簡易版、徳川家康

駿府切り取り

　元康は、朝から張り切っております。

「ようし、妻と子を今川から取り返すぞ！」

　ハイテンションな殿に、三河家臣団も活気付きます。ですが、

「ハイ、妙案のある人」などと挙手を促されると、地獄の沈黙が訪れました。そんな中、本多正信と言う賢い家臣が提案します。

「上之郷城を攻め、鵜殿長照と息子を人質に取りましょう。人質交換でお方様とお子様を救出するのです。甲賀忍者と伊賀忍者も投入します」
　鵜殿長照は、今川家の当主、氏直の親戚であり、重臣でもあります。人質交換は成立するでしょう。

「おう」

　三河家臣団は、再び呼吸を始めます。本多忠勝ユニットを起動させ、発進します。本多忠勝は、敵兵を薙ぎ倒し、城を破壊し、松平家康に勝利をもたらします。ちなみに、この時点で松平元康だった家康は、今川義元から貰った元の字を捨て、家康に改名していました。今川家との訣別です。

　さて、鵜殿長照には死なれてしまいましたが、その二人の子は確保しました。忍者を指揮していた服部半蔵の手柄です。
　その後、家康の愛妻と子は、鵜殿長照の二人の息子と交換が成立して、無事に三河に入ります。


　家康としては一件落着ですが、その後の展開が色々と泥沼です。今川家はガタガタになったのです。
　今川の家臣、飯尾連龍は、曳馬城主でした。浜松辺りを支配しています。彼は、主君の今川氏直に恐怖します。何故なら、関口氏純とその妻である巴を処刑したからです。関口夫妻は、家康の妻、瀬名の両親です。この度の敗北に対する八つ当たりでしょう。

　関口氏純は今川家の重臣です。例え敵方の舅と言えども、謀反の証拠も無しに処刑は有り得ません。親兄弟ですら別れて戦うのが戦国です。連龍は、「氏直、ヤバくない？」などと思いました。そこで、家康に接近します。もう、敵の敵は味方です。
　すると、それが氏直にバレ、飯尾ｖｓ今川になります。
　連龍は、家康くんに援軍を頼みますが、三河では一向一揆が起き、手が回りません。
　そうこうしている内に、連龍は氏直に敗北してしまいます。
　氏直は、「まぁ、この件は水に流そう」などと言って連龍を駿府に呼び、切腹させます。

　この非道に怒ったのは、連龍の妻であるお田鶴でした。曳馬城に立て籠り、抗議の徹底抗戦の構えを見せます。回りは全部が敵でした。今川は夫の仇で、松平は兄の仇でした。お田鶴は、鵜殿長照の妹だったのです。

　さて、お田鶴が先に衝突したのは、兄の仇の松平軍でした。家康たち三河者は、女武者だと侮り、余裕をぶっこいています。ところが、次々に将を討ち取られ、焦ります。

「忠勝じゃ、忠勝を発進させろ！」
　家康は命を下します。
　出撃した本多忠勝は、バトルユニットお田鶴と激突します。地が割れ、天が落ちる攻防を繰り広げ、バトルフィールドが崩壊します。
　本多忠勝は、僅差でお田鶴を制し、松平軍に勝利をもたらしました。