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第一話 始まり
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はぁ……はぁ……
息を切らしながら、彼女は走り出す。
制服のあちこちが切り裂かれ、切れたところが赤黒くなっている。
『どうして、こうなったの?まだ、門限の8時じゃないしお守りだってあるのに?』
彼女が少し後ろを振り返って見た。
漆黒に近い澱みから無数の青白い手が伸びている。
また、その奥からは得体の知れない無数の目?の様なものが怪しげな光を帯び揺れながら自分の方に向かっている。
見ているだけでも、吐き気を覚えるほどの量だった。
『どうしてなの?こんなところで死ねない!せっかく、先週末16にななったばかりなのに!……もしかして、16になったから襲われてるの?』
自分の父親が言ったことを思い出す。
ーーー時は彼女の誕生日前日に遡るーーー
『明日で私は16歳になる』
彼女はそう実感していた。明日が楽しみでしかたがなかった。
そんなときだった、父が私を読んだのは……
「悠、話があるから来なさい」
私の名前は堀川 悠今年で16になる堀川家の長女。
堀川家は代々神憑きで有名な一族だと父が言っていた。なので、妖怪や魔物など関係には結構詳しいからしい。中でも私たち3姉弟は優秀らしく、長老様が言うには術力や魔力も申し分なく、修行を積めば上級妖怪や魔物を祓うことや討伐なども出来ると言っていた。本当かは定かではないし、修行もそこそこしかしていない。
『護身用程度で身に付けたものだし』
「はい、わかりました」
父親が待つ書斎まで歩いている途中、中庭にある大きな桜の木を見た。“千年桜”だ。まだ半分以上蕾だが、毎年自分の誕生日には大体満開に咲く。
『明日ぐらいには満開かな?』
この桜は彼女にとって特別なものだった。幼い頃、彼女は病弱で“いつ死んでもおかしくなかった”と医師から言われていたらしい。正直、当時の記憶が乏しいのでよくわからない。だけど、この桜の下であった人のことは覚えている。
それは、体調が少しよかった時に周りに内緒でこの中庭で遊んでたとき、一緒に遊んだ人。そしてあの日以降会えないでいる人でもある。
あの日を境に私の病気が回復に向かって、今じゃ病気知らずになった。
だからだろうか。その人にもう一度会って、あの日のお礼を言いたかった。
『またいつか会えるだろうか』
そんなことを思い出しながら、その場を後にした。
父親の待つ書斎で話が始まった。
「この家が、神付きであることは知っているかい?」
「はい。知っています」
「なら、今後についてなのだが、明日からは今よりもっと大変になるだろう。夜8時が門限だが、早めに帰れるならなるべく早く帰りなさい。難しいとは思うが、俺はお前たちが心配で言っていることをわかってほしい」
「わかりました」
ーーーそして、今に至るーーー
『だんだん、近づいてくる』
闇の中から伸びている青白い手はありもしない方向に曲がり、その度にナニかが折れる鈍い音がする。
それを聞く度に彼女は背筋が凍りついた。
そして、彼女は気づいてしまった。自分が今いる世界に……
7時間なのに、辺りは深夜並みに暗く、辺りには街灯も住宅街もいつもと同じなのに灯りが付いていない。たま、帰宅する者や、車など通っていてもおかしくない時間なのに、誰一人として会っていない。
『もしかして、サイドに入ってしまったの?』
サイドとは、妖怪や魔物がいる世界で、たまに人間が落ちることがあるらしい。落ちると奴等に食われ、その魂は天に還ることが出来ずに、また新たな怨念や悪霊になると云われている。
『早くここから出ないと……もし、この道が私のいる世界と同じならば、この先に私の家がある、そこに逃げ込めば助かるんじゃ……』
悠はそう考えて疲労でがふらつき始めた足に力をいれる。体力の限界が近いと思いながらも、最期の望みを託して走り出す。
息を切らしながら、彼女は走り出す。
制服のあちこちが切り裂かれ、切れたところが赤黒くなっている。
『どうして、こうなったの?まだ、門限の8時じゃないしお守りだってあるのに?』
彼女が少し後ろを振り返って見た。
漆黒に近い澱みから無数の青白い手が伸びている。
また、その奥からは得体の知れない無数の目?の様なものが怪しげな光を帯び揺れながら自分の方に向かっている。
見ているだけでも、吐き気を覚えるほどの量だった。
『どうしてなの?こんなところで死ねない!せっかく、先週末16にななったばかりなのに!……もしかして、16になったから襲われてるの?』
自分の父親が言ったことを思い出す。
ーーー時は彼女の誕生日前日に遡るーーー
『明日で私は16歳になる』
彼女はそう実感していた。明日が楽しみでしかたがなかった。
そんなときだった、父が私を読んだのは……
「悠、話があるから来なさい」
私の名前は堀川 悠今年で16になる堀川家の長女。
堀川家は代々神憑きで有名な一族だと父が言っていた。なので、妖怪や魔物など関係には結構詳しいからしい。中でも私たち3姉弟は優秀らしく、長老様が言うには術力や魔力も申し分なく、修行を積めば上級妖怪や魔物を祓うことや討伐なども出来ると言っていた。本当かは定かではないし、修行もそこそこしかしていない。
『護身用程度で身に付けたものだし』
「はい、わかりました」
父親が待つ書斎まで歩いている途中、中庭にある大きな桜の木を見た。“千年桜”だ。まだ半分以上蕾だが、毎年自分の誕生日には大体満開に咲く。
『明日ぐらいには満開かな?』
この桜は彼女にとって特別なものだった。幼い頃、彼女は病弱で“いつ死んでもおかしくなかった”と医師から言われていたらしい。正直、当時の記憶が乏しいのでよくわからない。だけど、この桜の下であった人のことは覚えている。
それは、体調が少しよかった時に周りに内緒でこの中庭で遊んでたとき、一緒に遊んだ人。そしてあの日以降会えないでいる人でもある。
あの日を境に私の病気が回復に向かって、今じゃ病気知らずになった。
だからだろうか。その人にもう一度会って、あの日のお礼を言いたかった。
『またいつか会えるだろうか』
そんなことを思い出しながら、その場を後にした。
父親の待つ書斎で話が始まった。
「この家が、神付きであることは知っているかい?」
「はい。知っています」
「なら、今後についてなのだが、明日からは今よりもっと大変になるだろう。夜8時が門限だが、早めに帰れるならなるべく早く帰りなさい。難しいとは思うが、俺はお前たちが心配で言っていることをわかってほしい」
「わかりました」
ーーーそして、今に至るーーー
『だんだん、近づいてくる』
闇の中から伸びている青白い手はありもしない方向に曲がり、その度にナニかが折れる鈍い音がする。
それを聞く度に彼女は背筋が凍りついた。
そして、彼女は気づいてしまった。自分が今いる世界に……
7時間なのに、辺りは深夜並みに暗く、辺りには街灯も住宅街もいつもと同じなのに灯りが付いていない。たま、帰宅する者や、車など通っていてもおかしくない時間なのに、誰一人として会っていない。
『もしかして、サイドに入ってしまったの?』
サイドとは、妖怪や魔物がいる世界で、たまに人間が落ちることがあるらしい。落ちると奴等に食われ、その魂は天に還ることが出来ずに、また新たな怨念や悪霊になると云われている。
『早くここから出ないと……もし、この道が私のいる世界と同じならば、この先に私の家がある、そこに逃げ込めば助かるんじゃ……』
悠はそう考えて疲労でがふらつき始めた足に力をいれる。体力の限界が近いと思いながらも、最期の望みを託して走り出す。
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