド』
『公式のやっつけ枠』
『運営のいたずら』
「うん……全く良い評価ではないよな?」
ベットに寝転がりながら頭を抱える。
ダメさが寧ろ愛しいって何?
公式のやっつけ枠って?!
「レイナルドの人生はこの先どうなってしまうんだ……」
せっかく素敵なファンタジーの世界に生まれたのに、なんか急に将来が怖い!
「いや、思い出せたんだから良かったと思うことにしよう。つまり約束された末路ってやつを回避すればいいんだ。そうだ。堅実に生きよう……」
俺は枕を抱きしめながらそう言った。なるべく目立たずに、細々と生きるしかない。
確かゲームは悪魔がどうとか聖女がどうとかっていう内容らしかったから、そういうのに関わらないように地味に生きていけばいいんじゃないか?
多分、レイナルドが裏切りとか悪役っていうくらいだから、将来俺がなんらかの方法で悪魔とか呼び出すってことなんだろうし。
俺が大人しくしてれば世界も平和なままだよな。
俺は心の中でそう考えてうんうんと頷いた。もう悪魔とか聖女とか絶対関わりたくない。ゲームの攻略キャラのイケメン達とも絶対関わり合いにならないようにすればいいんだ。
何事も穏便に、今世では恵まれた優しくて人望のある家族に囲まれて俺は老後まで幸せに暮らしたいんだ。
ベットに横臥したまま俺は手を握り合わせて「どうか穏便に……」と先程呪ってしまったこの世界の神に胡麻すりのための祈りを捧げた。
まだ12歳になったばかりだったが、世界の平和と公爵家の次男としてのほのぼの生活を死守するために、このとき俺はどうにかシナリオを回避して生きようと誓ったのだった。
ふらふらとベットに近寄り、そのままぼふっと倒れ込んで、思い出してしまった悲しい現実に絶望する。
馬車の中で思い出したのは、この世界が前世で流行った乙女ゲームの世界だということだ。
俺の名前、この髪と瞳の色、精霊師として十分すぎる素質。間違いない。タイトルはよく覚えていないが、原作は深夜アニメ化までした結構人気のあったゲーム作品だった気がする。
けれども、残念ながら、本当に残念ながら、俺は主人公でもその攻略対象者でもなく、悪役令息レイナルド・リモナであった。
よりによって、俺は悪役の公爵令息に生まれてしまったのだ。
「一体何故なんだ」
つい声が出た。
俺が前世で何をした。
取り立てて大きな徳も積んでいないが、ラストに完膚なきまでに成敗される悪役に生まれ変わるほどの悪行を行った覚えはないぞ!
この世界にいるであろう神をひとしきり呪った後、俺は未来のことを考え、また絶望した。
実は、俺はこのゲームの中身を全く知らなかったのだ。
そりゃそうだろう。俺はいたって普通の一般男子だったんだ。乙女ゲームなんてやったことねーよ!
なんで?
なんでこんなことに?!
前世の記憶を持って生まれるってあれでしょ。この先の展開がわかってて最悪な未来を回避するために主人公が活躍して、未来を改変して幸せになるって流れなんじゃないの?!
「俺この先のこと何一つ知らないけど?!」
絶望した俺はまた神を呪った。
これから起きる出来事は何一つ知らない。だが、悲しいことに、ゲームの内容は知らないけれども一時期SNSでトレンドになって流れてきた不穏なワードは多少なりとも覚えている。
『ダメナルド安定の裏切り』
『約束された末路』
「って……怖!」
普通に怖いわ!!
約束された末路って何?
俺は一体何をやらかすんだ!?
覚えがあるのは、SNSで流れてきたレイナルドのキラキラしい立ち絵と、倒される時の無様なスチル絵である。
ゲーム界隈のファンの間ではその画像を使う大喜利大会になっていたから、印象に残っているフレーズは少し覚えている。
『残念令息ダメナルドの失墜』
『顔だけワルナルド様』
『スペックだけ良いナルド様』
『ダメさが寧ろ愛しいナルド』
『公式のやっつけ枠』
『運営のいたずら』
「うん……全く良い評価ではないよな?」
ベットに寝転がりながら頭を抱える。
ダメさが寧ろ愛しいって何?
公式のやっつけ枠って?!
「レイナルドの人生はこの先どうなってしまうんだ……」
せっかく素敵なファンタジーの世界に生まれたのに、なんか急に将来が怖い!
「いや、思い出せたんだから良かったと思うことにしよう。つまり約束された末路ってやつを回避すればいいんだ。そうだ。堅実に生きよう……」
俺は枕を抱きしめながらそう言った。なるべく目立たずに、細々と生きるしかない。
確かゲームは悪魔がどうとか聖女がどうとかっていう内容らしかったから、そういうのに関わらないように地味に生きていけばいいんじゃないか?
多分、レイナルドが裏切りとか悪役っていうくらいだから、将来俺がなんらかの方法で悪魔とか呼び出すってことなんだろうし。
俺が大人しくしてれば世界も平和なままだよな。
俺は心の中でそう考えてうんうんと頷いた。もう悪魔とか聖女とか絶対関わりたくない。ゲームの攻略キャラのイケメン達とも絶対関わり合いにならないようにすればいいんだ。
何事も穏便に、今世では恵まれた優しくて人望のある家族に囲まれて俺は老後まで幸せに暮らしたいんだ。
ベットに横臥したまま俺は手を握り合わせて「どうか穏便に……」と先程呪ってしまったこの世界の神に胡麻すりのための祈りを捧げた。
まだ12歳になったばかりだったが、世界の平和と公爵家の次男としてのほのぼの生活を死守するために、このとき俺はどうにかシナリオを回避して生きようと誓ったのだった。
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